★ スタホ殺人事件 ★
発動C
駿介の右隣の9サテに亞穂菜、左隣の7サテに伊井が座っている。
置かれた状況から居心地悪そうに左右を気にする駿介。
2人はそんな駿介にはお構いなしに一言も言葉を交わさない。
「おいおい、勘弁してくれよ、何なんだこの妙に重た〜い空気は…」
皐月の登録状況をみると伊井がダルタニアスワンを登録している。駿介はここは黙ってヴィクトルブラウンは回避。
仕方なく他枠の調教とランキングなどを眺めて時間を費やす。
新潟大賞典で1サテのプレイヤーが1.3倍で出走しているのを確認してから自分の馬を調教し、皐月の登録状況を確認すると、ダルタニアスワンの下にザッケローニケロッピという馬が登録されている。
『えっ』
思わず声を上げた駿介だが、ザッケローニケロッピは亞穂菜の馬である。しかも初戦皐月登録。
駿介の声に反応して伊井がサテの画面を覗くと、どうやら伊井も亞穂菜が皐月にザッケローニケロッピを登録してきたのを確認したようだ。途端に表情が一段と険しさを増す。
亞穂菜は相変わらず知らんぷりでサテから店舗入口を通して見える人通りを眺めている。
『おい、お前亞穂菜ちゃん怒らせるようなこと何やらかしたんだよ。』
小声で伊井に訊ねる駿介だが、元々ひそひそ話には向かない駿介の地声は亞穂菜の耳にも届いてしまう。
それでも亞穂菜は聞こえない振りを貫く。
『知るかよ。』
ぶっきらぼうに伊井が答える。
益々訳がわからなくなる駿介。
新潟大賞典は1.3倍のプレイヤー馬がC着に沈んで単勝青色の馬2頭が@着B着に来て、3連複が10,000倍を超える大波乱で決着していた。
亞穂菜のサテのランプはレインボーに輝きEJPを祝福し、片や伊井のサテのランプは消灯してライド連勝が34連勝で止まったことを示していた。
「なんでこのタイミングでこの馬券なんだよぉ〜っ」
駿介は益々空気が重くなる事態に頭の中でスタホの気まぐれを呪っていた。
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