情報屋、やってます。
3
…ー水崎透哉sideー…
ガラガラと倉庫の扉を開けると、部外者でも見るかのような視線が一斉に突き刺さった。
まぁ、ここ来るのまだ二回目やし、そうなるわな。
こないだ相田正行と櫻井弘人がおったソファまでズカズカと歩みを進める。
ソファに座ってる数人の中に、見知った顔は見当たらへん。
おかしいなぁ。
櫻井弘人には今日来る言うてたんやけど。
「櫻井さん知らん?」
ソファに座ってガン飛ばしてくる幹部の一人に声をかける。
「…てめぇその口の聞き方はなんだコラ」
更に目力が強くなった。
器のちっこい男や。
「……あー、これは失礼しました。櫻井さんどちらにいてはるかご存知でっか?」
嫌味ったらしく敬語で返せば、その顔が不機嫌そうに歪んだ。
ほんなら俺は一帯どないしたらええねん。
喋んなてことか、そうですか。
「お前、正行にちょっと気に入られてるからって調子乗んなよ?」
「それは勘違いですわ。いつも調子乗ってるんで」
ニコリと愛想笑いを浮かべると、そいつは拍子抜けしたように眉間のしわを薄くした。
「…お前よくわかんねー」
「よぉ言われますー」
テキトーに返しながら周りを見渡す。
やっぱりいてへん。
まだ来てへんのか?
「あー、弘人なら正行とどっか行ったぞ」
「……マサリンさん来てはるん?」
俺がそう言った瞬間、ソファに座ってたやつらが一斉に吹き出した。
なんやなんや。
ガラの悪い男どもがゲラゲラ笑う光景を怪訝そうに眺めていると、一人がフォローするように説明してくれた。
「マサリンなんて呼んでんの弘人だけだぜ!?あんなガタイいいやつにそんなあだ名とかクソうけるわ!!」
「………………」
「しかもさん付け!やべぇっしょ!」
いや俺だって思いきり馬鹿にして呼んでんねんて。
ちゅーかお前らの語彙力がやばいで。
さん付けの何がやばいんや。
全く理解できひん。
一頻り笑って気が済んだのか、ソファに座ってる内の一人が興味津々といった風に身を乗り出してくる。
「なになに、マサリンさんが来てはるとどしたの?うれぴーでしゅかー?」
なんやこのノリ。
ついてかれへん。
「逆や逆。マサリンさんいてるなら帰ろかな…」
ほんまに、今は会いたない。
あの非常識男め…。
俺がそう言うと、また不良どもはギャハギャハ笑い出した。
「嫌われてんじゃん!」
「あいつしつこすぎんだよー!なぁ、とうや!」
「ストーカーまがいのことされてるってマジ!?」
テンションに引きつつ、まぁ、とだけ返す。
そしてまたそれに爆笑される。
こいつらこんなんで疲れへんのか…。
さりげなく下の名前呼び捨てやし…。
もう櫻井弘人いてへんなら話にならん。
帰って来たら相田正行も一緒やろうし、ほんまに意味あれへん。
わざわざ相田正行が再試受ける日選んで来たのに。
はぁ、とため息を吐いて帰ろうとしたその時、目線の先で倉庫の裏口がバンっと開いた。
「透哉!!」
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