[携帯モード] [URL送信]

カナヅチ
優しい先輩



彼は少し微笑みながら優しい声で言った。


「もしかして入部希望者?」


「はい!」


茜が勢いのある返事を返す。


あたしはただぼんやりと突っ立つことしかできなかったが、茜のやる気充分の返事に彼はさらに微笑んだ。


「初めまして。俺は日隠涼稀(ひがくれ りょうき)で2年。この水泳部の部長だよ」


涼稀でいいよ、と言われたからあたしたちは涼稀先輩と呼ぶことにした。


あたしたちも軽く自己紹介をする。


「あの、他の部員とかいないんですか?」


周りを見回しても水泳部員らしい人は見当たらなくて、涼稀先輩に聞いてみた。


「みんなやめちゃってね。俺がしごき過ぎたからかな」


こんな優しそうな先輩にならしごかれてもいい、と本気で思った。


でも辞めちゃうくらいハードな練習なのかな?そんな感じには見えないけど……


「じゃ茜、瑞葉、明日から早速練習するから覚悟しといてね」


涼稀先輩は綺麗にプールに飛び込んで泳ぐ。


今日はもうすることがないから少しだけ先輩の泳ぎを見てからプールを出た。


こんな格好いい先輩がいるんだったら、毎日部活に来てもいいかも…とあたしはサボる宣言を一瞬で投げ捨てた。



[←][→]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!