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頂き物の小説
第九話『話して分かることがある。一日一緒にいて、なんとなく分かることもある……あの二つ名だけは認めたくないな』:1



1年くらい前から首都『クラナガン』を歩いてないから、色々と知らない店が増えたなぁ〜


俺ことレイ・カストールは、何故か与えられた休日を謳歌していた……ごめん、うそです。恭文とティアナ……囮デートを尾行する仕事です


万が一の時、2人の援護に入れるようにと、はやてから頼まれたのだ


今、俺から離れた場所……実寸の何倍かと言いたくなるフェレットの石像に腰掛けティアナを待つ恭文がいる


ちょっと遠目から見ても不機嫌そうだ。まぁ、身長云々でフェイトに断られたのが相当効いているようだ



《マスター。誰に状況説明をしている? そんなに現実逃避したいのか?》



うっさい。女ならまだしも……誰が望んで男の時にスカート穿かないといけないんだよ!?


ちなみに、俺の服装はフリルがついたピンクのスカートに白いキャミソール、その上に淡い赤色のカーディガンを羽織っている格好だ


最初、スカートの長さはかなりのミニだった……


なんとか拒否して今は膝にかかるくらいの長さになっている


はやてとシャーリーが似合うからと無理やりコーディネイトした結果だ……俺が着た姿見てなんか落ち込んでいたがな

ちなみに髪は白いリボンで縛ってポニーテールにして、髪の色は魔法で黒に変えている


どこからどう見ても、女の子だ。それも……15歳くらいの


身長が低いからどう見てもそれくらいだと、シャーリーも言っていた


でもなぁ……恭文にも内緒って。フォローを入れるこちらとしては、知っていて欲しいんだけどな


そんなことをつらつらと考えていると、いつもと雰囲気の違う着飾った格好のティアナが恭文のところに向かって走っている姿が見えた



「尾行スタートか。他人のデートを覗く趣味なんてないんだけど、仕事として割り切るか……すまんな、恭文…ティアナ」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

……帰りたい


正直に言おう。帰りたいです。ていうか、もう引きこもりたいです。自宅警備員になりたいです


僕の今の気分は最悪。天気予報で言うなら、いつぞやのキャロと同じく大嵐だ。あー、ドタキャンしたい


さて、そんな気持ちを抱えつつ僕は、首都クラナガンにある、待ち合わせでよく使われる広場に居た


時刻は、もうすぐ午後6時になろうかという時間。さすがに日が沈みかけて、少し辺りが薄暗い


だけど、街の街頭とイルミネーションが辺りを彩り、明るくさせている。ここだけ昼みたいなノリだ


……ここには、一つの逸話がある。それは、新暦が始まって間もなく、首都の治安が今のようによくなかった頃の話


はぐれた主人をこの場所で、一途にずっと待ちつづけていた一匹のフェレットが居たそうだ


ここまで言えばもうお分かりかと思うけど、そのフェレットと、主人が待ち合わせ場所として決めていた場所がここになる


だからね、あるのよ。広場のど真ん中に、実寸の何倍の大きさだって言いたくなるようなフェレットの石像が


なお、この話は、ミッドでは絵本やら映画やらアニメやらにもなっているほど有名な話で、ここに住む人間ならば知らない人は居ないくらいだ


なんでも、ユーノ先生が変身魔法でフェレットに変化しようと思ったのは、子どもの頃にこの話が好きだったからとか。……人に歴史ありだね


そういうわけで、この場所は首都ではかなり有名な合流スポットとなっている。で、僕が何のためにここにいるかというと……



「ごめん、待たせちゃったわね」



……どうやら、待ち人が来たようである


僕を呼ぶのは、オレンジ色の髪をした一人の女性


今日は……いつもツインテールな髪をストレートに下ろしている


そう、ティアナだ。僕はティアナと待ち合わせしていたのだ


……なぜ、僕とティアナが、こんな場所で待ち合わせをすることになったのか。疑問に思う方々も居るだろう


それは、あの地獄の晩餐が終わったあと、ギンガさんに頼まれたこと


詳しく知りたかったら本家の14話を見てね


ティアナがこちらへ走ってきた。で、それをなんともいえない心地で見ている。そんな状況



「ティアナ、別に走ってこなくてもいいのに……。待ち合わせの時間までまだ余裕あるよ?」



大体15分くらいね。ちなみに僕は、今から15分ほど前に来て、人の動きを見ながらぼーっとしていた


あのね、すごく気分が重かったの。さっきも言ったけど、帰りたいくらいに


……フェイトとやりたいって提案したけど、断られたし


身長差なんて……身長差なんて。変身魔法使えばいいじゃないかよこのバカっ!!(マテ)


ティアナの実地での捜査研修にもなるからとか言うし

正直、そんなの知ったこっちゃない。そうも言ったけどだめだった


とにかく、覚悟を決めるために少しだけ、町の空気を吸いながら一人で居たかったのだ


そうして……決まる前にこの人来ました



「アンタがもう来てるとは思わなかったのよ」


「リンディさんに『男の子は、待たせるんじゃなくて待つもの』って教わったし、これくらいは当然だよ」


「へぇ、意外とレディに気を使う教育受けてるのね。関心関心。
……あの、お願いだからもう少し楽しそうな顔して欲しいんだけど」


「なるほど……。整形しろってこと?」


「違うわよこのバカっ! ……そんなに気分のらないの?」


「そういうわけじゃないよ。ほら、夕暮れを見てたら少しセンチな気持ちになってね」


「なにキャラ崩壊な発言を……」



気にしないで欲しい。つか、キャラ崩壊って言うな。どーにもね、気が進まないのよ


あー、帰りたい。だけど……ねぇ、これも問題か


仕事どうこうって考えるからあれなんだ。うん、シャーリーの言うとおりに、普通に遊びに来たって考えれば……いいのかもしれない


いや、狙われる事前提な時点でおかしいけどさ



「まぁ、素敵な彼女の前でこれってのもアウトだしね。こっからは勢い上げていきますか」


「そうしてくれると助かるかな。つまんなそうな顔されると、私も気分悪いし」



さて、そんなことを言っているティアナを見ながら、今回の突発的なミッションの内容を反芻する


ギンガさんの話だと、強盗がよく出没する時間帯は、今くらいの時間帯から深夜11時にかけて


狙われているカップルも、それほど大人ではない。大体僕達と同い年くらいだ


ようするに、終電は諦めて、そのままご宿泊・ご休憩な所に入ってお泊りな関係ではない


健全な付き合い方をしている感じで、少し弱そうでちょっと脅せば簡単に言うことを聞いてくれるような組み合わせを狙っているということだ


……なんていうかさ、三下の小物のやり口だね


こういう事件だと、胸糞の悪い話だけど女性が二次被害に遭う事も多い


今回の強盗事件では金品だけで、その手の事が起きてないのが救いだけど……いつ起きるとも限らない


……仕方ない。面倒事になって、胸糞悪くなる前に絶対に解決しよう


とにかくそんなわけで、僕も今回はちょぴっと弱そうな服装で来ている。とーぜん狙われるために


ちなみに、コーディネイトは、ギンガさんから話を聞いて今回のミッションについて知っている、はやてとシャーリーの2人にお願いした


ただ……色々ゴタゴタしたのは、言うまでもないだろう。つか、あいつら、楽しんでやがったし


まぁ、それでも辛い僕の心情をフォローしてくれたのはありがたかった


とにかく、僕は黒のインナーに、薄手の白いパーカーを羽織り、ジーンズ生地のパンツ。スニーカーを履いている


そして……これははやての入れ知恵なんだけど、伊達で、フレームの細い眼鏡をかけている。(シャーリー印の特別品)


なんていうか、弱そうっていうより秋○に居るオタクっぽい格好なんじゃないかとちょっと思う


……あ、でも最近はそんなこともないのか。みんなかっこいい格好してたし


そして、今回の恋人役であるティアナの格好はというと……


白のワンピースに、紺色の長袖で薄手な上着を羽織っている。髪型は、さっきも言ったけどストレートのロングヘアー


……夢? いや、現実だよね。ミッドチルダだし。あー、いつまでこのネタ引きずるんだよ。もうみんな飽きてるはずなんだからやめようよ



「それじゃあとっとと行きましょ」



ギュッ!



「へっ! あの……ティアナっ!?」



ティアナが、いきなり僕の左手をギュッと握ってきた。でも、ただ握るんじゃない


こう……五本の指と指を絡めて簡単には離せないようにして……いわゆる、恋人繋ぎっていうやつで握っている



「こうして手を繋いで、一緒に街を歩いていれば、恋人同士に見えるわよ」


「いや、それはそうかもしれないけど………」


「どうしたの? 顔、真っ赤だけど」


「な、なんでもないっ! なんでもないからっ!!」



うん、なんでもないからっ! ……まさか、ティアナにこんなアプローチされてドキドキしてるなんて……言えないし


内心、動揺しまくっている僕を、ティアナはキョトンとした顔でこちらを見ている


動揺してないのかな? まぁ、こういうことする相手が居たとしても不思議はないか。ヴァイスさんとか。……なんか、ちょっとむかつく



「それで、これからどうするの?」


「……アンタ、デートプランの構築は、男の子の役目よ?」


「まー、それもそうか。……とりあえずは打ち合わせどおり、ウィンドウショッピングをしている感じで、繁華街の方を回りましょ」


「了解」



そうして、僕達は広場から、首都の繁華街へと歩き始めた。……当然、手は恋人繋ぎで



魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常〜異邦人と古き鉄〜


第九話『話して分かることがある。一日一緒にいて、なんとなく分かることもある……あの二つ名だけは認めたくないな』

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

……なんでよ。なんで私、こんなにドキドキしてるの?


表面上は平気な顔を装っているけど、身体の中がすごく熱い。いつ、コイツに悟られるんじゃないかってビクビクしてる


で、でも……八神部隊長とシャーリーさんから……これくらいしないとダメって言われたし


私も、実際そう思うし……ここでやめるわけにはいかないわよね。てか、成功って本当になに?


コイツは……どうなのかな? 顔真っ赤にしてたし、やっぱり恥ずかしいのかな?


私は……恥ずかしい。別に、コイツとこうしているのが嫌っていう意味じゃない。なんていうか、少し不思議な感じ


やっぱり、初めて……だからかな? こんな風に、男の子と……その……恋人みたいな手の繋ぎ方するのは


あとは……これで、コイツのイライラとかが、少しは納まってくれると……いいんだけど。私はともかく、スバルが、やたらと気にしてんのよ


なんか、説教してた時にアルトアイゼンがキレかけてたとか言ってたし。まったく……

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

お、ティアナは積極的だな。恭文の奴、顔真っ赤にしてら


フェイトじゃないけど、こうしてみると恋人同士に見えるな。お似合いともいう、恭文に言ったら怒られそうだがな


それはいいとして、はやてから説明された状況は、今みたいな時間帯で繁華街を歩いていると、20代前半くらいの男連中5、6人にいきなり囲まれナイフを突きつけられ


そのあと、裏路地に連れ込まれ、男の方は殴る蹴るの暴行


そして、怯えきって抵抗の意思を失くしたカップルから金目の物を強奪し、バカにした笑いと共に立ち去る……なんとも幼稚で腐ったやり口だ


バックに何かしらある可能性も否定できない。恭文も当然その辺りは想定しているだろう。アイツの場合必ず吐かせる、それは断言できる


しかし、この頻度からしてそろそろエスカレートしてもおかしくないな


つまりは女性が二次被害を受けるということだ。それを危惧して恭文とティアナの囮デートに踏み切ったんだろう


今、恭文とティアナはウィンドウショッピングなんかをしている。青いワンピースを2人で見て話している……

うん、誰が見てもデートだ、って恭文の奴頬を引っ張られてやがる


……なにか不用意な発言でもしたんだろうな



《マスター。他人のデートを覗き見して、独りでクレープを食べているなど寂しすぎるぞ?》


「うっさい。気の進まない仕事なんだから、これくらいは許されるだろうが。それと寂しい言うな」



ああ、イチゴのソースと生クリーム、バナナの輪切りを包んだクレープのなんと美味しいことか……


恭文がティアナを待っている間に3つ買っておいたのだ


残り2つ?
もう食べた。ブルーベリーとチョコのソース違いのクレープだ。あの2つも美味しかったな


お、恭文とティアナは俺とは違うクレープ屋に向かったな。あの2人が離れたらまた買うかな



《食い過ぎだぞ、マスター》



好きなんだからしょうがないだろ。これくらいの楽しみがなきゃやってられん

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

しばらくウィンドウショッピングをしていると、クレープ屋を見つけたので、僕の提案で食べる事にした


だって、ずっと繁華街歩きっぱなしなんて行動を誰かに注目されたら、私服パトロールだって気付かれる可能性があるし


店の中には入れないけど、多少は緩急つけとかないとだめでしょ


ちょうど、その店の周りに椅子が置いてあったので、そこに腰を落ち着けて、周囲の様子に気を配りつつ、間食タイムとなった



「……おいひー♪」


「ホントね。これは……レベル高いわ」



クレープの味に、僕もティアナもご満悦だった


僕は、イチゴと生クリームたっぷりのものを。ティアナは、季節限定の栗とマロンクリームたっぷりのものを


いや、このクレープ屋さんは当たりだよ。仕事じゃなければ全メニュー制覇したい気分だ


生地はもっちりとしてて噛む度に心地のいい感触が口の中に広がる


イチゴや、生クリームも同様に素晴らしい。仕事の疲れも吹き飛ぶ甘さが素晴らしい。でも、しつこかったりはしない本当に程よい甘さ


それを、一緒に売っていたお茶と一緒にいただく。少しだけ冷たくなった風が肌寒い。だけど……なんだか心は温かい



「……口元にクリームついてるわよ?」



そう言われて、指でクリームを拭こうとする。でも、それは無理だった



「これで取れたわよ」



ティアナに、机に置いてあったティッシュで拭いてもらったからだ。……ありがと



「はい、どういたしまして」


「うむぅ……、ティアナはこういうのないよね」


「なにが?」


「口元になにかついてるーとかさ」



見た記憶がない。そういう隙というか、ドジなところというか………なにげにシャーリーと同じで完璧超人?



「そんな、完璧超人なんかじゃないわよ? 普通にドジだってするし、隙だってあると思うけど」


「いや、見てるとそんなにないから」



パートナーのスバルは隙だらけなんだよなぁ。というか、ツッコむ要素満載? 主に思考なんだけど、どうしてこうも違うのか……



「どうしたのよ?」


「ん? いや、ティアナの隙がないかなと観察してたの」


「もう、そんな簡単には出さないわよ」


「……ほら、出さないようにしてるんじゃないのよ。そういうのを完璧超人って言うんだよ」


「そうかしら?」


「そうだよ」



2人でクレープを食べながら、そんな会話をしてると……なんでだろ? 後ろから気配が……


試しに、なんの脈絡も無く、気配のするほうをバッと見てみる……なにもない



「どうしたの?」


「あ、なんでもないない。ちょっと視線を感じたんだけど、気のせいだったみたい」



真剣な顔で聞いてきたので、手を振りながら答える


もう一度気配を探ってみるけど……やっぱり感じない


犯人に目をつけられたのかな? それならそれでOKだけど、別口って可能性もある。一応、警戒だけはしとくか

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

うわ、危なかったー! 恭文、いきなり振り向いてくるんだもん。ビックリしちゃったよ


でも……、あのクレープ美味しそうだなぁ


そう、私は、恭文とティアのデートを尾行中だった。だって、ティアがやたらめかし込んで出て行ったのが気になったんだもの


ちなみに……服装は、尾行していますーっていうそれっぽい服装になっている


でも、恭文とティア。お忍びデートって感じの格好だね


恭文は眼鏡かけてるし、ティアは髪を下ろして……おぉ、ストレートヘアーだね。『いつもと違う私を見て?』ってことなのかな?


まぁ……ティアにそういう相手が出来たのは、訓練校時代からの公認カップルとしてはちょっと寂しいけど。というか、2人ともひどいよっ!


そういう関係なのに、私に内緒にしてるなんてさ。なんか疎外感感じちゃ……あ


ひょっとしてティアが模擬戦の後も普通にしてたのって、そういう関係だったからっ!? いつのまに―――!!


アレかな? 執務官だからっ!? 恭文、執務官なら誰でもいいんだっ!!


とにかく、私は、ゆっくりと2人の跡を追跡した


……本当に気をつけよう。恭文、妙に勘がいい時あるし、アルトアイゼンもいるし、気を抜いたらすぐに気付かれそうだよ

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

《マスター、アレはどうするべきだと思う?》



言うな。無視したいんだから……


恭文とティアナの2人にばかり意識を向けていた俺だったが、恭文が向いた方向を見た瞬間に目眩がした


なんでかって?

スバルがあからさまに尾行してますって格好で茂みに隠れてるからだ


確か、あの2人のフォローを頼まれたのは俺だけだよな。はやてもスバルにも頼んでるなんて一言も言ってなかったし


さすがに、俺にまで秘密にする必要はない……


ラミア、回線を念話に固定してはやてに繋げ



《了解したマスター》



しばらく待つと……



“どないしたん、レイ?”



はやてと念話が繋がった



“どないしたもこうしたもない。スバルも尾行してるんだが……はやて頼んだか?”


“はぁぁぁっ!? うち、知らんでそんなこと!”


“そうか、スバルの独断か……仕事とか良いのかアレ?”



ああ、頭を抱えるはやてが見えるようだ……



“そういえば、エリオとキャロからスバルの姿が朝から見えんって言っとったな。まさか、囮デートを尾行しとったとは……予想外や”



そうだよな、予想外だよな。しかも、あの様子からすると……



“ホントのデートだと思ってるだろうな、アレは。俺はどうしたらいい?”


“そか。ホンマはスバルと合流して事情を説明して欲しいんやけど……”


“スバルの性格からしたら『私も』って言い出すな。だが、それは却下したい。
スバルの奴、恭文に気付かれかけた……下手したら俺まで気付かれかねない”


“わかった。なら、スバルはそのまま放置しといてええよ。いざとなったら恭文とティアが対処してくれるやろ。レイはもしもの時の為に警戒しといてな”


“了解。それじゃ、またな”



はやてとの回線を終えた。その間も尾行は続行中……手に持ったクレープをパクりと食べて、スバルにも気を配る


歩き出した2人のあとをスバルの後方から尾行する……なに、この状況?


今さら言っても仕方ない。それから数m進んだ辺りで、不審な7人の男が恭文とティアナに近付いているのに気付いた……



「ラミア」


《1人に魔力反応及びデバイス反応を感知した》


「種類はわかるか?」


《簡易式のストレージデバイスだな。報告にあった人数よりも1人多いということは最近入った仲間だと思われる》



そうだよな。今まで魔法で脅されたなんて報告はない。なら、最近仲間になったとみるのが普通だな……


案の定、その不審な集団は恭文とティアナを取り囲み、裏路地に連れて行こうとしている


それを見てスバルが慌ててどこかに走り去っていった……放っといて大丈夫だろ


まったく、恭文もこんな時に不運スキルを発動させなくても……ラミア、はやてに魔法使用許可と飛行魔法許可の申請を頼む


アルトアイゼンに念のため俺が居ることも伝えておけ、狙撃の準備を整えるぞ



《了解しちゃいますの》

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

とりあえず、妙な追跡者の気配は感じない。……やっぱ気のせいだったのかな?


クレープを美味しく食べたあとは、また手を繋いで、くだらないことを話しながら繁華街をぶらぶらウィンドウショッピング


と言っても、僕達が管理局の人間だと気付かれそうな話題は避けている


事前にそういう取り決めをしていたからだけど、犯人たちの耳に入って、気付かれる可能性もあるし


さっきから、またもやアルトが黙っているのが気になっている方もいると思うけど、それが理由である


……管理局所属どうかはともかく、魔導師ってバレたら絶対に警戒されるし。まぁ、ちょっと楽しくなってきたね


そりゃあ僕だってお年頃。女の子と2人で出かけるっていうシュチュエーションは……今までもあった


すずかさんに休日に無理やリひっぱり出されて、ジャンクショップ回りに付き合ったり


……10数キロって荷物を持たされて長時間歩いた時は、本気で暴れたくなったなぁ。いや、途中から肉体強化の魔法使ったけど


美由希さんの服の買い物に付き合わされたり


……下着売り場に手を引かれて突撃させられそうになったのは、本気で抵抗したなぁ。無駄だったけど


しかも店員に女の子と間違われて、あやうく試着させられそうになったし


はやての……やめよう。あれは思い出すと頭が痛くなる


大晦日なのに、熱気ムンムンで人がゴミゴミしてて辛かったし


というか、12歳の男の子にあんな物買わせるなよ。そりゃあ八神家の自宅に帰りついたあとに、はやての部屋で回し読みしたけど


でも。今ティアナと居る時間は……それらとはちょっと違う


本格的にデートっぽい感じだからだろうなぁ。なのは達と出かけると、どうしてもギャグ臭が……


あ、フェイトと出かける時とちょっと近いのかも知れない。こう、本当にデートしてる感じ


そう思った次の瞬間。それはやってきた


背中に、冷たい刃の感触。僕らを取り囲む、害意を持った気配。……お客さんか



“来たわよ”


“分かってる。……こうも簡単に釣られてくれるとはね。間抜けを釣るのに餌はいらないってやつ?”



僕達2人を取り囲む7人の男


服装だけを見るなら、ちょっと素行の悪い若者といった感じのラフでパンクな若者だ


冷たい切っ先の感触が、少しだけ強くなる。……恐らく、ティアナも同じ



「死にたくなかったら、来い」



耳元で聞こえた、不愉快な音程のしゃがれた声


明らかにこの状況を楽しんでいる。恐らく、僕に抵抗をされて、黙らせるために刺すことになったとしても、その心境は変わらないだろう


……ヌルイね。ま、この場は抑えててあげるけど


まぁ、この状況は願ったり叶ったりなので……当然、連中に囲まれた状態で路地へと入っていく


路地の入り口につくと、僕達2人が先頭を歩く形になり、そのまま奥へと進んでいく


そうして連れ込まれたのは、行き止まりになっている路地裏。と言っても、道幅は結構広い。車一台分くらいなら入れそうだ


普通なら、数も多いし、相手は凶器持ち。絶体絶命な状況。もちろん、普通なら……



「随分楽しそうじゃねぇか坊主。こんな綺麗な彼女を連れて歩いてよ?」



僕達……というより、ティアナを品定めするような目でこちらを見ている悪党その1


顔だけ振り向きながらその様子を見ていると、他の連中も下種な笑いを浮かべている


いや、よかったねティアナ。綺麗だそうだよ?



「つーわけで、お前には勿体ないからよ」



どういう意味だ



「このねーちゃんは俺達で遊んでやるよ」


「だなっ! 姉ちゃん、俺達と楽しいこと、しようぜ〜?」


「大丈夫大丈夫、俺たち、すっげ―――――優しいからっ! ひゃひゃはははっ!!」



……ようするに、ティアナで『自分達だけが楽しいこと』をしようとしているわけだ。ちょうどいいタイミングだったのかな?


強盗だけで終わらせるのに飽きて、行動内容のエスカレート。よくある話だわ。全く、不覚にも関わってよかったとか思ったじゃないのさ


そんなことを思って、悪党その2・3・4の話に耳を傾ける。



「おいおい、そんなことしちゃったら、俺達犯罪者だぜ?」


「いいじゃねぇか、どっちみち、強盗したりしてるし……犯罪者なんだしさっ!」



僕達に対して、ナイフを突きつけてきている悪党その5・6が、耳障りな言葉を並べると、その他のやつらも、それにのるように楽しそうに笑う



「ひょっとして、カップルばかり狙っている強盗って……。い、いやだ……。助けて……」



少し、怯え気味な色を付け加えて、僕はそう聞いてみる。確認は大事ですよ。間違ってたらアウトだし


そしてティアナ、ちょっと笑いそうになるなっ!

とにかく、返事は後ろにいる悪党その5、その6から帰って来た



「そうだよ。……くくく、楽しいぜぇ、幸せそうにしている、お前らみたいな連中をこういうとこに引きづりこんで、じっくりといたぶるんだよ」


「そうすると、女の方とかが、涙目で『もうやめてください!』とかいいやがるんだよっ! 
それが楽しくて楽しくて……ついついこうしたくなっちまうんだよっ!!」



そう言って、悪党その6がティアナに抱きついてきた。……色々と限界を超えた。自分でそう思った


首筋にはナイフが突きつけられ、空いたほうの手は、胸元へと、ゆっくりと忍び寄っていた



「……ねぇ、一つ賭けをしない?」


「賭け?」



そう、賭けだよ。楽しい楽しい賭け


僕がそういうと、胸へと伸びかけていた悪党その6の手が止まった


今まで無言を貫いてる悪党その7以外の反応は同じ。『いきなり何を言い出すんだこのガキは?』といいたげな表情


悪党その7の反応は気になるけどこのまま話を進める



「もし、おたくらがその賭けに勝ったら……彼女の事、好きにしていいよ。お金もあげる」


「おいおいっ! いいのかよそんなこと言ってっ!?」


「そうだぜ、別に殺すわけじゃないんだしよ。大事な彼女ならちゃんと守るとかしようぜ〜?」



あいにく、大事な仲間で友達ではあるけど、いまんとこ彼女になる予定はない。つか、本命でもないし


ついでに、ティアナなら、お前らが×12になったとしても相手にならない


こういう話をすると、フェイトもなのは達も苦い顔するけど、魔導師と一般人の差っていうのはそういうもんだと思ってる


殺そうと思えば……普通の人間なんて、いくらでも殺せる。当然、僕も


ティアナは、そんな僕の言葉を黙って聞いている。大丈夫、ちょっとだけ……



「いいぜ、乗ってやるよ。どんな賭けだ?」


「すっごく簡単だよ」



そこまで言うと、僕は懐から一枚のカードを右手で取り出す。金属製の、さく○カードサイズの薄いカード


それを、片手で空へ放り投げるっ!


これらの行動は、全て一瞬の事。まるで、銃の早抜きのようなスピードで懐から取り出されたカードが、宙を舞う


次の瞬間、男達と僕とティアナが居た空間を、金色の雷撃が埋め尽くした


……その雷撃は一瞬だった


その場に居た全ての人間を打ち貫き、蹂躙し、踏みつける。そして、男達は倒れる


ま、復活されると厄介だしね。これくらいはさせてもらう



「……で、ティアナ。大丈夫?」


「当然よ。つか、合図無しってどういうことよ?」


《私がクロスミラージュには合図を送っておきました。問題はありません》



そう、僕達はあの雷撃の中、平然と立っていた


もちろん、ナイフを突きつけられていたので、その辺りの安全を、フィールド系魔法を使用して確保した上で


なぜこうなるのか? 簡単である。だって、事前に打ち合わせしてたし


ティアナとクロスミラージュには、今の電撃を完全に無効化出来る、魔力フィールドの構築データを事前に渡してある


それを発動させれば……ノーダメというわけだ。当然、僕とアルトもね


いや、フェイトには感謝だよ。それが出来るように、あえて小さな穴を作る形で、魔法組んでくれたんだから



「あぁ、それといちおう言っておくね。賭けの内容は……」



僕はニッコリと笑い、ピクリとも動かない男達に言い放った



「この一撃で立っていられればおたくらの勝ち♪」


「……倒しておいてなに言ってるのよアンタ」


「気にしない……」


「なら、俺の勝ちだな……」


『え!?』



立っていたのは僕とティアナだけじゃなく、デバイスらしき杖をこちらに向けて笑う悪党その7の姿がそこにあった

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

まったく。ちゃんと確認しとけよ


あれくらい恭文とアルトアイゼンなら簡単に切り抜けられるが……もし非殺傷じゃなかったらティアナが危険だ


同時に恭文も危険になる



「ここは俺の出番だな……」



俺がどこにいるかというと、上空2000mの高さで、ラミアをセットアップしている


今回のフォームは『アンジュルグ』


遠・中・近すべての距離に対応できる万能型だ


ジャケットは、黒いズボンと長袖のタンクトップを基盤に流線型の肩当て、背中に黒い機械翼が展開され、右腕には固定された盾を装備している


さらにズボンを覆うようなスカートがあり、側面と背後を囲っている


黒い西洋の騎士甲冑……しかも、女性寄りだ


武装はサーベルと弓の2種類で、今は弓を持っている


さて、狙い撃ちますか……



「ラミア。シューティング・アロー、スタンバイ」


《Shooting arrow Standby》



俺は弓を構え、赤黒い魔力の矢を魔力糸にセットし狙いを定める


狙うは急所……非殺傷だから死ぬことはないだろう。向かい側の壁に縫い付けるつもりだから、多少痛いだろうが……悪さした罰だと諦めろよ



「―――、ショット!」


《Shot》



赤黒き矢は、空に尾を引きながら、恭文とティアナに杖を突きつけて笑っている男の背中目掛け突き進んでいった……

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

どうするよ、この状況……



“大丈夫ですよ”



僕が悩んでいると、アルトが突然念話で大丈夫と言ってきた



“どういうことよ?”


“そうだね。いちおうピンチよ、僕ら”



ティアナにも聞こえてるらしく、僕と同様に何が大丈夫なのか分からないようだ



“ラミアから通信がありまして、近くに待機しているようですから”



ラミアから?

じゃ、レイが来てるんだ


僕がそれに思い至った瞬間……



「がっ!?」



目の前の男に赤黒い矢が突き刺さり、僕とティアナの背後……裏路地の行き止まりに叩き付けられ、矢がそのままバインドとなって壁に縫い付けられた



「え!? クロスミラージュ、今のどこから!」


《索敵範囲外からの狙撃です》


「この魔力の色と方法からして」


《レイさんですね。相変わらずの狙撃技術です》


「え、クロスミラージュの索敵外からの狙撃って……アイツそんなこともできたの!?」



そう出来るのだ。今回は矢だったからアンジュルグの方を使ったみたい……まぁ、もう片方の遠距離砲撃用を使われたら僕達まで巻き添えだから助かったんだけど


僕が安堵していると……



『恭文、ティアナ。ご苦労様、でも魔導師がいるかもしれないって考慮しなかったのか? だったららしくないぞ、恭文』



通信モニターが開き、アンジュルグフォームのレイの姿が映し出された。ちゃんと考慮はしてたさ、だからカード使ったんだし



『それで耐えられて、デバイス突き付けられたら目も当てられないだろうが。ま、俺の仕事はこれで終わり。あとの色々はお前とティアナに任せるから、じゃあな』



と一方的に切りやがった。レイがやったことまで僕達が書かないといけないわけ?



「ねぇ、アイツの狙撃についても私達が書かないといけないの? どんな状況でどんな魔法を使ったのか解らないのに、無茶振りじゃない?」



それは同意見だよ。よし、はやてに言ってレイを派遣してもらおう


ま、その前に男たちにバインドをかける。逃げられても困るし、さっきみたいな抵抗はもっと困るしね。で、一応……必要なことかと思い、話を始める



「……というか、ティアナ、ごめん」


「なにがよ?」


「不安にさせるようなこと言ったから。だから、一応謝っとく。ごめん、ティアナ」


「いいわよ別に」



へ? いいのっ!? てっきり、怒られるかと思ってたんだけど



「もちろん、あとでお説教よ?」


「……やっぱり」


「ま、打ち合わせもしてたし、アンタは間違ってもあんな風に見捨てるようなやつじゃないでしょうから、大丈夫だとは思ってたけどね」


「そっか。……ね、それならお説教はやめて?」


「ちゃんとするわよ。
それとこれとは話が別。私だからよかったけど、本当の彼女だったらどうするのよ?
あんなこと急に言われたら、不安で泣いちゃうわよ」


「大丈夫だよ。ほら、僕みたいな性悪で素直じゃなくて捻くれ者は、彼女なんて出来ないし」


「そういう問題じゃないわよっ! つか、ふざけてんじゃないわよっ!!」



はい? あの……ティアナさん。いつもの軽口のつもりだったのですが……。なぜにキレる



「アンタがバカなこと言うからでしょうがっ!
その……あれよ。色々あるのかもしれないけど、そんなこと言うもんじゃないわよ。大丈夫よ、今日みたいな感じでやってれば、問題ないから。
だから、もう二度とそんなこと言わないこと」


「いや、前に自分が言ったことでしょうが。ティアナにそんなこと言われる筋合いないし」



そう、以前ティアナが僕に言ったことである。それでなぜにそんなことを言われなきゃいけないのかがさっぱりである


そんな感情を顔に出しつつそう言うと、ティアナが苦い顔をした。そして……結構真剣な顔に変わった



「……謝るわよ。その、あんな事言って、悪かった。それでアンタのこと傷つけてたなら、謝る。
だからそんなこと言うんじゃないわよ。私も、もう絶対に言わない」



ティアナが妙に真剣だったので、納得することにした。あれ、おかしいな。なんでこんなことになってるんだろ。なんか、変だ。……ん?


なぜだろう、明りがこちらに迫ってきて……って、管理局員っ!?


そう、この辺りに駐在していると思われる地上部隊の制服を来た局員が数名、こちらへと走ってきたのだ



「さすがティアナ、連絡早いね」


「私は連絡してないけど……アンタじゃないの?」


「いや、僕じゃないし。……アルト?」


《残念ながら私も違います。……というか、今回は私の出番少なすぎです》



だって仕方ないじゃないのよ。いつもの調子で喋ってたら、魔導師だってバレちゃうんだし


じゃあ、レイ? いや、あの口振りだと絶対してない


なら、クロスミラージュ? いや、それならティアナが気付かないはずないし……じゃあ、誰?



「恭文ー! ティアー!! 大丈夫ー!?」



……なにしてんのこの人

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「……うん、わかった。こっちのことは心配せえへんでもえぇから。レイはちゃんと派遣したるから安心しときや。ほな、お疲れ様」



そこまで話して、うちは通信モニターを落とす。……いやぁ、無事に解決したみたいでよかったわぁ



「蒼凪ですか?」



そう聞いてきたのは、シグナム。当然、今回の囮捜査についても知っとる。で、この場にはもう2人



「はやて、どうだった?」


「ラブラブですか?」


「シャーリー、それは違うよ。囮捜査なんだから」



いや、うちも思ったけどな。……そう、フェイトちゃんとシャーリーも居る。まぁ、関係者やしな



「まー、ラブラブはしてないけど、ブラブラしとったら、思ったよりもはよう獲物が引っかかったらしくてな。スピード解決や」



いやぁ、さすが恭文やわ。いい感じで即効カードを引き当てとるし。うちはやってくれると信じてたで


捕まえるためにまた一回とか使ってもめんどいやん?



「よかった……。あ、ヤスフミやティアは大丈夫かな。怪我とか、してない?」


「それも大丈夫や。つか、恭文おるのに、そないなことになると思うか?」


「ならないでしょうね」



うん、それはうちも思うてたわ。魔法が必要やと思ったら、非魔法能力者相手でも使うしな



「というか、使ったんだよね。アレ……」


「使ったらしいで? まぁ、フェイトちゃんがしっかり威力設定してるおかげで、特に大怪我っちゅうわけやない」



……恭文が犯人をぶっ飛ばすのに使ったのは、簡易型のカード型デバイス。アイツが常に複数枚常備しとる魔法装備や


カードに込めている魔法を、思念によるスイッチ一つで、一瞬で発動させる事の出来る、文字通りの手札


そして今回は、フェイトちゃんの広範囲型の電撃魔法を入れたものを作成して、持って言った言うわけや


ただ、弱点が一つ。一枚につき一つの魔法を、一回しか使えん。再入力は可能やけど、現場やったらそないな暇ない。基本的には使い捨てや


ただ、即効性は大きいし、使用分の魔力もカードに一緒に入れとる。せやから、発動時に魔力を消費したりもせぇへん


今回やったみたいに、他の魔導師の協力があれば、自分が使えん魔法も使えるしな。その利点が気に入って、アイツも常備しとるっちゅうわけや



「けどな……魔導師が混じってたみたいで耐えたもんもおったらしいで」


『えぇぇぇっ!?』



そら驚くわな。うちかてビックリしたし……



「まあ、そこはレイがなんとかしたらしいで? 安心しとき」



「あ、レイさんが……」



ま、後処理をみんな恭文に任せてそのまま帰ったらしいけどな……報告書作成も立派な仕事やで、レイ?



「耐えた者が居たことは私も驚いたが、レイが対処してくれたのだ……安心していいだろう。
カード使用に関してはテスタロッサ、仕方あるまい。アイツは、お前とギンガとの約束を守るためにそうしたのだからな」


「……そうですね。ヤスフミの手持ちの魔法だと、広範囲攻撃は少し被害が大きくなりますし」


「あいつ、魔法に関しては派手好きやからなぁ」



まぁ、仕方ないんやけどな。きっちり決めるということが出来んと、アイツはSクラスやストライカー級には勝てんし


ただ、うちとしてはちょっと意外やった。ティアの前でクレイモアとかぶっ放すとか思うてたら、フェイトちゃんに頼み込んで、即時鎮圧用にカード作成やし


……なんやかんや言うて、気を使ったのかもしれんな。あんま暴力的なことするのもアレとか考えて



「……それと、どうも今回のことをホンマのデートと勘違いして、スバルが後つけてたらしいんよ」


「スバルがっ!? そういえば、エリオとキャロが姿を見ないって言ってたけど……」


「まぁ、みんなには内緒にしてましたしね。確かにあのティアを見れば、そう思っちゃうかも」


「しかし、あいつは一体何をしているんだ。仕事もあると言うだろうに……」


「とにかく、恭文とティアは向こうで作らなあかん書類があるから、今日と明日は向こうでお世話になる、レイも明日は手伝いに派遣するし。
そいで、明後日から通常勤務に入る言うことになったから、よろしくな」


「了解しました」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

……見事な勘違いで、僕達を尾行していたスバルに、ティアナと一緒に軽く説教をかまして、六課隊舎へと帰したその後


僕とティアナ、犯人確保の知らせを聞いて駆けつけてきたギンガさんは、現場での処置をあらかた終えて、108部隊の迎えの車に乗っていた


そして、その中で、ある人に通信を繋ぐ。もちろん、事件の概要を報告するために



『……わかった。犯人の尋問は、管轄の部隊に任せることになったから、2人は明日中に報告書纏めて出しといてくれ。
それで、うちの仕事は一応終わりだ』


「わかりました」


「了解です」



僕達が通信している空間モニターに映るのは、108部隊の隊舎の中にある部隊長室


そこの机に座って、僕達の報告を聞いていたのは、この第108部隊の部隊長である、ゲンヤ・ナカジマさん


言わずと知れたギンガさんとスバルの父親である



『しかし、お前さんは相変わらずだな。魔法使って即効で潰すって……』



……お願いですからもうその話は勘弁してください。ティアナはなんか大丈夫だったけど、ギンガさんにお説教されたばかりですから



「つか、攻撃行動の制限は受けないって宣言したのに、なんで説教くらう必要があるのさっ!?」


「魔法使うなんて聞いてないよっ!」


「魔導師が魔法使わないでなに使うって言うのっ!? あれかっ! レールガンでも使えってかっ!!」


「そういう意味じゃないからっ!!」



全く……。なぜこんなことに?



『そういうわけだから、お前さんは報告書以外にも始末書の提出をしてくれ』


「なんでそうなりますっ!?」


『当然だろ。あんな場所で広範囲魔法の使用。問題大有りだろ。
それくらいはやんなきゃ示しがつかねぇだろ』


「そうよなぎ君。むしろ、それくらいで済んでよかったと思わなきゃ」


「う、うにゅぅ……」



うー、納得出来ない。あれくらいやんなきゃ反撃がくるのに……て、実際に反撃されそうになったし。つか、フェイトと相談の上でやったのになんで僕だけっ!?

レイなんて思いっきり魔法で攻撃してたじゃないのさ! 僕だけ怒られるのっておかしすぎますよねっ!?



『と、言いたいところだが……凶悪犯罪に発展する一歩手前を止められたし、魔導師も居たからな大目にみてやるよ。
つか、執務官であるお嬢の協力でアレだろ? だったら問題ねぇよ』


「ゲンヤさん、ありがとうございますっ!!」



あぁ、神様っているんだっ! 局員って最高ー!! 部隊員ってすばらしー!!



「部隊長っ!」


『まぁいいじゃねぇか。もちろん、やりすぎな部分はあったかもしれねぇが、それだって加減はしてるんだ。
つかギンガ、お前忘れてるだろ』


「なにをですか?」


『こいつが即効で潰してくれなかったら、危ないところだったかもしれねぇんだぞ?
まぁ、結果的には大丈夫だったらしいが、現に相手方に魔導師がいたんだしな』


「そ、それは……」



そう、僕はそういうのも考慮して、マジックカードを使って即効で勝負をかけた……耐えるとは予想外だったけど


あんな市街地で魔法ぶっ放されたら、僕達はともかく、一般ピーポーがどうなるかわからない。……目の前で人間が死ぬのは、気分悪いのだ


ま、殺した奴を、人道的理由やらで責める義理立ても、権利なんかも、僕は持ち合わせちゃいないけど


とにかく、味方内の模擬戦ってわけでもないし、当然相手の技量も不明。これじゃあどうしようもない。なので……


『即時鎮圧ってわけだろ?』


「先生と師匠の教えですけどね。『見敵必壊』ってやつです」



これまたなのは達には苦い顔されるけどね。でも、潰すべきときにしっかりと潰す


それを躊躇ったら……魔導師とか魔導師じゃないとか関係なく、死ぬ


戦いってのは、そういうもんだって先生と師匠、それにアルトから教わっている。それだけじゃなく、身を持って知っている


戦いの中で敵に、容赦なんてしちゃいけない。だから潰す。遠慮なくね(味方内の模擬戦は、この限りではありません)



「アンタ達もそうだけど、アンタの先生、いくらなんでも過激過ぎでしょ。というか、ヴィータ副隊長まで……」


「指導方針に関しては、先生と相談のうえで決めてたそうだからそうなったんだよ」


「それは分かるけど、だからってやりすぎるのはダメだよ。それは、本当にお願いしたいな」


「わかってるよ。状況に見合った感じで動くことにする」



ギンガさん、お願いだからその疑いの眼差しはやめて。怒られるの嫌なんだから


……あ、それはそれとして、報告書はきっちり作成しますので。さすがにこれは免除無理だし



『おう、頼むぜ。しかし、久しぶりだな。八神やギンガ、それにスバルからもメールで聞いてはいたが、元気そうで安心したぞ』


「えぇ。……なんとか元気です。色々あって泣いちゃうこともあるけど、僕は元気です」


『……話は聞いている。まぁあれだ、お前さんが悪いのは間違いないって……ことにしておこうぜ?
お前らの言い分も分からなくはねぇが、あいつらのアレは筋金入りだからな』


「そうしてます……。でも、ゲンヤさんも変わりないみたいで安心しました」


『おう、おかげさまでな。アルトアイゼンも元気そうだな。六課の連中に馴染みまくってるって聞いてるぞ?』


《おかげさまで、マスター共々六課のみなさんには良くしてもらっています。
本当に、特にあなたの次女の方には少しばかりお礼をしてやりたいくらいに……。
まぁ、今回の出番が少なかったことに比べれば些細な問題ですが》



まだ言うかアルト。そして、なにげに不埒な発言をしない。奇麗事言われてムカついたのは分かるけど


あ、それとゲンヤさんは、当然アルトがおしゃべりなデバイスかというのは知っている


というか……



『まぁそう言うなって。アイツのアレも筋金入りだからよ。
……そうだ。お前、明日恭文の書類作成が終わったらちょっと付き合え。気晴らしさせてやる』


《……分かりました。レベルはいくつにしますか?》


『最高レベルに決まってるだろうが。今度は負けねぇからな?』



むちゃくちゃ仲がいいのだ。ゲンヤさんの将棋で、いい対極相手になっている



「それで、父さん。なぎ君とティアには、今日は家に来てもらおうと思ってるんですけど」


『そうだな。俺も仕事が一段落したら帰るから、さきに向かっててくれ』


「あの、さっきも思ったんですけど、話が勝手に決まっているのが非常に気になります」


《マスター、いつものことではありませんか。何を今さら》



うん、分かってる。でもさ、一応抵抗するって大事だよ?


そうして、ゲンヤさんとの通信を終えて、僕達は108部隊の人に、ナカジマ家へと送って貰った

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「……長かったなぁ」



そう言って私は、布団の中で一人呟く。ここは、ナカジマ家のスバルの部屋


アイツとギンガさんと一緒にここに来てから、遅れて帰って来たナカジマ部隊長と一緒にご飯を食べた


それから、交代でお風呂に入る


ギンガさんとナカジマ部隊長は、アイツにお休みを言って自分の部屋に入って、アイツはリビングのソファーで寝ることになった


まぁ、部屋が無いそうだしね


というか、アイツが『ソファーで寝るというお泊りモードなことをしたい』などと言い出したからだけど。……いや、アイツは本当になんなの?


なんというか、ついていけない時がある


普通の、日常の中に居るアイツと、模擬戦なんかで戦っている時、今日みたいな実戦の場に立っている時のアイツとじゃあ、あんまりにも差がありすぎる


戦闘に入ると、一本線が切れるというか、過激で容赦が無くなるというか……。あんなもん使ってまでどうにかするとは、最初は思ってなかった


そして、さらに切れると……シグナム副隊長と戦ってた時の状態だ。戦いそのものを、完全に楽しんでた


もちろん、だからって、悪いやつだなんて思ってない


まぁ、アレよ。一日デートして、アレコレ話してみて、その印象は強くなったかな


でも、アイツはなのはさんやフェイトさん達とは違う。もっと言えば、私達とも違う。たまに、なんで友達なのかが気になる時があるくらいに


だけど、それでもいい奴だとは思う。別に、同じである必要なんて、無いしね


そんなことを思いながら私は、暗い部屋の中で布団に入ると、自分の右手を見る


今日、アイツとずっと繋いでいたその手を


今日は楽しかったかな。男の子とデートするなんて、初めての経験だったし


アイツも、なんだかんだ言いながらも、始まったら意外とちゃんとリードするのよね。自分は道路側歩いたりとか。話しやすい話題振ったりとかさ


ちゃんと男の子、出来るんだなって関心してしまったくらいだもの。まったく、普段からあぁしてればいいのに。まぁ、だからこそアイツなんだろうけどさ


だから、ちょっとキレちゃった。アイツ、自分がそういうことちゃんと出来るやつだっていう自覚無いんだから。全く


でも、私も悪かった。アイツのことあんまり知らなかった時の事とは言え、その時の話を持ち出されるとは思わなかったから……


なんていうか……うん。反省した。これからは、もうちょっとあれこれ考えて付き合っていこう


でも、アイツは……どうだったんだろ? 私と一緒に居て、楽しかったのかな


私、あんま楽しそうな顔とかしてなかったかもしれないし、つまんなかったかな?


……って、私はなに考えんのよっ! とにかく、今日の任務は無事に終了。明日は、報告書作成か。しっかりやっていきましょ


そう思い立つと、私は布団を被って、瞳を閉じた。そしてすぐに眠りについた。……一応、これだけは言っておくわ


おやすみ。あと、今日はありがとうね


ま、楽しかったわよ。ほんの少しだけね

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

……目覚まし無しでも、決まった時間に目が覚める。きっとそれはいいことなのだと思う


まぁ、その時刻が5時っていうのは……やっぱ若者としてだめなのかな?

もう5時間くらいプラスで寝てもいいと思ったりする



《それでは遅刻ですよマスター》


「ま、そうなんだけどね。……ふぁぁぁぁっ!」



ここは、ナカジマ家のリビング。昨日の捕り物を終えてからここに直行して、夕飯とお風呂をいただいてから、休ませて貰っていた


パジャマがちょっと少女趣味なんだけど……スバル、こういうのが好きなんだね


口に出したらなんで知ってるのかって突っ込まれそうだから、記憶の中に留めておくよ


とりあえず……顔を洗おう


昨日の夜お風呂に入った時に、ギンガさんにお客さん用のタオルや石鹸や歯ブラシなどなどの場所は教えてもらっている


それで、顔を洗って歯を磨いて……いや、寝ている間に虫歯菌繁殖してるだろうし


そんなことをしていると、後ろから足音が近づいてくる……。ゲンヤさんかな?



「お、早いな」



……ゲンヤさんだった



「お前、いま失礼なこと考えなかったか?」


「いえいえなにも。それはそうと、ゲンヤさんおはようございます」


「おう、おはよう。夕べはよく眠れたか?」



ゲンヤさんは、僕の隣りに来て、洗面台の蛇口を捻りながら聞いてきた



「えぇ、よく眠れましたよ」


《寝言で『フェイト……』と言ってましたが》


「ほぉ」



……アルト、嘘だよね? 僕、そんな夢みた記憶ないんだけど



《そうですね。今日は嘘です》


「今日って言うなっ! それだといつも言ってるみたいじゃないかよっ!!」


「お前、いい度胸してるな。あんな可愛い嬢ちゃんとデートしたその日に、夢で別の女と浅瀬か?」


「ゲンヤさんいきなり何言い出すんですかっ!? つか、アレはデートじゃないしっ!!」



いや、確かに楽しかったしドキドキしたけど



「そりゃそうだけどよ、やってることはデートじゃねぇか」


「だったら、報告書の作成はしなくていいんですね? デートが仕事なわけありませんから」



うん、僕にとってはそうよ?
たとえそれっぽくても。というか……アレを仕事として処理するのは、なんか……ちょっと躊躇いがある


昨日とは違う。だって、ティアナが色々気を使ってくれたお蔭で、楽しかったし



「いや、それは困る。……まったく、お前はあいかわらず口先で動くな」


「それが取り柄です」



と言って、ゲンヤさんは顔を洗う。別に、そういうつもりはティアナも無いと思うんだけどなぁ。僕よりいい相手たくさんいるでしょ。あれだけ可愛けりゃ


つか、僕はそれほどモテる要素があるとは思えないし。なにより、そういうのならフェイトとしたいかなって



《マスター、気持ちは分かりますが……。あの人、手強すぎますよ》


「……うん、分かってるよ。なんていうか、難易度高すぎだよ。SSSだよ。何週すれば攻略条件がオープンになるのさ」



フェイトと僕は、よく似ているところがある


性格とかそういうんじゃない、背負っている傷や痛み。その質が似ている


そういう事もあって、フェイトは僕にとって、リインやアルトや師匠、先生と同じくらいの理解者になった


他のみんなに言えないことでも、フェイトに対しては言えるようになって……。僕がハラオウン家でお世話になるようになったのも、それが大きい


そう、僕はフェイトが……好きだ。その気持ちは、今も変わってない


そりゃまぁ、たまにケンカしたりもする。年がら年中仲が良いわけじゃない。スルーされて、へコむこともある


だけど、それでも……なんというか、日々更新されてく感じで好きが深まってるのですよ



「そのあたりは八神から聞いてるぞ」


「あのタヌキ、許可無しに人の事をペラペラ喋るなよ……」


「まぁそう言うな。アイツはアイツなりに心配して、俺に相談に来たんだからな」


《具体的にはどんなことを相談されたのですか?》


「あぁ、お前さんが、お嬢にご執心で姉離れが出来ないって話をな。
お嬢以外の女の子に興味を持つようになるにはどうしたらいいのかって聞かれたんだよ」



男2人、洗面台で歯磨きしながらこんな話をしていると、友情が生まれそうな感覚がしてくる


まぁ、男同士が仲良くなるためには、女の子の話をするっていうのが手っ取り早いそうだしね


というかはやて、そんな心配をするなら、ドキドキスクリーンショットとか渡して僕を動かそうとするのはやめてほしいよ


色々とだめでしょそれは



「俺も同じことを言ったぞ」


「……そうですよね。まったくその通りですよね」


《そして、それ故の8年ですよ》


「らしいな。八神もそう言ってたぞ?」


「あの似非ラブクイーンは………」


「まぁそう言うな。恋愛経験があれば色々とやれることがあるんだろうけど、無いからどうしたらいいのか分からないって言ってたしな」



……はやて、そこまで言ってたんだ。仕方ない、今度なにかやらかしても、少し優しくしてあげることにしよう



「とにかく、お前さんも色々あるとは思うが、もう少しお嬢以外の女にも目を向けてみろ」


「いや、目を向けてるつもりですよ?」


「じゃあ、誰か興味のある女はいるのか?」


「うーん……興味……うーん、居ないですね」



ゲンヤさん、ため息吐くのやめてください。なんか、僕が悪いみたいじゃないですか



《すみませんゲンヤさん、こういう人なんです。バカじゃないのかって言うくらいにフェイトさんが好きなんですよ》


「いや、だって……僕は……」


「でもよ、さすがにそれはどうなんだ? 8年ってのは重いが、お前さんは若いんだ。新しい恋に走ったって損はないだろ」



ゲンヤさんの言葉に、僕は黙るしかなかった


……そりゃあ、それは考えなかったわけじゃない


まわりに、素敵だな綺麗だなって思うのはたくさんいるけど、でも……惹かれて、好きだなって思う相手は、いない


僕は……僕が好きなのは……



「なら、これからそういう相手を見つけてみればいいんじゃねぇか?
お嬢みたいに、自分と同じ物を持っていなくても、自分とは全く違うタイプだったとしても、お前さんが大事だと思える相手はきっといるさ。俺にとっての、クイントのようにな」



どこか遠い目をして、そう語るゲンヤさんを、僕はただ見ているしか出来なかった


ギンガさんとスバルの母親で、ゲンヤさんの奥さんであるクイントさんがどういう亡くなり方をしたのかは聞いている


そんなクイントさんの事に対して僕が、おいそれとコメントしてはいけないような気がしたからだ


そんな僕の様子に気付いたのか、ゲンヤさんがバツが悪そうな顔をして、それから笑いながら言葉を続けた



「そういうわけだからよ。魔導師の修行ばかりじゃなく、そっちの方も修行してみろ。もちろん、無理のない程度にな。
……あぁ、なんだったらうちの娘達でもかまわねぇぞ?」


「……ゲンヤさん、父親っていうのは、そういうのに対して否定の言葉をぶつけていくものじゃないんですか?
『お前に家の娘はやらんっ!』とか言って」


《マスターには落とせないということでしょうか?》


「それはそれで失礼だねおいっ!」


「そうじゃねぇよ。いやな、父親としてやっぱり心配なんだよ。ギンガはお前さんも知っての通りあれだろ?
で、スバルもスバルじゃねぇか。見合いの一つでもあればさせたいくらいなんだよ。
なぁ、俺はアレらに対してどうりゃいいんだ? 頼む、教えてくれ……」


「ごめんなさい。僕が果てしなく悪かったような気がするので、泣くのはやめてください」



なんて言う会話をして、男2人、親交を深めてからリビングへと戻ると、ギンガさんが朝食の準備にとりかかっていた


おはようと言ってから、それを僕が手伝って、ティアナもそれに途中参加。ご飯が出来上がると昨日と同じように4人で食事


それが終わって、後片付けが済んでから、ゲンヤさんの運転する車で職場へと向かう


そう、陸士部隊・第108部隊の隊舎へとだ。今日の僕のお仕事は、ティアナと一緒に、昨日の一件の報告書を作成すること


結構変則的なミッションだけど……いつもどおり、きっちりしっかりやっていきましょ





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