★ スタホ殺人事件 ★
後ろ姿
伊井は居闇の話しを聴いてご機嫌になったが、駿介はどんちゃんさんたちと呑みながらも、居闇がブルースカイを出入り禁止になったことで、『シグマヴォルテクス』の抹消した犯人のことについてずーっと考えていた。
『何だよ、湿気た面して〜っ、駿介ならまたSS作れるさ』
完全に出来上がっている伊井が駿介を励ます。
『そうそう、次は弥生2.0倍出しゃいいじゃん』
どんちゃんさんもかなり出来上がってきているらしい
『いやいや、TEじゃ2.6倍が限界でっせ、どんちゃんさん』
もう伊井とどんちゃんさんは完全に2人の世界に入っている。
『もぉ〜、デリカシーがないんだからぁ』
亞穂菜がいつものように頬を膨らまして酔っ払いの2人に食ってかかる。
『おやぁ〜、やっぱり亞穂菜ちゃんは駿介に気があるんだぁ〜。』
顔を真っ赤にした伊井が亞穂菜に茶々を入れる。
『そんなんじゃないですぅ〜』
亞穂菜の頬が一段と膨れて顔が丸くなる。亞穂菜もかなりアルコールが入っているようだ。
『亞穂菜ちゃん、顔がフグ〜っ』
伊井が調子に乗ってちゃかしたため、亞穂菜は「プイッ」と顔を背け
『伊井さんとはもう喋らないっ』
と完全におかんむり状態になった。
『えっ、え〜っそんなぁ…。』
伊井が慌てて二言三言、フォローの言葉を掛けるが、亞穂菜は見向きもしない。
駿介はそんなやり取りも上の空で眺めているだけだった。
そんな漫才めいたやり取りが1時間くらい続き、八兵衛での飲み会はお開きになった。
伊井はどんちゃんにしきりにキャバクラ行きの話をして、どんちゃんの連れと3人でキャバクラ目指して勇ましく歩いていった。
駿介もしつこく誘われたが、どうしてもそんな気分にはなれずに固辞した。
亞穂菜も家に帰るとのことで、駿介と亞穂菜は途中まで一緒に帰ることになった。
とりとめのない話しをしながら通りの角を曲がると、駿介は20mくらい先に人影を見つけた。
『あれ?居闇?』
駿介が見つけた後ろ姿は、着ているジャケットなどから居闇に見えたのだ。
『えっ?誰かいたの?』
亞穂菜が駿介に尋ねるが、
『えっ?いや、居闇かなと思って…。』
『どこ?』
『あっちだけど…。』
駿介が指さすが、そこには人影は既になかった。
『誰もいないですよ〜。』
『見間違いかなぁ?』
そうは言ってはみたものの、駿介の目には居闇に似た後ろ姿ともう1人、男性の後ろ姿が映っていた。
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