情報屋、やってます。
3
こっちの出方を窺う櫻井弘人に、今ならしゃべっても大丈夫やと判断。
「今"dog"って情報屋いてへんやろ」
「別にいなくてもいいよ」
「必要最低限の情報は櫻井さんが集めるから?」
「………」
今、情報屋のいない"dog"で、それらしき代わりをしてるのは櫻井弘人や。
頭良いし好奇心旺盛やし情報屋向きではある。
けど、副総長と掛け持ちでそれはキツいやろ。
ずっと溜まり場にいながら情報を集めるのは厳しい。
せやから、櫻井弘人が集められるのは、ニュース程度のもの。
ほんまに最低限でしかない。
「"bat"が奇襲大好きってのは知ってるよな」
「まぁ、」
「あんたはその情報を、事前に掴めるんか?」
「…………………」
無理やろ。
クラッキングの仕方なんて知らへんに決まってる。
俺だって相当勉強した。
「情報屋いてへんかったら、"bat"に潰されんで」
「…あのさぁ、とーやくん」
「なんや」
「なんで俺がとーやくんをどうしても"dog"に入れたくないかわかる?」
「………裏切られる可能性があるから」
「そうそう、わかってんじゃん。今までとーやくんの入ってたチームって、8割がとーやくんの裏切りのせいで潰れてるでしょ」
「………………」
いや、9割やな。ほんまのこと言うと。
"rabbit"みたいな潰れ方をするケースはまれ。
ほとんどのチームが俺の思うように動いてくれた。
「もし"bat"の奇襲を防げたとしても、とーやくんに裏切られて潰れたんじゃ、結果は同じだよねって話」
その通りやけどな、もし裏切れば、の話やん。
「それなら、なんで俺がチームを裏切るかわかるか?」
「正直、全然理解できないんだよねぇ。仲間を裏切って何が楽しいの?」
「別に楽しいから裏切ってるわけちゃうわ」
みんな口を揃えて俺に言う。
楽しいやと?
俺は一回も自分の口から裏切るのが楽しいなんて言うたことない。
楽しいことばっか、好きなことばっかやって生きてればええとか思ってるから、不良は嫌いやねん。
「じゃあ何」
「そのチームよりいいチームに移りたいからや」
「………は?」
「例えば、俺が前についてた"tiger"は、最初は勢いもあって強かったけど、だんだんパターンが読まれてきて引き分けが多くなってん。それに比べて"rabbit"は、慎重やしケンカもそこそこ強いし、"tiger"よりええなって思った」
「だったら普通に移籍すればいーじゃん。わざわざ裏切ってチーム解散させる必要はなくない?」
「チーム移籍したら、もといたチームは敵になる。正面から勝負したら無駄に労力いるやん。せやったら始めから潰しといた方が楽やろ」
目の前に座る2人の眉が寄った。
ほんまは、情報提供したチームに貸しができてそっちのチームに入れてもらいやすくなるからってのもあるけどな。
そうでもせーへんと俺みたいなのはどこも受け入れてくれへん。
ただ、さすがに印象が悪くなりすぎるから、これは黙っとく。
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