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★ スタホ殺人事件 ★
リベンジH

レースはシグマアルツァモーロが絶好のスタートを切ってハナを奪う。

あっというまに後続を引き離して独走状態を築く。

ラップタイム良馬場58″2

『あっ、アハハ、アハハ…。』

もう笑うしかない。こんな暴走など、出走制限のなかった頃のテレビ馬と呼ばれた、兎に角4角手前まで先頭で馬の名前を呼んで貰いたいためだけに出走した馬の自爆ペースだ。こんなペースで逃げ切れたら競馬の常識が変わってしまう。

4角手前でアルツァモーロは大画面モニター左端へばりつき、後続の馬群はモニター中央付近。めったに見られるものではない。これはこれで見応えがある。

直線に入って後続の13頭全部がバイアリーかと思うような脚色で追い込み態勢に入る。

「まるで1対13だなぁ…。」

駿介が呟く。

後続の13頭は、次第に篩にかけられ、順々に脱落していく馬が出てくるが、それでも7〜8頭は団子になってぶっ飛んでくる。

杉本アナが何を言っているのか駿介の耳には入って来ない。

首を垂らして息絶え絶えに走るアルツァモーロ。

後続が10馬身、8馬身、7馬身とあっというまに間を詰め、やがて残り1ハロンを切った辺りで早々とアルツァモーロを交わして行く。

「ひでぇ〜なぁ〜これ…。」

半ば怒りにも似た感情で駿介が呟く。

最後歩くようにゴールしたアルツァモーロは、それでも団子から落ちた後続には交わされず、レース結果を表す出馬表の上から7番目の欄に名前を留めていた。

『はぁ〜っ…』

駿介が大きく溜め息をつき、背伸びをして気分転換をはかっていると、その視界に近づいてくる亞穂菜の姿が入った。

『負けちゃいましたね…。』

駿介の気持ちを思いやってか、柔らかな調子で語りかける亞穂菜

『まぁね、仕方ないよね。大逃げが勝てない時はいつもこんな展開だからね。』

駿介は開き直ってそう答える。

『そんなもんですかね…。』

『うん、大逃げは逆に勝つときはこれでもかってくらい爽快にぶっちぎる時あるし。この前のヴォルテクスみたいに…。』

駿介は何気なく大逃げの快勝するシーンのことを亞穂菜に伝えようとして言葉を発したのだったが、それは紛れもなくぶっちぎりで逃げ切ったシグマヴォルテクスの皐月賞を思い出してのものだった。

そしてそのことに気付いた途端、駿介の言葉は途切れ、うつむいてしまった。

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あきゅろす。
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