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頂き物の小説
第十話『世の中は思い通りにはならない。だけど、報われる時もある……でも、またもや語らないことだってあるはずだ 後編』



というわけで……久々にやってきました海鳴・スパ・ラクーアッ!!


早速、僕達は男湯組と女湯組へと分かれて入ることになった。いや、楽しみだなぁ


なんて言いながらも、服を脱いで、タオルを巻いて浴場内に入ると……うん、懐かしい気持ちになった


だって、去年の年末の時と変わってなくて、逆に安心した。これで絢爛豪華にだったらどうしようかと……



「そうだね。あ、でも変わってることが一つ有るかな」


「ん?」


「なに?」


「恭文とレイが一緒ってこと。前回は、男の子は僕だけだったから」


「そういえばそうですね。それで、みんなから『一緒に入ろう』って言われてたです」



ここは羨ましいって言うのが正直な反応なのだろう。だけど、僕の口から出てきたのは……一つの言葉だった



「エリオ、大変だったんだね……」


「よく頑張ったな、うん……」


「ありがとう……。というか、アレ逆セクハラだよねっ!? 僕、完全にアウェイだったよ……」



色々大変だったんだね。うん、よく分かるよ。……それはさておき



「それじゃあ、思いっきり楽しむか。今回は僕とレイも居るしね」


「うんっ!」


「楽しむですよー♪」


「だな♪」



そうして、僕達はお風呂巡りへと繰り出したのだった



「…………………………………………………………………………ちょっとまってっ!!」



そのまま、歩き出した僕達を呼び止める声。……エリオだった



「エリオ、どうしたですか?」


「どうしたじゃないですよっ! なんでリインさんがこっちに居るんですかっ!!」



そう、ここは男湯。リインも来ていたのだ。というか、最初から。リインの衣類は、男湯のロッカーにある


というか、このタイミングでツッコむのか。もうちょい早く来ると思ったのに



「そういうことじゃないよっ! だって、リインさん女の子だよっ!?」


「リインは、11歳以下ですから、大丈夫ですよ?」


「そういうことじゃなくてっ! その、平気なんですかっ!?」


「当然です。まぁ、エリオとレイさんはちょこっとアウトですけど」


「なんで僕っ!?」



なんでだろうね。うん、僕には分かんない



「それなら、恭文はどうなるんですかっ!!」


「いや、特に気にならないし。だって、リインとお風呂入るし」


「恭文さんとは、何回もお風呂入ってるから、大丈夫ですよ♪」


「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


「そう驚くことじゃないと思うぞ。なにせリインは恭文の元祖ヒロインなんだから」



そう、僕とリインは、出会った当初から一緒によくお風呂に入っている。それとレイ、それは関係なくないかな?


……いや、出会った本当に最初の頃は、リインが大きくなれなかったから、僕がフォローしないと危なかったんだけどね


で、それはリインがフルサイズになれるようになった今も変わらない


泊まりに来た時は、一緒にお風呂に入って、頭を洗ったり背中を流したり、お風呂の中で一緒に100まで数えたりするのだ



「というか……リインさんはいいんですか、それ?」


「大丈夫ですよ。恭文さんとは、長い付き合いですし。
というか、今はこういう場所ですからバスタオルしてますけど、本当ならいらないですよ?」


「あぁ、そうだね。僕もつけないしね」


「おかげで、モザイク入るですよ」



リイン、その表現はいろいろアウトだよ? いや、こち○とか、お風呂のシーンで湯気とかじゃなくて、ガチなモザイク入ったアニメ多いけど


あ、じゃあ今の僕もモザイク? いや、それはさすがにリリカルなのはじゃないって〜♪



「そんな表現しないでくださいっ! というか、恭文も、そんな楽しそうに笑わないでっ!!」



なお、僕も腰にタオルを巻いてるので、モザイクはありません



「エリオ、私と恭文さんは、これくらい普通です」


「とにかく、せっかくのお風呂、楽しまないとね。いこうか、リイン」


「はいです♪ さ、エリオとレイさんも来るですよ〜」


「……これ、本当に普通なんだよね?」


「気にしたら疲れるぞ。元祖ヒロイン……それですべてが解決さ♪」


「それは違いません?」





魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝





とある魔導師と機動六課の日常〜異邦人と古き鉄〜





第十話『世の中は思い通りにはならない。だけど、報われる時もある……でも、またもや語らないことだってあるはずだ 後編』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



………………あぁ、いいお湯だね



「本当です……」


「なのはママ、銭湯って……楽しいね」


「そうでしょ? 隊舎で入るのとは、また違うしね」


「うんっ!」



確かにそうだね。色んな人が居るし、お風呂もいつもより広いし


あー、でもこの檜のお風呂は気持ちいいなぁ。凄く暖かくて、良い匂いで、安心する



「あの……フェイトさん」



聞いて来たのはキャロ。なんというか、すごく疑問顔



「どうしたの?」


「エリオ君……はともかく、リインさんは向こうでいいんでしょうか?」


「そういえばそうだよね。リイン曹長、女の子だし」



……そっか、2人は知らないんだ。そう言えば、私も話してないし



「あー、リインはあれでいいんだ。恭文君とは、何回もお風呂に入ってるし」


「てゆーか、あの2人はいつもあんな感じよ? いつでもどこでもベタベタベタベタ」


「なんというか、付き合ってるみたいに見えるよね。私、時々リインちゃんが羨ましくなるよ。なぎ君と本当に仲良しさんなんだなって」



そうだね。リインも、ヤスフミもなんだけど、互いに、相手に裸を見られても平気なくらいに、付き合いが深いから


海鳴で暮らし始めた頃は……週1かな。リイン、うちにお泊りに来てた。一緒にご飯を食べて、お風呂に入って、遊んで、寝て……


そして、ヤスフミや私達がミッドの方に来てからも、それは変わらない


頻度はちょっとだけ少なくなったけど、それでも、一緒に過ごす時間は消えたりしない。もちろん、それまでの記憶も



「だからはやて、ちょっとだけヤスフミにヤキモチ妬いてるんだ」


「八神部隊長がですか?」


「そうなの。なんだか、自分やヴィータやシグナムより、ヤスフミの方が、リインの正式なロードに見えるって」


「ロードって……アレだよね。アレをアレしてアレしちゃうの」


「ヴィヴィオ……。その恭文君やアルトアイゼンみたいな言い方はやめて」


「アイツ、こんな子供になに教えてんのよ……」



あははは……。ヤスフミと仲良くなってから、ヴィヴィオ、どんどん強くなっていくなぁ。うん、いいことなんだけど、ちょっと心配



「でも、本当にそうですね。ご飯も、時間が合えば一緒に食べてますし」


「よくお話したり、一緒にお仕事したりしてるよね。……あ、そう言えば、この間の、リイン曹長とのコンビ戦闘、凄かったね」


「そうだね。敵役として出てきたガジェット数十体が、3分とかからずに全滅だし」


「リイン曹長も恭文も、すれすれで攻撃するんだよね。それで、合図とかも全然交わさなくても、一発もミスショットなんて無くて……」



そう、ヤスフミ……は、さすがにリインとの体格や装甲の厚さで差があるし、自分の攻撃力も考慮するから、そこまでギリギリにはやらないけど、リインはやる


そのスレスレの攻撃の合間を縫うようにして、ヤスフミが前線として攻撃


それで、リインが、ガードウィングみたいな感じかな。援護したり、入れ替わってフリジットダガ―で攻撃したり


2人で過ごしてきた時間と、その中で一緒に培ってきた記憶が、2人の呼吸を完璧なものにする


……そういうのも、はやてやヴィータのヤキモチに拍車をかけるんだけどね。『うちらより上手いのはどういうわけやー!?』って



「2人……というか、アルトアイゼンも入れて、3人は、最初から最期までクライマックスだったねっ!!」


「うん、そうだね。恭文君とアルトアイゼンとリインのチームは、最強かな。誰にも止められないの。実際、一緒に戦うとノリがすごいし」



……そうだね。あの3人は、本当に強い


息も相性もコンビネーションもピッタリ。まさしく、熟年夫婦だよ。あれが本当の古き鉄の姿なんだ


でも、最初から最期までクライマックスって、どういうことだろ。ヤスフミもよく言ってるし、最近なのはやヴィヴィオも口にしてるし……



「というか、なのはママ」


「ん、なに?」


「恭文とレイも一緒にお風呂入れないの、少し寂しいね……」



そう、私やなのはと同年代であるヤスフミとレイさんは、さすがにこちらには来られない。というか、来てもだめだよっ!


というか、私やなのはやアリサ、すずか達以外の、他の人も居るんだし……



「じゃあヴィヴィオ、後で一緒に男湯の方にいってみる? そうすれば、なぎさん達と一緒に入れるし」


「でも……なのはママとフェイトママが寂しいよね」


「ヴィヴィオ、私やなのはのことは気にしなくていいよ。大丈夫だから、ヤスフミのところに」


「……ヴィヴィオ、もしかして、みんなでお風呂に入りたいの? 恭文君やレイ君だけじゃなくて、エリオとも」



なのはが、少しだけ真剣な顔で聞いて来た。え、なのはっ!?



「うん」


「よし、なら………ママに任せて」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「いやぁ、いいお湯だね。エリオ、レイ」


「そうだね……。このボコボコいうのって、クセになるね」


「ああ……癒される」


「なるですー。というか、日ごろの頑張りが癒されるですよ〜」



わかってるよ。さすがに配水管に流されるとかは嫌だし。というかレイは顔崩れすぎ……餅じゃないんだから


さて、僕達は泡風呂で幸せに浸っていた。それはもう見事に。エリオも、リインがいることにだいぶ慣れたようだ。実に普通にしている



「あー、そういやエリオ」


「なに?」


「本当に慣れてるね。もうちょい緊張するかと思ってたのに」


「うん。……前に皆で入って、本当に楽しかったから」



さて、一応補足。六課メンバーは、僕やなのはにフェイトが元々暮らしていたこの街、海鳴市に、出張任務で訪れたことがあるのだ


ロストロギアの回収任務だったらしい。……いや、本当におかしいから。どうしてそんなことが起きるのさ


僕が居た時にも、何回かあって、巻き込まれたりしたしなぁ。大事にならなかったのが救いだったけど


とにかく、その任務の中で、みんなで海鳴のスーパー銭湯……つまり、ここに来た事があるのだ



「それで、エリオはティアのオープンをみたです」


『……は?』



オープン……全開……開店……。ティア、ショタコンだったか。わかります



「わからないでよっ! というか、違うっ! 本当に見て……すみません、見ました。上から下までくっきりと」


「……エリオ、どうしてそうなった? 少なくとも、ティアナからそれはないよね」


「うん。その、原因はスバルさんなんだ」



あのバカかっ! つか、どうしてプライベートだとそうやってバカなのっ!? いや、もうバカ以外の表現しか出来ないけどっ!!



「スバルが、ティアのバスタオルを剥ぎ取ったですよ。ティアが『見れるうちに見ておきなさい』って言ったので……」


「自分の見せなさいよそこは」


「災難だな、ティアナ……」



人をさらし者にしちゃアウト……いや、それをやらないからこそのスバルか



「アレですよ。スバル的には、ティアが初めてで、自分が二番目だと衝撃が強いと思ったんじゃないですか?」


「あ、あれか。『ほら……。私(ドガ―ン)』みたいなことをするわけか」


「そうですよ。ティアという美人をあえて最初に見せるんです。そして、、自らの、それより秀でている部分を後から見せる。
そうするとアラ不思議、スバルの方が、ティアより素敵だと思うですよ。それによって、完全にティアというライバルを崩そうとしてるんですね、わかります」



というわけで、僕達の結論は一つ



『スバル……恐ろしい子っ!!』


「話が変な方向に行ってないかなっ!? というか、その会話完全にアウトだよっ! それに、リインさんものらないでくださいっ!!
……でも、アレ本当に困ったよ。僕、みんながフォローしてくれなかったら、しばらくティアさんと話せなかったもん」



そりゃそうだよなぁ。上から下まで真正面がオープンでしょ? しかも、ティアもスバルに負けないくらいにスタイルいいし


なんていうか、スバルはどうなの? いや、ああだからこそ、部隊のムードメーカーになれるんだけどさ



「まー、アレだよエリオ。大変だったね」


「うん、大変だった。……というか、恭文とレイさんと仲良くなってから、最初から六課に2人が居てくれたらって何度か思ったよ。前線メンバーって、男は僕だけだよ?」


「いや、ザフィーラさん居るじゃないのさ」


「確かにザフィーラもいるよな」


「でも、ザフィーラは狼だし、どっちかっていうと隊舎でずっと居る方が多いし」



…………………………………………………ん? まてまて、なーんか嫌な予感が



「あー、エリオ。一つ質問」


「なに?」


「ザフィーラさんが、人の姿になれるって知ってる?」


「……………………………………………………………………………………え?」



その時のエリオの顔が、非常に面白いものだったのは付け加えておこう


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……じゃあ、ザフィーラさんがずっと狼形態なのは」


「はい。はやてちゃん達と一緒に暮らし始めた時、自分だけ男の人だったので、まだ小さかったはやてちゃんに気遣ってのことだったそうです」


「で、局に勤め始めてからは、はやてやシャマルさんの護衛につくことが多かったんだって。
その時、あの形態だとやりやすいそうなんだよ。あと、狼形態だと、人材制限に引っかからないとか」



ようするに、六課が所有する隠し手の一つになっているわけですな


しかしビックリした。ここまで一度も人の姿になってなかったなんて……



「……うん。というか、僕はザフィーラが始めて喋れるって知ったときもビックリしたよ」


「でもさ、それでようやく納得出来た。なーんでスバルやエリオがザフィーラさんのこと呼び捨てにするのかわからなかったんだけど、理解した」


「俺もだな。まさか、知らないとは……」


「……今からさんづけにしたほうがいいかな?」


「しなくていいと思うよ? あの人、そういうこと気にする人じゃないから。むしろ親近感持ってくれて嬉しいんじゃないかな」


「ですです。だから、大丈夫ですよ?」



僕とリインの言葉に、ようやく安心した顔を浮かべたエリオを見ながら思った


ザフィーラさん、なんというか……『盾の守護獣』が、『影の守護獣』になってませんか?



「あの、話を戻すけど、男が僕一人って、やっぱり色々大変だよ」


「あー、確かになぁ。そこに僕とレイが居れば、まだ中和されるもんね」


「でしょっ!? 本当に大変だったんだからっ! 特にスバルさんっ!!
よく抱きつかれたり、お風呂に連れて行かれそうになったり……」



……スバル、どんだけフリーダムなんだよ。つか、10歳児にそんな感想を持たれるって大概だよ?


なんかシャマルさんやすずかさんや美由希さんの影が見えたのは、気のせいじゃなかったか。やっぱ恐ろしい子だよ



「最近はそうでもないの?」


「そうだね。恭文の方に興味が出てきたみたいで、僕にはあまり」


「……その言い方は誤解を招くからやめて」


「でも、恭文、レイさん」


「ん?」


「なんだ?」



エリオが、僕とレイの顔を見て、少し真剣な顔と声をぶつけた


本当に、真っ直ぐに



「ありがと、六課に来てくれて」


「……またいきなりだね。どうしたのさ」


「なのはさんの身体のこととかがあったかもしれないけど、2人が来てくれてよかった。みんな、本当に楽しそうに過ごしているから」



………………………………………………………………まて。今、凄まじく引っかかるフレーズが聞こえたよっ!?



「あの、エリオ? 今言ったのって、どういうことですかっ!?」


「……休み明け、僕達訓練の前に、医務室に行ったんです。訓練用のファーストエイドキットを補充するために」


「……エリオ、盗み聞きは関心しないよ?」



ホントだよ。つまり……僕達……六課のフォワード陣は、あの僕とアルト、なのはとシャマルさんの会話を聞いてたわけだ


なるほど、それで納得したよ


ここ最近の気合の入り具合や、スバルやティアナがやたらとなのはの身体を気遣っていたのは、あれが原因か



「あの、ごめん。僕達、聞くつもりじゃなかったんだ。ただ、話が聞こえてきて……」


「そのまま最期まで同席しちゃったと……」


「バレてたですか……。あのエリオ、その話は他の誰かにしたりとかはないですか?」


「それは無いです。相談して、話すのはやめておこうと。……話されても、困るよね?」


「まあ、そうだな」


「まーね、部隊の士気に関わるし。つか、どうしてその話を今?」



正直、僕も気づいてなかったから、このまま知らないことにしてもいいと思うのに



「フェイトさんからね、恭文が、本当に頑張ってここに来てくれたって聞いてたから、どうしても……言いたかったんだ。
ありがとう、僕達のこと、助けに来てくれて。すごく、うれしい」



……エリオ、とりあえず頭を上げて。つか、顔がお湯に浸かってるからっ!!



「あははは……ごめん」


「……礼なんていいよ。僕は、自分の好きでここに居るしね。まー、それに意外と楽しんでるから」


「俺も同じくだな」


「……そっか」


「そうだよ。……あ、一つ確認。僕とリイン、レイに話してるのは、スバル達は知ってるの?」


「ううん、知らない。僕が言いたかっただけだから」



その言葉に、僕達3人は顔を見合わせ、頷く。そういうことなら、しかたないでしょ



「……スバル達には、そういう体で接することにするよ。全く、エリオのおかげで秘密がまた一つ増えたじゃないのさ」


「ごめん。というか、恭文は秘密の部分が多いよ。スバルさんボヤいてたよ? もっとちゃんと教えて欲しいって。特に戦闘技能だよ」



そうしたいんだけどねぇ……。その辺りは先生達のお達しなのよ



「どういうこと?」



「恭文さんの資質は、それほど恵まれてるわけじゃないんです。
例えば、遠距離攻撃の資質は、なのはさんやフェイトさんはもちろん、リインよりも低いですから」



うん、低い。そのおかげで、誘導弾のコントロールも出来なかった


砲撃も、威力と魔力量が比例する物は使えなかった。そんなもん使ったら、あっという間に魔力がすっからかんだから



「それでも、スティンガーのような誘導弾が撃てたりするのは、本当に頑張った成果なのです」


「その辺りを知られないために、自分が何が出来るかというのは、教えないようにしている?」



エリオの言葉に僕は頷く。これはクロノさんの言い含めなんだけど、味方内が実は敵だったという事例もある


その辺りを鑑みて、使うかどうかは慎重に行けと教えられたのだ


まー、みんなにはもういいと思ってるけどね。そうじゃなきゃ、バインドやらスティンガーなんて使わないし



「……そだ、エリオ。今度の組み手、射撃も交えてやりあおうか。練習してるんだよね?」


「あ、うん。一応は」


「うし、なら決まりだ。せっかくだし、手札を晒してやろうじゃないのさ」


「え、いいの? だって、教えるとまずいんじゃ……」


「いーよ。ティアナとやりあった時に、大方のもんは出しちゃったし。それにだ、『他人』には教えたくなけど……僕達はもう、他人じゃないでしょ?」



僕がそう口にすると、エリオの表情が一瞬だけ固まる。だけど、それはすぐに解除された


お風呂の影響で顔を赤くしながら、笑顔を浮かべる。年頃の男の子らしい、はつらつとした笑顔を



「うん、そうだね。僕達……他人じゃないよね。仲間で、友達っ!」


「そういうことだよ」


「うふふ……恭文さん、嬉しそうですね〜」


「ああ、そうだな」


「今までの訓練だと、隠し手が出す機会があんまりなかったしね。やっぱ楽しいよ。久々にあれとかこれとか撃てるかと思うと」



この間の囮捜査は、そういうの出来なかったしね。いや、楽しみだな〜♪



「エリオくーんっ! リインさんっ!!」


「レイー♪ 恭文ー♪」



……ん? この声は………キャロか。それに………ヴィヴィオっ!?


声のした方を見ると、身体にバスタオルを巻いて、キャロがヴィヴィオと手を繋いで、ゆっくりと歩いてくる


あ、そうか。エリオも女湯に入れるけど、キャロも男湯に入れるんだ。もちろんヴィヴィオも



「2人とも、どうしたよ? ……あ、エリオとリインを呼びに来たとか?」


「うん、2人もなんだけど、なぎさんとレイさんも呼びに来たの」


「恭文、レイ、一緒にお風呂入ろう〜」


「よし、2人を連れて行って戻りなさい、早く。つーかとっとと戻れ」


「俺と恭文は男湯でのんびりまったりしてるから」



2人が泣きそうな顔になったけど気にしては負けだ


普通に入るならともかく、呼びに来たって言ったのがポイント。つまり、ここじゃない何処かへ入ろうという話だ


……あのね、僕はまだ死にたくないのよ。確かにこの外見だけど、一応男で18歳よ?


なのは達に見つかったら、挿入歌の調べと共にフルボッコだよフルボッコ



「別に女湯に入ろうなんて言ってないよっ!」


「そうだよ。……恭文とレイのエッチ」


「……ヴィヴィオ、正直に答えてくれるかな? その言い回し、誰から教わった?」


「スバルさんが言ってたよ?」



……よし、スバルは少し痛い目に合わせてやろう。グリグリがゲシゲシかガリガリのどれかの刑に処してやる


そう心に決めたと同時に、疑問が湧いてくる。女湯じゃないとすると………どこに入るのよ?



「家族風呂だよー♪」


『家族……風呂?』


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


そうして、俺達4人は、2人の少女に連れられて、施設内のある一角にやってきた


ドアを開けると、そこは露天風呂


入り口から恭文とエリオ共々空を見上げると、泡風呂を堪能している間に、空は暗くなり、夜の色へと染まっている


ここから見上げる空は、星が見える。長く生きたとしても星が綺麗なのは変わらない



「………こんな所があったんだね」


「うん、今年の10月に新築されたんだって。それで予約式なんだけど、今日はたまたま空いていてすぐに入れたの」


「ママー! 恭文とレイとエリオさんと、リイン曹長連れてきたよ〜」



……マ……マ……だとっ!?



「あ、来た来た。恭文君、レイ君、エリオもリインもこっちこっち〜」


「キャロ、ヴィヴィオ、案内ありがとうね。私たちが男湯に入ると、大変なことになっちゃうから……」



俺は恭文へと視線を向ける。恭文もこちらを向いていて視線が交わり、頷きあう……よし、今やるべきことは一つだ。足を踏み出そう。そう、後ろへとっ!!



「恭文……」


「うん。エリオ、リイン戻ろうか」


「ですです」


「恭文、なんか身体が熱いんだけど、どうすればいいの?」


「じゃあ、水風呂入りなさい。でも、急に入っちゃだめだよ? 心臓のところにまず水をかけて冷たさに慣らしてから、身体を入れるの。
それをやらないで急に入って、ショック状態とかになって、病院に運び込まれた人も居るから」


「そっか、分かった。やってみるよ」



後ろから『ちょっとまってー』とか聞こえるが気のせいだ


気のせいであってくれっ!!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……なんだこの状況はっ!?


というか、なぜになのはとフェイトがバスタオル巻いて湯船に浸かってるんだよっ!


エリオがまたもや茹蛸になってるじゃないかよっ!!


「えっとね、ヴィヴィオが恭文君やレイ君と一緒にお風呂入りたいって言いだしたから、ここのこと、ロビーのチラシで見たの思い出して、お願いしてみたの」


「そうしたら、丁度予約が空いてたんだ。それで、せっかくだからみんなで入ろうって思って……」


「なるほど……、事情は分かったけど、いいのか2人はっ!? 僕はこれでも男なんですけど」


「恭文だけじゃなくて俺もなっ!? 姫なんて通り名もってるけど、俺も立派な男だぞ」



一応ね、あなた方は鈍いからあれかも知れないけど、エリオはまだいいさ、子供なんだし


でも、僕とレイに裸とか見られるのは……嫌じゃないの? まぁ、タオルは巻いてるけど、ラインとかはくっきりだよ?


なのはは成長無くぺったんこかと思ったら、意外と着痩せしてるんだなとか


フェイトは………うん、すばらしい。ただただすばらしい………とか思ってしまったりしてるんです。というか、今朝感じてた柔らかさとぬくもりが……


でも、当のなのはとフェイトは目を合わせて、クスリと笑った。……なにがおかしい?



「あぁ、ごめんごめん。……私たちは、そういうの気にしないから平気だよ?」


「気にしろよ19歳っ!」


「俺としても気にしてくれると助かるかなっ!?」


「つーかそういうのは彼氏に言え彼氏にっ!!」


「……あのねヤスフミ、レイさん。私も大丈夫。
ヤスフミとは、付き合い長いんだもの。ヤスフミが変なことしないっていうのは、分かってるから。レイさんも短い付き合いしかないけど、変なことしないっていうのは分かる」


「そうだよ。だから、別にお風呂くらいはOKだよ? 裸はともかく、私もフェイトちゃんもこうやってタオル巻いてるんだし。
……あ、もしかして、私の事見て変なこと考えちゃうのかな? もう、2人ったら……。そういうのはだめだよ。私にだって心の……イタッ!」



なのはの一言に、手元にたまたまあった風呂桶を手にとって、なのはの頭頂部目掛けてスローインしたとしても……きっとそれは罪などではない


そう、それは……正義だっ!
レイも僕に向かってサムズアップしてるし



「痛いよやすふ………ごめんなさい。私が悪かったと思うのでその目はやめてください。泣きたくなってくるんです………うぅ」


「………ほう? だったら泣けっ! 泣いてしまえこのうつけがっ!!」


「ヤスフミ、おさえておさえて……。
あ、もちろん、私もなのはも、ヤスフミとレイさんを小さいからって男の子として見ていないっていうわけじゃなくてね。そのなんていえばいいのかな………あぅ………」



僕が身長や体格を気にしているのを思い出したフェイトが浴槽の中でアタフタしている


その様子を見てたら、さっきまで動揺しまくってたのが馬鹿らしくなった


まったく、この2人は……



「あぁ、もういいから。それ以上小さいって言われるとムカツク」


「まあ、仕方ないよな……」



そう言いながら、僕たち2人は湯船に浸かる。……ふぁ、少しだけ夜風に当たっちゃったから、お湯の温かさが骨身にしみるわ〜



「恭文君、レイ君……いいの?」


「いいも悪いもないでしょうが。ここで出て行っても、ヴィヴィオが追っかけてくるだろうし。
それに……ちゃんと僕のことを男としてみていて、それでも大丈夫だって信用してくれてるから、ここに誘ってくれたんでしょ?」


「……うん」


「なら、その信用に応えないとな」


「うん、そうだね……スケベ心は封印しなくちゃね。それが男のやることってやつでしょ」



……まったく、大変だよ。大変で大変で……それで楽しいってのが、タチ悪いよ



「恭文君、レイ君……」


「ヤスフミ、レイさん、ありがと」


「別に礼なんていらない。まぁ、多少は目の保養もさせてもらうしね。そのためだよそのため、うん」


「恭文もそう言ってるし、星空を見ながらってのも気持ちいいしね」


「そっか。うん、じゃあ……いっぱい目の保養していいよ。私は大丈夫だから」



えー、2人揃ってお風呂の中でずっこけました。お湯飲みました。というか……苦しい



「恭文君、レイ君、しっかりしてー! というかフェイトちゃんも変な事言っちゃだめだよっ!!」


「え、だってヤスフミだし……。その、変な事とかじゃなくて、あれ、あのその……」



……フェイト、顔を赤くしないで。僕が悪いような気がしてくるから。うん、僕は悪くないよね、絶対



「あのとにかく……。そういうことだからエリオも来てくれないかな。リインもだよ。皆で一緒に入ろう?」


「は、はい。それじゃあ……お邪魔します」


「お邪魔するですー♪」



そう言って、リインと茹蛸騎士とキャロとヴィヴィオも、浴槽に入る


家族風呂と言うだけあって、浴槽自体はそれほど大きくない。あと大人が2〜3人入れば、満杯と言ったところだ


スケベ心を封印するとは言ったものの、フェイトやなのはとの距離が近い


しかも、2人とも肌がほんのりと紅色に染まって、すごく色っぽい


……これでドキドキするなというのは、無茶な相談である。僕だってお年頃。色々と感じるのだ。レイを見てみると……



「〜♪」



呑気に星空見上げながらまた餅みたいな顔になってるし……羨ましいね、その余裕な態度っ!?



「恭文、温かいね〜♪ というか、大丈夫?」


「なんとかね。でも、本当に温かい。夜空も綺麗だし……いや、こりゃいいわ」


「うんっ!」


「でもさ、ヴィヴィオ。なんで僕達とそんなにお風呂入りたかったの?」


「うーんとね……」



僕がそう聞くと、ヴィヴィオは少し考え込んだような顔をして……こう答えた



「なのはママがね、一緒にお風呂に入ると、いっぱいお話して、いっぱい仲良くなれるって言ったの。
だから、恭文とレイと一緒に入れば、もっと仲良くなれるかなって、思ったの」


「それは、私もかな。……なぎさん達の事、もっと知りたいなと思って。それでこんな感じに……。
なぎさん、前に言ってくれたでしょ? フェイトさんと家族なら、自分とも家族だって。
だから、互いに色んな事話して、コミュニケーションしたいなと」



そのヴィヴィオの言葉に乗っかったのはエリオとキャロ


……はやて、僕もコミュニケーション不足してたのかもしんない。ふと、そう思った



「なるほど、納得したわ。……ヴィヴィオ、湯当たりしない程度にお話しようか。もちろん、エリオとキャロともね」


『うんっ!』



それから、僕達はいろいろな話をした。僕の嘱託魔導師の試験や、なのはとの出会いも……


そこで、リインに暴露されたりしたけど、エリオやキャロ、ヴィヴィオと前より仲良くなれた


とても楽しくて幸せな時間……

でも、レイと出会った時の話は出来なかったな……いや、いちおうしたけどね。でも、ほとんど削った短い話……


まあ、あんな血生臭い出会い話をしたら、KYだろうし、いいかな


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


はぁ、なのは達、ちょっと不満そうだったなぁ


俺と恭文の出会い話が中途半端だったからだけど……


いや、あんな和やかな雰囲気でどう話せと?


かなり血生臭いんだが……。わざわざ空気を悪くするわけにはいかなかったしな。まあ、俺の嘱託試験から先の話をして逸らしたけど……


ちなみに今は、ハラオウン家に向かっている途中だ。なのは達はヴィヴィオやエリキャロと楽しく話してる


やっぱりきちんと話した方がいいのかね……。俺と恭文の出会いもそうだが、俺がどういう存在かということも……


でも……
いつか話して、それでも笑い合える日々を俺は歩みたい……


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


まぁ、こんな感じでスーパー戦闘……もとい、銭湯タイムは終了した


このあと、全員でハラオウン家へと向かった。ちょこっとだけ、エリキャロとヴィヴィオと仲良くなれたような気がして、うれしかった


まあ、なのはがレイをチラチラ見てたね。レイなら自分でどうにかするでしょ


そういえば、一つ問題が……



「母さん、ただいま」



『ただいま戻りましたー!』



なお、エリキャロはただいまと言うことにしようと、事前に取り決めていたそうだ。まぁ、正解だね



『パパ、レイお姉ちゃん、おかえりー!!』



そうして、リビングから僕とレイの方へと走りよってくるのは……一組の男女。というか、子供


同じ顔立ちで、ほぼ同じ髪型。ヴィヴィオよりも小さい身長のこの子達は、クロノさんとエイミィさんの子供。その名も、カレルとリエラ


そして、お姉ちゃんと呼ばれたのはレイで、パパと呼ばれたのは……僕です



「ただいま、2人とも」


「うん、ただいま。カレル、リエラ、元気だった?」


『うん♪』


《2人とも、お久しぶりです。というか、まだパパなんですね》


「あるとあいぜんー♪ おひさしぶりー。というか、パパはパパだもんっ!」


「そうだよっ! パパには、パパって呼ばなきゃいけないんだよ?」



……さて、説明が必要? うん、そうだよね。エリオもキャロもヴィヴィオさえもぽかーんとしてるし



「あのね、ヤスフミは、2人からパパって呼ばれてるんだ」


「いや、それは見れば分かるんですけど……」


「なぎさん、まさか……エイミィさんとそういう関係なのっ!?」


「んなわけあるかボケっ! 全くクリーンな関係だよっ!!」


あぁ、そうだそうだっ! これがあったんだっ!! 仕方ない、ちゃんと……



「あー、それは私から説明するわ」



……エイミィさんが説明してくれるらしい



「恭文くんね、この子達が生まれた時に、一年位魔導師の仕事休んで、私の子育て手伝ってくれてたのよ」


「あ、ひょっとしてそれでパパって呼んでるんですか?」


「うん。……なんでか、うちの旦那様より先にね」



あぁ、そうでしたね。その事実は忘れていたかった


ちなみに、原因と思われることはこれだけではない



「それだけじゃなくて……まぁ、その。私の出産の時、恭文くんが最期まで立ち会ってくれたのよ。
というか、出産してすぐ、私の次にこの子達抱いたの、恭文くんだよ?」


「なぎさん……」


「恭文、さすがにそれは……」


「まてっ! そんな非難の目で僕を見るなっ!! つーか、クロノさん航海任務で居なかったしっ!!
あと、僕に子供抱かせたのは病院の助産婦さんだからっ! あの感動シーンで抱かないって選択肢はなかったんだよっ!!」



アレですよ。アレなんです


『よかったね。パパに抱いて貰えて』って、言われた時の居心地の悪さとクロノさんへの申し訳なさは、思い出すと頭痛がしてくるレベルです


実際、それからクロノさんはすごくヘコんだ。僕を責めるようなことは言わないけど、ヘコんでた


なお、それだけで済めばよかったんだけど……


僕がクロノさんより先にパパって呼ばれたもんだから、またヘコんだ


一時期、本気で疑惑もたれてたし。何回ガチな家族会議が行われたと?



「……まぁ、実際問題として、恭文君とエイミィには何も無いんだけどね。ということで、みんなお帰り」


「ただいま、母さん」

『ただいまもどりました』


「リンディさん、ただいまです」



エプロンで手を拭きながら再び出てきたのは、リンディさん。当然、この家の家主である



「……ねぇ、恭文君」


「ただいまです。リンディさん。あと、それは嫌です」


「まだなにも言ってないでしょっ!?」


「いや、なんとなく嫌な予感したんで。さ、とにかくあがりますね。つーか、ご飯ご飯♪」


「あぁん、いけずー。お願いだから一回くらい『お母さん』って言ってくれていいじゃないのよー!」



……言ったじゃないですか。ここにお世話になるようになってから、一回だけ。というか、気恥ずかしいので、あとにする


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


そのあと、楽しい食事会が行われた。その最中にやっと俺に対する呼び名のツッコミが入った


遅すぎるだろ、おい。あぁ、あぁ、どうせ違和感無いですよ……女顔でこの髪型、しかも声まで高いしね


普通に歩いていても女の子に間違われてスカウトされたり、ナンパされますよ……


俺がいい感じにいじけると、ヴィヴィオが肩をそっと撫でてくれた。カレルとリエラも慰めてくれる……2人とも、慰めてくれるならお姉ちゃんって呼ぶのやめてくれない?



『だめ?』



そんな泣きそうに聞くなよ……悪いことしてるみたいだろ、俺が


あぁもう……いいよ、お姉ちゃんで



『やったー♪』



そんなに嬉しいんかい!!
ヴィヴィオもそんな困ったように笑うなよ……


他も同情はいらん……



「男に見られるように………髪の毛切ってみようかな」



俺がそう呟くと、なぜかなのは達に止められた。…………なぜだ?


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


とにかく、それから楽しくお食事会を済ませた。高町家の面々や、アリサにすずかさん、なのは達も、ホクホク顔で帰って行った


で、日帰りな予定を組んでいたなのはとヴィヴィオ、リインとレイは、このまますずかさんの家の転送ポートから、ミッドに戻るそうだ


……ま、しばしのお別れってことで


で、僕はちょうどそのお見送りを済ませたところ。……いや、楽しかったな。うん


家へと入ると、リンディさんとアルフさん、それにフェイトが、せっせとお食事会で使った食器などを洗っていた


……すごい量。みんなよく食べて、よく飲んだしねぇ


それを見て、僕もキッチンへ行って食器清掃隊に加わる



「あら、手伝ってくれるの?」


「別にいいぞ? 自動食器洗い機あるし、今あるのをぶちこめば終わりだしな〜」



……あー、そうだった。僕の家にはそういうの無いからついつい



《いつもの癖みたいになっていますからね》


「だね。……って、随分久しぶりに声を聞いた気がするよ」


「そうだね。海鳴に来てからは、ずっと黙ってたし」



胸元から聞こえた声は、考えるまでも無い。僕の大事なパートナーであるアルトアイゼンの声


ここは部屋の中だし、居る人間も次元世界絡みの人ばかり。アルトが喋っても問題はないのだ



《……私だって好きで喋らなかったわけではありません。
リンディさん、早くこの世界も管理世界になりませんかね? どうにもこうにもマスターたちの会話にツッコみたくて仕方ないんですが》



いや、そんな理由でなったりしないから。次元世界をなめているよ、アルト



「そうね。さすがにその理由だと……弱いわね」


「てゆうか、お前がおしゃべりしすぎなだけだぞ? フェイトのバルディッシュやなのはのレイジングハートを見てみろ。あれが標準だ」


「……でも、バルディッシュは無口な子だから。
ちょっとだけ、アルトアイゼンとたくさんお話出来るヤスフミが羨ましいな」



まぁ、アルトと話すの楽しいけど、ツッコむの大変だよ?


でも、バルディッシュはそこまで無口なのか。相当稼動年数多いはずなのに



《……特に問題はありませんので。というより、アルトアイゼンが喋りすぎなだけかと》


「そうかもしれないけど、私としてはバルディッシュともっと話したいな。
『Yes Sir』とか『問題ありません』ばかりじゃなくて、色んなことを」


「だ、そうだけど……。どうする、バルディッシュ?」


《……善処しましょう》



なんだか、照れたような顔が浮かぶような声に、僕とフェイトは顔を見合わせて笑う


……うん、どっか対照的なのかも。フェイトとバルディッシュ、僕とアルトって



《まぁ、バルディッシュはそれでもいいでしょ。フェイトさんは優秀ですから。私はマスターがへタレだから大変で大変で……》


「うっさいっ!」



この後、みんなで少しだけあれこれ話した後、僕達はそれぞれ寝室に入り、ゆっくりと眠りについた


僕が使っていた部屋はそのままにしてあったので、僕とアルトはそこでお休みである。カレルとリエラが大きくなったら、片さなきゃいけないな


もう部屋に空きは無いし、さすがにずっと親と同じ部屋ってのもあれでしょ


……まぁ、帰るべき家に、自分の場所が無くなるってのは……ちょっとだけ寂しいけどさ


(第十一話へ続く)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


あとがき


レイ「え〜と、一応十話終了致しました……レイです」


なのは「異邦人編のあとがきでは初登場の高町なのはです!」


レイ「本来なら俺は海鳴には行かない予定だったらしい」


なのは「そうなの!?」


レイ「そうなの。まあ、結局短すぎるって考え直して、行くことになったみたい」


なのは「そうなんだ。でも、ヴィヴィオが本当に嬉しそうで、なかなか寝付かなかったんだ」


レイ「そっか。それは何より……」



なのは「私としてはレイ君と恭文君の出会いの話が気になるんだけど?」


レイ「そこは、まあ…いつかな」


なのは「うん、話してくれるのを楽しみにしてるね」


レイ「次に、ラミアの新モードと魔法についての解説だ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


【魔法】


『ミラージュ・サイン』:威力C(AA) 射程F 発動速度AAA


対象に高速で斬撃を浴びせ続けながら巨大な魔法陣を形成、対象を固定拘束する


固定されて身動きが取れない対象に目掛け真上から、縦一文字に叩き斬る技。最後の叩き斬る威力だけがAA級である

アンジュルグでの一対一の戦いで使う



『ファントム・フェニックス』:威力SS 射程SSS 発動速度C


高圧縮した魔力の矢を、特殊な術式で撃ちだす砲撃魔法。対象を追尾する効果があり、さらには障害物を避ける特性をもつ


ただし、砲撃や対象に命中すると大規模な爆発を引き起こす為に貫通能力はない。副次的効果として『炎の鳥』の形状を取って対象を追尾するので、視覚的威圧感は相当なものになる



【新モード】


正式名称:DUST TO DUST


通称:DTD


意味:『塵は塵に』


能力:限界突破モード。どんなフォームからも発動でき、そのフォームの特徴をより引き出す仕様になっている


基本は、ブースト魔法の重ね掛け……それプラス別系統の身体強化が施されている


あと、レイが独自に組み上げた持続性のある治癒魔法も組み込まれている


発動すると、何故かバリアジャケットが黄金へと色を変え、とんでもない魔力による風を巻き起こす

この現象は、ブースト魔法によって増加した魔力を制御しきれずに起こった現象。制御が完璧であれば起こらない



備考:完全に制御するには要訓練であるが、ラミアに熱暴走が起きており、口調がかなり明るくなり、かなりはっちゃける


現在、調整中だが未だに解決できない


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


レイ「以上だ。まあ、ラミアの口調に関しては目をつぶってくれると助かる」


なのは「あはは……がんばってね?」


レイ「ああ。じゃ、また次回!」


なのは「またね♪」




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