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頂き物の小説
第三話『本気と全力は微妙に違う……違いがわかるかな?』



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

警備部の打ち合わせがようやく終わった。あぁ、なんか憂鬱だよ

せっかくヤスフミが六課に来た最初の一日なのに……どうせなら最初から居たかった

はやてから昼間に来たメールだと、朝からやらかしたらしいし、落ち込んでたりしてないといいけど

でも、そこまで考えて、心配ないと気付く

ヤスフミはああいう性格だし、多少のことでどうこうは……ならないよね

それに、パートナーデバイスのアルトアイゼンや、みんなも居るわけだし、うん、きっと大丈夫だ

アルトアイゼンは………ちょっとアレだけど

とにかく、今は早く戻ろう。うん


魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常〜異邦人と古き鉄〜


第三話『本気と全力は微妙に違う……違いがわかるかな?』


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

『セットアップッ!!』


俺とシグナムの声が同時に響くと、身体にバリアジャケットが装着されていく

ちなみにバリアジャケットというのは分かりやすく言うと、魔導師用の防護服の名称だ

装着時は衣服が分解されて裸になるが、補正があるから直視しても……いや、女の子には駄目だぞ

まぁ、そこは常識だな。さて、説明している間にバリアジャケットが装着されていく


黒いズボンと長袖のインナー……ここまでは普通。その上に、簡素な銀の胸当てに鋭角的な黒い肩当て……拳から肘までを覆う隠し爪付きの黒い籠手、脛当てに金属の靴

紅いボロボロの外套を装着し、柄に銀の指輪がくくり付けられた刀が現れ、鞘に納められた所で掴む

これで、完成。見た目からして防御能力は低いだろう
しかし、機動力はかなり高い

このデバイスは俺特製で、かつての仲間の人格を基に造り、さらにその仲間が所属していた組織の機体のデータを基に武装を組み立てた。特性や戦法は色々教えてもらっていたから俺にとっても相性がいい


「……悪いな、ラミア。また恭文に巻き込まれた」

《気にしないで下さいです、マスター》


今喋り出したのは、俺のパートナーデバイス。AI搭載型のアームドデバイス『ラミア』だ

嘱託になった時からの相棒だ


《……ですが、マスター》

「どうした?」

《何故いきなりヴァイサーガを? また悪い癖だったりしちゃいますでしょうか?》


あ〜、追加。こいつは他の機能は優秀なんだが、基にした人物の影響か、ただ単に俺のミスか……言語系に異常がある。敬語を使って丁寧に話そうとすると、変になるのだ


「ラミア、敬語はいい…普通に話せ。それに悪い癖とはなんだ、俺は相手に合わせてるだけだろうが。なにがいけない?」

《そうやって、いつもピンチになるのはどこのどいつだ? 少しは自重したらどうなんだ?》


敬語をやめると相変わらず尊大だな。まあ、言いたい事は分かる……だけどそうでもしないと俺が楽しめないだろうが


《はぁ、まあいい。しかし、中尉と同じ場で戦えるとは……今から楽しみだ》


あ、あと中尉ってのは恭文のパートナーデバイスのアルトアイゼンの事な。まぁ、なんでかはスパ○ボOGを見てくれ


《それはさておき……彼女を放っておいて構わないのか? 睨まれているぞ》


……ヤバ
その言葉に俺は意識を前へ向けると、既に戦闘準備万端のシグナムがいた……物凄く睨んでるし


《あなたっ! 何をやってるんですかっ!? 初登場から5分も経ってないのに面白キャラ認識が広まっちゃったじゃないですかっ!!》

「お前のせいじゃボケッ! つーか、自業自得だからねっ!?」


恭文の所は俺の方より酷いことになってるみたいだな。尊大だけどハッチャケない相棒で良かった……これが試作で造った方だったら…考えたくないな

さて、気持ちを切り替えますか。シグナムのバリアジャケットは、首には黒の襟に髪と同色のインナー。そして白いジャケット

下はインナーと同色のスカートと、その上にジャケットと同色のスカートの二重構造だ。さらに側面の太股の場所には銀の鎧を装備している……最後に特徴的なポニーテールは黄色いリボンで巻かれており、手には剣

ヴィサーガなら面白い戦いができるだろ


「……貴様、二度も私を待たせるのか?」


シグナムが少し獰猛に笑む……その笑みで睨むのやめてくれんかね、かなり怖いんだけど…悪いのこっちだし仕方ないけど


「悪いね。もう待たせない、ここからは大いに楽しもうじゃないか……いくぞ!」


俺も笑みを浮かべながら腰を落とし、一気に間合いを詰める

シグナムも呼応するかのように突っ込んでくる……


『はっ!』


斬撃が交差する。……中々の打ち込みだ
感心するのも一瞬…俺とシグナムは互いにすれ違う

しかし、即座に振り返り、互いの武器で障壁にぶつけ合う


「やるな、シグナムッ!」

「貴様こそっ!」


お互いに笑みを浮かべ合い、剣と刀をぶつけ合う……。一進一退、どちらも引かぬ剣戟の嵐

俺が楽しいと感じるように、シグナムも楽しそうに……また、交差した

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

今、モニターにはレイとシグナム副隊長が戦っている姿が映し出されている

というか、二人とも笑いながらとんでもない速さで切り結んでるし……


「……また、バトルマニアが増えるのか……」


ヴィータ副隊長が頭を抱えてる……まぁ、これを見ればその気持ちもよく分かります


「凄いです、あのシグナム副隊長と互角なんて……」


まぁ、エリオは眼をキラキラさせて見てる……確かにすごい。どっちも譲らないし……どっちが勝つのかしら?

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


うん、めっちゃ楽しい♪
これだけ長く戦えるなんて久しぶりだ……これなら、出しても大丈夫かな?


「はぁっ!」

「くっ……」


俺は力ずくでシグナムと距離を離し、刀を鞘に納めて、最初よりも腰を深く落とす……

俺の行動に何かを感じたのか、シグナムはカートリッジを一発消費して刀身に炎を纏わした


「桜華……」

「紫電……」


鞘の中で、一つの魔法を発動させ、刀身に纏わす……いや、集束させる

そして、俺とシグナムは同時に踏み込み…


『一閃っ!!』


赤黒い刃と紫炎を纏った斬撃……その二つがぶつかり合う事により大爆発が発生した

俺はその時に起きた爆風で、多少バランスを崩し……


「くあっ……」

「はぁぁぁぁっ!!」


爆煙の中から飛び出してくるシグナムに対して反応が遅れた……だがっ!


「疾ッ!」


俺は振り下ろされる斬撃の横に鞘を当て無理矢理軌道を外す……よしっ!


「ふっ」

「なっ!?」


だが、レヴァンティンを弾いた俺の横っ面に、シグナムは弾かれた反動を利用して鞘を叩き込んできた。俺は咄嗟にシールドを展開して防いだが……耐えきれず吹き飛ばされた


「ぐっ……烈火飛刃!」


吹き飛ばされ地面を滑りながらも、俺は炎の魔力刃を顕現しシグナムに撃ち込む!
魔力刃は命中し派手な爆発を引き起こした……これで追撃を少しだが遅らせられるだろう

俺はその隙に体勢を立て直す


《マスター、無事だったりしないですか?》

「……無事だったら良いのか、そうじゃないのか、どっちだ?」

《もちろん、無事の方がいいに決まっている》


まったく、言語機能を直すには最初から組み直さないといけないし……めんどくさいけど試してみるか?
なんか、無駄に終わりそうだからやめとくか

軽く思考していた間に、魔力刃が命中して起きた煙が晴れると、シグナムが無傷で平然と立っていた


「おいおい……無傷かよ」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ふむ……なかなかやる
さすがは蒼凪の知り合いと言った所か……これほどまでに楽しめるとは思っていなかった

だが、まだ全力ではないな……
噂では、変幻自在と聞いているからな。今の奴は高機動による剣戟のみ、といったところだろう……

能力限定を受けているとはいえ、私相手に全力を出さずに食らいつく……
ますます全力が見たくなったぞ、レイよ


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ゾクゥッ!?

な、なんだ!?
この悪寒は……なにか好くない予感がひしひしとするんだが……早々に終わらせた方が得策か?


「レイよ、なかなかの腕前だ……だが、そろそろ全力を出してくれないか?」

「全力……か。つまり、俺の戦い方なんかは聞いてるんだな?」

「無論だ。変幻自在で容赦の無い戦いをするそうじゃないか。今のお前の戦い方は変幻自在とは言わないだろう?」


ふむ、そこまで知られてるなら出そうかな。別に隠してるわけじゃなし

うし、そういうことなら……


「ラミア、アシュセイヴァーを」

《Foam Change AshSaver》


ラミアが俺の声に応えた瞬間、バリアジャケットが黒いズボンと長袖のインナーを残しすべての武装が解除される

その隙を逃すシグナムじゃあない。素早く間合いを詰めてくる

セオリーで行けば準備が整う時間を稼ぐために距離を取るのが無難だろう

だが、俺もシグナムと同じように間合いを詰める!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

モニターには、レイさんがバリアジャケットを解除して、そのまま突っ込んでいく映像が流れている


「シグナム副隊長に素手で!?」

「おいおい……何やってるんだよ」


ヴィータ副隊長とティアナさんが驚いてる……それは僕も同じ
レイさんはなんでバリアジャケットを解除したんだろ……あ、なにかバリアジャケットが再構成され始めた

戦闘中にデバイスの変更?

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

シグナムがレヴァンティンに炎を纏って振り下ろしてくる……今、まともに受ければただではすまないだろう

だが、拳に魔力を纏わせ的確に捌く
その間に次々と装備が整う

青黒い突起が突き刺さっている肩当てに、青黒いレッグアーマー、指出し手袋。
先程のヴァイサーガの時と比べると頑丈そうな青黒い鎧を着込み、空いている腕に尖端が分厚い青黒い槍が現れ、腰にはマシンガンらしきものが装備される

これで整った。俺は槍を両手で構え……いくぜっ!


「せいっ!」

「ぬっ……」


俺は勢いよく槍を突き出す、それをシグナムは少し後退して難なく捌く……まだまだ!

俺はシグナムが後退した分だけ踏み込み、連続で突く。それどころか突きの速度を上げていく……だが、それをすべて捌くシグナムも凄い

なら、こんなのはどうだ?


「ちゃんと防げよ?」


俺がそう言うと、シグナムは大きく後退した……飛行魔法を併用したのかかなりの距離を離された

その程度の距離じゃまだまだ安全とは言えないぞ?
俺は足の裏に魔力を集中させ、思い切り踏み込んだ

次の瞬間、シグナムの真ん前……槍の射程範囲に納めた


「――ッ!?」


驚きに眼を見張るシグナムに、俺は笑みを向ける。俺がした事は俗にいう縮地……瞬動術と呼ばれるものだ

俺の認識だから間違ってるかもしれないことは先に言っておく……
瞬動術とは足に魔力を溜め、地を蹴る時に地面と反発させる事によって、爆発的なスピードを得る移動術
言うのは簡単だが、制御を失敗すれば止まれず大きな隙を生むことに繋がる

使いこなせば、これほど便利なものはない。ちなみに俺はこれを瞬動と呼んでいる

説明はここまで……シグナムを射程に捉え、俺は


「――っ、滅界ッ!!」


身体をしならせ、肉体の限界を超えた膨大な突きを放った……本来なら剣でやる技だが、槍の基本動作である『突き』なために使える

ただし、肉体にはそれ相応の過負荷がかかるけどな

この技は膨大な突きで壁を造りだし、非殺傷無しなら相手を塵とする殺人剣に分類される

非殺傷なら、相手の魔力を一気に削る事が出来、魔力ダメージでノックダウンさせる事が出来る

ただし、魔法ではなく技なので射程が短いことが弱点といえば弱点だ


その膨大な突きの壁に、シグナムは呑まれた……かに見えたんだが、ギリギリで回避したようだ

なにせ、滅界を放つ俺の右頬に影が出来たからだ。それだけではなく気配が存在している

あの一瞬で避けるだけじゃなく攻撃に転じるなんてさすがだな


念の為視線を向けると、レヴァンティンを振りかぶっているところだった。このまま大人しく食らうのも面白くない、なら……


「……ソードブレイカーッ!」


俺は肩にあった突起を二つパージして、振り下ろされたレヴァンティンの横っ腹に遠隔操作でぶつけ、軌道を無理矢理逸らす

この出来事にシグナムは驚愕して硬直する……その隙に俺はすぐに滅界を中断し、槍の尖端をシグナムの腹に押し付けた。同時に槍の尖端が割れ、銃口が露出する


「ハルバード・ランチャー、シュートッ!!」

《Halbert launcher》


現れた銃口から、赤黒い直射型の魔力砲を撃ち放ち、シグナムは近くの瓦礫へと吹き飛んだ

これで普通なら勝負がつくのだが、俺は本能に従い槍の銃口を背後へと向けた……同時に俺の首筋に剣が突き付けられる


「ふむ……引き分けか?」

「だろうね……これが戦場ならどちらかが動いたら死ぬ状況だし」

「そうだな。もう少し続けていたいが…」


シグナムは言葉を切ると、レヴァンティンを鞘へしまった。俺も槍を下げる

次いでシグナムは頭上に視線を向け、俺も向けると恭文とスバルがお互い動かず睨みあっている


「恭文の方も終わるしな……」

「それもあるが、先程使ったあの技……滅界と言ったか。あれは興味深い……帰る道すがらじっくり聞かせてもらおうか」


その言葉とシグナムの眼に灯る光を見て、俺はため息を吐いた

手早く説明するか……
俺とシグナムはデバイスを待機状態に戻し、滅界について話ながら演習場をあとにした

しかし、シグナムに滅界の説明を終え、他の隊員のところへ戻ると……


「レイさん……少し最後に使った技について、お話したいのですけど……来てもらえます?」


なんかとんでもない圧力を放つシャマルのお出迎えがあった……おーい、なんでみんなそんな遠巻きにしてるんだ?
って、バインドッ!?


「……レイ、諦めろ」

「ちょっとまっ……って、引き摺るなぁぁぁぁぁぁっ!」


俺はそのまま、医務室に連行された……ヴィータもシグナムも気の毒そうに見るなら助けろや!?

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「……鉄輝」


青い翼が、再びその羽を広げる。先ほどよりも強く、大きく

そして辺りに羽を散らせたかと思うと……飛び出したっ!!

全ては一瞬の事だった

飛び出した僕はスバルに接近

拳を僕にたいして打ち込もうとしている彼女に対して、アルトを左から打ち込み……そのまま斬り抜けるっ!!


「一閃っ!!」


夜空に生まれた一筋の青い閃光が、その闇を……そしてスバルを、横一文字に斬り裂いた

スバルは、その直後にバランスを崩して乗っていたウィングロードから落下

結構なスピードで地上に……って、マズイマズイっ!!

僕は、すぐにアルトを待機モードに戻して、アクセル・フィンを羽ばたかせて一気にスバルに接近。抱きとめる

ただ、タイミング的にギリギリだったので、こう……お姫様抱っことかじゃなくて、ホントにハグする感じで

スバルを抱いてから、空中で急停止。僕の周囲に、魔力光が、羽の形で夜空に舞い散る

でも……その光景に感歎とは出来なかった

こう……なんというか……初対面の女の子にハグしちゃったのでちょっと……心臓の鼓動が……

身長が同じくらいだから、顔がすっごい近い。つか、意外とボリュームがこう……


『随分と楽しそうだな』


その時、聞こえたのは僕のよく知る声

戦いの場に現れた空間モニターに映るのは、ヴィータ師匠の顔。それを見て、思わず動揺する


「し、師匠っ! これは違うんですっ!!
ちょぉぉぉっとやりすぎたみたいであのままだと墜落させちゃってたかもわかんないですからそれでそのですねあれなんですよっ!!」

『……とりあえず、落ち着け。大丈夫、ちゃんと分かってるから』

「……それならいいんですけど」

『大丈夫だ。セクハラは重罪だけど、罪が軽くなるようにいい弁護士紹介してやるから。
あ、差し入れももっていってやるよ。お前の好きなあそこの芋ようかんをな』

「師匠っ!? なに一つ理解してないじゃないですかっ!!」

『冗談だ。……それより、スバルはどうだ?』


そこで、ようやく抱きとめているスバルの様子に気付く。……うん、気を失ってる


『なら、これで勝負ありだな』

「……僕の勝ちって事で大丈夫ですか?」

『あぁ、問題ねぇよ。……また腕上げたな。見ててハラハラしたけど中々だったぞ』


ははは、いつもは手厳しい師匠からそう言ってもらえると嬉しいですよ

でも……


「戒め、外しちゃいました。やっぱまだまだです」


ここしばらく、頑張ってたんだけどなぁ。うん、まだまだか


『……ま、しゃあねぇだろ。なかなかあのじーさんみたいには行かないってことだ。
つか、それで勝たれると、ここまでスバルを鍛えてきたアタシやなのはの立場が無いだろうが』


あー、そうですね。それを完全に忘れてましたわ


『忘れてんじゃねぇバカ弟子がっ!!』


きゃー! やっぱり怒られたー!!


『あ、それとスバルとティアナ達には戒めの事、ちゃんと説明しとけよ? そうじゃないと後でうるさいからな。
つーか、口先で相手惑わすのはやめとけ。いや、本当に。お前らがそれやるとシャレ効いてねぇから』

「うぃ、了解です。……やっぱだめですか?」

『味方内でケンカしたくなきゃな。敵ならいいけど』


うにゅぅ……、それもそうか。とにかく、今はやることやろうっと

とりあえず、恋人同士でも無いのに空中でハグはアウトである。相手が気を失っているなら余計にアウト

なので、近くのビルの屋上までその状態で降りていって、スバルを一端そこで下ろす

なんというか、さっきも少し思ったけど、こんな細いんだね。それであの力が出せるんだから恐ろしいというかなんというか……よっと

僕は、スバルを背中におぶって、そこからゆっくりと立ち上がる

これなら、ギリギリ……かな?


「あー、師匠。シャマルさんいますよね? 今からそっち連れてくんで、少し診てもらえるかどうか聞いてください。
加減せずにぶった斬ったんで、ちょっと心配なんですよ」


非殺傷設定で斬ったから大丈夫だとは思うけど、思いっきりやったからなぁ

威力設定はアルトが責任もってちゃんとやってくれてたけど、お嫁にいけないとか、責任取ってとか言い出さないことを願うばかりである

うん、あと今の行動とかさ……


《おめでとうございます》

「アルト、お願いだから黙ってくれないかなっ!? つーか本当にそうなったら色々とアウトだよっ!!」

『ホントだよ。……で、シャマルには今伝えた。それなら、医務室に直接そのまま運んでくれるとありがたいそうだ。
あと、お前も診ておきたいって言ってる』

「了解です。すぐに向かいます」

『んじゃ、頼むぞ。あとお前が連れてきた奴もシャマルに引き摺られていったから、医務室にいるぞ。私らは今の模擬戦のデータ纏めるから……』


そこまで言うと空間モニターが消える……レイ、何したんだろ?

スバルを背負いながら辺りを見回すと、もう真っ暗。遠くの方に、首都のネオンが見える

……長い一日だったなぁ。まぁ、なんとか終わってよかったよかった


「さて、アルト」

《はい》

「戻りながら反省会、しようか」

《今やらないと、暇が無さそうですしね》


そうして、僕達はゆっくりと……いや、スバル乗せてるし、慎重にね

とにかく、スバルを背負いながら安全確実に、演習スペースを後にした

これが、今日と言う日に起きた一大イベントの終わり

あとは、シャマル先生の診療が怖いなぁ。何にも言われなきゃいいんだけど

……そしてこの後、正座させたレイに、お説教しているシャマル先生の姿に……入るのを躊躇ってしまった
……だって怖いんだもん


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

はぁ、さすがに滅界はやり過ぎた……
一回見ただけで身体への負担をシャマルに見破られたのが痛かった

医務室に連行されて、シグナムに説明した手前、負担をなくすと変だからアレ使えなかったし……
恭文と同じようにしばらく戦闘行為禁止か……しかも、滅界使用禁止とまで言われた

アレ、俺の切り札なんだけどなぁ……

まぁ、六課に居る間は使わなければいいだけだし、解散した後にどこで使おうが構わないだろ。それまでの辛抱だな

でも、シグナムっはアドレス交換して身体動かしたい時はいつでも連絡をくれと言ってたし……同じように向こうも連絡するとかも言われたがな。ま、解散後の暇潰し候補が出来ただけよしとしますか……

うし、ラミアのメンテ終了。シャーリー、機材貸してもらって悪いね


「気にしないで下さいよ。それに、凄いですね。指の動きがすごく速いですし、画面も次から次に変わって……本当に見えてるんですか?」


あはは……まぁ、これ見せると必ず言われるんだよな。プログラム関係は得意中の得意な分野だし、それにラミアは自作のデバイスだからどこをどうすればいいか頭に全部入ってるからだけど

それから少しシャーリーにラミアについて説明した後、腹の虫に急かされるまま俺は食堂へと向かった

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

俺が食堂に到着すると、恭文とフェイト…執務官、そしてスバルが夕食を食べていた


「恭文……お疲れさん」


俺はまず幸せそうにご飯を食べている恭文に声をかけた


「あ、レイ……うん、お疲れさま」


ふにゃっと崩れていた表情を苦笑いにしながら返してくれた。うん、マジでお疲れ様だよ……今日一番きつかったのはシャマルの説教だ

滅界の説明をした時、鬼を見たね。シグナムはただ感心してただけだけど、シャマルなんて……こう、説明できない恐ろしい顔で滅界が及ぼす悪影響とかを、的確に指摘して説教するし

……うぅ、今思い出すだけで震えてくる


「あ、あなたがカストールさんですか?」


俺がシャマルの説教を思い出して、内心で怯えているとフェイト執務官が話しかけてきた


「そうだが、苗字呼びは慣れてないから名前呼びにしてくれ」

「わかりました。私はフェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。レイさんの噂はお聞きしています」


この会話の入り方……聞いてみるか


「その口振りだと、俺が持っている資格とかはご存知と判断しても?」

「もちろんです。同じ」

「あ〜、それは秘密と言うことでお願いします。立場はあくまで嘱託なので、それに敬語は無しだと助かる」


フェイトはキョトンと呆けて、次いで微笑んだ。フェイトの微笑みに恭文が見惚れている……なんかスバルがニヤニヤと恭文を見てるんだが、まぁいいか


「うん、わかった。これでいいかな?」

「ああ、それでいい。これからは同じ部隊での仕事だ。お互いに協力し合い頑張ろう、よろしく……フェイト執務官」

「あ、私も名前で構いませんよ。こちらこそ、よろしくお願いします」


俺とフェイトは握手を交わして、親睦を深めた……恭文、俺は別に狙ってないから……その単色つや消しな眼で睨むなよ


「さて、俺も飯取ってくるかね……そうそう、恭文」


俺は少しだけ強引に話題を変えると、思い出すように恭文に声をかけた。いい加減睨むのやめい


「なに?」

「恭文の家に泊めて欲しいんだが?」

「どうしたの、いきなり?」

「いや、俺の家ってここから遠いんだよ。ホントは今日早く帰って良い物件がないか探すつもりだったからな。誰かの不用意な発言で潰されたからな、フォローくらいはしてくれるだろ?」


俺がジト目で恭文を睨むと、眼を逸らしやがった


「まぁ、そういう訳で泊まらせてもらうぞ」

「……わかったよ」


恭文が頷くのを確認し、俺は飯を注文し恭文の向かい側に座った

すると、スバルに袖を引っ張られた


「ねぇねぇ、レイは恭文の先生って知ってる?」

「先生? 剣術の方か?」

「うん!」


ヘイハチ・トウゴウねぇ……色々と武勇伝は聞くけど本人には会ったことないし、あまり知らないな


「そうなの?」

「ああ。俺と恭文が会ったのって三年前だぞ? その頃にはその人、局やめてるし。そうだろ、恭文」

「そうだね」

「レイからも聞いて見たかったんだけど、知らないなら仕方ないか」


スバルの落胆する様子に俺は苦笑を溢しながら、夕食に選んだ塩ラーメンに箸をつけ、セットのチャーハンも食べ始めた


そして、楽しい夕食が終わった後、俺と恭文は帰るために外へ出たのだった

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

しっかし、色々と振り返るとホントに色んな事があったよね。なんかちかれた………


《確かに、濃い初出勤ではありましたね。
でも、明日からも六課での日々は続きます。しっかり休んで、明日からも頑張りましょう》

「へいほーい、頑張るとしましょー」

《中尉の言う通りだな。マスター、あなたもしっかり休息を取るのだぞ》

「……了解」


僕とアルト、レイとラミアは、フェイトとスバルとの夕飯を終えると、すぐに帰路についた

なお、僕達はフェイト達と違って自宅からの通勤組です

食事が終わった頃には、既に夜の八時を越えていたけど、疲れた身体に鞭を打って、こうして歩いているわけだ

しかしさ、『人生は666ページの本』って言葉があるけど、今日の体験をページに書き綴ると何ページくらいになるんだろうね?

30はいきそうな感じがするんだけど


《多すぎでしょうそれは……。せいぜい、4ページ程度ではないのですか?
いや、ひょっとしたら1ページ未満かもしれませんね》


マジですか。……だとしたら、人生ってのは果てしなく長いね。これで埋まらないのはおかしいって


「……でも、ほんとに色んな事があったよね。恭文が居たら、毎日こんな感じなのかな?」

《さすがに毎日ではありません。ただ、結構な頻度でこんな感じではあります》

「そうなんだ。じゃあ、これからすっごく楽しくなるね」


本当に楽しそうな表情でそう口にするのは、僕と同じ背丈のショートカットの女の子。そう、スバル・ナカジマだ

ここは、隊舎の敷地内の歩道

スバルが、僕達のことを敷地の入り口まで見送ると言って、ついてきたのだ。別に大丈夫って言ったんだけどなぁ


「何言ってるの? 過労の状態で模擬戦するような無茶な人を、放っておいたりなんで出来るわけないよ。それにレイだって身体にすごい負担がかかる技を使ったって聞いたよ」

「それを言うな、スバル。俺も雀の涙ほど後悔してるから」

「それだけっ!?」

「それに、自分の事はよく分かっているからな。一日休めば充分回復はするしな……それに、恭文と違って自分の身体を省みない無茶な行動はとってないつもりだ」

「そうなんだ」

「だって、休みが欲しかったんだもん」


電○楽しみにしてたの知ってるくせに……


「理由は知ってるが、それで身体を壊しかけるなんてバカだろ?」

「……うぅ、それに関してはもう言わないでください。お願いします」


もうシャマルさんだけで充分なんです。……はやて達は苦笑して『大丈夫だから』って言ってくれたけど、ほんとに勘弁して

疲れた表情でそう口にする僕を見て、スバルがニコニコと笑う

なんだろう、今日初めて会ったのに、すごく話しやすい。やっぱあの姉さんの妹だってのが大きいのかな?


《かもしれませんね》

「そういえば、私一つ気になってたんだけど」

「なに?」

「アルトアイゼンって、すっごい喋るよね? なんで模擬戦の時まで黙ってたの?」

《……それには事情があります》


うん、なんか楽したかったらしい。……ふざけてるよね


「なに?」

《先ほども話しましたが、六課にはマスターの事を以前から知っている人間も多いです。
なので、私が対人関係にアレコレ口出ししなくても大丈夫と思っていたんです。
……スバルさん達との会話を聞くまでは》


……待て待てっ! 言ってること違くないっ!?


「あぁ、なるほど。つまり……」

《そうです。この人がひねくれているのは知ってましたが、初対面であそこまでやるとは思わなかったんです。
それで、仕方なく私も口出しすることに……》

「なんていうかさ、大変だよね、アルトアイゼン」

《解ってくれますか?》


いや、なにがっ!?


「……恭文、本当にダメだよ? こんな献身的なパートナーに心配かけちゃ」

《本当です》


自分で言うな自分でっ! といいますか、スバル、模擬戦の時とか今までの会話聞いてたでしょっ!? こやつだって人のこと言えないくらいに性悪なんだよっ!!


「それは、パートナーである恭文の影響でしょ?
フェイトさんも言ってたけど、恭文がしっかりしてれば、アルトアイゼンだってあんなことしなくてすむんだから。ね〜♪」

《ね〜♪》

「なにそこシンパシー感じあってるっ!? 僕一人悪者ってどういうことさっ!!」


僕がそう言っても……スルーしやがったこいつらっ!!

レイ、頼むから苦笑するだけってのはやめてっ!? それだったらこれどうにかしてよ!


《……そうだ。スバルさん、これから末永くよろしくお願いします》

「うん、よろしく。アルトアイゼン」


なぜだろう、普通の挨拶のはずなのに、すごくひっかかるものを感じる。末永くってなんだ?


《さぁ、マスターもしっかり挨拶してください。これから彼女となってくださる方にたいして、挨拶抜きは失礼ですよ?》

『はいっ!?』

《……なんで二人そろって驚いているのですか?》

『いや、彼女ってなにっ!!』

《なにを言っているのですか。スバルさん、確か約束してくださいましたよね? 本気を出したら、彼女になってくださると。
なんなら、その時の会話を録音していますから、お聞かせしましょうか?》


アルト……、頼むからそれはもう忘れてあげようよ。あの三段活用はサギだから

そして、あの状況で録音なんてするなよっ! フェイトに怒られたのまったく懲りてないのっ!?


「あ、あのねアルトアイゼン。さすがに恭文とは今日、初めて会ったばかりだし、いきなりそういうのは……ちょっと………」

《では、どれだけの時間をかければ、そう思っていただけますか?》

「アルト、そろそろやめてあげようか。スバルが本気で困ってるから。またフェイトに怒られるの嫌だし……」


それに、別に彼女とか興味ないし


「そうなの? やっぱり、フェイトさんがいるから?」

「違う違うっ!!」

「でも、さっきはあんな感じだったよね」

《まぁ、なんといいましょうか……そこは触れないであげてください。難攻不落の城を墜とせなかったんです。言うなれば、マスターは敗残兵です》


……スバル、そんな悲しい瞳で僕を見ないで。そしてアルト、敗残兵って言うな


「あのね、フェイトさん以外にも、素敵な女の人はいっぱい居るよ?」

「慰めるなっ! 肩に手をかけるなっ!! 悲しくなってくるでしょうがぁぁぁぁぁぁっ!!
……泣いていい? というか、もう自宅警備員に……」

「だ、ダメっ! ごめん、私が悪かったからそれはやめてー!!」


スバルがなんか必死に謝っているので、テンションを上げていくことにする

ようするに、今は恋愛事に興味を持てないだけのだ。フェイトは……うん、関係ない

……すみません、強がらせてください。今だけ……今だけは

ただ、互いにどうしても仕事や、魔導師としての修行が中心になってしまったりする

だって、僕の仕事の主な依頼主となっているクロノさんもチビタヌキも人使い荒いし。フェイトもあっちこっちの世界を飛び回ってて、忙しくしてるし


「うーん、でもさ、やっぱりそういうことにも興味持ったほうがいいと思うよ? 絶対楽しいと思うし」

「……そうだね」


「だったら……」

「ただ、その三倍くらいの比率で辛いことが待ってるけど」


姉弟って言われる

子ども扱いされる

はやて辺りと出かけたりすると『はやてのこと好きなの?』とか真剣な顔で言われる

ホワイトデーに気合入れてお菓子作ってお返ししたら『好きな子にはあげないの?』とか真面目に言われる

……その他色々と。


「もういやだ。僕は貝になりたい。もしくは木になりたい。そして人からデクノボウと呼ばれたい………」

「や、恭文っ!? ごめん、また悪かったような気がするからおちこまないでー!」

《……まぁ、あのお方は全く悪気が無いので、なにも言えずにトラウマばかりが増えていまして……この調子なんです。
告白もチャンスも、見事にその全てが潰されていまして、今に至ります》

《……聞いていたのよりも酷いようだな。私は応援しているぞ、恭文殿》


……至ります。ありがとう、ラミア。僕頑張るよ……


「そうなんだ。でも、それだったら余計に他の人に興味持った方がいいのに……」

《私だけでなく、はやてさんも常日頃そう言っているんです。
ですが、やはりあのお方の存在はマスターにとっては大きいですから、どうしても乗り気になれないらしくて》


当然だ。小さかったら、8年も片思いしてないし


《それでつい、あんな事を言ってしまいたくなるんです。
いっそ、無理にでも誰かと付き合ってしまうか、やっちゃえば、この悲しい現状も変わるのではないかと……断腸の……思いで……グスッ》

「そっか。アルトアイゼンもやっぱり大変なんだね」


やっぱりってなにさ? ……落ち込んでいてもツッコんでしまう自分が悲しい

そして、アルト、わざとらしく棒読み気味に泣くなっ! やっちゃえばとか言うなっ!! 完全にアウトでしょうがそれはさっ!?


《えぇ。そういうわけなので、彼女はともかく、マスターと仲良くしていただけると非常にありがたいです。
やっちゃわなくてもいいのでそれだけはお願いしたいです》


そういうわけって、どういうわけですか。そしてまたアウトだよっ!!


「うん、いいよ。友達ってとこまでなら……約束守りたいな」

「……いいの?」

「なにが?」


スバルとアルトの会話を黙って聞いてたけど、つい口を出してしまった

それって、つまり……僕と友達になるってことだよね? いいのかなと思って……


「別にいいよ? ……恭文は、私と友達になるの、嫌なの?」

「いや、そうじゃなくてさ。
アルトの軽口が原因だし、それに……カートリッジ使わなかったこととか怒ってるみたいだったから」


戒めのことを聞いた時、ちょっとだけそんな感じを受けた

なんというか……少しだけ、棘を感じた。だから、僕に対してもいい感情は持ってないのかなと……

僕がそう言うと、スバルは驚いたような表情を見せたあとに、こう言った


「アルトアイゼンの事は気にしてないよ? マスターがいけないっていうのは分かったし」

《本当ですよ》


………こいつら


「でね、カートリッジを最初から使わなかったことは………うん。少しだけ怒ってた。というよりも、悔しかった。
私は、すっごく本気でやってたのに、恭文はそうじゃなかったのかなって」

「なら、どうして?」

「だって、さっき話してくれたでしょ?
恭文がそういう戒めを背負うのは、本気出したくないからとか、相手がどうこうじゃない。……でしょ?」


その言葉に、僕は頷いた。うん、相手がどうこうじゃない。先生どうこうじゃない

自分が、背負いたいからだ


「ヴィータ副隊長や、その剣術を教えてくれた先生に対する憧れからだって。少しでも、そんな人たちに近づきたいからだって。
私もね、そういうの分かるから……」


そして、スバルは話してくれた。自分も同じだと

4年前、新暦71年・4月29日。ミッドチルダ北部にある臨海第8空港が火災に遭い、まるごとダメになったことがある

たまたま遊びに来ていたスバルと、姉であるギンガさんは姉妹共々その空港火災に巻き込まれてしまい、危うく命を落とす所だった

しかし、そこを救助活動に参加していたなのはに助けられたこと(ギンガさんは、フェイトに助けられた)

その時のなのはの姿に憧れて、スバルは一念発起して、局の魔導師としての道を決めたこと

そして、今年の春に、その憧れていたなのはと再開

そのなのはも参加する、ここ、機動六課にスカウトされた時、すごくうれしかったこと……。あぁ、あの時のか


「知ってるの? ……って、当然か。空港一つダメになっちゃったし、あっちこっちでニュースやってたもんね」

「いやいや。ギンガさんから話を聞いてたから」

「あ、そっか。ギン姉と友達だもんね」


……ま、それだけじゃないけど


「あの、それで話が剃れちゃったけど、そういうわけだから私、恭文の気持ちすっごい分かるし……その、ごめん」

「なんで謝るの?」

「だって、さっきの話だと、嫌な思いさせちゃったのかなって思って」

「してないからいいよ。つか、謝らなきゃいけないのは僕だよ」


……スバルに嫌な思いさせてたんだから。うん、なんにしても……だよね


「あの、私も大丈夫だよ? 全然嫌な思いとかじゃなくて、悔しかっただけだからっ!!
……今度やる時は、私ももっと強くなって、恭文の本気、何にも言わなくても最初から出してもらう」

「……結構後になるかもしんないよ?」

「でも、同じ部隊なんだから、機会はあるよ。その時は……また相手してくれる?」


不安そうな表情でスバルが聞いてきた。こんな顔を見たら、答えなんて決まっている


「いいよ」


歩きながら、スバルの顔から、進行方向へと視線を変えて、スバルに目を合わせることなく、僕はそう告げる


「僕なんかでいいなら、いいよ。スバルとやりあうの、楽しいしね」

「……うんっ!!」

「まぁ、そう簡単に手札は切らないけどね」


僕が目指すのは、カートリッジや形状変換なんかの強化機能に頼らずにオーバーSランク以上に勝つこと。それだけの戦闘技量を身につけることだもの

簡単にそれらに頼るようじゃ、ダメだしね


「切らせてみせるよ。絶対に」

「なら、僕は切らずに勝つことにしようかな?」

「いいよ。そう言ったことを後悔させてあげるから」


そう言って、二人で顔を見合わせて笑う。なんというか、楽しくなりそうだしね

……こんな会話をしている間に、隊舎敷地の玄関へと到着。僕は、ここから徒歩でのんびり歩いて帰るのである


「それじゃあ恭文、気をつけて帰ってね」

「うん、見送りありがとうねスバル。それと……」


スバルがきょとんとした顔でこちらを見る。……よろしくね


「え?」

「よろしくねって言ったんだよ。まだ言ってなかったしね」


ほんとは目をそらしたいけど、少しだけ恥ずかしい気持ちを我慢して、ニッコリと笑ってみる

少しだけ、スバルの反応が怖かった。でもスバルは……


「うんっ! 恭文、これからよろしくねっ!!」


満面の笑みで、そう答えてくれた

でも、お願いだから、そんなむちゃくちゃいい笑顔浮かべながらこっちをじっと見ないで欲しい

……なんか顔が熱い


「あ、それと、私のトレーニングウェア、そのままつかってくれてもかまわないから。また模擬戦とかするときに必要でしょ?」


いやだ


「えー! どうしてっ!! だって私と恭文って身長ほぼおなじだし、サイズだってピッタリだから問題はないでしょっ!?」

「まて、豆柴」

「そうだ、ちょっと待て。その発言は色々と問題大有りだぞ?」


スバルがなにやら『また犬扱いするー』とか言ってるけど気にしない。それとレイ、そのツッコミはナイスだ

模擬戦が始まる前に、スバルから借りたトレーニングウェアは、今僕の手の中にある(袋に入れて梱包済み)

一応しっかり洗濯して返そうと思ったのだ

でもこの子、なんていうか、恥じらいとか男に自分が着てたもの着られるのが嫌とかっていうのは無いの? 僕はともかく、ギンガ姉さんが泣くよ

そういう思いも込めて、スバルに一つ質問


「スバル、分かってるとは思うけど、僕……男だよ?」

「え? あぁ、そういうことか」


そうそう、そういうことなんですよ。分かっていただけて嬉しいです


「恭文のエッチ」

「はいっ!?」

「私の服着て、変な事考えてたんでしょ? ……えっち」


スバルがからかうようにそう口にする。ニヤニヤと笑みを浮かべながら……

いやいやいやいや! そんな事考えてないからっ!!

……そりゃあ胸のあたりがブカブカだなぁとは思ったけど


「ほら、考えてるし。……ま、仕方ないかー。さっきは『彼女とか興味ない』って言ってたけど、それでも恭文だって男の子だもんね。
そういうこと考えるのは普通だと思うし、元気でいいことだよ〜♪」

「いや、まってスバル。ちゃんと話を……」

「それじゃあ恭文、レイ、また明日ね〜♪」


そう言ってスバルが僕に手を振りながら、隊舎へと戻っていく

……本当に姉と同じで人の話を聞かない子だなおい

一人残された僕は呆然とする。なんで? なんでたった一日でこんなよくわかんない状況になってるの?

というか、全部が全部スバル絡みってどういうこと?


《……強く生きてください。私はいつでもあなたの味方ですから》

「……恭文、心中察するぞ。俺も味方だから、元気だせ」

《マスターに、中尉もそう言ってくれている。微々たる力だが私も味方だ》


ありがとね。嬉しすぎて涙がでるわ

と言うか始めからこんな調子で大丈夫か僕っ!?

なぜだろう? 帰りに、なんとなしに見上げた街のネオンの光が滲んで見える、そんな10月末の夜だった

(第四話へ続く)










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき

レイ「初日がやっと終了。疲れた〜」

ラミア《そうだな。そして、私がとうとう名前と会話有りで登場した。あとがきでもやっと名前付きになった、嬉しいことだ》

(銀の指輪を腕輪のように付けた40pボン○くん人形が嬉しそうに揺れている)

レイ「そうだな……なら、次はお前のプロフィールを上げるか」

ラミア《そうだな……フォームに関しては2種類既に出ているからいいが、他のフォームは順次出てからの方がよいだろう》

レイ「そうだな。それじゃ次からが今公開できるラミアのプロフィールだ」


名前:ラミア

種別:AI搭載式多重変換型アームドデバイス『ラミア』

待機状態:小さな銀色の指輪。普段は鎖に通して手首に巻き付けている

形状変換:通常モード。他4形態


通常モード:黒いズボンと長袖のインナーのバリアジャケットのみの形態。戦闘法は近接格闘

『AshSaver』モード:通常モードのバリアジャケットをベースに、青黒い突起が付属した肩当てに、青黒いレッグアーマー、指出し手袋。青黒い鎧を着こんでいる。

肩にある突起は《ソードブレイカー》という名称の射撃と格闘戦の両方をこなせるビット。他に、刀身が分厚く中に銃口が隠された槍《ハルバート・ランチャー》。魔力刃を形成する《マギスブレード》。最後に、魔力弾を複数連射できるマシンガン《ニードルクラッカー》


『Vaysaga』モード:通常モードをベースに黒い武者鎧。全体的には真っ黒。黒い籠手、脛当てと鉄の靴。鋭角的な肩当てに紅いボロボロの外套を羽織ったかなりの軽装。

籠手には隠し爪があり、ボロボロのマントには魔力を流すことにより簡易式のバリアとして運用が可能。あとは、アルトアイゼンより5pほど短い両刃の刀

性格:女性人格のAI。口調は尊大だが、結構なお喋り。マスターでありマイスターであるレイを絶対とする至上主義者ではあるが、言葉の内容や態度からは判別は難しい。
敬語で話そうとすると途端におかしくなるので、普段は敬語無しが基本だが、わざと敬語で話すことがことのほか多い

現段階ではアルトアイゼンの影響を受けはじめており、アルトアイゼンを呼ぶ時は何故か『中尉』と固定で、他は殿をつける

出自:レイが管理局の嘱託になった時に専用のデバイスとして造られたデバイス。ラミアの前に一機だけ造られたデバイスが存在するが、別の人間をマスターにしている

ラミアは、特性の違うモードを使い分けることにより、様々な局面に対応できるようにした汎用型。その為、カートリッジを搭載すると形状変換がスムーズに行われない為に除外されている。
しかし、まだ未登場のモードのバリアジャケットはかなりの防御性能があり、武装も今は失われた金属を使っているためにとんでもなく硬い。

ちなみに何の金属かというと伝説の中だけで語られる『オリハルコン』である。局には特殊な合金としか報告していない

AIの声のイメージ:清水 香里さん(スパ○ボのラミア、無○のフロ○ティアのアシェンと同じ声優)


レイ「以上がラミアの設定だ。ぶっちゃけスパ○ボの機体の特徴をデバイスに取り込んだ形だな」

ラミア《そして、私はルミナが感じたパイロットの人格を再現して造られたAIと言うことだ。あくまで再現であるから似ていなくても文句は受け付けないとの事だ》

レイ「ヴァイサーガもアシュセイヴァーも機体の名前そのままだからな。あと、2つあるが……簡単に予想できるだろうなぁ」

ラミア《そえだな。どれも私と同じ名前の者が搭乗できる機体だからな。必然的に決まる》

レイ「俺、男なんだけどな……」

ラミア《ちなみに通常モードは別の機体を持ってきた訳ではないからな》

レイ「普段着としても使えるだろうしな……というか、バリアジャケットとしての防御力とかは考えてないから待機状態とたいして変わらないし」

ラミア《だが、周囲の温度変化などの保護や、脆弱ではあるが物理防御力が備わっている分、普通の服より能力はあるからな》

レイ「魔導師としての戦いには意味ないけどな。一瞬でボロ衣に早変わりさ」

ラミア《当たる気などないだろうに。少し長くなってきたが、マスターが使った魔法に関しての説明で終わろう》

レイ「そだな。今回使った魔法は以下の通りだ」



『桜華一閃』:威力A- 射程F 発動速度AA+

ある技と恭文の鉄輝一閃を参考に組み上げた斬撃魔法。鞘の中で魔力を圧縮し、刀身に纏わせ居合いの形で切り裂く。鞘に納めることにより、恭文の鉄輝一閃に無理やり近付けているが、圧縮する密度は恭文に劣る

これは実剣を使った形態でなければ使えない


『烈火飛刃』:威力C 射程A 発動速度AA

忍者が使うようなクナイの形をした赤黒い魔力刃を飛ばす魔法。一発一発の威力は低いが、術者が持つことも可能で、本来は複数精製しての物量頼みの魔法。
ただ、どんな状態状況でも即座に放つ事ができるので相手の意表を突いて隙を作るなどに役立つ。どのモードでも使用可能


『ハルバート・ランチャー』:威力A+ 射程S 発動速度A

アシュセイヴァーの時の槍の先端に隠された銃口からの魔力砲撃の名称。分類的には魔力を使い非殺傷にできる質量兵器といった方がいい。純粋に魔力を放出しているだけなので砲撃魔法とも呼べず、威力も放出する魔力量に反比例して低い。
その代わり、完全AMFの状況下でも魔力結合をすり必要が無い為に使用可能


『ソードブレイカー』
アシュセイヴァーの肩に備え付けられた突起で、簡単に言えばビット。なのはがブラスターの時に使うビットに酷似した物で、違う点は強度が高く射撃だけでなく、相手にぶつけたりと格闘兵装としても使える点

恭文の鉄輝一閃でも傷が付く程度の硬さで、実験済み。今回は射撃ではなく、シグナムの剣の軌道を変えるのに使った。本来はあらゆる角度からのオールレンジ射撃に使う。全部で8機存在する


レイ「以上が今回使った魔法だ。それではまた次回お会いしよう」





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