風の中
そーいうこと 1
次の火曜日は、頑張った。
やっと慣れたみたいで、なんとかいつもの時間まで見回りできた。
そっから水曜、木曜と異常なし。
空き棟が見回り場所に加えられてから、どうやらみなさん空き棟をあまり使わなくなったらしい。
今までは穴場だったっぽいけど、見回りされると狭い分かなり見つかる確率があがる。
今では逆に、使ってはいけない所として認識されているようだ。
実際、先月俺が発見した強姦被害も、6回中4回が最初の1週間のうちに起こったもの。
たぶん、ここで強姦被害が出ることはもうほとんどないと思われる。
俺を強姦したやつらも、まさか2回目やったりとかはしないだろう。
そんな、暇じゃないよな。
つーことで、金曜日。
あれからちょうど1週間だ。
大丈夫、必要以上にビビることない。
今日何もなければ、これからだってきっと何もない。
誰もいない空き棟の部屋を、一個一個見て回る。
誰もいない廊下を、歩く。
誰もいない、誰もいないはずの、…。
なのに、いる気が、する。
すぐそこに、潜んで、いる、ような――
一階の一番奥のドアに、手をかける。
何故だか、酷く動悸がした。
ゆっくりと、ドアを、開いて、
「――っ、」
伸びてくる手に、息が詰まった。
中に引きずりこまれる。
1週間前と、同じ部屋、同じ状況。
ああ、もう……。
ずるずると3人に引きずられて入ったリビングには、また他に3人いて、ほんとに1週間前と全く一緒。
「そんなに俺らとヤりたかったかよ」
ケラケラと笑い声が響く。
どーいう解釈の仕方だよバカじゃねーの。
「…お前らの存在忘れてたわ」
…嘘だけど。
思いっきり覚えてた、てかトラウマだし。
「おいおい、そんな生意気な口聞いちゃっていいのか?」
「キモい死ね」
「…んだコイツ、口悪ぃな…。まぁ、いいさ。今度は忘れないように、もっと激しくヤってやるから」
……なんか墓穴掘ったかも。
…………あー、最悪…。
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