カナヅチ 水と仲良く 「瑞葉!」 「は、はい!」 突然涼稀先輩に名前を呼ばれて何事かと驚いた。 「俺が一から泳ぎを叩き込んでやる!教え甲斐があって楽しそうだな!」 よくわかんないけど喜んでる。怒鳴られると思ってたあたしは安心した。 涼稀先輩は茜に今作った個人練習メニューを見せた。 「時間がかかってもいいから、全部こなすんだぞ!」 「うわ、随分ハードなメニューだし……」 なんて茜は愚痴を零していた。 水に浮かぶこともできないあたしは、涼稀先輩が付きっきりで泳ぎ方を教えてくれた。 「ほら!もっと水と仲良く!」 「先輩…意味が分かりませんよ……」 「力抜いてー…そう!友達になった感じで優しく水を掻いてー…」 あたしはまだまだ水と友達になってないと先輩は言っていた。 先輩は水とは家族、いや、最早空気だな!なんて不思議なことを言っていた。 もう外はオレンジ色であたしと茜の体力もへとへとになった頃、やっと部活が終わった。 涼稀先輩は泳ぎ足りなさそうだったけど、暗くなったら泳げないから今日はここまでにした。 これから毎日こんなにハードな練習をするのだろうか。考えただけでもおぞましい。 [←][→] |