★ スタホ殺人事件 ★
疲労
亞穂菜はすっかり満足したようにニコニコしながら立ち上がり
『さあ、行きますよ』
と2人に声を掛ける。
『えっ?えっ?』
あまりの手際の良さに2人が呆気にとられていると、亞穂菜は時計をチラッと見て
『いけない始まっちゃうから急いで』
と更に2人を急かせる。
『えっ?始まる?何が???』
『ちょ、ちょっと待って…。』
2人は何が始まるのか全く判らないまま、亞穂菜に急かされて慌てまくる。
周りの女子高生は、大の男2人の慌てまくる様子に気がつき、可笑しくて笑いを堪えるのに必死になっているのが否が応でもわかる。
『な、なんでこうなった?』
駿介が伊井に尋ねるが、伊井はキリッと目を見開き
『何でって、お前が悪いんだろう』
と不機嫌に駿介に言葉を返す。
『お、俺なの?』
『…』
伊井は駿介の天然さ加減に「お手上げ」という、両方の手の平を上に向けて顔の横に持ってきておどけてみせる。
『早く、早く〜』
亞穂菜は既に席を立って出入口のところで手招きしている。
端から見たら、どこぞの国のやんちゃ姫に振り回される家臣か、はたまたおてんばなアイドルに振り回されるうだつの上がらないマネージャーといったところか。
兎に角2人はコートを掴んで亞穂菜のあとを追った。
『亞穂菜ちゃん、待ってよ〜』
駿介が声を掛けるが、亞穂菜の足取りは2人を待ってくれるどころか、益々軽快になってスタスタ進む。
『ど、どこいくんだよ〜っ』
伊井が情けない声を出す。
『こっちこっち〜』
亞穂菜は2人から20mほど先の角で左側を指したと思ったら、さっさとその左側の影に消えた。
『へっ?そっちはショッピングモールのはず…。』
『ってことは「お買い物」???』
2人は思わず立ち止まり、お互いの顔を見合わせて
『勘弁してよ〜』
と声を合わせた。
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