カナヅチ
小さな歓迎会
支度を済ませたあたしたちは、歓迎会の変わりに涼稀先輩にジュースを奢ってもらった。
誰もいない夕焼けの光る1年の教室に入って話をしていた。
「あ、そういえば涼稀先輩、1つ聞いてもいいですか?」
あたしはふと思い出したように言う。涼稀先輩は首を縦に振った。
「あの、初めて会った時すごい優しかったですよね?今だにどっちが本当の涼稀先輩なのかよく分かんないです」
涼稀先輩はその質問を聞いて少し笑った。その顔は初めて会った時に見た、穏やかな笑顔だった。
「第一印象が肝心って言うだろう?普段はあんなに厳しくはないよ」
「でも結局いずれは、熱血な涼稀先輩を見るんだったら変わんないんじゃないですか?」
茜が突っ込んだ。確かにその通りだと思う。
「じゃあ2人は俺が初めから熱血な奴でも、今日部活に来ようと思った?」
「「……思わないです」」
そうだよな、と先輩は微笑んだ。
言葉にはできないし、まだもやもやしてるけど、なんとなく先輩の言いたかったことが分かった気がした。
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