情報屋、やってます。
駆け引き 1
教室の前で担任が明日の全校集会について話しているのを聞き流しながら、机の下で携帯をチェックする。
差出人が櫻井弘人のメールを開いて、内容を確認。
『じゃあ、今日の6時にdogの溜まり場で』
一行のみの返信に、眉が寄る。
今朝、櫻井弘人に、話があるからどこかで会えへんかとメールを送った。
おそらく向こうにもそろそろ"rabbit"が解散したってニュースが流れてきたころやろ。
大方俺が何を話したいかも感づいてるに違いない。
その上での、"dog"の溜まり場という場所指定。
ほんまやっかいやなー。
行きたないなー。
そもそも溜まり場とか大っ嫌いやねん俺。
ガラ悪いチンピラに占拠された空間とか誰が好むんや。
しかも今回は完全アウェイ。
心の中で大きなため息を吐いている内に、どうやら担任の話が終わったらしい。
起立の号令がかかった。
みんなで口にするだらっとした挨拶は、別に俺一人が言わへんところでバレもせーへん。
挨拶が終わった瞬間、教室の中がガヤガヤと騒がしくなる。
前の方の席にお目当てのやつの背中を確認して、かばんを肩にかけた。
逃がさへんぞ。
妙に慌てて机の上を片付けているそいつに後ろから近づいて、トンっとその肩に手を置いた。
「かーねこ」
びくりという振動が手から伝わる。
ゆっくりとこっちを振り返った金子くんの顔は、おもろいくらいひきつっていた。
人気のない校舎裏で、差し出された3枚の紙切れを受け取った。
「どうやって集めたん?」
「てめーには関係ねーよ!」
「割りとあるやろ」
別にそこまで興味ないからええけど。
「ほんとてめー卑怯だぞしね!」
「お前にだけは言われたないわ」
財布を取り出して、紙切れをしまう。
なかなかありがたい収入やな。
死にかけたけどな。
全然ありがたくないけどな。
ただ金もらうだけじゃつまらん、ついでにパシっとこ。
「せや、金子、お使い頼まれてくれへん?」
俺がそう言った瞬間、金子はあからさまに顔を顰め、
「やだ」
子供みたいな拒絶を吐いた。
「内容聞く前から即答すんな」
財布の小銭入れのチャックを開けて、錆び付いた硬貨を取り出す。
そのまま金子のブレザーのポッケにそれを落とした。
「俺がお前に送ったメールのメアド、矢島由良に教えといて」
「は?」
「頼んだで。ほな」
ひらりと手を振って、その場を離れた。
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