カナヅチ
泳げない
茜と2人で急いでストレッチをする。
先輩はアップをしていたが、あたしらが入水するのと同時にこっちに向かってきた。
「茜と瑞葉はどれくらい泳力あるんだ?」
「あたしは一応フリーとバックなら泳げます」
茜は自信満々に答えていたが、あたしには言ってる意味さえ分からなかった。
「茜はバックか。瑞葉は?」
すごく答えにくい雰囲気で、あたしはどうやったら少しでも幻滅されないようにするか考えていた。
けど結局特にいい案も思いつかなかった。
「…カナヅチなんです」
「…………え?」
しばらく間をおかれて聞き返される。なにかの間違いだと思われてるようだ。
「すいませんが少しも泳げないんです。やっぱりここにいるのには相応しくないですよね。入部はなかったことにしてもいいですか?」
改めて聞かれると恥ずかしいやら居心地悪いやらで捲し立てるように早口に言った。
少しの間沈黙が続く。気まずくてどうしようもなかった。
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