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風の中
頑張るか 1
月曜日、なんとか回復した俺は、風紀室のドアを開けた。

土曜日は結構熱出てびっくりした。
てか丸々2日寝込まないと回復しないっていう。

風紀室に入ると、みんな大丈夫だったかと声をかけてくれる。

うー、じんわりする。

「北原」

長谷川さんに名前を呼ばれて、一瞬体が強張った。

「…うす」

トットットッと近づくと、心配したような瞳と目が合った。

「大丈夫だったか?」
「はい。無事回復いたしました」
「そうか。風邪だったのか?」
「…熱、出ました」
嘘ではない。
「…あんま無理すんなよ。もし辛いようだったら、今日も早めに抜けていいからな」
「あざます」

純粋に俺を心配してくれる長谷川さんに、罪悪感のようなものを覚える。
お辞儀をするフリをして、長谷川さんから目を逸らした。








あぁ、すごく、気分が悪い。

空き棟の入り口の前で、俺は立ち尽くしていた。

今日は、どうだろう。

また、強姦されたりするんだろうか。

……………いやだなぁ。

でもいつまでもここで突っ立っているわけにはいかない。

重くなる足を無理矢理動かして中に入る。

一番目の部屋の扉に手をかけると、じわりと嫌な汗をかいたのがわかった。
軽く吐き気がした。
全神経を集中させて、そっと扉を開き、中の物音に耳をすませる。

なにも、なし。

大丈夫。

またそっと扉を閉めて、大きく息を吐いた。


これを、64部屋(風紀仲間が計算してくれた)繰り返した。
10部屋くらい回れば慣れるかなと思ってたけど、全然そんなことはなくて、最後の部屋を確認し終わった時には気分が悪すぎてぶっ倒れそうだった。

階段を降りながら、また1時間後にはここに戻って来なければならないのかと、絶望に近い感情が湧いてくる。

気持ち悪い、帰りたい、もう嫌だ。


こんなんで、風紀続けられるのか…。


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