★ スタホ殺人事件 ★
疑惑A
「やはり居闇が怪しい。」
駿介の頭の中に疑念が湧いてくる。
「隣のサテで何かやっていることを、気がつかないものだろうか…」
駿介は自分のサテの操作や大画面モニターを見ている時に、隣のサテの出来事に気づかないものなのか試してみる。
しかし、先に隣が気になるかという先入観があって、気になって仕方がない。冷静な状態で試さないとダメなのかも知れない。
テレビに夢中になると、画面しか視界に入っていないのと実際は同じなんだろう。違和感を感じるか否かがポイントなんだろうと思う。
『早見さん。』
その声に振り向くと、えま店長が立っていた。
『早間くんから馬が消されたと聞きましたが。』
『あっ、店長。すみません、わざわざ。』
駿介は驚いたが、丁寧に挨拶した。
『消されたって本当なんですか?』
『えぇ、僕と伊井がトイレ行って戻ってきたら、馬がいなくなってました。』
『2人揃ってサテを空けてたということですか…。』
『はい、そうです。』
えま店長は腕組みしたまま考え込んで動かない。
『消された馬が、過去最高の素質持っていたんで悔しくて…。』
駿介が口を開く。
『しかし、この状態じゃあね…。』
『えぇ、わかっています。どうにもならないでしょう。』
『朝一番なら昨日の終わった時点のデータに戻すことは可能ですが、ここまで進んでしまうと…。』
『それは理解しています。無理なことをお願いするつもりもないですから。』
暫く重い空気のもとやりとりが続いたが、えま店長が動いた。
『居闇さん、隣のサテで馬が誰かに消されたみたいですが、何か変わったことはありませんでしたか?』
プレイ中の居闇に声を掛ける。
『ん〜?何も気がつかなかったなぁ。早間くんが掃除してたのは見たけど。そん時消しちゃったんじゃねえの?』
駿介はつれなく答える。
『そうですか。早間が掃除した以外は特に変わったところはなかったんですね。』
『あぁ、何も見てねえよ。』
えま店長は
『早間にもう一度聴いてみます。こうなると掃除の時に消してしまった可能性が一番高い。』
そう言ってカウンターに向かおうとしたが、駿介がそれを制して
『店長、俺には早間くんが間違って掃除中に消してしまったとは思えないんです。知ってると思いますが、早間くんは自分でスタホをやっています。どうしたら馬を抹消できるか知っている人間が、サテを拭く時に注意しない筈がない。まして早間くんはいつも丁寧に作業をしてくれている。』
駿介は早間くんが間違って消したとはどう考えても思えなかった。
『早見さん、それは僕も同じです。あいつのことは僕が一番良く知っているつもりです。でも、今、一番可能性が高いことを避けて通ることはできないんです。』
えま店長はそう言うとカウンターへ向かった。
駿介の頭の中は、逆に早間くんに迷惑を掛けているような気持ちになり暗く沈んだ。
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