★ スタホ殺人事件 ★
発動D
大画面モニターは皐月賞に変わる。
伊井のダルタニアスワンが@番人気2.3倍、亞穂菜のザッケローニケロッピが8.0倍を示している。
相変わらず落ち着かずに両サテを恐る恐るチラ見する駿介
2人とも仏頂面でサテを眺めている。
「どっちが勝っても嫌な予感…」
駿介は益々気が重くなってくる。
ゲートが開くとダルタニアスワンが出遅れる。対するザッケローニケロッピは絶好のスタートを切って単独で逃げ始める。
良馬場を59″3で気持ちよさそうに単独で逃げるザッケローニケロッピ。ダルタニアスワンはポツンと集団から離れた最後尾を追走。脚質の違いとは言えあまりにも極端過ぎる両馬。
画面切り替わっても依然快調に逃げるザッケローニケロッピ。
4角前で突然覚醒したかのように猛然と追い上げを開始するダルタニアスワン。
亞穂菜は脚質ランプをオフにしているため勢いがわからない。
しかし、バテて失速という訳でもなさそうで、集団から伸びてくるC馬もいない。
残り200mを切ったところで集団を大外からぶち抜いたダルタニアスワンがA番手に上がる。
最後のゴール板前まで粘っていたザッケローニケロッピを一気に交わすとダルタニアスワンが@着でゴール板を駆け抜ける。
『5戦5勝、待ちに待ったスーパースターの誕生です。』
杉本アナの特殊実況が流れると満足げな安堵の表情を浮かべる伊井。
一方の亞穂菜は悔しそうにサテを眺めている。
2人の間でいたたまれない駿介。自分の居場所がない。
たまらず駿介が切れたジュースを買いにサテを立つ。
「やれやれ…」
ため息をつきながら自動販売機でドクターペッパーを買ってサテに戻る。
サテに近づくと何やら伊井と亞穂菜が駿介のサテを挟んでお互いに何かを言い合っている。
「おいおい、何やってんだよ…」
駿介が困惑した表情でサテに戻るとお互いがヒートアップする。
『わざわざ馬ぶつけてくんなよ。』
『どこに出そうがあたしの勝手でしょ。』
『そうくるのか。』
『別に出すなと言われてないし。』
『登録状態見ればわかるだろう。』
『見ないで登録したし。』
2人の声は徐々に高まる。
『まぁまぁ…』
駿介が2人をなだめるように諭す。
『駿介さんは黙ってて。』
亞穂菜の勢いに押されて駿介が仰け反る。
『ヒステリーは怖いね。』
伊井がボソッと呟くと、
『そこまで言うなら明後日もう行かない。』
突然、亞穂菜がそう切り出すとびっくりしたような表情で伊井が
『それとこれとは別問題だろ。』
と返す。
『別じゃないよ、かんちゃんがイライラするといっつも自分のことしか考えないんだから。』
『か、かんちゃん』
駿介は亞穂菜が伊井をそう呼ぶのを初めて聞いた。
『いっつもそう。自分に都合が悪いことはあたしに押し付けるんだから…』
『そんなことねえだろう。』
2人の言い争いは益々エスカレートしていく。
『兎に角、ここで喧嘩はダメでしょ。』
駿介が2人をなだめる。
1サテのプレイヤーが迷惑そうな顔で振り返る。駿介が両手を合わせて「ごめん」といった仕草を返すと1サテのプレイヤーは仕方無さそうに顔を戻した。
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