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頂き物の小説
第十三話『海鳴の現地妻の来訪』



恭文がフェイトとデートに行った翌日。俺はまたデバイスルームに籠り、ラミアの改良をしていた


あるデバイスとの連携が出来るようにだ


そんな作業中に、いきなり出向前だというのに、サリが乱入してきた



「レイ! やっさんのマンションに行くぞ!」


「はっ!? いきなりどうした?」


「やっさんがついにやったんだよ!」


「えっと……なにをだ?」


「とにかく一緒に来いっ!!」



俺は引き摺られながらも、なんとか保存とバックアップをしっかり行うことが出来た……サリ、自分で歩けるから引き摺るのはやめてくれ


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……とにかく、家に帰ってきた。前日、リンディさんから帰還命令が出されていたのだ。だからこそここに居る


正直、入るの辛い。でもまぁ………大丈夫でしょ。みんな大人だし、そこは察してくれるだろう


そして、僕は入る。もち、ただいまと言いながら


パパーンっ!!


…………………………………………………………………………………え?



『おめでとー!!』



……………………え?


あー、なんだろうな。また幻覚?


何でいきなりクラッカー?(Notジオ〇) そして、なんでパーティーな装い?



「……え?」



意味はないが声に出してみる



「おかえりー! ……恭文くん、おめでとうっ!!」


「あなたのために、腕によりをかけて……お赤飯、炊いたのよ。うぅ……長かったわね」


『パパ、おめでとー!! ……なにが?』



うん、ここまではいい。居ることを知っていたから。予測してはいた。で、問題は次っ!!



「おう、邪魔してるぞ。まぁ……あれだ。よかったな」


「……よかったな。我は……我は……!!」


「現地妻1号としては、寂しいわ。でも……嬉しいわっ!!」


「リインは……リインはぁぁぁぁぁぁっ!!」


「あぁ、ヴィータちゃんもザフィーラさんもシャマルさんもリインちゃんも泣かないで……。
今日は、めでたい……ごめん、俺も泣いていいかな? やっさん、お前、次元世界の恋の勝利者だよっ!!」


《おめでとう、恭文殿……長き茨の道をよくぞ渡りきった。私は嬉しいぞ》


「ま、そうだな。いきなりサリに引き摺られて何事かと思ったけど……うん、やっと想いが通じてホントよかったな、恭文……いかん、涙が」



…………よし


なんで、兄弟子とか、主治医とか、守護獣とか、師匠とか、パートナーとかがいるのっ!? レイは………………カレルとリエラがなついているからしょうがないや


つか、また勝手に人の家に上がり込んでっ!!



「問題ないよ。やっさんの家は俺たちみんなのセカンドハウスなんだから」


「んなわけあるかこのぼけぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


「まぁまぁ。ほら、一緒にお赤飯、食べましょ?」



なんで炊いてるっ!? ……だから、そのお祝いモードはやめてっ!!



「リイン手伝ったですよ〜」


「カレルとリエラも手伝ってくれたんだよね」


『うんっ!!』


「あ、俺は味見ねっ!!」


「一番どうでもいい人でしゃばらないでっ! サムズアップしなくていいからっ!!」



つか、なんでここにっ!? まだ出向予定じゃ……あぁ、無駄だよね。分かってた



「サリエルさん」


「あ、はい」


「いつも恭文君がお世話になっているそうで……。ありがとうございます」


「あぁ、そんな頭下げないでください。俺もヒロも、やっさんと絡むのは、楽しんでいますから」



……そう言って、楽しそうに談笑するのは、僕の保護責任者と兄弟子


ヤバい、なんか頭痛が……



「なぎさん、おめでとうっ!!」


「お祝いもってきたよっ! というか……よかったね。本当に」



…………………………………………………………………………………………お前らもかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!



「エリオお兄ちゃんに、キャロさんだー!」



……キャロはさん付けなんだね



「お兄ちゃん達も、パパのお祝い?」


「そうだよ。……なぎさん、年貢の納め時ですね。ハーレムなんて、しょせん夢なんですよっ!!」


「その言い方やめてっ! つーか何を勘違いしているかなっ!!
そんな夢見てないからねっ!?」


「恭文、その……お父さんになるのかな?」



エリオ、涙目でそんなことを言うな。お、お願い。お願いだから……!



「みんな落ち着けぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……その後、恭文から………フェイトとは何もなかったことが説明された


その事について皆が思い思いに言葉を述べたり、サリの頭の痛い固有結界はとても恐ろしかったりなどいろいろあったが、ここは友人として祝福しよう………


それからなんやかんやとご飯を食べ、12月が始まった




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第十三話『海鳴の現地妻の来訪』



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


12月のとある日。朝一番でやってきたギンガも加えて、ある一大イベントが行われた


その場所は、六課の訓練スペース。舞台は廃棄都市群。廃ビルが建ち並ぶその中で行われたイベントとは………



「………つーわけで、今回は私とサリと特別ゲスト達による、ちょっとハードな特別講習〜♪」


《ドンドンパフパフ〜♪》


『サーイエッサーッ!!』



ファンファーレなんて流すなよ、アメイジア。ヒロが入れたわけじゃないよな?


あと恭文、なのはを初めとした隊長陣も、頭抱えるなよ


いや、気持ちは分かるがな。何で居るのかと聞きたくなるし



「あれ、恭文……というか、みんなどうしたの?」


「……どうしたのじゃないからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 何で居るのっ!?」



そう言って恭文が指差すのは…… 一人の女性。黒髪の三つ編み。抜群のスタイル。その身を包むのは、エリオ達と同デザインの練習着


なんと言うか、あれだよな。………ほんとになんで居るんだ?



「いや、エイミィ経由でサリエルさんに頼まれたから」


「こないだやっさん家に行ったついでにね。いや、助かりましたよ。ツーと言えばカーでしたし」


「いえいえ。私もこっちの世界には興味がありましたし、あと……会いたかったしね」



そう言いながら恭文を見るのは、たぶん愛ゆえにだろうな。リインから現地妻の構成聞いたしな



「サリエルさんっ! どういうことですかこれっ!?」



なのはも動揺してるな。まぁ、仕方ないが



「いや、問題ないだろ? つか、特別講師としては適任だったんだよ。御神の剣士の噂は、俺もやっさんから聞いてたしね」


《本当は兄上様の方も呼びたかったのですが、さすがに無理でした》


「ま、とにかく……みんな久しぶり。本日、特別講師に任命された高町美由希ですっ!!」



……高町美由希。なのはのお姉さんであり、恭文の公式的な現地妻3号らしい


……恭文にとっては、アンオフィシャルであるが


現在は翠屋の2代目店長に納まっている女性だが、それは彼女の姿の一つに過ぎない


高町家は御神流という小太刀二刀流による実戦剣術……いや、暗殺術と言った方がいいな。とにかく、それを継承している家系だ


なのはと、母親である桃子さん以外の全員が、この御神流を継承している。もちろん彼女も


御神の剣士ならクロスレンジで、オーバーSとも渡り合えるだけの力はある


防御フィールド? そんなもの斬れるに決まってるだろ。バリアも発生する前に斬れるしな


相手の攻撃は全て回避だな。広範囲攻撃でもないかぎり、紙一重で避けられる


一応言っておくが、高町家はなのは以外全員非魔法能力者だ。全ての戦闘行動は、鍛え抜かれた技と身体能力による


改めて考えると恐ろしいな。今さらだが……



“………まって”



聞こえた声は……ギンガ。相当疑問顔だったから、恭文が説明していた


それはスバルとティアナも同じだ。エリオとキャロはまだ大丈夫みたいだが



“……嘘よね”


“いや、本当だよ?”


“本当です。実際、僕は見せてもらいましたし、相手をしてもらいましたけど……凄かったです”


“エリオ君もフェイトさんもなぎさんも、相手になりませんでした……”



あ、絶句した。まぁ、仕方ないか


さて、そんな彼女を呼んでまでなにがしたかったかというと……



「今日は、隊長陣を含めたみんなに『AMFによる魔力の完全キャンセル化状態での対質量兵器戦』を体験してもらう」



……そう、これが原因だ。彼女は、なのはの兄恭也と香港の警防で質量兵器……銃器相手での戦闘訓練をしてるからな


恭文からその辺りの話を聞いていたサリが、そういう視点からの意見を言ってもらうために、呼んだそうだ



「あー、美由希ちゃん。後で組み手してもらえる? 私はやっさんから話聞いてて、戦ってみたくて戦ってみたくて仕方なかったのよ〜」


「あ、俺も頼みます。魔法無しのガチ組み手っ!!」


「はいっ! 是非やらせてくださいっ!! 恭文からお2人のこと、少しだけ聞いていましたしっ!!」


《……まぁ、説得力無いですよね》


「うん、無いね。仕事と私情を見事に混同してるよ」



そうだな。さて、本来の司会にバトンを返すか


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


やっとレイさんから、真・主人公である私に戻りましたね。本来なら最初から私が語ることになっていたのですが……


過ぎたことですし、役目をきっちりこなしましょうか。では、今回こんな特別講習を隊長陣にも受けてもらうのには、理由があります



「みんなも知っての通り、AMFは魔導師殺しもいいとこだよ。実際、中央本部が襲撃された時には完全キャンセル化されて、厄介だったしね」


《で、怖いのはだ。ガジェットはともかく、AMF自体は別に特別でもなんでもないってことだぜ。
使用適正ランクがAAAってバカ高いだけで、それ自体は昔からある魔法技術。使おうと思えば、誰でも使えるんだ。
魔法でどうこうってだけじゃねーぞ? ガジェットみたいに、機械的な発生装置を使うって手もあるしな》



……スカリエッティの作ったガジェットが厄介だったのは、AMFが特殊だったからではありません


その魔導師殺しなフィールドを、小型の自立兵器でありながら使用出来たことにあります。それも単独でです


その上それが集団で出てくるんですから、恐ろしいことこの上ありません


そして、アメイジアの言うようにAMF自体は昔から存在する魔法技術です。つまり……



「悪用しようとする人間は、必ず出てくる……というわけですね? JS事件のおかげで、魔導師に対するAMFの有用性は、図らずとも証明されていますし」



「シグナムさん正解です。その場合、完全キャンセルにして、質量兵器や物理的なトラップを使ってくる可能性は高い。つか、俺ならそうする。
『魔導師は 魔法出来なきゃ ただの人』……だしな。なので、みんなには一回その辺りを経験してもらって……」


《自身の能力でその状況に置かれた場合の打開策を、皆さんで考えていこうというのが、この講習の意義です》



この辺りは個人差もありますが、一度経験しておけば、心構えは出来るでしょう。そう意味もあります


そして、それで高町教導官達は納得したようです。ヒロさんサリさんの後ろにいらっしゃる迷彩服を着こんだ集団がなんなのか



「で、このむさい男どもが、その質量兵器を使って、皆をぶっ飛ばそうとする仮想敵ってわけ」


「俺が入ってるサバゲー同好会の連中だ。ただ、舐めてかからない方がいいよ?
全員、質量兵器使用の許可持ちの武装局員だから。扱いは相当だよ」



……局では、厳重な審査の元でなら、質量兵器……銃火器の保有が認められています


ただ、せいぜいピストル程度なんですが。バズーカやらミサイルはNGです。複数保有も原則的には禁止です



しかし、よくそんな人間ばかり集めましたよね。私はビックリですよ



「みんなの勝利条件は簡単。廃ビルに立てこもったこいつらを全員ぶっ飛ばせばいいから。
……んじゃお前ら、説明した通りで頼むぞっ!!」


『サーイエッサーッ!!』


「ケガしても安心しろっ! 俺と美人の女医さんがすぐに治してやるっ!!」


『サーイエッサーッ!!』


「特に美人の女医さんってとこが嬉しいだろっ!!」


『サーイエッサーッ!!』


「お前ら正直だなっ!!」


『サーイエッサーッ!!』



……なお、相手の使う銃器はマシンガンやアサルトライフル(サバゲー用)。弾はペイント弾


こちらは、単独での作戦行動中に、敵方の罠にハマったという仮定の元なので、デバイスは起動状態です


ただし、完全キャンセルされているので形状変換や魔法の行使は出来ません。カートリッジやフルドライブなどの機能も同じく


この前提の元、互いの安全を考慮した防護作を整えた上で、行います


……温いとか言わないでくださいよ? 訓練でケガするのもバカらしいじゃないですか



「……で、私はどうすればいいんですか?」


「まずは皆にやらせますんで、美由希さんは採点をお願いします」


「魔導師とかそういうのは関係無くやっちゃっていいから」


「分かりました」



ま、とにかく……



「それじゃあ、特別講習、始めるよっ!!」


『よろしくお願いしますっ!!』



訓練は、始まったわけです


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……ヒドイね」


「ごめん、ぶっちゃけ俺はここまでとは思わなかった」


「アンタら……。どんだけ魔法至上主義なのさ。クリアしたのが4人だけって、おかしいでしょ」


《ガール達、本気で魔法出来なきゃただの人だよな……》


『面目ありません……』



マスターを含めた全員が午前いっぱい使ってチャレンジしたのですが、結果は散々足るものでした



「とは言え……ティアナちゃんとキャロちゃんは仕方ないんだよ。ポジションとスキル的な問題があるし」



まぁ、キャロさんやティアナさんは仕方ないですよ。後衛は、本気でただの人になりますし



「……でも、あれじゃあだめです。すぐに捕まりましたし」



ティアナさんは凄まじく不満顔ですが



「ティアナ的には不満?」


「当然よ。私、執務官志望だしね。単独捜査をやる状況も出てくるに決まってる。そんな時にあれじゃ……」


《……確かに問題かもしれませんね》


「かもじゃなくて、間違いなく問題よ。本気でなんとかしないと」


「私だって同じだよ。捕まって、人質にでもされたら、それで詰まれる。でも……」



……バックス2人は、色々と考えたようです。これだけでも、この特別講習は成功でしょう



「まぁ、その辺りは今後一緒に考えていくから、心配しなくていいよ。シグナムさんとヴィータちゃんはさすがでしたけど」


「まぁ、ちと怖かったですけど、あれくらいならなんとか」


「我々は質量兵器の相手をしたことが、無いわけではありませんでしたから」



だ、そうです。というか、クリアした2人です。で、あと2人が……



「ま、やっさんとレイはクリア出来なきゃおかしいよ」


「誉めるまでもないな」


「なんか冷たいですね……」


「いや、その通りだけどな……」



そう、マスターとレイさんです。ただ、これは2人の能力どうこうじゃないんです。深い理由があって……



《何言ってるんですか。ヒロさん達とこの訓練してたでしょ》


「そうだよ。それに、私と恭ちゃんと一緒に警防の演習にも参加したじゃない。恭文は、これくらいは、出来て当然。
というか、ヒロリスさんじゃないけど、出来なきゃおかしい」


「……はい」



経験値が違うんですから、ここで誉める理由が分かりませんよ。えぇ、全く



「なぎ君そうなのっ!?」


『サーイエッサーッ!!』


「あー、まーね。美由希さんと一緒にやったのは、しばらく前だけど。
でも、訓練自体はガジェットのAMF対策の一環で、こちらのお兄さん達とレイにも協力してもらって、やってたのよ」


『サーイエッサーッ!!』


なお、理由は……



『だって、コイツ運悪いから、完全キャンセルされた中に閉じ込められそうだったし』


「……ヤスフミ」


「お願いフェイト。そんな目で見ないで……」



そのせいで、この訓練の比率は非常に多かったです。いや、真面目にありえそうなんですよ



「……納得した。そりゃやらなきゃいけないわ」


「なぎさん、本当に運無いしね」



……これで納得されるってどうなんでしょ



「ところで、レイさんは一緒に訓練を受けてないみたいですけど……」



エリオさんが他の方達の疑問を代弁したようですね。レイさんに視線が集中しています



「俺も質量兵器所持の資格持っててな。このサバゲー同好会の人達に混ざって参加したんだよ」


『サーイエッサーッ!!』



そういうことなんです。でも、あの技量はすごかったですね



「で、エリオ君は……うん、惜しかった。ちょっとビックリした?」


「はい。こう、思ったよりいつもと違う感じで……」


「うん、それで正解だと思う。でも、その違いに合わせていければ、次は行けると思うな。頑張ってね」


「……はいっ!!」



美由希さん的には好感触だったわけですね。そして問題は……



「フェイトちゃんにスバルちゃんにギンガちゃん。あと……なのはだね」


『はい、すみません……』


「わ、私もっ!? あのお姉ちゃん? 私、ティアナと同じポジションでありまして……」


「……いや、仕方ないでしょ」



マスターが言うのも無理はありません


不意討ちしようと相手に飛びかかっていって……



「漫画みたいにこけたし。お兄さん方が一瞬固まったじゃないのさ」


『サーイエッサーッ!!』


「うぅ……」


《あれはポジションどうこうのレベルじゃありませんよ。あなた、そんなに萌え要素を増やしたいんですか?》


『サーイエッサーッ!!』


「なのは、正直お姉ちゃんは悲しい。というか、そういうのが許されるのは15歳までだよ? 来年20歳でこれはないって……」


『サーイエッサーッ!!』



ホントですよ。あれ、色々アウトですし



「みんなでヒドイよっ! というか、どうして同意しまくっているんですかっ!?」


『サーイエッサーッ!!』


「意味がわかりませんよっ! というか、それしか言えないんですかっ!?」



まぁ、こっちはいいでしょ。残りの3人ですよ……



「……なんていうか、状況に合わせていけてなかったね」


「そうだね。それは俺らも思った」


「はい、面目無いです……」



……フェイトさん、すっかり落ち込んでいますね。まぁ、仕方ないでしょ。ある意味ブービーですから



「恭文、どう思った?」


「……うーん、フェイトに関して言うなら……迷いが見えました」



フォローどころか突き落としますか。フェイトさん、何かが突き刺さりましたし



「『魔法無しで戦いたくない。攻撃したくない』とか思ってるのかなと……。フェイトの身体能力や反応なら、充分対処出来るレベルなのに、そのせいで出来てない」


「……だ、そうだけど、フェイトちゃん的にはどう?」


「……正解です。あの状況だと、組み手みたいに加減出来る自信がなくて」



やっぱりですか。まぁ、普段は非殺傷設定でどかーんですしね。無理が無いと言えばないですが



「うーん、やっぱフェイトちゃんは能力どうこうじゃなくて、まずメンタル面からだね。普段はいいさ。
でも、特殊状況下に放り込まれた時があまりに弱い」


「自分でもそう思います。それに、ティアナの言うように、執務官の仕事中にこんな状況になったら……」


「アウト……だよね」



……マスターの表情がそう言いながら、重いものに変わります


想像したんでしょ。そうなった時の状況を。これは……決定ですか?



「で、スバルちゃんとギンガちゃん。2人も……同じくかな」


「……はい」


「いつもみたいに全く動けませんでした」



なお、2人には戦闘機人モードの発動なしでやっていただきました


リハビリ中のギンガさんはともかく、スバルさんは身体能力だけでも充分行けると思ったのですが……


やはり、普段とは違うことが、その能力を鈍らせてしまいました



「まぁ、2人は隠し技使えばOKだけど、こういう状況に関しての心構えと対策は決めておいた方がいいね。
特にスバルちゃん、アンタは念入りにね」


「……私ですか? 捜査官のギン姉とかじゃなくて?」


「そーだよ。理由は簡単。アンタの志望は災害救助担当……傷ついた命を背負って、助ける仕事だ。
背負っている時に、どっかのバカのおかげでこうなったら………どうする? 隠し技も使えなかったら」



ヒロさんの言葉に、スバルさんは考えて……考えて……考えて……ショートしました



「スバルっ!? ……熱ッ! どんだけ考え込んでたのさっ!!」


「あの……! それでも……それ……でも……!!」


「助けたいんでしょ? 絶対に」



頭から煙を出しながらも、スバルさんは頷きます。それを見たヒロさんは、満足そうに笑うと、こう言いました



「それなら、一緒に考えようじゃないのさ。まぁ、これを一人で打開ってのは無理かもしれない。でも、状況で心が潰されるような事は、回避していくよ」


「……はいっ!!」


「あー、そんなに気合い入れると、またフラつくよ。……ほい」



マスターがスバルさんの頭に手を乗せます。すると、顔が赤く、熱い感じだったスバルさんの顔が、少し楽な表情に……



「ふぁ……。冷たくて気持ちいい」


「……なぎさん、なにしてるの?」


「冷却属性の魔力を手のひらに薄く覆わせるように構築して、それで頭冷やしてるの。まぁ、冷えピ○程度の温度だけどね」



マスターの得意とする凍結・冷却属性への魔力変換技能。その力の使い方の一つです。ちなみに、マスターは魔法のこういう使い方が好きです


戦うだけでも、壊すだけでもない。ただ癒し、ただ幸せを作る。それが、嬉しいんでしょう



「蒼凪、お前器用だな……」


「そんなこと無いですよ。氷結系の魔力はそんなにコントロール難しくないですし」


「いや、難しいだろ。物を冷やすって、簡単じゃねーんだぞ?」



マスターは魔力コントロールがずば抜けて上手いですしね。しかし、スバルさんはまた幸せそうに……



「……恭文、私もして欲しいんだけど」


「熱出したら、してあげますよ」


「恭文……気持ちいいよ……」


「スバル、お願いだからその言い方やめてっ!!」



……この時、私は気付いてはいけないものに気付きました


一つはギンガさん。こう……見てました。形容しがたい色を瞳に込めて


そして、もう一つは……フェイトさん。なんというか、つまらなそうというか、不愉快なものを見る目でマスターとスバルさんを見ていました


それが良いことなのかどうかは……マスター次第ですね


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……で、スバルちゃんの熱も冷めたところで、一応のまとめね」


『はいっ!!』


「みんなにやってもらったこと。で、その中で各自が感じたこと。……ま、それがAMF対策の一つの形だね」



ヒロさんとサリさんが話を進めます。六課隊長陣もフォワード陣も、まるで生徒のように、その話に耳を傾けます



「……というと?」


「魔法ってやつが使えなくなった時、自分に何が出来るか、ちゃんと把握しておくの。で、使えなくても戦える手段を構築していく」


「そうすれば、テンパったりしなくて済むしな。ただ、別に一人で状況を打破する必要はないぞ?
バックヤードの援護が来るまで持たせられるようになるだけでも、充分だ」


《ヒロリス女史、主。それは私が言ったことです》


『うっさいなぁっ! 分かってるよっ!!』



……まぁ、言うのは簡単ですが、やるのは難しいですよね


相手をするのが人間ばかりとは限りませんし



「あと……気構えが必要かな」


「気構え?」


「そうだよ」



……2人に並ぶようにして立っていた美由希先生が、話を続けます



「まぁ、フェイトちゃん達を見ていて思ったんだけど、こういうのって……いつものみんなの戦い方とは違うわけでしょ?」



その言葉に全員が頷きます。そう、違います。根本となる魔法が使えないのですから



「で、当然出てくる結果もいつもとは違うと思うんだよね。……多分、私や恭文、ヒロリスさん達寄りになるんじゃないかな?」



……そう真剣な顔で美由希さんが言うと、全員の表情に影が差しました。言いたいことが分かったからです


非殺傷設定で安全に殲滅など出来ない。場合によっては………



「……美由希さんの言う通りだな。完全キャンセル化内での戦闘を考えていく場合、その問題は外せねー」


「そうだな。かと言って、今後の事を考えると、回避というわけにもいかん」


「悪党と外道は狡猾って、相場が決まってますしね」



サリさんが言ったようなシチュエーションは充分にありえますね


……あー、空気が重いですね。よし、いい話をしますか



《……問題はないでしょ。相手を殺せるくらいに強くなればいいんです》


「アルトアイゼンっ!?」


「アンタ、なに言ってるのっ!?」



あー、若い方々はどうしてこう拒絶反応を起こすのか



「あー、みんな落ち着いて。別にアルトは殺せばいいなんて、言ってないから。……でしょ?」


《その通りです。……みなさん、『活殺自在』という言葉を知らないんですか?》


「かっさつ……」


「じざい?」


「あ、なるほどね」


「ふむ」



……さすがに美由希さんやシグナムさんに師匠、レイさんは気付きましたか



《……まぁ、簡単に言ってしまえば、相手を殺すだけの技量と覚悟を持った人間だけが、相手の命を奪わない戦い方が出来るという考え方です》


「え、どういうことっ!? それわけ分かんないよっ!!」



まぁ、スバルさんはそうですよね。……綺麗事過ぎて私やマスターは好きじゃないんですけどね



《……殺すということは、相手の命を奪う事です。もっと言えば、相手の生きる権利を掌握し、好きに扱う事とも言えます》


「アルトが今言ったのは、要するに相手方の生殺与奪権を握るってことだね。ただ……」


「それが出来るということは、相手の命を奪わずに組み伏せることも出来る……って考え方なんだ。まぁ、あらゆる意味で相手を越えていないと無理なんだけど」


「どうしてですか?」



エリオさんがそう聞きたくなるのも当然です。そして、その答えはマスターから出てきました



「………その場合やらなきゃいけないのは、生かした上での完全な敗北を、相手に突き付けることだから。そんなの、簡単じゃないよ」



……そんな苦い顔をしてどうするんですか。落ち着いてくださいよ



「完全な……敗北」


「やっさんの言う通りだよ。……スバルちゃん、分かる? 私、初めて会った時に同じようなこと言ったでしょ」


「あ、はい。あの時の……ですよね」


「そーだよ。……ぶっちゃけ、こういうのは簡単じゃない。私やサリも、出来ない時がある。現に私は、あの時のスバルちゃんに対して、それは無理だった。
でも……この問題の、答えの一つではある。端から見ると過激で、危なっかしいのは確かだけどね」



でも、皆さんにはいいかと。『殺し、傷つけるしかない』ではなく、それさえも自分の選択の一つという考え方ですし



「……そっか、魔法無しでもそれくらい強くなればいいんだ」


「確かに、簡単じゃないですよね」


「でも、強くなることは、やらなきゃいけないよ。もちろん個人の力だけで何とかする必要はないけど……」


「救援来る前に捕まるとかは……アウトよ。つか、あれはもうごめんだし」



………ティアナさん、そこまで悔しかったんですか。いや、見事な潰され方でしたけど


そして、六課でこの講習は、解散まで続いていくことになります。まぁ、マスターはどこまで行っても『出来て当然的な扱い』でしたが


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「では、今日の特別講習はここまでっ! みんな、お疲れ様っ!!」


『お疲れ様でしたっ!!』



……あの後、美由希さんも同じ条件でチャレンジ。その凄さで、周りを唖然とさせました


いや、仮想敵の方達がスカウトしてましたし。御神の剣士は、次元世界レベルで凄いことが証明されましたね


時刻はすでに夕方。このすぐ後に飲み会というサバゲーチームな方々には重ね重ねお礼を言って見送ったあと、全員で隊舎を目指します


マスターと私は、その最後尾です。いや、なかなかに楽しめましたね



「……そうだ、恭文」


「はい?」



隣を歩いていた美由希さんが、マスターに話しかけてきました



「クロノ君から伝言が二つ。もうすぐ迎えに来れそうだって」


「本当にっ!?」


「うん。必ず解決するから、安心して欲しい……って、言ってた」



……こちらへ来る時の手続きなどを、クロノさんにお世話になったそうです。その時に、ですか



《よかったですね。マスター》


「うんうん……!! 本当に……」


《……泣かないでくださいよ》


「で、もう一つは……『忘れても、誰も責めない。もう、許されていい』……だって」



あー、私は察しがついてしまいましたよ。というか、どれだけ勘がいいんですかあの人



「……そうですか」


「あ、まだ続きがあるんだ。だが……」


「だが?」


「『それでも忘れたくないなら、それでいい。お前は、お前だ』。そう伝えて欲しいって、お願いされた。
結構、真剣な顔でね」


「……ったく、あの人は」



あの人、本気でいいお兄さんですよね。ただ……どこで知ったんですか? というか、マスターに直接言えばいいのに



「……ね、恭文」


「はい?」


「話は変わるけど、フェイトちゃんと何かあった?」



あ、マスターが固まりましたね。やっぱり、あれとかこれとかでしょうか



「えと……」


「……恭文、ハッキリ言って」


「……あの、少し話をして、弟や家族としてじゃなくて………男の子として、見たいと言ってくれました」



……そう聞いた時、一瞬だけ浮かべた美由希さんの表情を、私は忘れないでしょう


寂しさと、切なさが混じった顔を。だけど、それは一瞬。その次に浮かべたのは、優しい笑顔でした



「……そっか、よかったね」


「……はい」


「ね、恭文」


「はい?」


「あんまり、フェイトちゃん以外の女の子に優しくしちゃだめだよ?」



……美由希さん



「恭文、本当に優しいから、ついやっちゃうんだろうけど、ダメ。そんなんだから、フラグ立つんだよ。
もっと、フェイトちゃんが好きだって気持ち、出していいと思う。じゃないと、フェイトちゃんだって恭文の気持ちが分からなくて、戸惑っちゃうよ」



……正直、遅すぎますよ。今、心からそう思います



「まぁ、あれだよ。頑張ってね。応援してるからっ!!」


「……はい」



……夕暮れは、闇へと変わります。私とマスターと美由希さんは、そんな話をしながらも、歩いていきます


夜の闇のせいか、美由希さんの表情が泣いているように見えたのは……気のせいだと、しておきます


……今回の話は、残念ながらここまでになります


結局、いつものノリではまだまだありませんね。とにかく、次回です


まぁ、あれですよ。私視点というのも面白いですが……途中からとは言え疲れますね


私は、適当に横から口出ししていくことにします


やっぱり主役は、私の大事な相棒ですよ。……多分ね



(十四話へ続く)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


あとがき



レイ「次は恭文と一緒に無限書庫だな」


ラミア《そうだな。今度こそ勝たせてもらう》


レイ「ふっ……そううまくゆくのかな?」


(お互いを挑発しあっている。あ、空間に亀裂が(汗))


レイ「のあっ!?」


ラミア《マスターっ!?》


?「ちょっと借りるわね♪」


(亀裂にレイが拐われていく)


レイ「なっ!? レオ――」


ラミア《………………亀裂が閉じた。こほん、あとがきはここまで。次回はどうなるのだろうか》




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あきゅろす。
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