頂き物の小説
第1話『始まりはいつも突然・・・ホントに突然だよなぁ・・・』(加筆修正版):2
「しっかし、こうやってみんなでここを歩くのも久しぶりよね」
「そうだね〜。なんか気持ちいいや〜」
「ゆりかご戦の後は事件の報告書の作成や後処理とかで、基本的にはアースラの中でしたし」
「部隊長もおっしゃってましたけど、やっと帰ってきましたね」
そう口々に言うのは、私、スバル、それにキャロとエリオ。・・・・・・あの事件で壊滅した六課本部がやっと復旧した。
事件解決から復旧作業が完了するまでの間、六課主要メンバーは次元航行艦・アースラにそのまま乗艦。
それで、事件の事後処理を行いつつ生活していた。まぁ、アースラでの生活と業務は、特に不自由は無かったのよね。
艦自体が長期間の次元航行での任務を目的として作られているだけあって、ちゃんとしてるもの。
それでも、ここに戻ってきてなんだか嬉しいというか懐かしいというか落ち着くというか。
とにかく、そんな感じだ。なんだか変だな。私、10歳の頃から寮暮らしで、根なし草も同然なのに。
「なんだか私、やっと帰るべき場所に帰ってきたって気がします」
「うん、その気持ち少し分かるよ。僕もなんだかここにいるとすごく落ちつく」
どうやら、ライトニングの二人も同じ気持ちらしい。見てて、ちょっと微笑ましくなる。
「懐かしいのも落ち着くのもいいけど、気を抜いちゃだめよ? まだまだやる事は残ってるんだから」
「「はいっ!!」」
ま、今日くらいは・・・・・・よくないか。あり得ないやつが一人居るし。
「へへへ〜♪」
「なによ、なんかニヤニヤして」
私の隣りでニヤニヤしているのはスバル・ナカジマ。
私の長年のパートナーになる。・・・・・・というか、なんでそんな表情になってるの?
「なんかさー、嬉しいな〜と思って」
「はぁ?」
「だって、隊舎も復活したし、こうしてみんな無事に帰ってこれたし、新しい人達も来てくれたし、いいこと尽くめじゃない?」
両手を大きく広げて、そう口にするスバルの言いたい事は、分かる。ただ・・・・・・なぁ。
「隊舎とみんなの無事は解るけど、最後の一つは正直微妙よ。アレはないわよアレは」
言いながら思い出すのは今日の全体朝礼での一幕。
今日から六課で仕事をする事になった男達のうち一人。
身長はスバルと同じくらいで細身の体型・・・・・・って、ちっちゃいわね。
あと、女の子っぽい顔立ちで、栗色の髪と、黒い瞳をしたアイツ。
年は私達と同じくらいよね? 正直そうは見えない。
「あれは、きっと私たちを和ませようとしてくれてたんだよ」
「いや、絶対違うから」
それだけは断言出来る。あれは間違いなく素だ。
てーかホントにそれでアレなら、色々と読み間違えてるから。
「ライトニングはどうよ。朝のアイツについて知ってることある?」
アイツは、八神部隊長やなのはさん、フェイトさんの友達らしい。
だから、二人は私達より詳しいかもしれないと思って聞いてみる。
「すみません、僕達も会った事があるわけじゃないんです」
「そうなの?」
「はい。いちおうフェイトさんから、一緒に暮らしている弟みたいな男の子が居るとは聞いていたんですけど」
・・・・・・へ? 一緒にっ!? つまりそれは・・・・・・えぇっ!!
「あ、そういう意味ではなくてですね。なんでも海鳴の家の方に居候のようなことをしていたらしいんです」
「あぁ、なるほどね」
この二人の保護者で、六課の隊長陣の一人でもあるフェイト・テスタロッサ・ハラオウンという人がいる。
その人は、4年前まで、地球の海鳴という街で暮らしていた。その時に同居してたってことか。
それで弟みたいだって言っていたのか。納得した。・・・・・・ってことは、アイツはハラオウン家の親族かなにかってわけ?
でも、ファミリーネームが違うわよね。出身世界もなのはさん達と同じらしいし・・・・・・うーん。
「フェイトさんからは『前にも言ったけど、ちょっと変わっているけど、真っ直ぐでいい子だから、仲良くしてあげてね』とは言われてるんですけど」
「確かに、変わってはいるかもね」
あの男達については、事前になのはさん達から説明を受けている。
なのはさんの友達で、あっちこっちの現場を渡り歩いている優秀なフリーの魔導師、もう一人は、その友達でこれまた同じようなフリーの魔導師だと。
名前は蒼凪恭文とジン・フレイホーク。年は私より一つ上。魔導師ランクは、蒼凪という人がA+、フレイホークという人がA-とかだっけ。
・・・・・・魔導師には、能力を示すランクというものがある。
陸戦・空戦・総合の三つの分類に、上から『SSS・SS・S・AAA・AA・A・B・C・D』と言った風に分けられる。
あとは、0.5ランクを意味する『+』とか『−』が付いたり。
まぁ、あくまでも目安みたいなものなんだけどね。
ちなみに、私とスバル、エリオが陸戦B。キャロがCになる。
で、新入りの空戦A+、陸戦A-というのは、うちの隊長陣とまでいかなくても、なかなかに優秀な方になる。
特に空戦・・・・・・飛行技能を持つ魔導師は、ある一定以上の技能や適性がないと、なれないの。
なお、それが先天的なものか、訓練による後天的なものかは一切問わない。
もう一人の方は陸戦だが、それでもあちこちの現場を渡り歩いているのだ。腕に自信はあるのだろう。
とは言うものの、魔導師としての腕前は実際には見てないが正直微妙な感じがする。だって、アレだしね。
「そんなことないよっ! すっごく強いんだからっ!!」
「・・・・・・アンタ、なんでそんなこと言い切れるのよ。つか、知り合いってわけじゃないんでしょ?」
私の諦めも混じった発言は、胸を張って自身満々なうちの相方にあっさり否定された。
・・・・・・また大きくなってる、私なんてまだまだなのに。
「だって、ギン姉から聞いてるんだもの。」
捕捉ね。ギン姉というのは、スバルの姉のギンガ・ナカジマさん。局で捜査官をしている人。
スバルの魔導師の先生の一人で、優秀な陸戦魔導師でもある。・・・・・・あぁ、そういえば。
「ギンガさんの友達でもあるって言ってたわね」
「それで、事前に情報収集してたんですね」
「そうだよ。実力はギン姉の折り紙付き。性格はちょっと変わっててクセはあるけど、大丈夫だって、自信満々だったよ」
あのギンガさんがそこまで言うんだから、実力はそれなりってことか。まぁ、そこは見てからよね。うん。
「でもね、ギン姉・・・・・・『会って仲良くなってからのお楽しみ』って言って、あんまり細かい事は教えてくれなかったの。フレイホークさんの方はギン姉も知らなかったし。
あー、でも楽しみだな〜。ギン姉の話を聞いてたら、どんな感じか戦ってみたくなってさ。なのはさんたちに頼んで模擬戦組んでもらわないと。」
「・・・・・・アイツらの意思は確認しときなさいよ? 強引に話決めたら迷惑でしょうから」
「うん、もちろんっ!!」
それはそれとして、今、私たちがどこへ向かっているかと言うと、デバイスルーム。
デバイスマイスターのシャーリーさんに、訓練の再開前に私達のデバイスの調整と整備をしっかりとしておきたいと言われた。
というわけでで一週間程前にシャーリーさんに、パートナー達を預けていた。
そして、部屋の前に到着した。到着して、ウキウキしてるのが・・・・・・一人。
「マッハキャリバー元気かなぁ〜。なんかドキドキしてきちゃった」
「あんた、いくらなんでも大げさよ」
とか言いながら部屋に入る。
「失礼しまーす」
「失礼するなら帰ってくださ〜い」
「す、すみません! 失礼しました!」
そうして、私達は全員失礼しないためにデバイスルームから退出し・・・・・・・って、ちょっと待った!!
「ちょっと邪魔するわよっ!!」
再びデバイスルームに突撃する。そして居た。小さい男の子と頭を抱えている男性。更に小さい小鬼が。
「・・・・・・リイン、なんでそんな怖い顔で睨んでるのかな。ほら、可愛い顔が台無しだよ?」
「なに言ってるですかっ!? 怒っててもリインは可愛いんですっ!!」
「自意識過剰に磨きがかかってるねおいっ!!」
「というかっ! どこの世界にあんな事言って追い出す人がいますかっ!?」
リイン曹長、いい質問ですっ! それ、私も聞きたかったですからっ!!
「え、吉本新喜劇でやってたよ? というか休みの日にいっしょに見たじゃないのさ」
「・・・・・・お仕置きですーーー!!」
「いや、だって、てっきりシャーリーかと思って、本当にお客様とは思わな・・・・・・って、痛い痛いっ! 髪の毛引っ張るなぁぁぁぁっ!!」
「部隊を舐めるなですー! そんな事じゃ、みんなに総スカンされますよっ!?」
・・・・・・よし、大体分かった。分かってないけど、分かったって事にしましょ。うんうん。
”・・・なにこれ?”
”さぁ・・・?”
”お仕置き・・・ですよね。でも”
”あんなリインさん、初めて見ました”
同じくよ。・・・とにかく、リイン曹長が新入りの髪の毛をぐいぐい引っ張ってお仕置きしてる。
てか、アイツがなんでここにいるの?
「あ、みんなどうしたの〜」
「あ、シャーリーさん」
「えっと、マッハキャリバーたちを受け取りにきたんですけど」
「あの有り様で」
「なんで、あの方がここにいるんですか?」
シャーリーさんが、部屋の様子を見て納得したような顔になった。そして、こう続ける。
「・・・・・・あぁ、気にしなくていいよ」
「いや、そう言われましても・・・・・・気になりますって」
「さっき、ロングアーチに挨拶に来ててね。なぎ君やフレイホーク君のデバイスもちょっと見たかったし、ここに連れてきたの。私は今少しだけ出てたから」
「そうなんですか」
「まぁ、どうせなぎ君がなにかしたんでしょ。すぐに終わると思うから、入って入って」
・・・・・・・シャーリーさん、アイツと知り合いなんですか? というかどうしてそんなに慣れてるんですか。
え、この状況って、ひょっとして普通のことなのっ!?
「それじゃああの」
「お邪魔、します」
そうして、私たちは無事(?)にデバイスルームに入室する事が出来た。
・・・・・・これから、不安だわ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
リインさんのお仕置きが終了した後、俺達は六課のフォワード陣と改めて対面した。
そして、シャーリーさんの先導で、食堂に移動しつつ簡単な自己紹介を行う。
「そういえば、シャーリーさんとリイン曹長とは知り合いなんですか?」
「親しいみたいですけど」
「うん。リインは魔導師成り立ての頃からの友達だし、シャーリーはフェイト経由でね。
デバイスの事とかで相談に乗ってもらってるのよ。あと、オタク仲間」
「なるほど、納得しました」
「それで、フレイホークさんはどうしてここに来られたんですか?」
「あぁ・・・そこにいるヤスフミに連絡したら、人手が足りないって言うもんで・・・気が付いたら一緒に仕事することになってた。」
「そ、そうなんですか・・・」
・・・ヤスフミの奴、やりにくそうだなぁ・・・いや、俺もやりにくいけど。
「うーん、みんなかたいなぁ・・・」
「でも、初めて同士ですから」
「そうですね、これから遠慮が無くなっていきますか。というか、なぎ君相手にそんなことしてたら身が持たないですし」
「です」
なにやらシャーリーさんとリインさんが言っているが、まぁいいか。というか、ヤスフミはここでもそういう印象なのね・・・
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・・・マジですか?
目の前では、超ど級の山盛りパスタにサラダがそれが見る見る間に消えていく。俺とヤスフミは驚くしかなかった。
「・・・・なんだこれ?」
ヤスフミが、思わずそう呟く。そりゃ、驚くよな・・・
「あんまり気にしないほうがいいですよ?」
「スバルもエリオも、いつもこれくらい食べるから」
「この量をいつも完食?」
ポカーンとした表情を浮かべる俺らに補足を入れてくれたリインさんとシャーリーさんに、ヤスフミが質問をする。
答えは違う所から帰ってきた。
「当たり前じゃないですかっ!!」
「ご飯は残すのはいけないことだって、フェイトさんから教わりましたからっ!!」
・・・そうだな、ご飯を残すことはいけないよな・・・って、これは多すぎだろっっ!?
「まてまてっ! あなた方はあれかっ!! 胃袋が七つあるどっかの犬顔の宇宙人っ!?」
「蒼凪・・・だっけ? 気持ちは解るけど、気にしたら負けよ」
「大丈夫です。時がたてば、あなたにもこの光景が普通のものに見えてくるはずですから」
「なんか、あなた方悟ってるね」
すると、ティアナ・ランスターさんとキャロ・ル・ルシエちゃんが疲れた表情でそう口にする。苦労しているんだな・・・
こんな話をしている間にも、どんどん皿の上のパスタ&サラダは質量を減らしていく。
・・・ヤスフミ、もう気にしないほうがいいぜ。さっさと飯を食べよう。
「そういやリイン、この四人の教導担当って、なのはと師匠って聞いてるんだけど」
「そうです〜。スバル達は、なのはさん達が鍛えて育てている子達なんですよ〜♪」
気持ちを切り替えたらしく、ヤスフミはリインさんに声をかける。その内容に、俺は興味を引かれた。
「ということは・・・ゆりかごやらスカリエッティのアジトやらで救出作業を行ったのってこの子達かな?」
「うん、スバル達だよ」
「なるほど・・・それでは、高町教導官達が手塩にかけて育てているストライカーってのは、彼女達の事なんですね。」
これは奇跡の部隊である機動六課の事を話すときに必ず出てくる事だ。
ゆりかご内やスカリエッティのアジトに閉じ込められた歴戦のエース達を救出したのは、まだ年端も行かない少年少女達だったと。
話には聞いていたけど、実際に会ってみると驚くな・・・この年でこれなら、将来はもっとすごくなるんじゃないか?
「いえ、そんな」
「私たちなんてまだまだで」
そう口にするのは、一組の男の子と女の子。
桃色のセミロングになりかけな髪の女の子は、さっきのキャロ・ル・ルシエちゃん。
で、赤髪で堅苦しい印象の男の子の方は、エリオ・モンディアル君。
年のころは10歳前後か・・・これでガジェットやら戦闘機人を相手にしたのか?どんな訓練したんだよ・・・
「なに言ってるですか。恭文さんだって同じくらいの時には魔導師やってたですよ?」
すると、リインさんがヤスフミのことに触れる。・・・そういや、こいつもそうだったか。
「なかなかに面白い子が入ってきたと、当時のリンディ提督やレティ提督は喜んでたって、フェイトさんから聞いたけど?」
「「そうなんですかっ!?」」
「えっと、年は18って言ってたわよね。そうすると、魔導師暦7、8年・・・。私たちよりずっと先輩じゃない」
「あーでも、経験だけあるって話で、なのは達みたいにすごいわけでもなんでもないから。それに、ジンだって僕と同じくらい魔道師やってるよ?」
・・・てめ、ここで俺に振るんじゃねぇよ。皆が注目するじゃねぇか。
「そうなんですか?」
「・・・俺も経験だけがあるってだけだよ。高町教導官達には全然及ばないさ。」
「そんなことないと思うけどね〜。だって、なぎ君色々噂立ってるじゃない」
「噂・・・?」
・・・そういや聞いたことがある気もするな・・・
「そう、あるのっ! ある人曰く・・・なのマタっ!! あ、なのはさんも寝ているなぎ君は起こさないようにまたいで通る位に強いって意味ね」
『えぇぇぇぇっ!!』
「・・・シャーリー」
「なに?」
ベシっ!!
「うん、フカシこくのやめようか。あんまり過ぎるとデコピンするよ?」
「い、今したよね? 相変わらず容赦ないなぁ・・・」
「当たり前じゃぼけっ! あれかっ!? 2話目でこの話終わらせる気だったんでしょっ!!
お願いだからその中途半端なパクリはやめてっ! 権利関係は怖くて痛くてそして強いんだよっ!!」
おい、二人して周りを置いてきぼりにすんな〜・・・ちなみに本家じゃ2話の部分だけど、ここじゃ1話だからな?
しかし、シャーリーさんは感慨深げに呟く。
「なんというか、そのツッコミも久しぶりだなぁ〜。私はなんか嬉しくなってくるよ」
「うん、それはいいんだけど本当にやめてね? いや、お願いだからさ」
「まぁでも、優秀なのは間違いないから。私も色々見てたし。・・・ちょっと変わり者だけどね」
「シャーリー、失礼な事を言うな。僕は世界のスタンダードだよ。」
・・・おい、ヤスフミ、フォワード四人が呆気に取られてるぞ?ただ、フォワードの皆さん・・・これから慣れていかないと大変だぞ?
「・・・あの、蒼凪さん」
すると、ナカジマさんがなにやら神妙な顔でヤスフミに話しかける。
「はい、なんですかナカジマさん」
「あ、私の事はスバルでいいです。敬語じゃなくても大丈夫ですから」
「そうなの? ・・・・・・なら、僕のことも恭文って呼び捨てでいいよ。敬語も無し」
「いいんですか?」
「うん・・・・・・で、話は何?」
「うんと・・・・・・恭文って、私のこと知らない?」
「・・・・・・はい?」
・・・俺の耳がおかしくなったのか?なにやら電波な発言が飛び出したんだが・・・
「ほらリイン、だから僕の言った通りでしょ? 自宅警備員の方がいいかもしれないと思うことになるって」
「スバル・・・・・・また濃いアプローチしますね」
「違うますからっ!! ・・・・・・いや、だから、私のこと・・・・・・ギン姉から聞いてない?」
「聞いてるよ。というか、写真も見せてもらってるし」
っておい。知っててわざとすっとぼけてたのかよ。
しかし、ナカジマでお姉さん・・・ときどきヤスフミの話に出てくる、「ギンガさん」か?
「えぇっ!? だ、だってさっきまで普通だったしっ!!」
「当然でしょ。スバルと会うのは初めてなんだから。距離感測ってたのよ」
・・・あぁ、納得だわ。確かに始めてで馴れ馴れしいと逆に面倒だしな・・・
「でも、ギンガさんの妹か・・・。色々と納得した」
「大食いなとことか?」
「あと、妙に距離感が近いというか、強引というか・・・・そんな感じがひしひしと」
ティアナ・ランスターさんの言葉にヤスフミが同意する。・・・そういった発言が出てくるって事は、ランスターさんも振り回されているんだな・・・
「それでね、一つ質問があるんだけど・・・」
「なに?」
すると、目をキラキラさせながらナカジマさんは身を乗り出してヤスフミに詰め寄ると一気にまくし立てる。
「うんとね、恭文は魔法はどんなの使ってるの? 具体的な戦闘スタイルは? デバイスは?」
「だから、顔近いからっ! 離して離してっ!!というかさ、ギンガさんから聞いてないの?」
「ギン姉は、細かいことは教えてくれなかったの。フロントアタッカーということだけしか・・・・」
「なるほど」
スバルさんの質問に、ヤスフミは左手の人差し指を縦にして唇につける。
「秘密」
他の皆はずっこけるが、俺は苦笑するしかなかった。
「えー、なんで? いいじゃん教えてよ〜」
「と言われましても、そんなに一度に聞かれても答えられません」
「じゃあじゃあ、一つずつでいいからさ。ね?」
「・・・・・・上から75・55・76」
そのヤスフミの言葉に、ナカジマさんの表情がころころ変わる。
「それスリーサイズだよね!? 誰もそんなこと聞いてないしっ! というか、私より細っ!!」
「そなの? ちなみにスバルはいくつかな」
「えっと、上からはちじゅ・・・って、なに言わせるのっ!!」
「だって、僕が答えたんだからスバルだって答えなくちゃ不公平でしょ?」
いや、お前はナカジマさんでからかうのが楽しいだけだろ?まぁ、戦闘スタイルなんかを答えないのは他にも理由あるんだろうが・・・
「あ、なるほど・・・・って、なんでそうなるのー! てか、なんでそんなに細いのっ!?」
「知りたい?」
「うんっ!!」
ヤスフミの問いかけに、頭をブンブン振って頷くナカジマさん・・・いや、それはヤスフミが自爆するんじゃね?
「ヒミツ」
「どうしてっ!?」
「男は秘密というヴェールを纏う事で素敵になるのですよスバルさん。・・・というか、そこは察して。いや、本当にお願いしますから」
「・・・あ・・・うん、その・・・ごめん」
・・・まぁ、そろそろヤスフミの奴もからかうのをやめるだろ・・・そう思っていると、ヤスフミがナカジマさんに質問をした。
「スバル、なんでそこまで僕の戦い方に興味があるのよ?」
「ギン姉から色々話を聞いてね。それに、恭文フロントアタッカーなんだよね? 私もそうだし」
「・・・スバル、フロントアタッカーなの?」
ヤスフミの問いかけに頷くナカジマさん。それなら納得するな。同じポジションの人の戦い方を見るのは勉強にもなるしな。
自分の戦い方と違う部分で生かせる部分なんかを見つけられると、非常に楽しい部分があるのは認める。
「でしょ? だから、どんな風なのかなって思ってたんだけど・・・・」
「そんな面白いとこはないよ? 使ってる魔法も近代ベルカ式の比較的単純な物だし。・・・そういや、スバルも近代ベルカだよね」
「そうだよ、シューティングアーツ」
「ギンガさんから教わってたんだよね」
「うんっ!!」
『ベルカ式』っていうのは魔導師が使う術式の一つで、近接戦闘に特化した魔法形態のことだ。
これ以外にも、魔力を操作して様々な事象を起こす『ミッド式』ってのがある。
「・・・・・・僕は、普通よ? 普通の近接アタッカー。そんな大したレベルじゃない」
「でも、さっきのシャーリーさんの話だと」
「そんなの大半はホラだから。つか、みんなの方が凄いでしょ。
だって、ナンバーズやらガジェットやらとやりあってなんだかんだで勝ってるんだし」
そういうと、ヤスフミはパスタを口に入れる。おっと、俺もはやく食べなきゃな。
「あの、剣術ということは、蒼凪さんは騎士なんですか?」
次にヤスフミに食いついてきたのは、エリオ・モンディアル君。その目にはなんか燃えるものが見える。
ただ・・・・・ヤスフミはどこか苦い顔をしている。なんでだ?
「いや、僕はベルカ式使うけど、師匠達と違って騎士の称号は取ってないのよ」
「そうなの?」
「うん。なんというか、ガラじゃないしね」
・・・まぁ、ヤスフミは騎士ってガラじゃないな・・・信念は持っているけど、ほかはあまり気にしないもんな・・・
というか、どこの世界に、ドサクサ紛れに初対面の女の子のスリーサイズ聞くような騎士が居るというのだろうか?
「というか、僕は魔導師・・・・・・魔法使いの方が好みなの。
ほら、響きがこっちの方がかっこいいもの。だから騎士は、師匠達に任せてる」
「ふーん、そうなんだ。・・・・・・ね、実は一つお願いがあるんだ。私、模擬戦やりたいんだけど」
「スバルと? いいよ〜」
ナカジマさんの言葉に、ヤスフミは軽い感じで答えた・・・さっきはぐらかしていたのはどこのどいつだ?
「いいの?」
「待って、なぜ確認するの?」
「だって、なんか急に素直に答えたし。さっきは『秘密』ってはぐらかしたのに」
「・・・あぁ、そっか。いやだなぁスバル。いじめて欲しかったならそうだっていってくれ」
「怒るよ?」
「・・・ごめんなさい。ちょっと調子乗りすぎました。なのでその拳と単色の目は引っ込めてもらえるとありがたいです。」
・・・・・・確かに、その拳は痛そうだな。
「でも、なんで急に素直に?」
「別に大した理由じゃないよ? 僕も腕がなまるのは嫌だし、定期的な模擬戦はむしろ歓迎ってだけ」
それは俺も同感だな。なにより、俺はまだあの人に追いついていない・・・こんなところで腕がなまるなんて、絶対に嫌だ。
「ホントに?」
「ホントだよ」
「そっか。恭文、ありがとっ!!」
・・・なんか、ナカジマさんって犬みたいだな・・・尻尾をブンブン振っているのが目に浮かぶんだが・・・
「まぁ・・・あれよ。諦めなさい。スバルに興味持たれた時点でこうなるのは決定事項だから」
諦めろと言わんばかりの表情を浮かべているのは、ティアナ・ランスターさん。・・・・ヤスフミ、何考えてる?分かりやすいぞ。
「飲まないわよ。・・・あと、私もティアナでいいわよ」
「思考を読むのはやめない?」
「あ、私もキャロで大丈夫ですから」
「うん、そんなに僕の考えてることは分かりやすいのかな? ・・・いや、答えなくていい。もう分かったから」
「・・・それと、フレイホークだっけ?あんたも私達のこと呼び捨てでいいわよ?私も呼び捨てにするから。」
・・・そりゃあいい。同年代に敬語って、どうも肩こるんだよな・・・いや〜、楽になったぜ。
「・・・あんた、素はそんな感じなのね・・・」
「あぁ・・・それじゃ、改めてよろしくな。」
そういうと、俺とティアナは握手を交わす。・・・なんか好感が持てるな。
「しかし・・・スバルもシグナムさんと同じ人種だったのか。うん、仲良く出来そう。」
そんな時、ヤスフミがポツリと呟く。それに、スバルが反応する。
「どういうこと?」
「だから、戦うのが大好きなバトルマニア」
「違うよー! 私は、戦う事自体は好きでもなんでもないよっ?!」
「嘘だッ! そういうことを本気で思ってる人間はね、初対面の人間と模擬戦やることになったってそこまで嬉しそうな顔はしないんだよっ!!」
・・・これはヤスフミに同感だな。いくらなんでも、あの嬉しそうな表情は普通できないし・・・ほら、皆も同じように頷いている。
ただ、バトルマニアなのはヤスフミもなのだが。
「別に・・・そういう訳じゃないんだけどなぁ」
「じゃあ、どういうわけなの?」
「うんとね、さっきも言ったけど、ギン姉から色々と聞いてて、どんな感じがすっごく気になって、それで・・・・」
「・・・・・・納得した」
・・・いや、そこで納得するのかよっ!?さすがバトルマニア、お互いに分かり合える所があるらしい。
「ね、それでいつする? 私は今日この後すぐでも大丈夫っ!!」
「まてまて、身を乗り出すなっ! ・・・いくらなんでも教導官の許可無しでいきなりやるわけにはいかないでしょ」
・・・・・・まぁ、そりゃ同感だな。
「まずは教導担当のなのはなり、ヴィータ師匠の許可をちゃんと取ってくる事。
許可さえあれば、教導官権限で仕事の方は何とかなると思うし、僕は身体さえ温めれば今日でも動ける」
「わかった。じゃあ、絶対に許可取ってくるから、そうしたら必ず相手してね」
「いいよ〜。約束するからいつでも来なさい。むしろ待ってるから。
あと、許可が出ないようなら僕からもお願いする。双方の意志なら、納得してくれるだろうし」
「いいの? ・・・・・・あの、えっと・・・・・・ありがと」
「どういたしまして」
その後は、みんなでワイワイ言いながら食事を終了。後片付けをしっかりとする。
オフィスでデスクワークに入るという四人とシャーリーさんを見送り、再び隊舎見学+挨拶回りツアーを再開した。
「・・・・・・ところでヤスフミ。」
「何?」
「もしスバルが今日許可を取ってきたらどうするんだ?俺達徹夜明けだぞ?」
「・・・・・・流石に今日はないでしょ。」
だといいんだけどなぁ・・・・・・
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
時刻は既に夕方。ミッドの湾岸部に設営されている六課隊舎は、当然海に近い。
ここ、六課所有の陸戦演習スペースに関して言えば、海上に設置されているくらい。
海沿いから見る夕焼けは実に感動的で、見ているだけで胸が切なくなるような美しさを放つ。
放ちながらも、太陽はゆっくりと地平線へと沈んでいこうとしている。
もうあと10数分もしないうちに、空は漆黒の闇へと色を変えて、人々を眠りに誘う。
・・・・・・我ながら、詩人だ。でも、疲れるからこういう表現はもうやめようっと。
で、そんな時間になぜ僕がここにいるかというと、別に夕日を見るためでもない。
そして、見学ツアーのコースというわけでもない。・・・・・・原因は目の前の女の子達。
「恭文、約束通りヴィータ副隊長の許可を取り付けたよっ! 私は全力で行くから、恭文も全力で来てっ!!」
「・・・・・・ヤスフミ、結果はご覧のとおりになったんだが?」
「・・・ジン。その目は止めて?僕だって予想外なんだから。」
白のシャツに厚手のズボン。なお、訓練用の服装。
そんな格好をして気合充分なスバル、そしてその隣で肩を落としているティアナを見て、僕は頭を抱えていた。
なお、僕やジンも同じ格好。・・・・・・あの後、リインに六課の駐機場に案内された。
ちょうどそこに居たシグナムさんとヘリパイロットのヴァイスさん、それにロングアーチスタッフのアルトさんや整備員の方たちに挨拶。
・・・・・・ここまでは平和だった。だけど、突然ヴィータ師匠からのここへの呼び出しがかかった。これが悪夢の始まりだった。
なお、師匠は、病院の定期検診に行ってた。・・・・・・どうりで姿を見かけないと思ったよ。
で、行ってみると既に着替えてそこに居たスバルから自分の予備のトレーニング服(ジンの分はなぜか用意されていた。)を渡された。
サイズは同じだったけど、胸がブカブカだったよ。それで成長具合とかが、色々分かった。
その場で着替えて(というか、着替えさせられました)スバルに促されて、一緒に軽くウォーミングアップ。
で、それが完了すると次の段階へレッツラゴー。シャーリーと師匠が、素早く動く。
海上の無機質な六角形のパネルが敷き詰められた平面状のスペースが、変化を始めた。
一瞬で廃墟の市街地へと姿を変えた。ここで模擬戦を始めると言われたのだ。
・・・・・・なんですかこれっ!? 改めて考えると訳わかんないしっ! てーか状況に流されまくってるよ僕っ!!
「・・・・・・悪いスバル。ちょぉぉぉぉっと待ってもらえるかな?」
「なんで?」
「いや、これなに?」
「え? 模擬戦」
うわ、さも当然って言わんばかりの顔で言ってきたよあの豆柴。つか、肝心な所が伝わってない。
「なんでいきなり模擬戦?」
「だって、恭文は『教導官の許可さえ得られればいつでも相手になる』って約束したよね。・・・・・・嘘だったの?」
あぁ、もう。頼むからそんな泣きそうな顔はやめてー! 罪悪感が沸いてくるからっ!!
そして、極端過ぎるわボケがっ! アレかっ!! おのれの辞書には、白と黒しかないわけっ!?
「違う違う、そうじゃないよ。・・・・・・そうだね、約束したよね」
こんなにすぐにやることになるとは思わなかったけどね。
「でしょっ!? だから、やろうよ模擬戦っ!!」
うわぁ、マジで白と黒しか無いんだ。あのねスバル、人生にはグレーゾーンって必要なのよ?
そういうのを許容することが、大人になることだと僕はちょっと思うんだ。
「うん、やるのは構わないんだけどさ」
何かが色々と間違っているような気が、しないでもないけど。
・・・・・・・よし、スバルの発言に関しては気にしない方向で行こう。気にしたらきっと負けだ。
きっと、あれなんだよ。やっぱりこの子ちょっとだけ電波なんだ(失礼)。
「あーそれとさ、さっきから気になってたんだけどアレはなに?」
そう言って、僕は指を指す。方角は隊舎の方。
そこには、人数にすると数十人というギャラリーがひしめいている。
フォワードの残り二人に、はやてにリイン、グリフィスさんにルキノさん、ついでにシャーリー。
さっきまで一緒にいたアルトさんとヴァイスさん、ライトニング分隊副隊長のシグナムさんにシャマルさんとザフィーラさん。
あとは・・・・・・バックヤードスタッフの人たちに、駐機場に居た整備員の人たちかあれは?
ちなみに、整備員の人達はみんな気が良くていい感じの人たちだった。・・・女性には縁が無さそうだったけど。
とにかく、結構な人数がこの演習スペースに視線を集めている。
というか、ここからでも楽々視認出来るくらいの大型モニター立ち上げてるし。
「みんな、恭文と戦うって言ったら、応援してくれるってっ!!」
「あぁ、応援・・・・・・ですか」
どことなく、宴会というかお祭り騒ぎなノリが感じられるのは気のせいではないと思う。
・・・・・・もしかしなくても、あいつら・・・・・・楽しんでやがるっ!?
頼むから仕事してよエリート部隊っ! なんで復活初日にこんなお祭り騒ぎを傍観してるんだよっ!?
つーか止めてよっ! 具体的に言うとシグナム副隊長にグリフィス部隊長補佐っ!!
・・・・・・そうそう、そうだよあなた方だよっ! 今僕と目が有ったおのれら二人だよっ!!
部隊長がアテにならないのは分かってるから、おのれらしかいないのよっ!!
・・・・・・流されたっ!? なんか『諦めろ』ってオーラ出されたしっ!!
『うし、それじゃあそろそろ始めるぞ。四人とも準備しろ』
「はいっ!!」
「師匠」
いきなり発動した空間モニターに映る顔は、僕の魔法戦闘の先生。
そして、機動六課スターズ分隊の副隊長。ヴィータ師匠だ。
まぁ、無慈悲にもこの模擬戦の許可を出した人物と言える。
お願い師匠。もう師匠しか居ないんです。色々と手遅れな気がするんです。
でも、きっとそれは気のせいですよねっ!? もうなんでもいいから助けて。怪我の事黙ってたのはもう何も言わないからー!!
『バカ弟子、いきなりで悪いが諦めろ。つーかお前が悪い』
師匠まで毒されてたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
「つか、なんでそうなります!? か弱い子羊いじめて、なにが楽しいんですかっ!!」
『うっせぇバカタレっ! つか、お前らはか弱くもなければ子羊でもねーだろっ!!』
「師匠よりはか弱いですよ」
『よし、もうお前地獄へ行けっ! つーか、アタシが叩き落としてやるっ!!
・・・・・・どーしてもこうなる理由が分からないなら、教えてやるよ』
ほう、だったら教えてもらいましょうか。僕が何したって言うんですか? 何もしてないでしょ。基本的に頑張っただけだし。
『スバルに、アタシやなのはの許可さえあれば、別に今日でも構わないって言ったそうだな?』
「えぇ、言いましたがそれがなにか?」
『アイツ、普段はちっとばかし気が弱いクセして、こうと決めたら異常に押しが強いんだよ。
アタシが何言っても今すぐやりたいって聞きやしなかったぞ?』
「・・・・・・マジですか?」
副隊長・・・・・・というか、直属の上司である師匠の話をいっさいがっさい押し切って、ここにまで持ち込んだっていうの?
待って待ってっ! どんだけ押しが強いんだよスバルっ!?
いや、あのギンガさんの妹なんだから、ひょっとして当然だったりする?
『そうだ。・・・・・・ったく、こっちは検査帰りだってのに、アイツの相手に模擬戦の準備でむちゃくちゃ疲れたぞ?』
すみません。知らなかったとは言え苦労かけしました。スバルの方を見ると、笑顔でガッツポーズなどかましてるし。
だぁぁぁぁっ! 余計なこと言わなきゃよかったぁぁぁぁっ!! てか、シャーリーもリインも、知ってたはずなんだからそういう事は早く言ってよっ!!
「・・・・・・と言いますか、師匠。この話聞かされた時から気になってたんですけど」
『なんだ?』
「どうしてそんな『してやったり』って言わんばかりの悪い顔してるんですか」
僕の問い掛けに、師匠は遠慮なく答える。さすがは師匠。とっても大人だから、僕の欲しかった答えを。
『気のせいだ』
・・・・・・くれなかった。
「いや、気のせいじゃないでしょっ!? 今、頬が明らかに緩んだしっ!!」
『・・・ま、正直に言うとだ。アタシとしてもお前とスバル達をやらせたかったからな」
あぁ、そういうことですか。で、スバルからいい感じで話が来たからここでやっちゃおうと。
うん、僕の都合とか完全無視なのがアレだけどもう慣れた。本当に慣れたから。
とにかく、こうなったらやるしかないか。約束はしてるわけだし、それはちゃんと守らないと。
『そういうこった。それに、お前だってこないだまでがしがしやってたろ』
やってましたねぇ。非常にめんどい感じでがしがしと。
『師匠としてはそういうの抜きにしても、その中でどれだけ腕上げたか気になるんだよ。
つーわけだから見せてくれよ。期待してるからな?それと、フレイホークだっけ?ソイツの強さは知らないからな。ついでに混ぜといた。』
「・・・・・・まぁ、師匠の期待に応えられるかどうかは分かりませんけど、スバルとは約束しましたから。
それはきっちりとやらせてもらいます。あ、それと一つ確認です」
『なんだ?』
・・・・・・一応ね。敵ってわけじゃないから確認。
「いつものノリでいいんですよね?」
『かまわねーぞ。ま、簡単にはいかねーとは思うがな』
また楽しそうに笑う師匠を見て、僕は気を引き締めることにした。
・・・・・・相当自信ありげってどういうことだろ。なんにしても、油断は禁物かな。
「それだけ聞ければ充分です。んじゃま、行って来ます」
『おう、キバっていけよ』
そして、空間モニターが消える。残るのは、夕暮れ時の独特な空気。
・・・・・・あんま待たせてもあれだよね。そして、僕はスバルの方に向きながら気持ちを切り替える。
そう、戦うための気持ちに。今日出会ったばかりだけど、なかなかに面白い友達候補との約束を守るために。
全く・・・・・・こっちは休み無しだというのに。まぁ仕方ないか。
「それじゃ、ジン。ティアナの方は任せるから。」
「・・・・・・仕方ねぇな。」
「もう、大丈夫かな?」
自分の方に向き直った僕を見ながら、彼女は笑顔でそう言葉をかける。ジンとティアナは、少し離れた場所に移動する・・・そうじゃないと、お互いが動きにくいもんね。
「いや、ごめんね待たせちゃって。でも、もう大丈夫。ここからは・・・・・・エンジンかけていくから」
僕もそれに笑顔で応える。というか、苦笑い?
・・・・・・昼間の食事の時と同じだけど、それは違う。どこか不思議な感じが辺りに漂っている。
「そっか。なら、よかった」
そう言って、スバルが懐から取り出したのは、青空を思わせるような色合いの六角形のクリスタル。
なるほど、あれがスバルのパートナーってわけか。
「そうだよ。私の大事な相棒。・・・・・・でもそれは、恭文だって同じでしょ?」
「まぁね」
大事な相棒っていうか、なんていうか・・・・・・ねぇ?
僕もそれに釣られるように、首からかけていた相棒を取り出す。
丸い、球体状の宝石。形状はなのはのレイジングハートとほぼ同じ。
色はスバルのパートナーと同じ青色。
でも、この子の色はスバルのパートナーよりも深い青色になっている。
青空というよりも、深い海の色を思わせる青さだ。
同じようにジンは懐から黒い十字架状のアクセサリーを、ティアナはカードのようなものを取り出す。
それを前にかざす。そして僕達は叫ぶ。この戦いの始まりを。
「マッハキャリバーッ!」
「クロスミラージュッ!!」
「アルトアイゼンッ!」
「バルゴラッ!!」
「「「「セットアップッ!!」」」」
・・・・・・こうして、僕とスバルの戦いは始まった。結果がどうなるかなんてわかんない。
ただ、どっちが勝ったとしても、この戦いが無茶苦茶楽しくなりそうな予感はしていた。
つーか、せっかくだし楽しむよっ! じゃなきゃ、来た意味ないしっ!!
(第2話に続く)
あとがき
????≪・・・・・・さて、『とある魔導師と機動六課の日常・外典』。いかがだっただろうか?どうも、私だ。≫
ジン「って、お前まで本家と同じボケをするんじゃねぇよっ!!」
????≪マスター、短気は損気だぞ?≫
ジン「誰の聖だと思ってるんだっ!?」
????≪・・・・・・まぁ、マスターの事は置いといてこの話を説明しよう。ぶっちゃけると、本家が加筆修正を行っているのでそれに合わせる様にこちらも加筆修正を行っている訳だ。ちなみに、私は第2話で登場するぞっ!!≫
ジン「まぁ、それは分かるんだが・・・なんで作者は加筆修正しようと思ったんだ?」
????≪一つは、マスターが本家セカンドシーズンに登場した事だな。あの戦闘シーンを読んで作者はショックを受けたらしいのでな。≫
ジン「・・・あぁ、確かにあっちの俺はより戦闘方法が分かりやすく描写されていたな。」
(その通りなのです。詳しくは本家とまとセカンドシーズン第5話を。)
????≪その為、本家にリベンジをしようと言う訳だ。ある意味、コルタタ殿への挑戦だな・・・ついでに、もう少しティアナとの恋愛描写を強めようかと画策しているらしい。多分血反吐を吐きつつ書くことになるんだろうがな。≫
ジン「・・・作者、無理すんなよ?」
????≪では、マスターの設定を紹介だ。≫
名前:ジン・フレイホーク
年齢:18歳
性別:男
身長:170cm
体重:身長に見合う程度に
体型:普通
髪の色:赤みがかった茶髪
髪型:すこしぼさぼさの短髪
瞳の色:青
顔立ち:美形だけど印象が薄い。
職業:管理局所属の嘱託魔導師
魔導師ランク:陸戦魔導師ランク:A-
声のイメージ:鈴村健一(イメージとしてはシ○・アスカの方で。)
性格:性格は明るいが、一昔前はかなり情緒不安定だった。苦労人で、頼んでもいないのに騒動に巻き込まれる。一人称は『俺』。
ジン「・・・で、次回はどうなるんだ?」
????≪一応、戦闘シーンを大幅に修正するらしい。それがどれだけの量になるかは作者の腕次第だな。では、また次回でお会いしようっ!!≫
(おわり)
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