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頂き物の小説
第11話 『目覚める巨人、輝く流星・・・・・・そして、未来へ繋がる道』:1


























・・・日付は1月10日。ようするに、試験当日。試験会場は廃棄都市部。見事なゴーストタウンである。





そして、僕とアルトは・・・その上空で頭を抱えていた。いや、アルトは頭無いけど、気持ちとしてはそんな感じ。





そんなのはお構い無しで、いい感じで風が吹きすさび、これからの時間がタダで済まないことを感じさせる。





というか・・・済まないだろうね。その上空に、飛行魔法で佇みながら、強く思っていた。





今、僕達がそう思い、頭を抱えている原因はある。・・・試験内容だ。





試験内容は至って簡単。魔導師一人を撃墜せよ。これだけである。





なお、これは滅多に出ない課題だそうだ。内容だけなら、あんまりにも簡単過ぎるから。





ただし、落とし穴がある。それも、デッカイのが。





それは、相手の魔導師・・・仮想敵を勤めるのが、教導隊所属のエース・・・オーバーSランクの魔導師だと言うこと。





ここまで言えば、賢明な方々は気付くだろう。この試験がどういう形で行われるのかを。





つまり、実際に戦いながら、総合技能を見るそうだ。それも、教導・・・戦闘のプロが、本気を出した上で。





そういう訳なので、場合によっては勝っても厳しく採点された結果、ピンハネされることも多いとか。





まー、結論を言うと、この課題はその内容と反比例して、非常に難易度が高いということだ。だからこそ、滅多には出ないらしい。





・・・試験内容を聞いた時、昨日エリオとお風呂で話していた『JS事件による、局内の綱紀粛正』が原因じゃないかとちょっと思ったのは、内緒である。





ま、ここは別にいい。正直、僕の運の無さを考えると、来るかなと予想と覚悟はしてた。まぁ、ジンも同じ試験内容で、場所も同じになるとは思わなかったけど。空は僕、陸はジンって、なんかかっこいいね。





うん、覚悟を決めてはいたよ? いたん・・・だけどさ。





なんで選りにも選っておのれが居るっ!? 予想飛び越え過ぎて固まったわっ!!




















「・・・端末でランダムに選定したら、出てきたんだって」



いや、そういうことじゃない。普通顔見知りと知ってたら、こういう場に持ってこないでしょうが。

それ以前に、後遺症後遺症っ! どうなってんのよ、教導隊っ!!



「私も断ったんだけどね、先輩方に怒られちゃった。『今ここでやらないのは、知り合いに手心を加える教導官と認めるのと同じだ』・・・てね。
あと、身体も・・・無茶苦茶しなければ問題ないよ」

「・・・そう、そりゃいい先輩方だね。良すぎて良すぎて、本気で感謝したいわ。今度ぶぶ漬けでもご馳走するって伝えといて」

≪しかし、見事にジョーカーですね≫





そうだね。でも・・・だ。負ける訳にはいかない。ううん、コイツだけには、絶対に負けたくない。



場合によっては・・・出さないとダメか。





「恭文君」

「なに?」

「私・・・加減しない。教導官として・・・ううん」



そう言って、空中で・・・構えた。手にした不屈の心を。



「そんなの、私達の間では邪魔だよね。私として、全力でぶつかるから。もちろん、採点はキッチリした上でね」

「とーぜんでしょうが。そうじゃなきゃ、潰し甲斐がない。・・・あと」

「うん」

「楽しむよ。勝ち負けはともかく、せっかくの最高のシチュだ。そうしなきゃ・・・損でしょ」



アルトを構えながら・・・笑って言う。うん、笑うのよ。だって、楽しいから。



「そうだね、楽しもう? それじゃあ・・・!」

「始めますかっ!!」










・・・こうして、試験は開始された。僕が合格する最低条件はただ一つ。





高町なのはを・・・倒すこと。ただそれだけ。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常・外典


第11話 『目覚める巨人、輝く流星・・・・・・そして、未来へ繋がる道』






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





・・・ヤスフミ達の方は始まったか・・・しっかし、なのはさんが相手とは・・・身内はこういうのに参加させないだろ普通。





「おいおい坊主、友達の心配する前に自分の心配しろよ。」

「・・・そうですね。あなた相手だと全力を出すしかないですからね・・・」

≪確かに。あの『スカー・レオン』を相手にして余力を残しているなど、マスターには無理だな。≫

「テメェ、余計な事言うんじゃねぇよ。」

「はっ、バルゴラも相変わらずのようだな・・・しかし、坊主は俺と面識がないだろ?どうして俺の事を知っているんだ?」

「・・・あなたの事は、先生からよく聞かされていたもので・・・・・・」

「ほぅ?フィーネが俺の事をねぇ・・・・・・」


俺の前にいるマッチョな男性はそう軽口を叩きながら、口元に笑みを浮かべる。


・・・・・・この人の名はレイオ・ガーランド。かつては『スカー・レオン』と二つ名がつくほどの腕前を持つ魔導師だ。

現在では教導隊に所属しているらしいが、教導隊ではその暑苦しさゆえに『ザ・ヒート』なんて呼ばれているらしい。





・・・・・・そして認めたくない事に、先生は彼の事を好きだったらしい。しかし、先生が彼のどこを好きになったのかまったく分からん。


・・・・・・・・・だって、先生が彼の話をする時は、彼の失敗談や面白いエピソードってのが多かった。それだけ聞くと、この人が本当にエース級の人なのか判断がつかなかった。


「まぁ、あいつの事だ・・・・・・俺の失敗談とかの話が多かったんだろ?」

「・・・・・・よく分かりましたね。」

「あいつと一緒にいると、いつも失敗ばかりしていたからな俺は・・・・・・さて、こっちもそろそろ始めようか。ギガシャウター、セットアップ!!」

≪了解。≫


そして、レイオさんは紅蓮の鎧に身を包み、両手で2メートルほどの長さを持つバトルアックスを握り締める。接近戦は不利か・・・・・・ならっ!!


「バルゴラッ!!」

≪了解だ、sphere bullet≫

「いっけぇぇっっ!!」


俺は周囲に魔力弾を展開すると、バルゴラの射撃と共に魔力弾をレイオさんめがけて放った。



「・・・・・・遅ぇ。」

≪sonic move≫


しかし、レイオさんは一気に俺の目の前に接近すると・・・・・・やばっ!?



「おおおおおおらあぁぁぁぁぁっっっっっっ!!」





俺がとっさに後ろに飛びのくと、レイオさんの振り下ろす一撃が俺が先ほどまでいた場所へと振り下ろされる。その衝撃によって、地面が砕け・・・・・・って、強化魔法とか使ってないよなっ!?なんだよその威力っ!?


「ちぃっ!!」


俺は飛んでくる瓦礫を上手く蹴り、ビルの合間を飛び回る。


「おもしろいことすんじゃねぇか・・・ギガシャウター!!」

≪Accel Shooter≫


すると、レイオさんの周囲に深緑の魔力で作られた魔力弾が30発ほど現れ、俺にまっすぐ向かってくる・・・・・・


「バルゴラっ!!」

≪分かっている!!≫

「ジャック・・・カーバーッ!!」


まっすぐ飛んでくる魔力弾を、俺はバルゴラの砲身から展開された刃から放たれた魔力が魔力弾を飲み込んで爆発する・・・まだだっ!!



「ストレイト・・・・・・ターレットッ!!」

「ぬおっ!?」


爆風を吹き飛ばして放たれた紺色の奔流は、レイオさんを飲み込み、あたりを土埃が覆う。俺は一度地面に降りると、そのまま警戒を続ける・・・・・・






≪さすがに、『・・・やったか?』とは言わないのだな。≫

「たりめ〜だ。つか、それって間違いなく俺の敗北フラグだよな!?」

「・・・・・・その通りだぜ?」



うっすらと埃が晴れてくると、そこには障壁を展開したレイオさんが立っていた・・・・・・ま、あの程度じゃ防がれるか。となると、やっぱり・・・・・・


≪ゼロ距離で最大攻撃を叩き込む・・・・・・これしかないな。≫

「そうみたいだな・・・・・・バルゴラ、サイズフォルムだ。」

≪了解。≫


その言葉と共に、バルゴラがサイズフォルムへと姿を変える・・・・・・それをみて、レイオさんは首をかしげた。



「坊主、お前ガンナーの癖に俺に接近戦を挑もうってのか?」

「えぇ・・・・・・そうでもしなきゃ、アンタの防御は突破できないでしょ?」

≪安心しろ・・・・・・マスターは近接戦闘のエキスパートとやり合っているのだ。器用貧乏の究極系・・・・・・その強さを、とくと見よっ!!≫

「バルゴラ・・・・・・一言余計だっ!!」


俺は地面を蹴ると、レイオさんに接近してバルゴラを振るう・・・・・・しかし、バルゴラの魔力刃はいとも簡単にレイオさんの障壁に受け止められた。


「こんなものっ!!」

「アレを砕くか・・・・・・だが、まだまだだっ!!」



俺は障壁を砕くが、既に目の前には斧が迫ってくる。俺はとっさに身体をひねり、斧を蹴って空中に飛び上がると・・・・・・バルゴラはサイズフォルムからランチャーフォルムへと姿を変え、カートリッジの空薬莢を放出する。



「これなら・・・・・・どうだっ!!」

「なにぃっ!?」








そして、既にチャージが終了していた砲身をレイオさんに向け、俺は『レイ・ストレイトターレット』を放った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「鉄輝・・・!」



魔力を込め、何時ものように鋭い刃を打ち上げる。



「一閃っ!!」



僕は、アルトを上段から打ち込むっ!!





≪Round Shield≫





だけど、簡単にはいかない。なのはは、右手を前・・・スティンガーへと向け、左手を後ろ・・・僕へと向け、シールドを二つ展開。

カートリッジを使った上での斬撃と針を、難なく受け止めた。



つか、固いっ! あーもうこのバカ装甲がっ!!



斬るのは無理。そう判断して、アルトを引く。で、すぐに術式をえい・・・



視界の端に桜色が見えた。なので、下がるっ!!



僕が数メートル下がると、それまで僕が居た位置を、二つの弾丸が通りすぎる。くそ、誘導弾を隠してたか。いや、それだけじゃない。



レイジングハートが変化した。音叉を思わせる形に。その先を僕に向ける。





≪Short Buster≫





次の瞬間、僕へと砲撃が飛んだ。左へ回避。うわ、ギリだったし。僕のすぐ脇を、桜色の砲撃が通り過ぎた。

威力を殺したスピード重視の砲撃か。まず当てることから考えた?



でも、当然それで終わらなかった。レイジングハートから、カートリッジが消費される。





≪Accel Shooter≫






一気に30発もの魔力弾が生まれた。それが、僕へと放たれる。



とりあえず、これっ!!





≪Stinger Snipe≫





またアレンジ版を放つ。だけど・・・スティンガーに数発のアクセルが殺到。それで潰された。くそ、読まれてるっ!?



さすが、腐っても教導官。簡単にはいかないか。なら・・・。ここはっ!!



僕はそのまま動かず、殺到するアクセルを・・・受け入れる。



次の瞬間、アクセルが着弾。爆発が空間を支配した。




















≪Axel Fin≫










・・・生まれ変わった青い翼が舞うと、僕はなのはの後ろに移動した。





だから・・・移動しながらカートリッジを3発消費。刀身を包むのは、凍れる魔力。

背後はがら空き隙だらけ。上段から、アルトを打ち込むっ!!





≪Flash Move≫





・・・え? からぶったっ!? つか、なのははどこっ!!





≪Divine Buster≫

「ディバイン・・・!」





聞こえてきたのは、足元から。つーか下。確認するより速く、僕は・・・その声の発生源へと、突っ込むっ!!



発射体制はバッチリ。もう撃てる。というか。





「バスタァァァァァッ!!」





放たれたのは、砲撃と言う名の魔力の奔流。・・・まだ。



目前へと、それは迫る。・・・まだ。



奔流の先との距離が、あと1メートルを切った。・・・今っ!!



僕は、右へと僅かに移動。



バスターをスレスレに避けつつ、全速力で突撃っ! バスターがジャケットとフィールドを掠めるけど、気にしないっ!!



現在、なのはは撃ち終わった直後でノーガード状態。これならっ!!





≪Protection Powered≫





・・・無駄だよ。何がこようと。





「氷花っ!」





そんなの関係無いっ! ただ・・・ぶった斬るだけだっ!!





「一閃っ!!」





上段から、真一文字に打ち込んだ凍れる刃は、バリアを真っ二つにした。そして、その刃はそのままなのはへと・・・。



次の瞬間、爆発した。



その元は、僕が斬ったバリア。挟まれる形で爆発を受け、攻撃がストップした。まさか、バリア・バーストっ!?

その隙を見逃すなのはじゃない。当然、レイハ姐さんを構えて、零距離・・・いや、少し下がりつつ。





≪Short Buster≫





抜き打ちで、ぶっぱなすわけですよ。普通の回避・防御、暇がない。



だから・・・反射的にアルトを打ち込んだ。

スピード重視の砲撃だったから良かった。斬られながらも攻撃する意志を消さない魔力にジャケットを焼かれながらも、僕は砲撃を斬り裂く。



・・・今度はこっちの版だ。一気に懐へと踏み込む。

飛び込みながら・・・カートリッジを3発消費。左手に生まれた青い魔力のスフィアを、撃つっ!!





「クレイモアっ!!」










カートリッジにより、巨大になった青い魔力スフィアが、全て散弾となり、なのはを襲った。





そして、爆発。それになのはは、飲み込まれた。





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「や、恭文・・・なのはさんに躊躇いなくクレイモア撃ちましたよっ!?」

≪そりゃ撃つだろ。そうでもしねぇと、ボーイは勝てないしな≫

「相手はあのエース・オブ・エースだ。躊躇ったら、そこで終わるよ」

「・・・つか、始まって数分経って無いのにこれ? 心臓に悪いわよ。」

「お兄ちゃん、大丈夫かな・・・・・・」






・・・うん、すごく悪い。見ているだけでハラハラする。



ここは、六課隊舎のロビー。そこでみんなで、ヤスフミとジンの試験を見ていた。でも・・・。





「まさか高町教導官が来るとは」

「えぇ。つか、アイツはまた・・・」

「はやても知らなかったの?」



はやては部隊長なのに・・・。



「うち、教導隊の方の要請で、高ランククラス試験の相手勤めるとしか聞いてへんのよ。で、リミッターも限定的に解除するから、それも許可して欲しい言われて・・・」

「いや、それで・・・って、無理か。今日試験受けるのは、やっさんだけじゃ無いしね」

「なにより、試験内容が漏れたら大変ですよ・・・。なぎ君となのはさんは身内ですし」

「・・・いや、それでも八神部隊長にも知られないように話を進めるって、どんな手使ったんだよ」

≪主にも出来る範疇かと。しかし・・・蒼凪氏の運の無さもここに極まりですね。これはあり得ませんよ≫

「いや、それを言うと、ジン坊の方も運無いよ?だって、相手がレイオだし・・・」

≪姐御とガチに渡り合えてたしな。おかげで、どっちかが気絶するまで戦うし・・・・・・≫



そこを言われると辛い。なのはは、絶対に加減しないだろうし・・・・・・それに、ジンの相手をしている人もそんなに強いんだ。



≪ま、ボーイとねーちゃんはそれでも楽しそうだけどな≫

「なぎさん・・・ちょっと笑ってたしね」

「この状況でも、変わらないんだね・・・」

≪変わるはずがありません。だからこそ、蒼凪氏とアルトアイゼンは強いのです≫



サリさんの胸元の金剛の言葉には同意。うん、それがヤスフミらしいというかなんというか・・・。



「ほんとにあのバトルマニアは・・・」

「ヴィータちゃん、心中察するに余りあるよ」

「いや、だからそう言いながら、私とシグナムさんを見るのはやめてくんないかなっ!?」

「私もヒロリス殿も普通だっ! それを言ったら、テスタロッサはどうなるっ!?」

「私はちゃんと状況を見てますっ! 一緒にしないでくださいっ!!」





・・・まぁ、ここはいいよね。うん、気にしなきゃいけないのは・・・。





「ヴィヴィオ」

「フェイトママ・・・」



やっぱり、不安そう。いきなりだもんね、ヤスフミとなのはが、こんな形で戦うなんて。



「・・・ヴィヴィオ」

「大丈夫だよ。ヴィヴィオ、最後まで見てる。恭文とアルトアイゼンの応援するって、約束してるから」

「そっか。うん、なら・・・フェイトママと一緒に、最後まで見ようね」

「うんっ!!」










・・・画面の中の状況は、まだ動かない。





でも、緊迫感だけは加速度的に上がり続ける。





ヤスフミ。ヤスフミは、私の騎士になりたいんだよね?





なら、お願いだから・・・勝って。勝ち負けで答えを決めるつもりなんて無い。でも、負けて欲しくない。





うん、このままアッサリ負けたりするのは・・・無しだよ?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









まったく・・・アイツの戦いも心臓に悪いけど、アンタの事も心配なのよ?








私は視線を別のモニターに移した。そのモニターでは、ジンが空中から砲撃魔法を放っているのが映し出される。


「ティアお姉ちゃん・・・・・・」


すると、メイルが私の服の裾を掴んでくる・・・・・・その顔には、不安げな表情が浮かんでいた。


「大丈夫よ。アイツもジンもきっと合格するわ・・・・・・」


私は笑みを浮かべると、メイルの頭を撫でる。そして、視線を再びモニターに向けた。






ジン・・・・・・負けたりしたら、承知しないわよ?












◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





・・・おかしい・・・どうして動きが無い?



俺は距離をとりつつ、レイオさんがいるはずの方向を眺める・・・・・・確かにあの一撃は“今の”俺が出せる最大の一撃だが、あれで終わるとはどうも思えない・・・・・・



≪・・・・・・!?魔力反応増大っ!!マスター、くるぞっ!!≫

「ちっ・・・リプルジョンシールドッ!!」


バルゴラの言葉と共に、煙の中から深緑の刃が次々と放たれる。俺はとっさに障壁を張って回避するが、それを狙い済ましたかのように深緑の奔流が俺に向けて放たれた・・・ヤバイ、防ぎきれないっ!?



≪マスターッ!!≫

「分かっているんだよ・・・・・・パーレイ・サイズッ!!」


バルゴラがサイズフォルムに変化すると、カートリッジが3発排出されて魔力刃がその大きさを増す。



「おおおおおおおぉぉぉぉっっっっ!!」



俺は奔流に向けてその刃を振り下ろし、切り裂こうとする・・・・・・しかし、その威力に耐え切れなかった魔力刃は砕け散り、俺の身体は奔流に飲み込まれた。





























「・・・・・・どうした?それで終わりじゃねぇだろ・・・・・・しかし、坊主にコレを使う事になるとは思わなかったぜ・・・・・・」





俺はゆっくりと眼を開くと、その声が聞こえる方向に視線を向ける・・・・・・そこにはより鋭さを増した鎧と、魔力刃の展開によってさらに大きさを増した斧を握り締めたレイオさんの姿があった。

一方で、俺の方はボロボロになっていた・・・バリアジャケットはあちこちが破れているし、埃で汚れている部分もある・・・そんな中、バルゴラは埃をかぶっただけってのがびっくりだけどな。お前、どんだけ頑丈なんだよ。



≪・・・マグナモードか、厄介なものを・・・・・・いや、それだけマスターを認めているのか・・・≫

「バルゴラ、知っているのか?」

≪あぁ・・・・・・奴のフルドライブモードで、防御力と攻撃力に特化している・・・・・・ダメージを恐れずに前線に飛び込む事から、奴は『スカー・レオン』と呼ばれるようになったのだ・・・・・・≫



・・・・・・つまり、あれがあの人の本気か・・・・・・さてさて、どうしたもんかね。






「・・・ギガシャウター、そういや高町の嬢ちゃんはどうなっている?」

≪少々お待ちを・・・・・・モニターに映し出します。≫



余裕からなのか、レイオさんは目の前にモニターを展開する。その隙にヤスフミに作ってもらった回復魔法のカードで体力と魔力を回復しようとするが・・・・・・目の前に映し出された光景に、驚きを隠せなかった。



『だから、徹底的にいくね。・・・ブラスター1』



・・・は?



『リミット・リリースっ!!』



はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?



「・・・・・・あの嬢ちゃん、なにやってんだっ!?自分の身体の事考えやがれっ!!」


・・・レイオさんの言葉もごもっともだ。確か、ブラスターシステムはなのはさんの身体に大きな負担をかける・・・・・・ただでさえJS事件のときに使ったってのに・・・・・・何考えてんだよ!?



『・・・バカでしょっ! 本気でバカでしょっ!? つーかなにやってるっ!!』

『うん、そうだね。でも・・・これが私の全力全開だから。恭文君相手だもの、ちゃんとぶつかりたい。私達、ライバル・・・でしょ?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・あぁ、そうだったね。僕達は結局」

「こういうのが、ピッタリなんだよ。こっちの方が楽しいし、分かり合える。それに・・・約束、してるよね」

「そーだね」




・・・どんな時でも、ありったけで、全力でぶつかりあって、それを受け止め合って、心を通わせていこう。そう、約束してる。



「・・・なのは」

「うん、馬鹿げてるよ。でも、ここで私のありったけをぶつけないのは、もっと馬鹿げてる」





・・・8年前、初めて模擬戦した時に言ったセリフと全く同じことを、なのはは口にした。

そういや、あの時も復帰直後なのに、エクシード使ったんだっけ。



そう、なのはは言ってる。あの時と同じ・・・いや、それ以上に、全力全開で、ぶつかりあいたいと。





「私は、大事な友達との約束を、違えたくなんてない。だから・・・」

「いいさ。・・・受け止めてあげるよ」




止めるのが、正解なんでしょ。でもね・・・それは世界や常識の正解であって、僕となのはの正解じゃない。

僕達の・・・僕の正解は、目の前のバカに付き合うことだ。僕達、そういう付き合い方してんのよ。友達になった時から、ずっとね。



「まったく、これで納得出来るってどうなんだろ。・・・あ、そうだ。なのは、ここから一つルール変更ね」

「ルール変更?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『4分41秒だよ』

『・・・え?』

『ちょっと準備がいるけどね。でも、それだけもらえりゃ・・・僕が勝つ。すぐに終わらせてあげるよ。
それを過ぎたら僕の負けでいい。つか、勝手にギブアップするから』

『・・・本気?』

『もちろん』



その言葉に、また場が騒然となる。だって、今ヤスフミが口にしたのは・・・。



「ブラスターシステム発動中のなのはさん相手に・・・勝利宣言っ!?」

「それも、5分弱でなんて・・・」

「む、無茶だよっ! 恭文もうボロボロなのにっ!! 魔力だって、空に近いよねあれっ!?」

「アイツ、本気でなに考えてるのっ!? バカだバカだとは思ってたけど、今回のは極めつけよっ! これはないでしょこれはっ!!」

「・・・いえ、やれます」



慌てふためくスバル達を抑えるように、静かにリインが口を開いた。強い確信を持って。



「恭文さんもアルトアイゼンも、やれます。古き鉄は・・・この状況で負けたりなんてしません。いつものノリで、ぶっ飛ばすだけですっ!!」



いつも通りに・・・『最初から最後までクライマックス』・・・でいけば、大丈夫。うん、きっと大丈夫だよね。



『また言ってくれるね。でも、そうしてくれると助かるかな。やっぱキツいし』

『だったら、最初からそんなチート機能を搭載するなよバカっ!!
・・・まー、いいさ。今から見せてあげるよ』



そう言ってヤスフミは・・・。



「恭文、笑ってる・・・」

「フェイトママ・・・」

「大丈夫。・・・きっと大丈夫だから」





・・・ヤスフミお願い。本当にすぐに終わらせて。4分と言わずに今すぐに。



だって・・・ヴィータとシャマルさんのオーラが怖いのっ! 長引くと真面目にどうなるか分からないのっ!!





『僕とアルトの新しい変身と・・・新しいクライマックスってやつをね』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「面白そうだけど・・・させないよっ! ・・・バスタァァァァァァァッ!!」



抜き打ちで構えて、なんか撃ってきたので、カードを複数枚取りだし、発動。





「無駄だよっ!! ・・・え?」





結果・・・なのはの砲撃がかき消され、その進行を留める。うん、一瞬だけね。

とーぜんなのはは驚く。で、その間に・・・僕はそのまま、重力に従い下に堕ちる。で、空気の読めない教導官には。



「お仕置きだよっ!!」

≪Struggle Bind≫





とにかく、バスターの斜線外に移動してから、魔法発動。

なのはの身体を、青い縄が縛りあげる。なのはのバスターは、そのまま僕の真上を通り過ぎた。



・・・ギリギリだった。さすがにブラスターは手強い。





「AMF・・・!!」





そう、あれはAMFを仕込んだカード。ま、範囲はカードを中心に1メートル程度だけど。

でも、複数枚を近距離で同時発動させて、その濃度を重ねがけで上げれば、あれくらいは出来る。



・・・それでも、ブラスターのエクセリオン相手だと、耐えたのは一瞬だけ。やはり、恐ろしい。

あと、これの難を言えば、現在の保有枚数が少ないこと。・・・ちょい手間と魔力がかかるのよ。



そして、左手からまたカードを3枚出し、発動を命じると、青い光が身体を包む。先ほども使った回復魔法。

・・・回復魔法を同時に重ねがけ、身体に負担かかるから、ほんとはダメなんだけどね。



ま、そんなこと言ってる場合じゃないか。とりあえずこれでここからの4分41秒、全力で動ける。





≪あなた、お約束くらいは守ってくださいよ。やってることがまるっきり雑魚敵その3ですよ≫

「ざ、雑魚敵っ!?」

「そーだよ。そんな不粋な真似しないでさ、おとなしく見てなよっ! 僕達の変身をっ!!」



そして、アルトを鞘に納めてから、右手を上げると、宙から回転しながらカードが出てきた。ただし、マジックカードじゃない。

二回りほど大きく、色は全て銀色。表面には、剣を持った巨人のレリーフが刻まれている。



「いくよ、アルトっ!!」

≪はいっ!!≫



僕は、そのカードを自分の前へと放り投げる。



≪Standby Ready≫



せっと・・・いや、ここはやっぱこれでしょっ!!



「変身っ!!」

≪Riese Form≫










そして、カードが回転しながら青く、眩い光を放つ。

ボロボロだったバリアジャケットが、アルトも含めた装備が、一瞬でその全てを解除。再構築されていく。





まず、下半身は、ジーンズではなく、黒のロングパンツへと変わる。ブーツは・・・黒色でリインと同型。





上半身には、黒の半袖インナー。その上に、白のインナーシャツ・・・というか、リインやはやて、シグナムさんと同じものを着る。

その上からまた、青いジャンパーだ。こちらも、デザインが変わって、多少制服然とした装飾が付いている。





そしてジガンスクード。ただし、右手にも同じものを装着する。こちらは、カートリッジ無しのただのガントレットだけど。





でも、まだ終わらない。どこからともなく白いマントが現れる。そして・・・首元には空色の留め金。それを、全ての上から羽織る。






最後に、上から鞘に納められる形で回転しながら現れたアルトを手に取り、腰に差すっ!!





これでようやく完成である。これが・・・僕とアルトの新しい力だ。










≪「・・・俺達っ!」≫



右手の親指で自分を指す。そして・・・。



≪「ようやく参上っ!!」≫






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆









「・・・・・・なぁ。あの坊主はいつもこんな調子なのか?試験中にあんなことするの、多分アイツが初めてだぞ?」



・・・そりゃそうですよね。つか、俺も驚いたし・・・・・・・・・けど、ヤスフミの行動で俺も覚悟を決めた。






・・・・・・アレを・・・・・・使う!!




「えぇ、アイツはいつもあんな調子ですよ・・・・・・アイツいわく、『戦いは強い方が勝つんじゃなく、ノリのいい方が勝つ』だそうです。」

「・・・まぁ、自分のペースに相手を巻き込めば有利になるってのは分かるんだけどな・・・・・・何する気だ?」

「・・・・・・せっかくなんで、俺もアイツに習う事にしたんですよ・・・・・・バルゴラ、グローリー・システム・・・イグニッション!!」

≪了解だっ!!≫




バルゴラの言葉と共に、俺の武装が再構成されていく。




インナーやジャケットはそのままで、紺色に金色のラインが入ったジャケット、両足にはレオー、両腕には肘までを覆うレオーと同じカラーリングのガントレット。



そして、背中には翼のようなユニットがついたバックパックが装着され、ユニットからフィンが展開される。



最後に、バルゴラを右手で握り締め、肩に担ぐっ!!


コレが、俺とバルゴラの新しい力・・・・・・グローリーフォーム!!






≪最初に言っておく・・・≫



「今の俺達は・・・」



「≪かーなーり強いっ!!≫」







レイオさんへと指をさし、そう啖呵を切る・・・・・・ヤスフミが電王なら、俺はゼロノスだっ!!


つか、バルゴラもノリノリだなおいっ!!



「なるほど・・・それが坊主のフルドライブって訳か、面白くなって来やがったぜ・・・って、なんだこの曲?」



俺の姿を見ていたレイオさんがそう呟く。どこからか聞こえてくる音楽は『Climax Jump the Final』・・・・・・ヤスフミの奴、ノリに乗っているな。












さぁて、テーマソングもかかった事だし・・・・・・クライマックスを始めますかっ!!












◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










「時間の波を捕まえてー♪」

「たどり着いたねー♪」

「「「約束の場所ー♪」」」

「ヒロ、メイル、ヴィヴィオちゃんっ! それ危ないからストップっ!!」

「以心伝心♪ もーう」

「リイン、アンタもやめてーなっ! つか、アイツなにしとるんやっ!?」



あのベルトから流れだした曲。私は、それが何かを知っている。



「この曲・・・。ヤスフミ、ホントに好きなんだ」

「そりゃ、電王だしね。・・・でも、ファイナルでカウントダウンとは、やっさん分かってるじゃないのさ。私は、熱くなってきたよ」

「俺もだ。第28話でパワーアップだし、この話に合わせた言い方すると・・・『やりすぎ、ノリすぎ、ふざけすぎ』・・・ってか?」

「お兄ちゃんも、パワーアップしているよっ!!」


そう、でも・・・なんだ。やりすぎようがノリすぎようがふざけすぎようが、自分のノリを通せるなら・・・勝つ。

だって戦いは、ノリのいい方が勝つから。



≪その通りです。新しき古き鉄、それに翼を得た栄光の流星は、誰にも止められません≫

≪ボーイズもねーちゃん、バルゴラも・・・いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!≫

「ノリノリで、ぶっ飛ばすですよー!!」



ヤスフミが生まれ変わったアクセルを羽ばたかせると、一瞬でなのはの正面に。そして、斬撃がなのはを襲う。・・・しっかりとガードしたけど。

距離を取って、そこからまた攻防が始まった。でも・・・。



「・・・うそ、速いっ!!」





勝負は、あの曲が流れ始めてから、一気にヤスフミのペースになった。なのはが砲撃を撃つ。アクセルを撃つ。

でも、そのどれもが当たらない。だけど、逆にヤスフミの攻撃は、的確に当たり続けてる。いや、なのははキチンと防御してるけど。


ジンのほうも、主導権を握っている。レイオさんの攻撃を軽々と避けて、自分の攻撃を当てている・・・・・・


そうして、桜色の光と青い軌跡が廃棄都市部の空で、紺色と深緑の軌跡が都市部の中で線を描きぶつかり合う。まるで、何かの絵を書いているように。





「・・・あの、あれホントにエクセリオンとかじゃないんですよねっ!?」

「そうだよ、通常状態の騎士甲冑。私とフェイトさん、リイン曹長に皆で作ったの」

「つまり、あれは本当に曲とか聞いてるノリだけで・・・」

「なぎさんとアルトアイゼンのノリ補正、チート過ぎるよ・・・」



まぁ・・・いいよね。うん。とにかく、なのはの身体を考えると手早く終わらせないといけない。この際、なんだっていい。

多分、ヤスフミもそれで時間制限をつけたんだ。



「勝っても負けても、なのはさんの身体に負担が極力残らないように・・・ですよね。どうせ使用が止められないなら、決着自体を早くする」

「なぎさん、そこまで考えてたんだ。自分の試験なのに・・・」

「だからこその恭文さんですよ。それに・・・」

「蒼凪とアルトアイゼンも、本気で時間内で倒すつもりだろう」



そこは間違いない。勝つ気満々な挑発してたしね。



「でも、それでも速すぎません? 今までのアイツとは、全く別物じゃないですか」

「そりゃそうだ。高速型のフェイトちゃんのジャケットがベースだしね」

≪そうやって今までのボーイのジャケットに更なる『速さ』をプラスしたんだ。いや、苦労したぜ≫

「蒼凪の今までのジャケットの魔力消費量を維持した上で、それプラス全体性能の若干の底上げだったからな」

≪いっそのことフルドライブにしようという話も出ていたんですが・・・≫



でも、それだと魔力量が並みのヤスフミはすぐにガス欠を起こす。それで、みんなで苦労して・・・。



「あの形に仕上げたと・・・」

「そういうこと。でも私さ、やっさんに追加報酬請求しようかどうか、悩んでるのよ」

「あ、俺も。あの働きはお中元じゃあ足りないし」

「な、なんというか・・・すみません」

「でも、それだと・・・」



私の隣に居たヴィヴィオが、モニターの中のヤスフミと私を見比べる。すごく疑問顔で。



「ヴィヴィオ、なにか気になるですか?」

「恭文とフェイトママ、お揃いのジャケットってこと?」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?』

「だって、リーゼフォームはフェイトママのジャケットがベースで、マントも付いてるし。というか、あれフェイトママのマントと同じだよね?」









瞬間、場が凍りついた。・・・ヤスフミ、お願い。早く終わらせて。みんなのニヤニヤした視線が辛いのー!!




















「・・・なのはちゃん、覚悟は出来てるでしょうね」

「バカ弟子、アタシが許す。最強物とかふざけてるとか萎えるとか、そんな戯言を言いたいやつには言わせておけ。
・・・それでもいいからっ! とっととそのバカをぶっ潰して、止めやがれっ!! つーか、アタシが直接・・・」

「ダメですヴィータ副隊長、落ち着いてくださいー!!」

「あぁ、ヤスフミっ! お願いだから、早くなのはを止めてー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「ヒロリスさん、サリエルさん・・・・・・ちょっといいですか?」

「あぁ・・・なに、ティアナちゃん?」


私は少し気になった事があるので、ヒロリスさん達に話しかける。


「・・・・・・ジンのあの姿、いったい何なんですか?フルドライブなら、すぐにガス欠になるはずじゃ・・・・・・」


気になったのは、ジンの新しい姿の事だ。会話からするとあれはフルドライブらしいのだが・・・・・・ジンの魔力量は、恭文よりも少ない。それなのに、あれだけ魔力を放出するなら・・・すぐに魔力量が切れるはずだ。


「あぁ、その事か・・・・・・ジンが背中に背負っているデバイスに、秘密があるんだ。」

「あのデバイスは少々特殊でさ・・・周囲にある魔力を取り込んで、装着者に供給しているんだよ。」





へぇ・・・それなら、魔力切れは心配する必要が・・・・・・ちょっと待って。周囲の魔力を取り込む?それって・・・・・・


「察しがついたみたいだね・・・絶えず魔力を取り込んで供給しているって事は、収束魔法のチャージをずっと行っているのと一緒。」

「身体には負担が大きいな。今のジンだと・・・・・・30分が限度だな。」

「そんなっ!?そんなものを、どうして・・・・・・」

「・・・あのデバイス、『ディスキャリバー』って言うんだけどね・・・・・・フィーネが、私達に開発を頼んだものなんだ。」


困惑する私に、ヒロリスさんが優しい声で語りかける。フィーネって・・・確か、ジンの・・・


「まぁ、身体に負担がかかるってのは開発した時から分かっていたんだよ。だから、ジンにあれを渡すのには条件をつけた。」

「・・・条件?」

「そ。私らが見て、ジンが使いこなせると確信した時に渡す。そう約束したんだ。だから、心配しなくていい・・・って訳にはいかないか。でも、ジン坊の事を信じてあげなよ。」


苦笑しながらそう告げるヒロリスさんに、私はモニターを眺める。






・・・・・・まったく、この私に心配させるなんて・・・・・・戻ってきたら、ただじゃおかないんだから!!




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






「・・・ブラスタービットっ!!」



だーかーらーっ!!



「無駄っ!!」





出てきたビット達は、アルトで真っ二つにする。そして、またアクセルを羽ばたかせ、突っ込むっ!!



・・・負けるわけがない。





「シュゥゥゥゥットっ!!」





なのはが唱えた直後、出てきた大量のアクセルシューター。

だけど、それらはここまで溜め込んでおいた虎の子のAMFカードで壁を作り、消し去る。



で、残ったまばらなのは。





≪High Blade Mode≫





アルトを大太刀に変化させて、一閃。それだけで、全ての魔力弾が撃墜出来る。そして、また動き出す。



・・・僕は、一人じゃないから。





「これにはねっ! リインにヒロさんサリさん、アメイジアに金剛っ!! シャーリーにシグナムさんに師匠とレヴァンティンとグラーフアイゼンっ!!
それにバルディッシュと・・・・・・」





なのはの、効果的な機動を絡めた誘導弾を、砲撃を、全て足を止めない形で防御・回避していく。

普通ならちょい難しい。でも、カードを使えば楽勝。魔力も消費しないしね。



そうして廃棄都市部の空に、銀色のカードと桜色の魔力が何度も飛び交い、何度もぶつかり合う。



青い空の中を、僕達は翼を広げ、羽ばたかせ、激しく舞い、ぶつかり合う。



もう、出し惜しみする必要はない。全部切っていくだけっ!!





「フェイトの想いがこもってんだっ! みんなが力を貸してくれて、初めて生み出せたっ!! 始められたっ!!」



そう、僕一人の力じゃない。だから・・・!



「絶対に負けらんないんだよっ!!」

≪コーヒーが無くても、心はてんこ盛りです。もう、私達は誰にも止められませんよ≫



そして、レイジングハートをこちらへ向ける。



「それでも・・・」



・・・ち、まだビット残してたのか。後ろから沸いてきた。



「止めるよっ!!」



そして、ビットが僕の回りを周回する。お尻から、桜色の縄を出して。それだけじゃない。またバカみたいに砲撃の発射体制整えてるし。

だから・・・邪魔っつってんでしょうがっ!!



「はぁっ!!」





縛り上げられる前に、大太刀アルトを、左から横に素早く一閃。ビット二つと発生途中のバインドを斬り裂いた。

つーか、やばい。速めに決着つけないと・・・。



言っておくと、時間制限のことじゃない。さっきから妙なプレッシャーを感じて仕方ない。なんか背中や肩に紅くて翠の重いオーラを感じる。



・・・絶対にスターライトとか撃たせる前に潰さないと。僕はヴィヴィオが泣くとこなんて見たくないし。

つーか、これ以上は時間をかけるなと、本能が告げてる。いや、告げられてる。





「・・・もうめんどいからさ、射撃も砲撃もビットもバインドもついでに正月太りも・・・全部、斬るわ」

「正月太りは関係ないよねっ!?」

「細かいことをガタガタ抜かすなっ! おのれをとっとと潰さないと・・・」



大太刀アルトを肩に担ぐ。そして・・・ブーストっ!!



「僕にまで飛び火しそうなんだよっ!!」





なのはの砲撃、誘導弾による迎撃の全てを、回避していく。



いや、大太刀アルトを上から、横から、全力で振るいながら、自らの道を切り開いて行く。



・・・やっぱり、感謝だ。今までよりも速く、自由に空を駆けていけるから。



でも、当然エース・オブ・エースはそれで接近なんて許さない。接近出来るコースを、全て潰していく。



・・・誘い込まれてる? なんかこう、距離が中途半端。





≪正解のようですね≫





次の瞬間、なのはが突っ込んできた。つか・・・A.C.S.っ!?



レイジングハートの先端部から、魔力の杭を出し、こちらに一直線に猛スピードで突っ込んできた。

そして、その周囲には魔力弾。だからそれに対して真正面から突っ込んで・・・。

カードをまたもや複数枚、魔力弾に向かって放り投げる。



次の瞬間、カードを中心に青い雷撃が発生する。・・・訂正、『雷撃もどき』が発生した。

前々から研究していた雷撃の形だけを再現した魔法。・・・フェイトの魔法の派手さが羨ましくて、作ってみたの。

で、その青いイナズマがなのはの周りの魔力弾を撃墜する。でも・・・なのはは健在。こちらにそれでも突っ込んでくる。

しゃあないか。派手さ重視で、威力あんまないし。あくまでも、魔力弾の広範囲迎撃用だ。



で、当然これは僕も予測済み。だから・・・!





「チェストっ!!」



大太刀アルトを打ち込むっ!!

一瞬で斬撃とそれは交差。・・・左の肩のジャケットが破れた。だけど、向こうも同じ。



「フレームがっ!?」



先端の魔力フレーム、斬ってやったもんね♪

んじゃ、締めだ。そろそろ時間だしね。・・・僕は、アルトを通常モードに戻して、鞘に納める。

ジガンから、カートリッジを3発消費。刀身に、凍れる魔力が宿る。



「・・・エクセリオン・・・!!」





振り返りつつ、僕に抜き打ちで近い形で、レイジングハートを向けてくる。



・・・遅い。



集中する。世界が少しだけ静かになり、世界がゆっくりと動いていく。別に御神の奥義じゃないだろうけど、それでもそうなる。



斬る。砲撃も、なのはも、全てだ。



そうしようと思って斬れないものなんて・なんにもない。そうだ、ここは今までと変わらない。僕はそうやって・・・。



今をっ! 覆すっ!!





「・・・いくよ、密かに暖めていた新必殺技」



僕は、踏み込む。



「氷花・・・」





背中のアクセルも羽ばたかせ、一気に零距離に近づく。





「一閃っ!!」





そして・・・アルトを抜き放つ。



真下から真上に勢いよく振り抜かれたそれは、発射寸前のエクセリオンを真っ二つにした。



・・・一つ。



それだけじゃない。踏み込み、手首・・・刃を返し、やや袈裟斬り気味に打ち込む。

それは・・・レイジングハートに打ち込まれ、その穂先を強制的に下にした。というより、地面に叩き落とした。



・・・二つ。



まだ終わらない。最後に、がら空きになったなのはの上半身に向かって・・・左斜め下から斬り抜けながらの一閃。



・・・三つっ!!



時間にすれば1秒にも満たない一瞬の間に僕が生み出したのは、三つの斬撃。



それが・・・魔力を、デバイスを、魔導師の三つを、一瞬で斬り裂いた。





「・・・瞬・極(またたき・きわみ)」

≪いわゆるひとつの・・・パートVです≫





示現流の剣術にも、居合いがある。滴り落ちる水滴を、一瞬で三度の斬撃を放ち、斬り裂くほどのスピードの居合いが。

もちろん、その全てが一撃必殺。一太刀防げても、意味がない。

・・・自身の防御と回避を捨て去り、相手より速く一太刀浴びせる事だけを、その一撃で相手を確実に倒すことを追及した剣術。それが、示現流だ。



そう、これはどんな攻撃も防御も回避も意味をなさない神速の三連撃。『一撃必殺』と『先手必勝』。その二つを同時に具現化した一つの形。

・・・先生が、僕達の剣術の奥義というか一つの到達点と言っていたものだ。



今までは二連が限度だった。でも、今は違う。今は、撃てる。偶然とかじゃなくて、自分の意思で。





「・・・終わりだよ」

≪Struggle Bind≫





僕の斬撃、そしてエクセリオンの爆発を受けて、勢いよく吹き飛ばされたなのは。

その身体を、青い縄が縛り上げる。というか、がんじがらめ。



なのはの身体が僕とは少し距離を開けて、縄の発生源である空中に浮かんだ青いベルカ式魔法陣の上で、固定される。

左手を上げると、そこにはいつの間にか、カードが2枚握られていた。





「で、続ける?」

「・・・そう言いながら、どうして詠唱してるのかな」

「悪いけど」



僕は、なのはを斬った直後から詠唱を開始してた。もうすぐ、星の光の刃は打ち上がる。

そして、2枚のカードを下に投げる。それは程なく、地面に僕が叩き落としたレイジングハートに接触すると、それを氷の中へと閉じ込めた。



「意識、落とすまでボコることにした。・・・咄嗟にフィールド出力上げて、ダメージ軽減させてるのは分かってる。まだピンピンしてるよね」



全く、僕の先ほどの説明が嘘になるじゃないのさ。どーしてくれんのよ。



「・・・で、下に墜落する振りして、レイジングハートを回収・・・とか企んでたでしょ」

「ちょっと違うけど・・・ほぼ正解。よく分かったね」

「手応えが鈍かった。あと・・・これでも、高町なのはの研究は怠ってないんでね。この程度でどうにかなるなんて、思えない」





・・・レイジングハート無しでも魔法戦が出来るように訓練してるのは知ってる。武器を落として終わり? んな甘くないよ。

僕が何度模擬戦でぶっ飛ばされたと? それでどんだけこやつの戦い方を研究したと? ・・・それでも届かなかった。それが、高町なのはだ。





≪Starlight Blade≫



アルトに降り注いでいた青い流星が、止まった。そう、星の光の刃は打ち上がった。あとは・・・斬るだけだ。



「・・・恭文君」

「なに?」

「次は負けないから」

「りょーかい」



でも、これからは違う。届かせる。新しい自分を始めたから。



「・・・いくよ、アルト」

≪はい、必殺技ですね≫





変わることはもう恐れない。だけど、変わらないものも大事にする。そうして、今よりも強くなるから。



・・・今、ちょうどそこなのよ。



とにかく僕は、正眼にアルトを構え直す。そして、踏み込み。





≪必殺っ!≫

「新しい僕達の・・・必殺技っ!!」



上段から、真一文字に打ち込むっ!!



≪「クライマックスバージョンッ!!」≫










・・・なのはを真っ二つに斬り、ぶっ飛ばすと、曲が終わった。





ギリギリだけど、僕達はなんとか・・・勝利をこの手に納めることが出来たのだった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







「こりゃ面倒だな・・・おらぁっ!!」

「どこ狙っているんですか・・・こっちですよっ!!」



レイオさんが斧を振るってくるが、俺はレオーで急速回避すると、魔力弾をばら撒き、砲撃を放つ。

いくらレイオさんの一撃一撃が重くても、あたらなければどうと言う事は無いっ!!






・・・・・・しっかし、さすがに硬いな・・・・・・ノリ補正でどうにか互角になっているものの、このままじゃこっちが負ける・・・


≪・・・なら、あの防御を打ち破るだけの一撃を叩き込む必要があるか・・・≫



バルゴラの呟きに、俺はレイオさんの攻撃を回避しながら考えを纏める・・・・・・今の俺が使える手札で、あの防御を突破出来そうなのは・・・・・・アレとアレ!!



「バルゴラ・・・・・・必殺技のオンパレードと行くぜっっ!!」

≪了解したっ!!≫



俺は一旦距離をとると、残っていたカートリッジを全弾排出する。さらに、取り込んだ魔力をすべてバルゴラに注ぎ込む・・・


「あれは・・・・・・させねぇっ!!」


レイオさんは俺がしようとしている事に気づいたのか、魔力弾を放ちながら接近してくる・・・それを、待っていたっ!!


「リプルジョンシールド、バインド同時展開!!」


俺の言葉と共に、現れた障壁が魔力弾を防ぎ、バインドがレイオさんの動きを止める。


「こんなものっ!!」


レイオさんはすぐさまバインドを解除するが・・・その隙は命取りだぜ?



≪魔力の収束を確認・・・・・・マスター、いつでもいけるぞっ!!≫

「おっしゃあっ!!グロリアス・・・・・・ブラスタァァァァッッッッッ!!」

「ぬおぉぉぉぉぉっっっっっっ!?」


その掛け声と共に、開放された魔力が流星となり、レイオさんを飲み込んでいく。それだけじゃ収まらず、紺色の流星は地面を削っていく・・・・・・やべ、やりすぎた。







「・・・・・・や、やるじゃねぇか・・・・・・」



しかし、目の前にはレイオさんがまだ立っている・・・・・・そのバリアジャケットはボロボロだが、瞳からは闘志の炎は消えていない。



「ちっ・・・・・・バルゴラ、まだいけるか?」

≪あのクラスの魔法を行使するとなると・・・・・・あと一回が限度だな。≫

「・・・だそうです。」

「そりゃあいい。俺もあと一撃が限度だな・・・・・・そんじゃ、やるとしますか。」




・・・・・・既に、バックに流れている音楽は最後のサビに入ろうとしている・・・・・・そろそろ、終わりだな。




「・・・・・・バルゴラ、アレをやるぞ。」

≪確かに、最後を飾るには相応しい一撃だな・・・・・・任せろ。≫


そして、バルゴラの銃口から放出された魔力が、刃のように収束していく・・・・・・俺の取って置きの切り札だが、まだ完成には程遠い・・・・・・けど、迷っていられるかっ!!










「うおぉぉぉぉぉぉっっっっ!!」

「かかってきやがれぇぇぇぇっっっっ!!」













俺が地面を蹴ると、レイオさんは斧を頭上に掲げる。そして、斧に集まっていた魔力が巨大な刃へと化す・・・・・・




「ヒートォォォォォォクラッシャァァァァッッッッッッッッ!!」



その叫びと共に、俺に向けてレイオさんの最大の一撃が振り下ろされる・・・・・・俺の位置だと、直撃コース・・・・・・



俺は瞬時に魔力をレオーに込めると、爆発的な加速力が生まれる。



「グロリアスゥゥゥゥゥ・・・・・・セイバァァァァッッッッッッ!!」



そして、バルゴラを横薙ぎに振るい、紺色の刃がレイオさんへと襲い掛かる・・・・・・そして、レイオさんが振るった一撃が、地面に一筋の傷跡を刻んだ。


















「・・・・・・坊主の・・・・・・勝ちだ。」










そして、レイオさんはゆっくり崩れ落ちる・・・・・・お、終わった・・・・・・



俺はグローリーフォームを解除すると、仰向けに倒れこんで空を眺めた。空では、ヤスフミがなのはさんを切り裂く瞬間が見える・・・・・・



そして音楽が鳴り止み、俺とヤスフミは・・・・・・なんとか勝利を手にする事ができた。






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