★ スタホ殺人事件 ★
静寂
駿介はふと投げやりなスタイルでアルツァモーロを走らせたことを後悔した。
自分のスタイルではない負け続けてのGT出走。感情に流されているのは明らか。
「はぁっ…少し冷静にならなきゃ…」
駿介は頭の中でそう自分に言い聞かせると、亞穂菜と二言三言交わしてカウンター横にあるオシボリを取りにサテを離れた。
カウンター横のMINI冷蔵庫から冷たいオシボリを2つ手にとってサテに戻る。
途中、普段あまり言葉は交わさないが顔はよく知っている店員とすれ違い、軽く会釈しながらすれ違った時に
「そう言えばベルさん、今日いないな…」
と思ったが、ヴォルテクスの件はそう簡単にはわかりそうもないことはわかっているので、それ以上考えるのをやめた。
駿介はサテに戻ると、取ってきた冷たいオシボリを広げて顔に押し付けた。
よく冷えたオシボリが心地よい刺激を与えてくれて頭の中がスッキリする。
「はぁ〜っ、気持ちいいっ。」
駿介は頭をリフレッシュして気持ちを切り替える。
2つ目のオシボリを手に取り、両手を拭いていると、オシボリが幾分いつものものより湿っている感じがする。
すると突然、サテの画面の出馬表の一番右端の欄が、切替音とともにせわしなく切り替わり始める。
「な、何だ?」
駿介が驚いてサテを凝視してみると、サテの右端に水滴がひとつついていた。
「これのせいか…。」
軽くサテを拭くと、せわしなく切替を繰り返していたサテは静かになった。
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