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★ スタホ殺人事件 ★
初動捜査

轟は、現場検証を鑑識チームに任せ、ほかの刑事たちと現場の周りの状況確認にとりかかった。

廃工場はあまり人通りのない奥まった角地にある。

死亡推定時刻の報告を待たねばならないが、夜遅く、ましてや深夜だと人通りもなく、目撃者捜しは難航しそうだ。

少し離れたところには住宅もあるが、そこまでは廃工場と同じ様な小さな町工場が軒を連ねており、夜遅くまでやっているような雰囲気ではない。世の中の不況が現実をあらわしている。

轟たちは2人一組で少し離れたところの住宅地の聞き込みを行ったが、めぼしい情報はあがってこなかった。

人通りの少なさ故、犯人が車ででも来ていたのであれば、エンジン音やドアの開け閉めの音などで誰かしらが気がつくことも可能性としてあったが、どこからもそのような情報はなく、犯人は歩きか若しくは自転車などで犯行現場に来た可能性が高いと轟は踏んでいた。

一通りの聞き込みを終え、夕方前に轟は小田中南署に一旦戻った。

『課長、被害者の身元はわかりましたか

轟は刑事課に入るなり高村刑事課長に尋ねた。

『いや、まだわからん。被害者は財布は所持していたのだが、免許証やカードの類が一つもなくてな。』

『今時そんな奴いるんですかね。もしかしたら犯人が抜いたとか…。』

『その可能性はあるが、財布からは被害者以外の指紋は検出されなかった。』

『手袋をしていたとすると、計画的犯行ですかね。』

『いや、計画的犯行なら死体をあの場所には置かんだろう。』

『う〜ん、しかし、死体は見つかっても構わないとしたら…。』

『見つからないようにする必要がないということか?』

『ええ、何らかしらの理由で死体は見つかっても、身元がわかるまで時間が掛かれば問題ないと犯人が考えたなら…。』

『考えたなら?』

まるであらかじめ台本でもあるかのように、高村と轟の推理合戦は続いていた。

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あきゅろす。
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