情報屋、やってます。
静観 1
…ー櫻井弘人sideー…
「次何色がいいと思うー?」
「緑とかでいいんじゃね」
「俺寒色系は似合わないんだって」
溜まり場のソファで、幹部の仲間と髪の毛トークに花を咲かせていると、一人が「あ、正行だ」と声を上げた。
マサリンはテストの結果がだいぶヤバくて再試を受けるっていうから、置いてきた。
ちなみに最近のマサリンはいつも上の空で、たぶん再試もヤバい結果なんだろうなぁ。
倉庫の入り口を見やると、メンバーに挨拶されながらこっちにやってくるマサリンが目に入る。
「やっほー、マサリン!再試どうだった?」
「…あー、どうだっけ、覚えてねぇ」
「……認知症かな?」
マサリンが座るためのスペースを確保するため、幹部を端に追いやって席を詰める。
けど、マサリンはそこに座ることなく、神妙な面持ちで口を開いた。
「弘人…ちょっと相談あんだけど」
「……」
うーわー、めんどくさそうな気配しかしない。
倉庫の外、メンバー自作のベンチに二人で腰かける。
これは余談だけど、親が大工らしくて、倉庫内外に配置されてる木製のインテリアは、すべてそいつが作ってくれた。
マサリンがタバコを箱から2本取り出し、1本を俺に向かって差し出した。
相談料ってことか?
黙って受け取って、ライターで火をつける。
マサリンはタバコをくわえたままライターを取り出す気配がないので、ついでに横からつけてやる。
「…ん?あ、ついてなかった」
くわえてるだけでつくわけないでしょーが…。
「まじでボケてんじゃない?」
「…かもしんねぇ」
「………………」
おいおい、しっかりしろよ。
「…なんかあったっぽいね」
「………………あのさ、」
「うん」
「透哉に避けられてるんだけど、どうしよう」
やっぱとーやくん絡みかーーーい。
この単細胞バカが悩むのなんてそのくらいだと思ってたよ。
「避けられてるって?溜まり場来ないから?」
「まぁそれもあるんだけど…メールの返事が全然こねぇ」
「はぁ」
「もうここ2、3日で30回は送ってんのに!」
「きっも」
「や、やっぱキモいかなぁ!」
「相当キモいよ。ストーカーじゃんそれ」
「後つけたりとかはしてねぇよ!?」
「それやりだしたら末期だわ」
わかってないなぁ、恋愛は駆け引きが重要なのに。
アホみたいに押してたら向こうはドン引きだっての。
「透哉のことだから、絶対メールきたの気づいてないとかじゃないんだって」
「いやだから引いてんだよ」
当事者じゃない俺ですら引いてるからね。
「うわぁ…やっぱあれがヤバかったか…?」
「何?セクハラメールでも送りつけた?」
「いや、メールじゃなくて…」
「あ、もしかして実際にセクハラしたの!?」
「……………あれは、セクハラ……に入るのかな…」
何を言ってるんだこいつはと思って、ぎょっとして隣を窺う。
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