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頂き物の小説
第九話『話して分かることがある。一日一緒にいて、なんとなく分かることもある……あの二つ名だけは認めたくないな』:2



陸士部隊・第108部隊


ミッドチルダ西部にその隊舎を置く、ミッド地上部隊の一つになる


ミッド地上の、ロストロギアやら薬物やらその他色々な密輸事件なんかを主として扱っている部隊


部隊長であるゲンヤさんの人柄故か、縄張り意識やらでガチガチな動きになりやすい地上部隊の中でも、優秀なのだ


僕の知る限りでも、指折りの柔軟性と思考を兼ね備えた部隊である


僕の悪友でありオタク仲間である、八神はやては2、3年ほど前の話になるけど、この部隊で仕事をしていた


そしてゲンヤさんは、はやてにとって師匠と言える存在になる


そして、そんなはやてに誘われて、とあるロストロギアの密輸事件の捜査……


というか、黒幕連中のアジト壊滅に協力するために、僕が少しだけお世話になった部隊でもある


その後も、何かある度に(もっぱら荒事)ゲンヤさんなりギンガさんなりに呼び出されて、ごひいきにしてもらっていたのだ


うーん、六課の次くらいに居心地がいい部隊だったなぁ。やっぱり、上が柔軟だとそうなるんだよ


大体の部隊は、ガチガチになりすぎててそれで円滑に物事を進められなくなったりしてたし



「六課の次って……」


《いや、言いたいことは分かりますが》


「あー、ギンガさん気にしないで。六課の雰囲気が異常なだけだと思うから。……はぁ〜」


「アンタ、なに朝からため息吐いてんのよ」


《人生の不条理に悩んでいるんですよ》



ティアナが分からないという顔をしているけど、とりあえずそこはいい。なんというか、悩みは尽きないなぁ



《いいじゃないですか。平和なればこそです。ここ最近は忙しかったですし》


「そうなの?」


「囮捜査の事前準備やらがあったからね。通常業務も合わせると、結構やることがあったのよ〜」


「それ、私にも言ってたけど、具体的にはなにやってたのよ?」



はやてとシャーリーのコーディネイトとか。あれが一番ウザ……もとい、大変だった。中々決まらないし。僕の意見は全却下だし


あと、フェイトとマジックカードに入れる雷撃呪文の構築。これが大変だった


カードの容量ぎりぎりに収まるようにして、構築させようと思うと中々に骨が折れたよ



「そっか……。ねぇなぎ君、スバルとは上手くやれてる? あの子、2人のこと気にしてるみたいなの」


「ごめん、正直自信ない。だって……」


《上手くやってますよ? まぁ、最近スバルさんには、汚くてズルい戦い方はいけない。
戦うのは、大事なものを守るためなんだから、それがちゃん出来る戦い方じゃないどダメだと、怒られただけですよ。
まったく、ムカつきます》



アルトが、まだ腹立ててるから。そういや、昨日の説教の時も、スバルにちょっときつかったからねぇ



「アルトアイゼン……」


「……ほら、アルトは先生と戦ってたから、そういうのが状況によりけりって分かってるし」



とは言え、戦う理由なんて人それぞれ。そこでケンカするのもバカらしいので、アルトはしっかり抑えた


いや、一応反論はしたよ? 納得してもらえなかったけど


……なんていうか、戦いってやつをあそこまでスポーツライクに捉えられるあの思考には、ただただ関心するしかない


少なくとも、僕とアルトには無理です



《もちろん、スバルさんのいう事は分かります。えぇ、その通りでしょうさ。
ですが、私達の戦う理由と意味とその中での行動は、私達が決めるべきです》



……まぁね。基本は、そこだよ



《汚かろうが卑怯だろうが、マスターと私が決めていくことなんです。
自分達の命に直結することなのですから、それが当然です。
それをいくら友と言えど、簡単には口出しされたくはありません》



………とまぁ、この通りです。僕も同じ意見と言えば意見だけど、それを押し通しても楽しくない


スバルとガチにケンカをするつもりは、サラサラないのである。ただ、アルトはそれだと納得しない


先生と戦ってきた中で見てきたものもあるから、戦いってやつがそんな奇麗事だけで片付けられるものじゃないと考えている部分が、僕より大きい


『口で言っても分からないのであれば、本気で叩き潰しましょうよ』とか言ってたしね。どーしよこれ



「まぁ、スバルは色々あってね。力は守ることに使うべきっていうのがあるから。
アンタの言うことも分かるけど、少しは抑えてくれないかしら?」


《……仕方ありませんね。まぁ、ここは私が大人になりましょう》


「ありがと、アルトアイゼン」


《いえ、どっちにしても平行線の話題ですし、アレでは分かり合うのは不可能でしょうから》



ギンガさんとティアナが苦い顔してる。でも、僕も同意見なんだよなぁ


あの考えはアリだとは思っても、自分がしたいとは思えない。どうしても、違和感があるんだよねぇ〜


下手をすればガチにケンカか。覚悟だけはしておこう



《ですが、そんな中でただ一人、ヴィヴィオさんだけが『カメちゃんみたいでかっこよかったよ♪』といってくれたのが救いでしたね》


「うん。……嬉しくて、ちょっと泣いちゃったし」


「泣いたのっ!?」


「……えぇ、私達の前で大号泣でした。ヴィヴィオもビックリするくらいに」



泣くほどだったよ


しゃがみこんでって言われて、頭を撫でられながらそういわれた時には、嬉しさのあまりついつい抱きついてしまったもの



《ヴィヴィオさんは、立派になりますよ。心からそう思います》


「あのまま育ってほしいねぇ」


《まったくです》


「いや、私達的には、それには不安がかなりあるんだけど?」



……さて、僕達がどこでこんな会話をしているかというと、108部隊隊舎の通路


ゲンヤさんは、部隊長室へと向かうので隊舎入り口で別れて、僕達は、隊舎のオフィスの方へと向かっていたのだ。で……到着と



「それじゃあ、とっとと書類作っちゃおうか」


「そうね、しっかりやりましょ」


《がんばりましょう。マスター、ティアナさん》

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

……翌日、108の隊舎に来た俺は恭文やティアナと一緒に、報告書の作成を行った……


くそ、恭文なら俺の魔法に詳しいからなんとかなると思ったのに


まぁ、大まかなのは恭文達に任せて、俺は使った魔法の名前、威力、その魔法がどう対象に命中したかを細かく纏めた


そんな感じで、午前中には作業が終わり、その後、将棋をする為にアルトアイゼンをナカジマ部隊長に預け、偶然(?)そこにいたヤスフミの知り合いらしいマリエルと一緒に、昼食を取る事にした



「……六課で元気にやってるんだよね?」


「はい。どうにかこうにかですけど」


「そのあたりは、シャーリーから聞いてるよ。なんか大人気みたいだね」


「大人気っていうか……なぜかすごい勢いで馴染んでます」



確かに、みんな遠慮がなくなってきてるな。……たまに恭文が巻き込まれてるけど



「なぎ君が妙な事をしなければ問題ないんじゃないの?」


「ギンガさん、本当にそう思うの?」



恭文の問いかけに、ギンガは目を逸らす……自信無いか



「みんな、可愛がってくれてるんだから、いいことじゃない」



「まぁ、そうなんですけどね……」


「あ、そうだ。恭文くん、今度本局の方に来てくれないかな? アルトアイゼンと一緒に」


「それはかまいませんけど、どうしたんですか?」


「うん、一回私の方でもメンテしたいなと思って。シャーリーが頑張ってくれてるとは思うけど、やっぱり見てみたくてね。
というか、ヘイハチさんの時からずっと見てきている可愛い子と色々お話したくて。ほら、同い年でもあるし♪」



へぇ、アルトアイゼンとマリエルって同い年なんだ……



「それと、そのついでって言ったらアレなんだけど特殊車両開発部の方にも顔出してもらえないかな?
ヒロさんとサリさんが、恭文くん達は六課でどうしてるのかって心配してたから」


「あー、了解です。それじゃあ、作業中にでもちょっと顔出します」


「うん、そうしてあげて」


「なぎ君、あのお2人はお元気?」


「うん、すっごく。でも、最近は会えないんだよね。向こうも僕も仕事あるし」


「そっか」


「ね、その2人って誰なの? アンタやギンガさんの知り合いなのは分かったけど」



ティアナが興味持ったみたいだけど、恭文とあの2人の出会いに驚くだろうな

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

さて、また説明である


今、マリエルさんが言ってた2人は、僕とレイのオタク友達で本局の特殊車両開発部に勤める局員である


そう、以前話した、僕の誕生日にデンバードを送ってきた開発部の友達というのは、この2人なのだ。あと、最近だとトゥデイとモトコンポね


この2人との出会いは……偶然でした。僕がたまたま見ていた某ゲームの攻略サイトのチャットで知り合って、意気投合してオフ会


そのオフ会の中で、管理局仲間というのが判明して、それ以来色々と手助けしてもらっている


そう、いわゆるネットな関係から始まった友達付き合いなのだ


2人とも、僕よりも一回りほど年齢が上なのだけど、オタク趣味という素晴らしい共通点によって、その差は埋められ、素晴らしい関係を築けている



「それって、凄い偶然よね。たまたま同じゲームをやってて、それで仲良くなって、オフ会しようって話になって、それで会ってみたら実は局の関係者同士で……」



ティアナがわかりやすいくらいに驚いた顔をしている。いや、僕も実際驚いたからわかるけど



「まぁね。なんていうか、うん、すごいと思う」


「それも、技術開発部の中でも有名な2人と知り合うんだもの。すごいと思うよ」


「あ、なぎ君。もし会ったらよろしく言っておいてくれないかな? 私も、退院してからお会い出来ていないし」


「りょーかい。ギンガさんが無茶振りしてるってことだけ伝えておくよ」


「ちょっとっ!?」



……なんていう会話をしつつ、お食事は終了。そうして、部隊長室に戻ってみると……地獄がそこにあった



「待ったっ! 頼む、この一手は待ってくれっ!!」


《ゲンヤさん、待ったは無しですよ? ……これで詰みです》



アルトが、容赦なくゲンヤさんを叩きのめしていた。空中にプカプカと浮かぶ青い宝石に頭を必死にさげる部隊長


絶対に部隊員には見せてはいけない光景が、そこには広がっていた


……うん、アルトや、もうちょっと優しくしてあげようね?

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

昼食を終え、ギンガの検査が終わった後、俺達は海上隔離施設に来ている


なんでも、恭文が面会したいと言い出したからなのだが……俺も居ていいのかね?



「気にしなくてもいいんじゃない? 前にここに来た時にスバルがアンタの事も話していたから、一度連れてこいとか言っていたし……」



……なるほど、そういうことなら別にいいか


そんな話をしながら面会室で待っていると……その面々が入ってきた



「……というわけで、また来ちゃいました」


《チンクさん、みなさんもごぶさたしています》


「……なんていうか、ホントに突然っスよね」


「こうさ、前振りとかってないの?」


「いやだなぁ、ウェンディもセインも、僕達は最初から最期までクライマックスですよ?」


《私達に前振りなどあるはずがないじゃないですか。動き出したところからが私達の時間であり、私達だけのクライマックスですよ》


「意味わかんないっスよそれっ!!」


「会話になってないよねこれっ!」



……ふむ、どれも知ってる顔だな。隔離施設にいることに違和感有りまくりだが……



「むむ……これが理解できないとは、みんな更正プログラムで何を教わっているのさ?」


「少なくとも、今恭文さんが言ったようなことは教わっていません……」


「クライマックスは最高潮。それが最初から最期までって……」


「そういうセリフがあるんだよ。ディード、オットー。……ギンガさん、映像ディスクって差し入れに持っていっても大丈夫だっけ?」


「そうだね、物にもよるけど問題はないよ」


「じゃあ、今度面白い映像ディスクを差し入れに持ってきてあげよう。それを見れば、僕の言いたいこともわかると思うしさ」


《マスター、さりげなく電○の布教活動はやめてください。いや、あれは素晴らしいですけど》



……恭文、面白いのは分かるが、購入した奴を持って来いよ?



「でも、また来てくれるなんて……思ってなかったよ」


「いやだなぁディエチ、約束したでしょ。僕達、約束破るようなやつに見えた?」


「……うん、そうだったね。ごめん恭文」


《ただ、私達も謝らなければなりません。あなた方を不安にさせてしまうほどに時間を空けてしまったのですから》


「それに関しては気にしなくてもいい。ギンガから少し話を聞いていてな、なかなかに忙しかったのだろう?」


「AAAランク試験受けるんっスよね。すごいっスねー!」


「ホントだよ。だって、あのシスターシャッハと同じくらいに強いってことでしょ?」


「……あれ? セイン、シャッハさんのこと知ってるの?
……まさかセイン、報告書にあったディープダイバーって能力で、ストーカーでもしてたの?
つか、そういう道の人だったのあなたっ!?」


「そんなことしてないからっ! つか、そういう道って言うなぁぁっ!!
……ドクターのラボでやりあってね。まぁ、結果はわかると思うけど、それ以来、なにかと世話を焼いてくれてるんだよ」


「特にセイン姉様には思う所があるらしくて、教会風の礼儀作法などを教えてくれているんです」


「でも、なんでなんだろうね? ……セインって、暴力的なところとかないよね?」


「あるわけないじゃんっ! 私はこう見えても優しいんだよ〜」


「じゃあ、サボリ癖とか」


「あ、それはあるっスよね〜」


「……納得したよ。セインの世話を焼くのはそれだ」


「さぼらないからっ! 真面目にしてるからっ!!」


「暴力癖があるわけでもなく、サボリ癖があるわけでもない………じゃあなんで世話を焼いてるんだ? あの武闘派シスターは」


《マスター、シャッハさんに対してどういうイメージを持っているのか、少し見えてしまいました》


「いや、仕方ないでしょ? ヴェロッサさんとかに鉄拳制裁を平気な顔してかますしさ。それで『暴力嫌い』とかって言ったら、僕は大笑いするさ」


「とにかく、六課の隊長陣と同クラスになるかもしれないわけだ。すごいな」


「いやいや、そんなことないですって。僕なんてまだまだですよ」


「謙遜することはないと思うけど。試験を受けられるってだけでも、実力を認められている証拠だと思うし」



なんだか恭文、納得いかないような顔をしているな……



「なぎ君の剣の師匠は、六課の隊長陣とやりあっても平気な顔して勝つような人だものね」


「そうなんですよ。先生と比べると、自分はまだまだだなって思う事が多くて……。SLBも一刀両断に出来ませんし」



……その言葉で、話を聞いていたナンバーズのほとんどが凍りつく。そりゃ想像できないよな……まぁ、俺もやろうと思えば出来るけど



「いや、そんな人間が存在しているのかと思って……」


「あの、その人ってひょっとして、私達と同じ戦闘機人じゃないんっスか?」


「いや、そうじゃない……はず」


「正直、私達もそのあたりのことがよくわからないの。あまりにも既存の魔導師や騎士の方々とレベルが違い過ぎて……」


「アンタもギンガさんも、言い草ひどくないっ!?」


《いや、一応人間ですよ? 魔力資質も実に平均的ですし》



こう考えて見ると、恭文の先生って謎が多いな……本当に人間か? あの人なら何か知ってるのかな……



「前に来てくれた時、剣術の師として、師事している人が居るとは聞きましたが、そこまでなのですか……。ぜひ、お会いしてみたいです」


「あぁ、ディードは二刀流だもんね。やっぱ興味ある?」


「とても。もちろん、恭文さんにも」


「そっか、ありがと。ふむ、それなら連れてくるのもいいかも。
先生なら、スキップしながらここに来てくれると思うし、問題はないでしょ」


「アンタ、なんでそれで問題がないのよ? つか、スキップって……」


「……なぎ君、さすがにあの人を連れてくるのは問題じゃないかな? 私も止めなきゃいけなくなるし」


「あー、そうかも……しれないね……」


《グランド・マスターのアレは筋金入りですし》


「どういうことっスか?」


「……先生は、とても女の子が好きなのよ。『剣の道は色の道。女を知らずして剣は振るえず』なんていう馬鹿なことを平然と言ってのけるからなぁ」



…………恭文。よくそこは染まらずに成長してくれたな



「……達人というのは、えてして変わったお方が多いとは聞くが、そこまでなのか」


「実際、私もお会いした事があるけど、あんまりの様子にビックリしたし、セクハラもされたわ。
まぁ、なぎ君がすぐに蹴りを入れたから、お尻を触られたくらいで済んだけど」


「ギンガにセクハラって、なんて命知らずな……」


「戦闘以外だと、そういう人なの。
連れてくるなら、体中がんじがらめにバインドかけて、重石も100キロくらい乗せて、動けないようにしないとだめかもね」


「恭文、容赦ないっスね。つーか、先生として尊敬してるのにそれは……」


「でも、それでチンクさんやセイン達にセクハラかましてもアウトだし。
なにより、先生の技量なら、今言ったのでも多分無駄。5分抑えられれば奇跡だね」


「……なんていうか、恭文、すごい人に師事していたんだね。私、驚きだよ」


「まー、先生の話はここまでにしておくとして……。そういや、ルーテシアやアギトはどこに?」


「ルーお嬢様なら本局の方で裁判中だよ。アギトさんはそれに付き合う形。2人とも、夜には帰ってこれると思うんだけど……」


「じゃあ、今日は会うの無理か。……あ、それと、差し入れ買ってきたから、あとで食べてください」


《マスターが必死に吟味したものです。気に入ってくれるといいのですが……》


「いや、気持ちだけで十分に嬉しい。ありがたく食べさせてもらうよ。ありがとう恭文。2人にもよろしく言っておく」


「よろしくお願いします。……あの、スバルから聞いたんですけど、ノーヴェって子はどうしてます?」



……そういえば、見当たらないな



「あぁ、それなら心配はない。……来たようだしな」



すると、面会室のドアが開く。……スバルと同じような長さのショートカット。ただし、髪の色は燃えるような赤毛


どこかスバルに似ているイメージ。だが……こっちの方が強気な感じが強い



「お前ら、なんか失礼なこと考えただろ?」


『いえいえ、そんなことはないですよ?』



……勘もけっこう鋭いな



「ノーヴェ、元気してた?」


「あぁ。……今日は、スバルは居ないんだな」


「うん、アイツは訓練。私は、コイツとちょっと仕事があってね。その帰りに寄ってみたの」



そう言って、ティアナは恭文を指さす。どこか楽しそうな表情で


……何で楽しそうなんだ? 囮デートの影響か?



「なるほどな。なぁ、ひょっとしてコイツがこの間、お前達が言ってた……」


「えぇそうよ。六課に来た新しい部隊員で魔導師」


「……そっちの奴もだよな?」


「えぇ? そうだけど……」



さて、なぜにこの子は恭文と俺のことをそんな複雑な物を見る目でみつめるんだ?



「アンタが、スバルの言ってたむちゃくちゃ強くてエッチな魔導師か? それで、そっちはお姫様みたいな通り名を持つむちゃくちゃ強くて可愛い魔導師だっけ?」


「……えっと、蒼凪恭文って言うんだ。よろしくね」


「……俺はレイ・カストールだ」


「あぁ、よろしく。アタシは……って、名前知ってるんだったな」


「ね、直接教えてもらってもいいかな?」


「はぁ? アタシの名前知らないのか?」


「知ってるよ? でも……直接、君の口から聞きたいんだ。理由は……なんとなくかな」


「……ノーヴェ。アタシの名前は、ノーヴェだ」


「そっか。ノーヴェ、改めてよろしくね」


「よろしく」


「あぁ」


「で、自己紹介も済んだところで一つ聞きたいんだけど」


「なんだ?」


「あの豆柴は僕のことをなんて話してたのかを、教えてもらってもいいかな?」


「俺も聞かせて欲しいな……アイツがどんなことを勝手に喋っているのか……」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

それから、ノーヴェにスバルから僕とレイのことをどういう風に聞いてたのかを教えてもらった


……よし、スバルは帰ったらぶっ飛ばす。←結論。



「ちょっとなぎ君っ!?」


「止めないでよギンガさん。あのKYが……! 今度という今度は本気でぶった斬るっ!!
なんで服を借りたこととか、それでエッチなこと考えたとか、その他諸々のありもしない妄想を僕と会った事もない人間に対して吹き込むんだよっ!?」


「……しかも、俺の事も喋っているとは……」


「ゴメン、私がちょっと席を外してる間に好き勝手喋ったみたいなのよ。
あー、お仕置きするんならしてもいいわよ? さすがにこれはヒドイから……」



ティアナ、すばらしい許可をありがとうっ! さて、どうしてやろうかあの豆柴……。まずはアレとかコレとかでぶっ飛ばして……



「なんか不吉なこと考え始めてるし……」


「不吉とは失礼な。正当防衛だよ。僕の目を見てみればわかるよ。ほら、正義の光が宿っているでしょ?」


「何処がっスかっ!? しかも思いっきり悪魔の目じゃないっスかっ! 正義どころか邪悪さすら感じるっスよっ!!」


「嘘だッ!!」


「嘘じゃないっスからっ! その単色の目は止めてっスっ!!」



気のせいだよ。……お願いだから、全員でその疑問いっぱいの目で僕を見るのはやめて


うん。しかしスバルは……。キャロの時もそうだし、うちに来た時もそうだし、どうしてこう余計な事を言いまくるの? おかしいでしょうがアレ



「……まぁ、あれっスよ、スバルの行動は、愛ゆえってやつじゃないっスか?」


「いらんわこんな愛っ! もっと普通なのをくれ普通なのをっ!!」


「でも、アンタのことを話してたときのスバル、すっごい楽しそうだったぞ?」


「そうだよ、スバルはちょっとアレなだけなんだから、そんなに怒る必要ないと思うな」



なにげにひどいセインの言葉に頷くティアナとレイ以外の一同。……なんだろ、この連帯感にデジャヴュが


……それなら一つ聞くけど、自分達が今の僕らの立場と同じ事になっても、そういうことが言える?



『まぁ、それはおいといて』


「流すなぁぁぁぁっ! それも全員一斉かいっ!! なんの乱れもないってどういうことさっ!? いつ練習したそのシンパレートはっ!!」


《マスター、勝ち目はないと思われますが》


「うん、わかってる。わかってるけどさ、抵抗するってやっぱり大事じゃない?」


「そして、恭文の抵抗は空しく……ボク達にからかわれて終わるのだった」


「オットーっ!? なんでそんな不吉なナレーションつけるのかな?」


「面白いと思って」



意外とノリがいいなこの子。……だめだ。こいつらなんとかしないと。つーか、スバルは絶対あとでお仕置きしてやるっ!!



「ところでレイの通り名って具体的にはどんな名前なんすか?」


「ほう……知りたいのか?」


「あ……イヤならいいっすよ、うんっ!!」


「そんなに怯えんな。教えてやるよ、紫鬼姫だ」


「しきひめ? どう書くんすか?」


「紫の鬼姫だ。この髪と容姿、鬼のように容赦がないことから付けられたんだよ」



レイ……とっても不満そうだね。その気持ちはすごいわかるけど

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

……ハックシュンっ!



「……どうしたんですかスバルさん? 風邪ですか?」


「うーん、誰か噂してるとかかな?」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


まぁ、そんなこんなでいろいろ終わったので六課に戻ってくると、恭文とティアナの事や、俺がどんな方法で介入したのかが伝わっていた……


フェイトにすごく感謝されたんだが……頭下げすぎ。その間の恭文の視線が怖かったのを追記しておく



(第十話へ続く)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


おまけ:スバルのその後〜異邦人編〜



「あ、恭文。おかえり〜」


「スバルっ!」


「いや、帰って来たって聞いたから、ちょっとね。父さん達、元気だった?」


「うん、元気だったよ。……ノーヴェもね」


「え?」



スバルが何故か後ずさりする。当然だろう。いきなり海上隔離施設に居るノーヴェの話が出てきたのだから


そして……僕がにこやかに殺気を放っているのだから



「色々と話してくれてたみたいだね。……お礼、してあげるよ」


「え?」


「大丈夫。師匠達にはたった今、演習場の使用許可はもらった」


「あの……なんの話?」


「僕ね、デリカシーの無い人間って……斬りたくなるんだ」


「そ、それはやすふ……ひっ!」



おかしいな……。スバル、なんでそんな怯えた目で見るの?



「まぁ、詳しいことは戦いながら話してあげるよ。さ、スバル♪『実戦演習』、しようか」


「アルトアイゼン……」


《残念ですが、無理です。というか……本当に言い過ぎですよアレは。
あぁ、そうそう。私個人としても色々と言いたいことがあるんです。付き合っていただけますね?
反論は認めませんよ。ティアナさんからも、徹底的にミンチになるまで潰してよしと許可はいただいていますから》



アルト、今なんか『そんなこと言ってないでしょっ!!』って電波が届いたよ?


まーとにかくですよ。これが、後に『S・N事件』と呼ばれ、伝説にも残る演習の……始まりだった。



「始まらないよっ! ……いや、そんな強く握らないでっ!」


「………恭文」


すると、レイが僕らに声をかけてくる………スバルがなんか助かったような表情をしているが……レイの笑みは、君を更なる地獄に落とすものだよ?



「俺も混ぜろ」


「えぇっ!? レイは私を助けてくれるんじゃないのっ!?」


「俺の認めたくない通り名を広めておいて……それはちと都合良すぎじゃないか? むしろ感謝して欲しいな。俺と恭文の本気が最初から同時に体験できるんだから♪」


「ひぃっ!? ラ、ラミア……」


《私では止められん。自分が蒔いた種だ、責任もって受け入れろ》


「そ、そんなぁっ!?」


「それじゃ恭文……『実戦演習』……始めるぞ」


「そうだね♪ いろいろ試したい魔法もあるし……」


「お前もか。俺も試したい事がたくさんあるんだ、全部やっちゃっていいよなスバル? もちろん……」


『答えは聞いてないけど』


「だ、誰か……助けてぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


あとがき

レイ「スッキリした♪」


ラミア《自業自得とはいえマスターと恭文殿の2人同時の実戦演習とは……気の毒に》


レイ「ま、書かれてないけどこの実戦演習で全フォームだしたんだよなぁ〜」


ラミア《終わった時にスバル殿は『デリカシー無くてごめんなさい』状態だったな……ちなみに演習場は悲惨だったことを伝えておく》


レイ「このあと、未登場の最後のフォーム……恭文が洩らした砲撃用のフォームは使用禁止にされた。穴だらけになるからだと、否定できないが」


ラミア《いつか登場することを祈っていてくれ。さて、今回登場した新たなフォームを紹介する》



『Angelgg』モード:通常モードのバリアジャケットをベースに、流線型の肩当て、右腕には小さくも堅い楕円形の盾

背中には巨大な機械翼があり、胸に鎧、前が開けたスカートを装着した姿


武装は、盾の裏側に収納した魔力を刃とするサーベル。魔力の弦を発生させ、魔力の矢を射る魔弓の2種類のみ




ラミア《以上が新しく出たフォームだ。次は魔法に移る》




『シューティング・アロー』:威力S- 射程SSS+ 発動速度B


魔力で造られた矢を、弓を使って撃つ魔法。魔力結合が極めて高い以外は、普通の魔法


魔力結合が高いので『AMF』が高くても貫通する威力を発揮する。その他に、命中してもすぐには魔力が拡散しないので対象を壁に縫い付けることも可能


さらに、矢に様々な特殊効果を付加させることも可能だが、詳細は登場後に




レイ「以上が魔法の説明だ。この『アンジュルグ』は一番使い勝手のいいフォームだから、俺が使う中では一番多い」


ラミア《次に多いのが『ヴァイサーガ』で次が『アシュセイヴァー』だったな。最後のフォームは、使う場と状況の見極めが必須だから登場頻度は限りなく低い》


レイ「そうだな。援護にも適さないからな……せいぜい殲滅戦?」


ラミア《味方が居ない状態限定だろう、アレは。恭文殿と中尉なら勝手に避けてくれるから使えるだけで》


レイ「ほんとに助かるわ。じゃ、今回はこの辺で」





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