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哀色
どうしようもない
『成松と上手くいってねぇのか?』

そんなメッセージを優に送ったのは、つい先程。

斜め前にある生徒会室の机には、成松が座っている。

まだ会長を引退するまでには時間があるが、早いうちから覚えられることは覚えさせないといけない。
まぁ、さすが成松。仕事が驚くほどできる。
最近は生徒会室にどっぷり浸かってくれているおかげで、仕事片付くのが早いのなんの。

自分で言うのもなんだが、こりゃ俺に次ぐ有能な生徒会長になるな。

ただし仕事においてだけ。

俺だってついこの間までは人間的にもこいつのことを信用してた。
でも、最近の噂はひどい。

優がいるのに親衛隊に手を出すなんて、バカだろこいつ。
しかも抱いた親衛隊の数は一人や二人じゃないらしい。
いやいや、ほんとふざけてる。
優をなんだと思ってんだ。

じっと成松を睨み付けていると、携帯が震えた。

見てみると、優からの返信だった。




『まぁ』




みじかっ。こんだけか。せっかく先輩が心配してやってんのにこんだけか。

もう、電話にしよう。


すぐさまメッセージの画面から電話をかければ、割と早く呼び出し音が途切れた。

『もしもし…』
「もしもーし。優しい先輩が電話してやったぞ」
『え、あー…あざます…』

「…なんか、」

元気なくねぇか?おいおいどうした。

「風邪か、お前」
『ん…今体調崩してて…』
「マジか。じゃあ仕事終わったら見舞い行ってやる」
『いや…大丈夫っす…』
「なんで断る」
『あんま、…』
「あ?」
『…見られたく、ない…つーか…』
「そんな顔ひでぇの?」
『顔とかじゃ、なくて…、』

優はそこで言葉を切った。次いで、微かに咳き込む音が聞こえてくる。

『…さーせん、えと…』
「要はあれか、先輩に情けない姿見せたくないと」
『そんな感じっす…』
「はぁー、わかった。さっさと元気になれよ」
『あざます…』
「おぅ。そんじゃあな」
『え、用…あったんじゃないんすか…?』
「お前が調子戻ってからにしてやるよ」
『…りょーかいです』
「じゃ、ちゃんと休むんだぞー?」
『はい…あざます』

優との通話を切る。
ほんとは成松とのいざこざについて話そうと思ったのに。
調子悪い時にするわけにはいかねぇよな。
つか大丈夫か、あいつ。
断られたけど、やっぱあとで様子見にいくかな…。

「仙道。お前、恋人いたっけか」
俺が仕事再開しようと思いペンを持つと、副会長が話しかけてきた。
「いねーよ」
「ならさっきの誰だ?」

「優だけど、」

俺が言った瞬間、さっきまでは見向きもしなかった成松がパッとこちらを向いた。
成松は俺と目が合うと、さっと視線を逸らし、手元の紙に集中するような素振りをみせた。
だが、なんだかそわそわしてる。

わかりやすすぎるだろ、こいつ。
なんだかんだで気になってんのな。

浮気してるくせに。

「成松、なんか言いたいことあるなら言え」
「え、あ…優、は…風邪ですか…」

「…ああ、お前様子見に行ってやれよ」
「……でも、会長は断られたんですよね」
「お前の場合、自分の部屋でもあるんだから問題ないだろ。それに、恋人、だしな」
「………」

嫌みったらしくいってやれば、成松は黙りこんだ。


さーて、こいつは行くのかね。








もしも俺が行っていたら

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あきゅろす。
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