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頂き物の小説
第7話 『話して分かることがある。一日一緒にいて、なんとなく分かることもある・・・それで、あったかい気持ちになる事もある』









・・・帰りたい。





正直に言おう。帰りたいです。ていうか、もう引きこもりたいです。自宅警備員になりたいです。





僕の今の気分は最悪。天気予報で言うなら、いつぞやのキャロと同じく大嵐だ。あー、ドタキャンしたい。





さて、そんな気持ちを抱えつつ僕は、首都クラナガンにある、待ち合わせでよく使われる広場に居た。





時刻は、もうすぐ午後6時になろうかという時間。さすがに日が沈みかけて、少し辺りが薄暗い。

だけど、街の街頭とイルミネーションが辺りを彩り、明るくさせている。ここだけ昼みたいなノリだ。



・・・ここには、一つの逸話がある。それは、新暦が始まって間もなく、首都の治安が今のようによくなかった頃の話。

はぐれた主人をこの場所で、一途にずっと待ちつづけていた一匹のフェレットが居たそうだ。



ここまで言えばもうお分かりかと思うけど、そのフェレットと、主人が待ち合わせ場所として決めていた場所がここになる。



だからね、あるのよ。広場のど真ん中に、実寸の何倍の大きさだって言いたくなるようなフェレットの石像が。



なの、この話は、ミッドでは絵本やら映画やらアニメやらにもなっているほど有名な話で、ここに住む人間ならば知らない人は居ないくらいだ。

なんでも、ユーノ先生が変身魔法でフェレットに変化しようと思ったのは、子どもの頃にこの話が好きだったからとか。・・・人に歴史ありだね。





そういうわけで、この場所は首都ではかなり有名な合流スポットとなっている。で、僕が何のためにここにいるかというと・・・。










「ごめん、待たせちゃったわね」










・・・どうやら、待ち人が来たようである。



僕を呼ぶのは、オレンジ色の髪をした一人の女性。今日は・・・いつもツインテールな髪をストレートに下ろしている。





そう、ティアナだ。僕はティアナと待ち合わせしていたのだ。





・・・・なぜ、僕とティアナが、こんな場所で待ち合わせをすることになったのか。疑問に思う方々も居るだろう。

それは、あの地獄の晩餐が終わったあと、ギンガさんに取調室に連行された所まで、時間を巻き戻さなければならない。





まず、連行されてから、あのそれっぽい椅子に座らされた。

そうして、僕が今回の模擬戦でティアナに行った、あの数々の嫌がらせに対するギンガさんなりの感想と、それに伴う説教を受けた。



・・・1時間ほど。



涙目で『ホントに許してください。もうフェイトにも怒られまくって、反省したんですから』と懇願したのだけど、ナカジマ捜査官に慈悲の心はなかった。





むしろ『ティアナに、ちゃぁぁぁぁんと謝ってないわよね? つまり、反省してないわよね』と言って・・・角を生やしました。

ちくしょぉ・・・結局謝ったさ。むちゃくちゃ悔しかったさ。勝利のために努力することの大事さを否定されたようで悔しかったさ。

つか、汚い手使って、真面目にギリギリだったじゃないのさっ! 負けるの嫌なんだよっ!!





とにかく、ようやくその話が終わり、本題とも言える僕への用事がなにかという話になった。

それが、待ち合わせをすることなった直接の原因である。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「実は首都でね、カップルを中心に狙っている強盗が出没しているんだけど・・・なかなか捕まえられなくて。見回りも強化してるんだけど、効果が無いの」





・・・いーよ。





「だめっ! というか、なぎ君。なんで私の方を見てくれな・・・え?」

「いや、だからいいよって答えたんだけど。つか、真っ直ぐに目を見据えて話してるじゃないのさ」

「ヤスフミ・・・どうしたのっ!? あの、ひょっとして具合悪いのかな? ・・・ティアっ! すぐにシャマル先生呼んで来てっ!!」

「わ、わかりましたっ! アンタ、気をしっかりもちなさい? 大丈夫、すぐによくなるからっ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クレイモア撃っていいかな?」

≪まぁ、当然ですよね≫





さて、この後皆が落ち着くのに、数分かかった。

つーか、どうしてみんなそうなるのさ。僕がゴネるとか思ってたわけですか。





「あ、あのね・・・。なぎ君、お願いだから、ちゃんと話を聞いてくれないかな」

「いや、聞いてるじゃないのさ。それでいいって言ってるんだけど」

「ヤスフミ、ちゃんとした話なんだから、最期まで聞いて。というか、ギンガがどうして欲しいのか、ヤスフミ分かってるの?」

「え、分かってて言ってるんだけど」

「えぇっ!?」



なんで驚くのさ。・・・とにかく、話はわかったのである。



「よーするに、その犯人を僕が捕まえろってことでしょ。いいよ、やってやろうじゃないのさ。
ふふふ・・・あの魔法とかこの魔法の実験体にしてやる」



そうして、僕は席を立ち上がって外に出ようとした。だって、引き受けるって決めたから。・・・なぜだかギンガさんに手を捕まれたけど。



「お願い、話は最期まで聞いてくれないかなっ!?」

「いや、聞いたでしょっ!? なんの問題があるとっ!!」

≪というか、なにが信じられないんですかなにが≫

「うんとね、なんていうか、不埒な発言するし・・・そこはいいよ。最期まで説明するからちゃんと聞いてっ!!」



・・・ということらしいので、聞くことにしたわけですよ。



「とにかく、さっき話したような感じで、パトロール強化をしても、根本的な解決にはならない。
だから、なぎ君が女の子と私服で夜の街をうろついていれば、強盗のほうから来ると思うの」



そこを一網打尽。ようするに囮捜査というわけですか。うん、まったく予想通りだよね。なので・・・。



「引き受けましょ。まぁ、実験体はいいとしようじゃないのさ。さーて、頑張るかな〜」



いやぁ、これでようやくって・・・フェイト、お願いだから手をそんなに強く握らないで。どんな愛情表現なのさ。



「ヤスフミ、お願い・・・。お願いだから、ちゃんと私達の話を聞いて」

「いや、聞いたじゃないのさ。そしてOKって言ったのに、どうしてこうなるのっ!?」

「必要あるよっ! あの、ヤスフミ・・・どうしちゃったの? あの、私達がなにかしたなら謝るからっ!!」

「・・・あの、僕をなんだと思ってますかあなた方。
だってこれ、部隊の命令なんでしょ? 仮にも所属してる僕が従わないでどうするのさ」



・・・あれ、なんでみんなそんなに苦い顔するのさ。いやだなぁ、僕なんか間違ったこと言ってる?

お願いだからそんな残念そうな目で僕を見ないで。僕がまるで悪いみたいじゃないのさ。



「確かに・・・そう言われると、間違ってはないと思うんだけど・・・」

「あの、私もフェイトさんも、お説教したし、そんなに素直に引き受けてくれるとは思わなくて・・・」

「なにが不満なのさ一体・・・」





まったく・・・。一応はやてやみんなの力になると言ってここに居る以上、引き受けないわけにはいかないって話なのに。

・・・まぁ、不満はありますよ? 結構イラってくるのが。

でもまぁ、これも将来の志望先を見つけるための社会勉強と思えば、まぁいいのではないかと。





「あ でもね。はやての許可をもらって、嘱託としての正式な依頼で処理するから、報酬なんかも出来うる限りのこともさせてもらうし・・・」

「いいよそんなの。ただでさえここの部隊は、色々言われる材料あるのに、そんなことして足引っ張りたくないし。
・・・・・・あぁ、一つだけ報酬欲しいな」

「なにかな?」



僕は、指を一本立てて、フェイトとギンガさんに宣言した。



「美味しいケーキ、奢ってね。それでいいよ」

「・・・なぎ君、本当にいいの?」

「嫌な思いさせるから、ちゃんと報酬で見返りを出すようにしていくよ? 準備もしっかりしてるし・・・」

「・・・あの、フェイトさん。いや、ギンガさんもなんですけど、どうしてそこまでコイツに気を使ってるんですか?」

「・・・なぎ君、絶対に引き受けてくれないと思ってたの。なぎ君は、自分の体型にコンプレックスがあるから」










あー、一応説明しておくと、僕は自分の身体というのが・・・好きじゃない。ぶっちゃけると嫌いだ。

身長も低い。顔立ちや体型は女性的。声だって、言うなれば少年・・・というか、女の子と言ってもいい。エリオよりも高いしね。



その僕が女の子と歩けば・・・どうなるだろうか?

まぁ、この場合は、担当捜査官のギンガさんなり、六課の捜査担当であるフェイトだろうけどさ。とにかく、強盗から見れば絶好のカモと見えるだろう。

はっきり言って、鍛えに鍛えていて、がたいのいい人たちの多い108部隊の男どもの誰かと居るよりは、狙われやすいと思う。

ギンガさんが僕に頼もうとしたのも、それが大きいだろう。ただ、やっぱり好きになれない。





普通にしている分には、弱そうに見えるし、まったく男としては見られない。

そんな自分の身体があまり好きではないから。昔の怪我の代価と言えなくもない成長しない身体は結構、辛い。

それに・・・もし身長があれば、目の前に居る人も、僕を弟としてではなく、男として見てくれるのかなと、考えたりするのだ。





とは言え・・・だよなぁ・・・。










「ギンガさん」

「あ、うん」

「そこまで僕が素直に引き受けるのが信じられないって言うなら、一つだけゴネてやろうじゃないのさ。・・・確認させて。どーして僕に依頼しようとしたの?
適任と言っても、他の人員が、全部ダメなわけじゃないでしょ。僕が小さくて狙われやすい・・・言っちゃえば、確率論の話になるだけなんだから」

「どうして・・・か。そんなの、理由は一つだけだよ」

「というと?」

「・・・友達として、一緒に仕事して・・・なぎ君の仕事振りは知ってる。なぎ君だったら、なんとかしてくれるかなって、そう思ったの」





真っ直ぐに僕を見て、そう口にするのはギンガさん。瞳に、嘘偽りの色はない。本当にそう思ってくれているのが、伝わった。

まぁ、このおねーさん嘘つけるタイプじゃないしね。





「・・・なるほど。つまり、ギンガさんとしては、僕に頼みたいのは局員としてじゃない?」

「そうだね。友達として、頼りたいっていうのがあった。というか、今まで依頼したのだって、全部そうだったよ?
なぎ君がいると、安心出来るもの。・・・暴走するのはやめてほしいけどね」










微笑みながらギンガさんがそう言ってきた。最期だけ余計だね。うん。

ふむ、なるほどね。そうすると・・・やっぱりか。

まぁ、本心を言えば、僕は今回の一件は出来うることなら引き受けたくない。体型のこと持ち出されたのはやっぱり嫌だから。










「でも、三年来の友達が、僕を信頼してくれた上での頼みじゃ・・・引き受けないわけにもいかないでしょ」

≪ま、それもそうですね。というかマスター、完全に局員権限で押し付けようとしたら、断ってたでしょ?≫

「そんなの当たり前じゃん。でも、そういうわけじゃなさそうだしね」

「あの、なぎ君。それってつまり・・・」

「だーかーらっ! 何回言わせるっ!? 引き受けるって言ってるのっ!!
・・・ただし、礼はしてもらうから。報酬はさっき言った通り。OK?」

≪さすがマスターです。素晴らしいドSツンデレですね≫





・・・アルト、それ違わない? つか、ドSツンデレってどんだけピンポイントなのさ。

あぁ、楽しいなぁ〜。久々の実戦だし、暴れないと損だよね。・・・よし、アレとかコレとかの実験台になってもらおう。





「アンタなにするつもりっ!?」

「あの、ヤスフミ。さすがにそれは困るよ。お願いだからもっとちゃんと・・・」

「冗談だって。はやてに迷惑かけるような真似はしたくないし。・・・ただし、相手の出方によるよ?
こっちの攻撃行動まで制限するつもりなら、僕は絶対に引き受けないから」





これだけは譲れない。

・・・鉄火場で、手段を制限されて、なんにも出来ずに傷付くなど、僕は嫌なのだ。痛いの、嫌いだし。





「二人とも、それでいい?」



僕の言葉に、フェイトもギンガさんも、どこか安心したような顔で・・・頷いた。



「とにかく・・・ありがとうなぎ君。それにティアも、すごく助かる」

「別に。報酬が目当てだ・・・え?」

「あの、ギンガさん、待ってください。今・・・なんていいました?」



えっと、すっごく気になる発言が聞こえたんだけど・・・。いや、気のせいじゃないよね。これ。



「実は・・・あのね、囮捜査はなぎ君とティアにしてもらおうと思って」

「「はぁぁぁぁぁぁっ!?」」










・・・そう、僕は忘れていた。ギンガさんが・・・まだリハビリ中の身だということを。

当人はやる気充分だったそうなのだけど、マリエルさんにそれがバレて、お叱りの後にドクターストップがかけられたそうなのだ。

まぁ、当然だよね。死にかけたんだし。

で、僕に協力してもらうのは決定として、他に誰がいるかと考えて・・・ティアナならいいのではないかと思ったそうだ。いや、どうしてっ!?










「ティアなら、背丈とかも考えると、丁度いいと思うし。ほら、キスとかしてもヤスフミが背伸びしなくていいし・・・」

「お付き合いでも両思いな関係でもないのにするかボケっ! そして背伸びするのは僕かっ!?」

「でも、あのね。よく考えたら、私くらいだと、なぎ君とは身長差で恋人っていうよりは姉弟って感じになっちゃうんだよ・・・。
キスしようとして、なぎ君が背伸びしてきてこう・・・はぁ〜」

「ギンガさん、なんでへコむんですかっ!? というか、私とコイツはそんなことしませんからっ!!」

「そうだよっ!! お願いだからキスすることを前提で話を進めるなっ!! つか、頼まれても絶対やらないからねそんなのっ!!
理由はさっき言った通りっ!!
あー、引き受けなきゃよかった。やっぱ帰っていい? つか、キャンセルで」

「ダメだよヤスフミっ! あの、大丈夫だよ? ティアとなら、お似合いだと思うよ。というか、恋人に見えるよっ!!
並んでると、凄くお似合いで、応援したくな・・・あれ? ヤスフミなんで泣くのっ! あの、私、変な事言ったかなっ!?」

「もう、嫌だ・・・。今日はやっぱり厄日だ。殊勝な心がけなんかしなければよかったぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「・・・なんなのよ、これ」










・・・とにかく、そこから話は実に早く進んでいった。

実行日時とパトロールコースなどを打ち合わせしてから、迎えの車に乗って帰って行ったギンガさんを見送って、その日は僕も帰路についた。

こうして、僕とティアナのデートを模した強盗ホイホイな囮捜査は、決行されることになったのだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・そうして、話は冒頭へと戻る。





ティアナがこちらへ走ってきた。で、それをなんともいえない心地で見ている。そんな状況。





「ティアナ、別に走ってこなくてもいいのに・・・。待ち合わせの時間までまだ余裕あるよ?」





大体15分くらいね。ちなみに僕は、今から15分ほど前に来て、人の動きを見ながらぼーっとしていた。

あのね、すごく気分が重かったの。さっきも言ったけど、帰りたいくらいに。

・・・フェイトとやりたいって提案したけど、断られたし。



身長差なんて・・・身長差なんて。変身魔法使えばいいじゃないかよこのバカっ!!(マテ)

ティアナの実地での捜査研修にもなるからとか言うし。正直、そんなの知ったこっちゃない。そうも言ったけどだめだった。



とにかく、覚悟を決めるために少しだけ、町の空気を吸いながら一人で居たかったのだ。



そうして・・・決まる前にこの人来ました。





「アンタがもう来てるとは思わなかったのよ」

「リンディさんに『男の子は、待たせるんじゃなくて待つもの』って教わったし、これくらいは当然だよ」

「へぇ、意外とレディに気を使う教育受けてるのね。関心関心。
・・・あの、お願いだからもう少し楽しそうな顔して欲しいんだけど」

「なるほど・・・。整形しろってこと?」

「違うわよこのバカっ! ・・・そんなに気分のらないの?」

「そういうわけじゃないよ。ほら、夕暮れを見てたら少しセンチな気持ちになってね」

「なにキャラ崩壊な発言を・・・」





気にしないで欲しい。つか、キャラ崩壊って言うな。どーにもね、気が進まないのよ。

あー、帰りたい。だけど・・・ねぇ、これも問題か。

仕事どうこうって考えるからあれなんだ。うん、シャーリーの言うとおりに、普通に遊びに来たって考えれば・・・いいのかもしれない。

いや、狙われる事前提な時点でおかしいけどさ。





「まぁ、素敵な彼女の前でこれってのもアウトだしね。こっからは勢い上げていきますか」

「そうしてくれると助かるかな。つまんなそうな顔されると、私も気分悪いし」










さて、そんなことを言っているティアナを見ながら、今回の突発的なミッションの内容を反芻する。

ギンガさんの話だと、強盗がよく出没する時間帯は、今くらいの時間帯から深夜11時にかけて。

狙われているカップルも、それほど大人ではない。大体僕達と同い年くらいだ。

ようするに、終電は諦めて、そのままご宿泊・ご休憩な所に入ってお泊りな関係ではない。



健全な付き合い方をしている感じで、少し弱そうでちょっと脅せば簡単に言うことを聞いてくれるような組み合わせを狙っているということだ。

・・・なんていうかさ、三下の小物のやり口だね。



こういう事件だと、胸糞の悪い話だけど女性が二次被害に遭う事も多い。

今回の強盗事件では金品だけで、その手の事が起きてないのが救いだけど・・・いつ起きるとも限らない。

・・・しかたない。面倒事になって、胸糞悪くなる前に絶対に解決しよう。

とにかくそんなわけで、僕も今回はちょぴっと弱そうな服装で来ている。とーぜん狙われるために。



ちなみに、コーディネイトは、ギンガさんから話を聞いて今回のミッションについて知っている、はやてとシャーリーの二人にお願いした。

ただ・・・色々ゴタゴタしたのは、言うまでもないだろう。つか、あいつら、楽しんでやがったし。

まぁ、それでも辛い僕の心情をフォローしてくれたのはありがたかった。





とにかく、僕は黒のインナーに、薄手の白いパーカーを羽織り、ジーンズ生地のパンツ。スニーカーを履いている。

そして・・・これははやての入れ知恵なんだけど、伊達で、フレームの細い眼鏡をかけている。(シャーリー印の特別品)

なんていうか、弱そうっていうより秋○に居るオタクっぽい格好なんじゃないかとちょっと思う。

・・・あ、でも最近はそんなこともないのか。みんなかっこいい格好してたし。





そして、今回の恋人役であるティアナの格好はというと・・・。

白のワンピースに、紺色の長袖で薄手な上着を羽織っている。髪型は、さっきも言ったけどストレートのロングヘアー。

・・・夢? いや、現実だよね。ミッドチルダだし。あー、いつまでこのネタ引きずるんだよ。もうみんな飽きてるはずなんだからやめようよ。










「それじゃあとっとと行きましょ」





ギュッ!





「へっ! あの・・・ティアナっ!?」





ティアナが、いきなり僕の左手をギュッと握ってきた。でも、ただ握るんじゃない。

こう・・・五本の指と指を絡めて簡単には離せないようにして・・・いわゆる、恋人繋ぎっていうやつで握っている。





「こうして手を繋いで、一緒に街を歩いていれば、恋人同士に見えるわよ」

「いや、それはそうかもしれないけど・・・・」

「どうしたの? 顔、真っ赤だけど」

「な、なんでもないっ! なんでもないからっ!!」





うん、なんでもないからっ! ・・・まさか、ティアナにこんなアプローチされてドキドキしてるなんて・・・言えないし。

内心、動揺しまくっている僕を、ティアナはキョトンとした顔でこちらを見ている。

動揺してないのかな? まぁ、こういうことする相手が居たとしても不思議はないか。ヴァイスさんとか。・・・なんか、ちょっとむかつく。





「それで、これからどうするの?」

「・・・アンタ、デートプランの構築は、男の子の役目よ?」

「まー、それもそうか。・・・とりあえずは打ち合わせどおり、ウィンドウショッピングをしている感じで、繁華街の方を回りましょ」

「了解」





そうして、僕達は広場から、首都の繁華街へと歩き始めた。・・・当然、手は恋人繋ぎで。




















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第7話『話して分かることがある。一日一緒にいて、なんとなく分かることもある・・・それで、あったかい気持ちになる事もある』



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




ん〜、なんではやてさんは俺だけ休みにしたのかねぇ?怪しすぎるぞ。


≪まったくだな。何か企んでいるような気がしてならないぞ。≫



そんな事を考えながら、俺は繁華街をぶらぶらと歩いていた。








・・・・・・昨日、夕方にはやてさんが俺に、『明日はジン君休んでええからな〜あ、繁華街のほうでも見てきたらどうなん?』とか何とか言ってきたのだ。

まぁ、家でごろごろしても良かったのだが、とりあえずはやてさんの言っていた通りに繁華街に来てみることにする・・・へぇ、こんなお店もあるんだな。





≪・・・マスター、アレを見てみろ。≫



ん、どうした?・・・ティアナ?それに、ヤスフミ・・・だと?


バルゴラに言われて振り向くと、そこには手を繋いで一緒に歩いているヤスフミとティアナがいた。ティアナは普通に可愛い格好、ヤスフミはどこか弱そうな雰囲気を出している。



・・・・・・それよりも気になるのは、その後ろを歩いている人物だ。なんというか、いかにも尾行していますよ〜っていう格好で、二人の後をつけている。



俺はさりげなく近づくと、その不審な人物の肩をつかんだ。


「あんた、いったい何をやって・・・スバル?」

「え!?ジン、どうしてここにいるの?」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・手が熱い。心臓もバクバクいってる。ティアナには・・・伝わってるよね。手も繋いでるわけだし。

すずかさんや美由希さん。あと・・・フェイトと手を繋いだりはしたことあるけど。でもですも・・・、ドキドキしている。

というか、傍から見て恋人同士に見えるように振舞うってことは・・・それっぽい行動をしていくってことだよね?





今さらだけど、ちょっとだけ後悔。いや、別に嫌ってわけじゃなくて、なんというかその・・・・・恥ずかしい。





そんな僕の心境は置いとくとして、僕達は首都クラナガンの繁華街の方へとやってきた。





ギンガさんとの事前打ち合わせの中で、被害者の証言を見せてもらったのだけど、事件が発生する状況は全く同じ。





繁華街を歩いている時に、20代前半くらいの男連中5、6人にいきなり囲まれて、ナイフを突きつけられる。

その後に裏路地へと連れ込まれて、男の方に殴る蹴るの暴行。

そして、怯えきって抵抗の意思を無くしたカップルから金目の物を強奪して、バカにしたような笑いと共に立ち去る・・・という腐ったやり口である。





そいつらだけでやってるってわけじゃなくて、8○3な方々とか、繁華街ではた迷惑な規模で吊るんで息巻いてる連中などがバックに居る可能性もある。





だけど、それはシバキあげればすぐに吐くでしょ。というか、吐かせるし。

そんなわけで、僕達はウィンドウショッピングなどをしながら、繁華街を歩いている。





ちなみに、僕達が狙われなくても、他の人達が狙われる可能性もあるので、囮捜査と同時に、私服パトロールでもあったりするのだ。










「・・・真剣に見てるけど、欲しい服でもあるの?」



ミッドではそこそこ有名な服のブランドのお店の前のショーウィンドウを見ているティアナにツッコむ。

食い入るように見てたなぁ。僕は、それを横目で見つつ、それらしい奴が居ないかどうかをチェックしていた。



「そういうわけじゃないんだけど・・・いいなぁって思って」

「・・・あの服?」



その言葉にティアナが頷く。

ティアナが見ていたのは、フリルの付いた、青いワンピース。

これがはやて辺りだったら『相手居ないでしょうが』とか言うとこなんだけど、今日は一応デートの振り。ちょっとは気遣っていかなきゃダメでしょ。



「ティアナなら似合うんじゃないの?」

「・・・そう思う?」

「うん。こう、今みたいに髪を下ろして、上に何か羽織ったりすれば十分」

「そっか、ありがとね」

「別に礼を言われるようなこと、言ってないけどなぁ。・・・でも、ちょっと意外だった」

「なにが?」

「いや、ティアナが、そういう可愛らしい感じの服が好みだったんだなって」





えー、こういう不用意な会話だけはみなさん絶対にしてはいけません。

なぜって? 両手を頬に添えられて・・・思いっきり引っ張られるからですよ。

あー、頬が痛い。加減しないんだもの。つか、普段のイメージから言っただけなのに、なんでこれっ!?





「アンタが悪いからでしょ? 女の子はね、みんな可愛いのが好きなのよ。私との今後のために、覚えておきなさい。いいわね?」

「・・・はい」

「なら、よろしい。ほら、次行くわよ。この際だから、色々見ておかなきゃ」



そうして、また手を繋いで歩き出す。なんというか、ちょこっと大丈夫になってきた。



「・・・でも、残念だね」

「なにがよ?」

「ほら、都合が合えば、お店の中に入って試着とか出来たのに」





店の中に居たら襲われないしなぁ。・・・いや、こういうこと言う時点で色々おかしいけどさ。





「ま、仕方ないでしょ。今度の休みにでも来るわよ」

「なら、僕もまた付き合おうかな。というか、プレゼントするよ」

「・・・いいわよ別に。まぁ、誕生日にでもおねだりさせてもらおうかな。それまで、貯金してなさいよ? 奮発してもらうから」

「りょーかい。お手柔らかにね」




まぁ、恋人同士という設定なので。そして、そんな話をしながら、また繁華街を歩き出した。

すると、クレープ屋を見つけたので、僕の提案で食べる事にした。

だって、ずっと繁華街歩きっぱなしなんて行動を誰かに注目されたら、私服パトロールだって気付かれる可能性があるし。

店の中には入れないけど、多少は緩急つけとかないとだめでしょ。



ちょうど、その店の周りに椅子が置いてあったので、そこに腰を落ち着けて、周囲の様子に気を配りつつ、間食タイムとなった。





「・・・おいひー♪」

「ホントね。これは・・・レベル高いわ」





クレープの味に、僕もティアナもご満悦だった。

僕は、イチゴと生クリームたっぷりのものを。ティアナは、季節限定の栗とマロンクリームたっぷりのものを。

いや、このクレープ屋さんは当たりだよ。仕事じゃなければ全メニュー制覇したい気分だ。



生地はもっちりとしてて噛む度に心地のいい感触が口の中に広がる。

イチゴや、生クリームも同様に素晴らしい。仕事の疲れも吹き飛ぶ甘さが素晴らしい。でも、しつこかったりはしない本当に程よい甘さ。

それを、一緒に売っていたお茶と一緒にいただく。少しだけ冷たくなった風が肌寒い。だけど・・・なんだか心は温かい。





「・・・口元にクリームついてるわよ?」



そう言われて、指でクリームを拭こうとする。でも、それは無理だった。



「これで取れたわよ」



ティアナに、机に置いてあったティッシュで拭いてもらったからだ。・・・ありがと。



「はい、どういたしまして」

「うむぅ・・・、ティアナはこういうのないよね」

「なにが?」

「口元になにかついてるーとかさ」



見た記憶がない。そういう隙というか、ドジなところというか・・・・なにげにシャーリーと同じで完璧超人?



「そんな、完璧超人なんかじゃないわよ? 普通にドジだってするし、隙だってあると思うけど」

「いや、見てるとそんなにないから」



パートナーのスバルは隙だらけなんだよなぁ。というか、ツッコむ要素満載? 主に思考なんだけど、どうしてこうも違うのか・・・。



「どうしたのよ?」

「ん? いや、ティアナの隙がないかなと観察してたの」

「もう、そんな簡単には出さないわよ」

「・・・ほら、出さないようにしてるんじゃないのよ。そういうのを完璧超人って言うんだよ」

「そうかしら?」

「そうだよ」





二人でクレープを食べながら、そんな会話をしてると・・・なんでだろ? 後ろから気配が・・・。



試しに、なんの脈絡も無く、気配のするほうをバッと見てみる。・・・なにもない。





「どうしたの?」

「あ、なんでもないない。ちょっと視線を感じたんだけど、気のせいだったみたい」





真剣な顔で聞いてきたので、手を振りながら答える。

もう一度気配を探ってみるけど・・・やっぱり感じない。



犯人に目をつけられたのかな? それならそれでOKだけど、別口って可能性もある。一応、警戒だけはしとくか。

















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



うわ、危なかったー! 恭文、いきなり振り向いてくるんだもん。ビックリしちゃったよ。

でも・・・、あのクレープおいしそうだなぁ。




そう、私は、恭文とティアのデートを尾行中だった。だって、ティアがやたらめかし込んで出て行ったのが気になったんだもの。

ちなみに・・・服装は、尾行していますーっていうそれっぽい服装になっている。



でも、恭文とティア。お忍びデートって感じの格好だね。



恭文は眼鏡かけてるし、ティアは髪を下ろして・・・おぉ、ストレートヘアーだね。『いつもと違う私を見て?』ってことなのかな?



まぁ・・・ティアにそういう相手が出来たのは、訓練校時代からの公認カップルとしてはちょっと寂しいけど。というか、二人ともひどいよっ!

そういう関係なのに、私に内緒にしてるなんてさ。なんか疎外感感じちゃ・・・あ。





ひょっとしてティアが模擬戦の後も普通にしてたのって、そういう関係だったからっ!? いつのまにーーー!!





アレかな? 執務官だからっ!? 恭文、執務官なら誰でもいいんだっ!!





とにかく、私は、ゆっくりと二人の跡を追跡した。

・・・本当に気をつけよう。恭文、妙に勘がいい時あるし、アルトアイゼンもいるし、気を抜いたらすぐに気付かれそうだよ。






「・・・・・・おい、スバル。なんで俺まで一緒にヤスフミとティアナを尾行しているんだ?」




え〜、ジンも二人の関係気になるでしょ?



「あのな・・・・・・ヤスフミの奴、あんだけフェイトさんが好きって言ってんだぞ?それが今更、他の人と付き合おうとするなんてありえないだろ?」



そんな事わかんないじゃん!!ティアは可愛いし、恭文だって気持ちが変わるかも知れないし・・・



「・・・・・・まぁいいや。それよりいいのか?二人が行っちまうけど。」



え!?早く行かないと見失っちゃう!!ほら、ジンも急いで!!





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とりあえず、妙な追跡者の気配は感じない。・・・やっぱ気のせいだったのかな?

クレープを美味しく食べたあとは、また手を繋いで、くだらないことを話しながら繁華街をぶらぶらウィンドウショッピング。

と言っても、僕達が管理局の人間だと気付かれそうな話題は避けている。

事前にそういう取り決めをしていたからだけど、犯人たちの耳に入って、気付かれる可能性もあるし。





さっきから、またもやアルトが黙っているのが気になっている方もいると思うけど、それが理由である。

・・・管理局所属どうかはともかく、魔導師ってバレたら絶対に警戒されるし。まぁ、ちょっと楽しくなってきたね。

そりゃあ僕だってお年頃。女の子と二人で出かけるっていうシュチュエーションは・・・今までもあった。










すずかさんに休日に無理やリひっぱり出されて、ジャンクショップ回りに付き合ったり。

・・・10数キロって荷物を持たされて長時間歩いた時は、本気で暴れたくなったなぁ。いや、途中から肉体強化の魔法使ったけど。



美由希さんの服の買い物に付き合わされたり。

・・・下着売り場に手を引かれて突撃させられそうになったのは、本気で抵抗したなぁ。無駄だったけど。

しかも店員に女の子と間違われて、あやうく試着させられそうになったし。



はやての・・・やめよう。あれは思い出すと頭が痛くなる。

大晦日なのに、熱気ムンムンで人がゴミゴミしてて辛かったし。

というか、12歳の男の子にあんな物買わせるなよ。そりゃあ八神家の自宅に帰りついたあとに、はやての部屋で回し読みしたけど。










でも。今ティアナと居る時間は・・・それらとはちょっと違う。

本格的にデートっぽい感じだからだろうなぁ。なのは達と出かけると、どうしてもギャグ臭が・・・。

あ、フェイトと出かける時とちょっと近いのかも知れない。こう、本当にデートしてる感じ。



そう思った次の瞬間。それはやってきた。










背中に、冷たい刃の感触。僕らを取り囲む、害意を持った気配。・・・お客さんか。










”来たわよ”

”分かってる。・・・こうも簡単に釣られてくれるとはね。間抜けを釣るのに餌はいらないってやつ?”





僕達二人を取り囲む六人の男。

服装だけを見るなら、ちょっと素行の悪い若者といった感じのラフでパンクな若者だ。

冷たい切っ先の感触が、少しだけ強くなる。...恐らく、ティアナも同じ。





「死にたくなかったら、来い」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ど、どどどどどうしようっ!?恭文とティアナ、路地裏に連れて行かれちゃったよ!?」

「・・・スバル、とりあえず駐在している局員を連れて来い・・・」

「わ、わかったっ!!」



俺の言葉にスバルは頷くと、大急ぎでその場を離れていく・・・さて、どうしたものか・・・


≪ヤスフミもティアナもデバイスは持っているだろうが・・・万が一魔導師がいると厄介だな。≫


そう、これがただのゴロツキならいいんだが・・・魔導師がいると、周囲の被害も考えなくちゃいけない・・・不利になるのは、ヤスフミ達の方だ。








≪・・・フフフフフフフ♪マスター、こういう時こそ、あの特殊任務用のバリアジャケットを使用するときだ!!マスターの羞恥心と人の命・・・どちらが重要か言うまでも無いだろう?≫





・・・・・・ヤスフミにばれたら絶対なんか言われるし、何より恥ずかしいからあまり使いたくないんだが・・・・・・仕方ない・・・・・・やるぞ、バルゴラ。


≪了解だ♪≫

「・・・セットアップ・DZモード!!」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして連れ込まれたのは、行き止まりになっている路地裏。と言っても、道幅は結構広い。車一台分くらいなら入れそうだ。

普通なら、数も多いし、相手は凶器持ち。絶体絶命な状況。もちろん、普通なら・・・。





「随分楽しそうじゃねぇか坊主。こんな綺麗な彼女を連れて歩いてよ?」





僕達・・・というより、ティアナを品定めするような目でこちらを見ている悪党その1。

顔だけ振り向きながらその様子を見ていると、他の連中も下種な笑いを浮かべている。

いや、よかったねティアナ。綺麗だそうだよ?





「つーわけで、お前には勿体ないからよ」



どういう意味だ。



「このねーちゃんは俺たちで遊んでやるよ」

「だなっ! 姉ちゃん、俺たちと楽しいこと、しようぜ〜?」

「大丈夫大丈夫、俺たち、すっげーーーーー優しいからっ! ひゃひゃはははっ!!」





・・・ようするに、ティアナで『自分達だけが楽しいこと』をしようとしているわけだ。ちょうどいいタイミングだったのかな?

強盗だけで終わらせるのに飽きて、行動内容のエスカレート。よくある話だわ。全く、不覚にも関わってよかったとか思ったじゃないのさ。



そんなことを思って、悪党その2・3・4の話に耳を傾ける。





「おいおい、そんなことしちゃったら、俺たち犯罪者だぜ?」

「いいじゃねぇか、どっちみち、強盗したりしてるし・・・犯罪者なんだしさっ!」



僕達に対して、ナイフを突きつけてきている悪党その5・6が、耳障りな言葉を並べると、その他のやつらも、それにのるように楽しそうに笑う。



「ひょっとして、カップルばかり狙っている強盗って・・・。い、いやだ・・・。助けて・・・」





少し、怯え気味な色をつけくわえて、僕はそう聞いてみる。確認は大事ですよ。間違ってたらアウトだし。

そしてティアナ、ちょっと笑いそうになるなっ!



とにかく、返事は後ろにいる悪党その5、その6から帰って来た。





「そうだよ。・・・くくく、楽しいぜぇ、幸せそうにしている、お前らみたいな連中をこういうとこに引きづりこんで、じっくりといたぶるんだよ」

「そうすると、女の方とかが、涙目で『もうやめてください!』とかいいやがるんだよっ! 
それが楽しくて楽しくて・・・ついついこうしたくなっちまうんだよっ!!」



そう言って、悪党その6がティアナに抱きついてこようとする。






























≪ふんっっっ!!≫

「ぶげらっ!?」








・・・その時、ティアナの前に現れた何かが、悪党その6を吹き飛ばした。














≪・・・・・・可憐な乙女に対して非道な行いをしようとするとは・・・見過ごせんな。≫
















・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?




ティアナもまた、困惑しているようだ。だって、ティアナの目の前にいる奴は・・・・・・胸に装甲がついた紺色のライダースーツに、ゼ○のマスク、そして両手に手甲、両脚には・・・ってあれレオーじゃん!?



「てめぇ、何者だぁ!?」

≪・・・・・・我は、貴様らのような存在から弱者を護る為に現れし戦士・・・・・・ダーク・ゼロッッ!!≫




悪党達の叫びに、決めポーズをとりながらそう叫ぶ「ダーク・ゼロ」・・・・・・あ、声はバルゴラだ。ノリノリだなぁ・・・・・・というか、何してんのジン!?


≪さて、覚悟はいいか貴様ら・・・成敗してくれるっ!!≫

「ふざけんじゃ・・・!?」



悪党その2がそういい終わる前に、ジ・・・ダーク・ゼロは一瞬で接近すると、一撃で悪党その2を地面に沈める。そりゃそうだよね・・・あんな加速力に一般人が耐え切れるわけないもん。



「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!?!?!?」

≪逃がさんっっ!!≫



残りの4人は仲間をおいて逃げようとするが、ダーク・ゼロは4人の前に回りこむと、悪党達を蹴り飛ばしていく・・・・・・僕とティアナは、唖然としたままそれを眺めているしかない・・・



・・・というか、どこの特撮ヒーローですかあなた?
























そして、ダーク・ゼロの活躍によって、悪党達は全員ぼろぼろになっている。当然非殺傷設定なので死んではいないけど、なんというか半死半生といった所だね・・・・・・悪党共はダーク・ゼロのバインドによって一網打尽となる。





≪ふははははははははははははははははははははっっっっっっっっ!!!!それでは少年達よ、またどこかで会おう!!≫

「逃がすわけないでしょうが。」

≪ぬおっ!?≫


なにやら片手を響○さんのようにして空中へ逃げようとするダーク・ゼロを、僕はバインドで捕獲する・・・さぁて、詳しく話を聞かせてもらいましょうか?


「でさぁ・・・何やっているの、ジン?」

≪・・・何のことかな少年?私はダーク・ゼロ、弱者の味方・・・≫

「・・・いや、デバイス使っている時点でバレバレよ?」

≪というか、なんでゼ○マスクなんですか。≫









≪・・・どうするマスター?バレバレのようだぞ?≫

「・・・・・・俺だって・・・・・・俺だってやりたくてやった訳じゃないわ!!魔導師が出てきたら周囲の被害も心配だし、ヤスフミの事だからなんか過激な魔法で即時鎮圧とかしそうだし、バルゴラをそのまま使ったら余計に被害が出そうだったからこれしかなかったんだよ!!」




・・・あ、なんか涙声で訴えてくるや・・・けどさ・・・





「何言ってるのさ!!被害云々は僕も思ったし、即時鎮圧はむしろ当然でしょうがっ!!それより・・・なにヒーローみたいな登場してんだよ!?不覚にもかっこいいと思ったじゃないか!!あれだ、僕らにもそれ作れ!!」

≪なるほど、それはいいですね・・・そしたら、合法的に変身なんてできますし。≫

≪そうだろう?古鉄殿、音声を我々が行うようにしたら、ますます楽しくなるぞ?それに、マスターの奴、ティアナが襲われそうだったから無我夢中で飛び出したしな・・・≫

≪そうなんですか?念の為記録を残しておいたのですが・・・後で渡しますよ。≫

≪なんと・・・古鉄殿、感謝するぞ。≫

「バルゴラ、テメェは黙れ!?」

「アンタ達は何変な事口走ってんのよっっ!!大体、ジンは何でここにいる訳っ!?」

「んなもんスバルに言いやがれっ!!アイツがお前達を尾行してなけりゃ、俺は関わらずに買い物してたんだよっ!!」

「「≪・・・スバル(さん)?≫」」





僕らが疑問に思っていると、明りがこちらに迫ってきて・・・って、管理局員っ!?



そう、この辺りに駐在していると思われる地上部隊の制服を来た局員が数名、こちらへと走ってきたのだ。





「さすがティアナ、連絡早いね」

「私は連絡してないけど・・・アンタじゃないの?」

「いや、僕じゃないし。・・・アルト?」

≪残念ながら私も違います。・・・というか、今回は私の出番少なすぎです≫

≪当然ながら、我々でもない。≫


だってしかたないじゃないのよ。いつもの調子で喋ってたら、魔導師だってバレちゃうんだし。

じゃあ、クロスミラージュ? いや、それならティアナが気付かないはずないし・・・ジン達でもないし・・・



「恭文ー! ティアー!! 大丈夫ー!?」



・・・なにしてんのこの人。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・うん、わかった。こっちのことは心配せえへんでもえぇから。ほな、おつかれさま」



そこまで話して、うちは通信モニターを落とす。・・・いやぁ、無事に解決したみたいでよかったわぁ。



「蒼凪ですか?」



そう聞いてきたのは、シグナム。当然、今回の囮捜査についても知っとる。で、この場にはもう二人。



「はやて、どうだった?」

「ラブラブですか?」

「シャーリー、それは違うよ。囮捜査なんだから」



いや、うちも思ったけどな。・・・そう、フェイトちゃんとシャーリーも居る。まぁ、関係者やしな。



「まー、ラブラブはしてないけど、ブラブラしとったら、思ったよりもはよう獲物が引っかかったらしくてな。スピード解決や」



いやぁ、さすが恭文やわ。いい感じで即効カードを引き当てとるし。うちはやってくれると信じてたで。

捕まえるためにまた一回とか使ってもめんどいやん?



「よかった・・・。あ、ヤスフミやティアは大丈夫かな。怪我とか、してない?」

「それも大丈夫や。つか、恭文おるのに、そないなことになると思うか?」

「ならないでしょうね」



うん、それはうちも思うてたわ。魔法が必要やと思ったら、非魔法能力者相手でも使うしな。



「というか、使ったんだよね。アレ・・・」




「・・・いやぁ、それがなぁ・・・たまたま買い物に来ていたジン君が、周囲の被害なんかも考慮して即効鎮圧したらしいんよ・・・」

「「ジン(君)が?」」



いやぁ、ただ恭文とティアナがデートしているのを目撃したらどうなるかなぁと思ったんやが・・・まさか、こうなるとはなぁ・・・



「・・・それと、どうも今回のことをホンマのデートと勘違いして、スバルが後つけてたらしいんよ」

「スバルがっ!? そういえば、エリオとキャロが姿を見ないって言ってたけど・・・」

「まぁ、みんなには内緒にしてましたしね。確かにあのティアを見れば、そう思っちゃうかも」

「しかし、あいつは一体何をしているんだ。仕事もあると言うだろうに・・・」

「とにかく、恭文とティア、ジン君は向こうで作らなあかん書類があるから、今日と明日は向こうでお世話になる。
そいで、明後日から通常勤務に入る言うことになったから、よろしくな」

「了解しました」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・見事な勘違いで僕達を尾行していたスバルに、ティアナと一緒に軽く説教をかまして、六課隊舎へと帰したその後。

僕とティアナ、犯人確保の知らせを聞いて駆けつけてきたギンガさんは、現場での処置をあらかた終えて、108部隊の迎えの車に乗っていた。



そして、その中で、ある人に通信を繋ぐ。もちろん、事件の概要を報告するために。





『・・・わかった。犯人の尋問は、管轄の部隊に任せることになったから、三人は明日中に報告書纏めて出しといてくれ。
それで、うちの仕事は一応終わりだ』

「わかりました」

「了解です」

「・・・・・・あ〜・・・・・・やっぱり、俺もですか?」

『民間協力者ならまだしも・・・局員だからな、当然だろ?』



僕達が通信している空間モニターに映るのは、108部隊の隊舎の中にある部隊長室。

そこの机に座って、僕達の報告を聞いていたのは、この第108部隊の部隊長である、ゲンヤ・ナカジマさん。

言わずと知れたギンガさんとスバルの父親である。


・・・うん、ジンは災難だったね。


『まぁ、よろしく頼むぜ。しかし、久しぶりだな。八神やギンガ、それにスバルからもメールで聞いてはいたが、元気そうで安心したぞ』

「えぇ。・・・なんとか元気です。色々あって泣いちゃうこともあるけど、僕は元気です」

『・・・話は聞いている。まぁあれだ、お前さんが悪いのは間違いないって・・・ことにしておこうぜ?
お前らの言い分も分からなくはねぇが、あいつらのアレは筋金入りだからな』

「そうしてます・・・。でも、ゲンヤさんも変わりないみたいで安心しました」

『おう、おかげさまでな。アルトアイゼンも元気そうだな。六課の連中に馴染みまくってるって聞いてるぞ?』

≪おかげさまで、マスター共々六課のみなさんには良くしてもらっています。
本当に、特にあなたの次女の方には少しばかりお礼をしてやりたいくらいに・・・。
まぁ、今回の出番が少なかったことに比べれば些細な問題ですが≫





まだ言うかアルト。そして、なにげに不埒な発言をしない。奇麗事言われてムカついたのは分かるけど。

あ、それとゲンヤさんは、当然アルトがおしゃべりなデバイスかというのは知っている。

というか・・・。





『まぁそう言うなって。アイツのアレも筋金入りだからよ。・・・そうだ。お前、明日恭文の書類作成が終わったらちょっと付き合え。気晴らしさせてやる』

≪・・・分かりました。レベルはいくつにしますか?≫

『最高レベルに決まってるだろうが。今度は負けねぇからな?』



むちゃくちゃ仲がいいのだ。ゲンヤさんの将棋で、いい対極相手になっている。



「それで、父さん。なぎ君とティアには、今日は家に来てもらおうと思ってるんですけど」

『そうだな。俺も仕事が一段落したら帰るから、さきに向かっててくれ』

「あの、さっきも思ったんですけど、話が勝手に決まっているのが非常に気になります」

≪マスター、いつものことではありませんか。何を今さら≫

「それじゃ、俺は明日108部隊の隊舎に来ればいいんですね?」

「そういう事になるかな・・・それじゃジン君、よろしくね。」



うん、分かってる。でもさ、一応抵抗するって大事だよ?

そうして、ゲンヤさんとの通信を終えて、僕達はジンと分かれて、108部隊の人にナカジマ家へと送って貰った。



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・長かったなぁ」





そう言って私は、布団の中で一人呟く。ここは、ナカジマ家のスバルの部屋。

アイツとギンガさんと一緒にここに来てから、遅れて帰って来たナカジマ部隊長と一緒にご飯を食べた。





それから、交代でお風呂に入る。

ギンガさんとナカジマ部隊長は、アイツにお休みを言って自分の部屋に入って、アイツはリビングのソファーで寝ることになった。



まぁ、部屋が無いそうだしね。

というか、アイツが『ソファーで寝るというお泊りモードなことをしたい』などと言い出したからだけど。・・・いや、アイツは本当になんなの?





なんというか、ついていけない時がある。

普通の、日常の中に居るアイツと、模擬戦なんかで戦っている時、今日みたいな実戦の場に立っている時のアイツとじゃあ、あんまりにも差がありすぎる。

戦闘に入ると、一本線が切れるというか、過激で容赦が無くなるというか・・・。あんなもん使ってまでどうにかするとは、最初は思ってなかった。

そして、さらに切れると・・・シグナム副隊長と戦ってた時の状態だ。戦いそのものを、完全に楽しんでた。





もちろん、だからって、悪いやつだなんて思ってない。

まぁ、アレよ。一日デートして、アレコレ話してみて、その印象は強くなったかな。

でも、アイツはなのはさんやフェイトさん達とは違う。もっと言えば、私達とも違う。たまに、なんで友達なのかが気になる時があるくらいに。

だけど、それでもいい奴だとは思う。別に、同じである必要なんて、無いしね。





そんなことを思いながら私は、暗い部屋の中で布団に入ると、自分の右手を見る。

今日、アイツとずっと繋いでいたその手を。





今日は楽しかったかな。男の子とデートするなんて、初めての経験だったし。

アイツも、なんだかんだいいながらも、始まったら意外とちゃんとリードするのよね。自分は道路側歩いたりとか。話しやすい話題振ったりとかさ。





ちゃんと男の子、出来るんだなって関心してしまったくらいだもの。まったく、普段からあぁしてればいいのに。まぁ、だからこそアイツなんだろうけどさ。

だから、ちょっとキレちゃった。アイツ、自分がそういうことちゃんと出来るやつだっていう自覚無いんだから。全く。



でも、私も悪かった。アイツのことあんまり知らなかった時の事とは言え、その時の話を持ち出されるとは思わなかったから・・・。

なんていうか・・・うん。反省した。これからは、もうちょっとあれこれ考えて付き合っていこう。




・・・でも、ジンが助けに来てくれたのは意外だったけど。格好はたしかに変だったし、アイツだけでも何とかなったと思うけど・・・私を心配してくれたみたいだし・・・そこは嬉しいかな?









・・・って、私はなに考えんのよっ! とにかく、今日の任務は無事に終了。明日は、報告書作成か。しっかりやっていきましょ。





そう思い立つと、私は布団を被って、瞳を閉じた。そしてすぐに眠りについた。・・・いちおう、これだけは言っておくわ。










おやすみ。あと、今日はありがとうね。





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




・・・翌日、108隊舎に来た俺はヤスフミやティアナと一緒に、報告書の作成を行った・・・まぁ、大まかなのはヤスフミ達に任せて、俺は悪党達をどういう感じでぶちのめして、どう護送されたのか、現場の状況はどうだったか・・・という感じで報告書を纏める。

そんな感じで、午前中には作業が終わった。


その後、将棋をする為にアルトをナカジマ部隊長に預け、偶然(?)そこにいたヤスフミの知り合いらしいマリエルさんと一緒に、昼食を取る事にした。




「・・・六課で元気にやってるんだよね?」

「はい。どうにかこうにかですけど」

「そのあたりは、シャーリーから聞いてるよ。なんか大人気みたいだね」

「大人気っていうか・・・なぜかすごい勢いで馴染んでます」



確かに、みんな遠慮がなくなってきてるなぁ。・・・たまにヤスフミが巻き込まれているけど。



「なぎ君が妙な事をしなければ問題ないんじゃないの?」

「ギンガさん、本当にそう思うの?」



ヤスフミの問いかけに、ギンガさんは目を逸らす・・・やっぱそう思っているのか。



「みんな、可愛がってくれてるんだから、いいことじゃない」

「まぁ、そうなんですけどね・・・」

「あ、そうだ。恭文くん、今度本局の方に来てくれないかな? アルトアイゼンと一緒に」

「それはかまいませんけど、どうしたんですか?」

「うん、一回私の方でもメンテしたいなと思って。シャーリーが頑張ってくれるとは思うけど、やっぱり見てみたくてね。
というか、ヘイハチさんの時からずっと見てきている可愛い子と色々お話したくて。ほら、同い年でもあるし♪」

≪ま、そういうことなんですよ≫

「それと、そのついでって言ったらアレなんだけど特殊車両開発部の方にも顔出してもらえないかな?
ヒロさんとサリさんが、恭文くん達は六課でどうしてるのかって心配してたから」

「あー、了解です。それじゃあ、作業中にでもちょっと顔出します」

「うん、そうしてあげて」

「なぎ君、あのお二人はお元気?」

「うん、すっごく。でも、最近は会えないんだよね。向こうも僕も仕事あるし」

「そっか」

「ね、その二人って誰なの? アンタやギンガさんの知り合いなのは分かったけど」

「そうだな、俺も気になる。」



・・・なんというか、さっきから知り合いの影がちらついているんだが・・・気のせいかな?





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




さて、また説明である。

今、マリエルさんが言ってた二人は、僕のオタク友達で本局の特殊車両開発部に勤める局員である。

そう、以前話した、僕の誕生日にデンバードを送ってきた開発部の友達というのは、この二人なのだ。あと、最近だとトゥデイとモトコンポね。



この二人との出会いは・・・偶然でした。僕がたまたま見ていた某ゲームの攻略サイトのチャットで知り合って、意気投合してオフ会。

そのオフ会の中で、管理局仲間というのが判明して、それ以来色々と手助けしてもらっている。



そう、いわゆるネットな関係から始まった友達付き合いなのだ。



二人とも、僕よりも一回りほど年齢が上なのだけど、オタク趣味という素晴らしい共通点によって、その差は埋められ、素晴らしい関係を築けている。





「それって、凄い偶然よね。
たまたま同じゲームをやってて、それで仲良くなって、オフ会しようって話になって、それで会ってみたら実は局の関係者同士で・・・」



ティアナがわかりやすいくらいに驚いた顔をしている。いや、僕も実際驚いたからわかるけど。



「まぁね。なんていうか、うん、すごいと思う」

「それも、技術開発部の中でも有名な二人と知り合うんだもの。すごいと思うよ」

「あ、なぎ君。もし会ったらよろしく言っておいてくれないかな? 私も、退院してからお会い出来ていないし」

「りょーかい。ギンガさんが無茶振りしてるってことだけ伝えておくよ」

「ちょっとっ!?」








「・・・ヤスフミ、その二人って・・・ヒロリス・クロスフォードとサリエル・エグザって名前じゃないよな?」








・・・・・・なんでジンがヒロさんとサリさんの本名知っているのさ?僕、話したことないよね?






「・・・俺の先生の同期なんだよ・・・だから、何回かあった事がある。」

『・・・えぇぇぇぇっっっっっっ!?』








・・・なんていう会話をしつつ、お食事は終了。そうして、部隊長室に戻ってみると・・・地獄がそこにあった。









「待ったっ! 頼む、この一手は待ってくれっ!!」

≪ゲンヤさん、待ったは無しですよ? ・・・これで詰みです≫





アルトが、容赦なくゲンヤさんを叩きのめしていた。空中にプカプカと浮かぶ青い宝石に頭を必死にさげる部隊長。





絶対に部隊員には見せてはいけない光景が、そこには広がっていた。





・・・うん、アルトや、もうちょっと優しくしてあげようね?






















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



昼食を終えた後、俺達は海上隔離施設に来ている。なんでも、ヤスフミが面会したいと言い出したからなのだが・・・俺まで着いてきてよかったのか?


「気にしなくてもいいんじゃない?前にここに来た時にスバルがアンタの事も話していたから、一度連れてこいとか言っていたし・・・」



・・・なるほど。じゃあいいか。



そんな話をしながら面会室で待っていると・・・その面々が入ってきた。



「・・・というわけで、また来ちゃいました」

≪チンクさん、みなさんもごぶさたしています≫

「・・・なんていうか、ホントに突然っスよね」

「こうさ、前振りとかってないの?」

「いやだなぁ、ウェンディもセインも、僕達は最初から最期までクライマックスですよ?」

≪私達に前振りなどあるはずがないじゃないですか。動き出したところからが私達の時間であり、私達だけのクライマックスですよ≫

「意味わかんないっスよそれっ!!」

「会話になってないよねこれっ!」



・・・これがあのナンバーズ・・・なんだ、普通の女の子じゃん。



「むむ・・・これが理解できないとは、みんな更正プログラムで何を教わっているのさ?」

「少なくとも、今恭文さんが言ったようなことは教わっていません・・・」

「クライマックスは最高潮。それが最初から最期までって・・・」

「そういうセリフがあるんだよ。ディード、オットー。・・・ギンガさん、映像ディスクって差し入れに持っていっても大丈夫だっけ?」

「そうだね、物にもよるけど問題はないよ」

「じゃあ、今度面白い映像ディスクを差し入れに持ってきてあげよう。それを見れば、僕の言いたいこともわかると思うしさ」

≪マスター、さりげなく電○の布教活動はやめてください。いや、あれはすばらしいですけど≫





・・・ヤスフミ、面白いのは分かるけど・・・ちゃんと購入した奴を持って来いよ?





「でも、また来てくれるなんて・・・思ってなかったよ」

「いやだなぁディエチ、約束したでしょ。僕達、約束破るようなやつに見えた?」

「・・・うん、そうだったね。ごめん恭文」

≪ただ、私達も謝らなければなりません。あなた方を不安にさせてしまうほどに時間を空けてしまったのですから≫

「それに関しては気にしなくてもいい。ギンガから少し話を聞いていてな、なかなかに忙しかったのだろう?」

「AAAランク試験受けるんっスよね。すごいっスねー!」

「ホントだよ。だって、あのシスターシャッハと同じくらいに強いってことでしょ?」

「・・・あれ? セイン、シャッハさんのこと知ってるの?・・・まさかセイン、報告書にあったディープダイバーって能力で、ストーカーでもしてたの? つか、そういう道の人だったのあなたっ!?」



「そんなことしてないからっ!  つか、そういう道って言うなぁぁっ!!
・・・ドクターのラボでやりあってね。まぁ、結果はわかると思うけど、それ以来、なにかと世話を焼いてくれてるんだよ」

「特にセイン姉様には思う所があるらしくて、教会風の礼儀作法などを教えてくれているんです」

「でも、なんでなんだろうね? ・・・セインって、暴力的なところとかないよね?」

「あるわけないじゃんっ! 私はこう見えても優しいんだよ〜」

「じゃあ、サボリ癖とか」

「あ、それはあるっスよね〜」

「・・・納得したよ。セインの世話を焼くのはそれだ」

「さぼらないからっ! 真面目にしてるからっ!!」



「暴力癖があるわけでもなく、サボリ癖があるわけでもない・・・・じゃあなんで世話を焼いてるんだ? あの武闘派シスターは。」

≪マスター、シャッハさんに対してどういうイメージを持っているのか、少し見えてしまいました≫

「いや、仕方ないでしょ? ヴェロッサさんとかに鉄拳制裁を平気な顔してかますしさ。それで『暴力嫌い』とかって言ったら、私は大笑いするさ。」

「とにかく、六課の隊長陣と同クラスになるかもしれないわけだ。すごいな」

「いやいや、そんなことないですって。僕なんてまだまだですよ」

「謙遜することはないと思うけど。試験を受けられるってだけでも、実力を認められている証拠だと思うし」



なんだかヤスフミ、納得いかないような顔をしているな・・・。



「なぎ君の剣の師匠は、六課の隊長陣とやりあっても平気な顔して勝つような人だものね」

「そうなんですよ。先生と比べると、自分はまだまだだなって思う事が多くて・・・。SLBも一刀両断に出来ませんし」



・・・その言葉で、話を聞いていたナンバーズのほとんどが凍りつく。そりゃ想像できないよな・・・



「いや、そんな人間が存在しているのかと思って・・・」

「あの、その人ってひょっとして、私達と同じ戦闘機人じゃないんっスか?」

「いや、そうじゃない・・・はず」

「正直、私達もそのあたりのことがよくわからないの。あまりにも既存の魔導師や騎士の方々とレベルが違い過ぎて・・・」

「アンタもギンガさんも、言い草ひどくないっ!?」

≪いや、一応人間ですよ? 魔力資質も実に平均的ですし≫



こう考えて見ると、ヤスフミの先生って謎が多いな・・・本当に人間か?



「前に来てくれた時、剣術の師として、師事している人が居るとは聞きましたが、そこまでなのですか・・・。ぜひ、お会いしてみたいです」

「あぁ、ディードは二刀流だもんね。やっぱ興味ある?」

「とても。もちろん、恭文さんにも」

「そっか。ありがと」

「アンタ、なんでそれで問題がないのよ? つか、スキップって・・・」

「・・・なぎ君、さすがにあの人を連れてくるのは問題じゃないかな? 私も止めなきゃいけなくなるし」

「あー、そうかも・・・しれないね・・・」

≪グランド・マスターのアレは筋金入りですし≫

「どういうことっスか?」





「・・・先生は、とても女の子が好きなのよ。『剣の道は色の道。女を知らずして剣は振るえず』なんていう馬鹿なことを平然と言ってのけるからなぁ。」




・・・・・・ヤスフミ、よくそんな人についていけたな・・・・・・




「・・・達人というのは、えてして変わったお方が多いとは聞くが、そこまでなのか」

「実際、私もお会いした事があるけど、あんまりの様子にビックリしたし、セクハラもされたわ。
まぁ、なぎ君がすぐに蹴りを入れたから、お尻を触られたくらいで済んだけど」

「ギンガにセクハラって、なんて命知らずな・・・・」

「戦闘以外だと、そういう人なの。
連れてくるなら、体中がんじがらめにバインドかけて、重石も100キロくらい乗せて、動けないようにしないとだめかもね」

「恭文、容赦ないっスね。つーか、先生として尊敬してるのにそれは・・・」

「でも、それでチンクさんやセイン達にセクハラかましてもアウトだし。
なにより、先生の技量なら、今言ったのでも多分無駄。5分抑えられれば奇跡だね」

「・・・なんていうか、恭文、すごい人に師事していたんだね。私、驚きだよ」

「まー、先生の話はここまでにしておくとして・・・。そういや、ルーテシアやアギトはどこに?」

「ルーお嬢様なら本局の方で裁判中だよ。アギトさんはそれに付き合う形。二人とも、夜には帰ってこれると思うんだけど・・・」

「じゃあ、今日は会うの無理か。・・・あ、それと、差し入れ買ってきたから、あとで食べてください」

≪マスターが必死に吟味したものです。気に入ってくれるといいのですが・・・≫

「いや、気持ちだけで十分に嬉しい。ありがたく食べさせてもらうよ。ありがとう恭文。二人にもよろしく言っておく」

「よろしくお願いします。・・・あの、スバルから聞いたんですけど、ノーヴェって子はどうしてます?」



・・・まだいるのか?まったく、スカリエッティって奴は何考えてんだよ・・・ハーレムでも考えていたのか?



「あぁ、それなら心配はない。・・・来たようだしな」



すると、面会室のドアが開く。・・・スバルと同じような長さのショートカット。ただし、髪の色は燃えるような赤毛。

どこかスバルに似ているイメージ。でも・・・この子の方が強気な感じがするな。



「お前ら、なんか失礼なこと考えただろ?」

「「いえいえ、そんなことはないですよ?」」



・・・おおう、なかなか勘がするどいようで・・・



「ノーヴェ、元気してた?」

「あぁ。・・・今日は、スバルは居ないんだな」

「うん、アイツは訓練。私は、コイツとちょっと仕事があってね。その帰りに寄ってみたの」





そう言って、ティアナはヤスフミを指さす。どこか楽しそうな表情で。

・・・何で楽しそうなんだ?





「なるほどな。なぁ、ひょっとしてコイツがこの間、お前達が言ってた・・・」

「えぇそうよ。六課に来た新しい部隊員で魔導師」

「・・・そっちの奴もだよな?」

「?えぇ、そうだけど・・・」


さて、なぜにこの子はヤスフミと俺のことをそんな複雑な物を見る目でみつめるのかな?



「アンタが、スバルの言ってたむちゃくちゃ強くてエッチな魔導師か?それで、そっちがティアナと恋人になりそうな魔導師だったか・・・」

「・・・えっと、蒼凪恭文って言うんだ。よろしくね」

「・・・俺はジン・フレイホークだ。」

「あぁ、よろしく。アタシは・・・って、名前知ってるんだったな」

「ね、直接教えてもらってもいいかな?」

「はぁ? アタシの名前知らないのか?」

「知ってるよ? でも・・・直接、君の口から聞きたいんだ。理由は・・・なんとなくかな。」

「・・・ノーヴェ。アタシの名前は、ノーヴェだ」

「そっか。ノーヴェ、改めてよろしくね」

「あぁ」

「で、自己紹介も済んだところで一つ聞きたいんだけど」

「なんだ?」

「あの豆柴は僕のことをなんて話してたのかを、教えてもらってもいいかな?」

「俺も聞かせて欲しいな・・・アイツ・・・何を勝手に喋っているのやら・・・」






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







それから、ノーヴェにスバルから僕のことをどういう風に聞いてたのかを教えてもらった。

・・・よし、スバルは帰ったらぶっ飛ばす。←結論。





「ちょっとなぎ君っ!?」

「とめないでよギンガさん。あのKYが・・・! 今度という今度は本気でぶった斬るっ!!
なんで服を借りたこととか、それでエッチなこと考えたとか、その他諸々のありもしない妄想を僕と会った事もない人間に対して吹き込むんだよっ!?」

「・・・しかも、俺の事も喋っているとは・・・」

「ゴメン、私がちょっと席を外してる間に好き勝手喋ったみたいなのよ。
あー、お仕置きするんならしてもいいわよ? さすがにこれはヒドイから・・・私にも迷惑かかっているし。」




ティアナ、すばらしい許可をありがとうっ! さて、どうしてやろうかあの豆柴・・・。まずはアレとかコレとかでぶっ飛ばして・・・。



「なんか不吉なこと考え始めてるし・・・」

「不吉とは失礼な。正当防衛だよ。僕の目を見てみればわかるよ。ほら、正義の光が宿っているでしょ?」

「何処がっスかっ!? しかも思いっきり悪魔の目じゃないっスかっ! 正義どころか邪悪さすら感じるっスよっ!!」

「嘘だッ!!」

「嘘じゃないっスからっ! その単色の目は止めてっスっ!!」





気のせいだよ。・・・お願いだから、全員でその疑問いっぱいの目で僕を見るのはやめて。

うん。しかしスバルは・・・。キャロの時もそうだし、うちに来た時もそうだし、どうしてこう余計な事を言いまくるの? おかしいでしょうがアレ。





「・・・まぁ、あれっスよ、スバルの行動は、愛ゆえってやつじゃないっスか?」

「いらんわこんな愛っ! もっと普通なのをくれ普通なのをっ!!」

「でも、アンタのことを話してたときのスバル、すっごい楽しそうだったぞ?」

「そうだよ、スバルはちょっとアレなだけなんだから、そんなに怒る必要ないと思うな」



なにげにひどいセインの言葉に頷くティアナとジン以外の一同。・・・なんだろ、この連帯感にデジャヴュが。

・・・それなら一つ聞くけど、自分達が今の僕らの立場と同じ事になっても、そういうことが言える?



『まぁ、それはおいといて』

「流すなぁぁぁぁっ! それも全員一斉かいっ!! なんの乱れもないってどういうことさっ!? いつ練習したそのシンパレートはっ!!」

≪マスター、勝ち目はないと思われますが≫

「うん、わかってる。わかってるけどさ、抵抗するってやっぱり大事じゃない?」

「そして、恭文の抵抗は空しく・・・ボク達にからかわれて終わるのだった」

「オットーっ!? なんでそんな不吉なナレーションつけるのかな?」

「面白いと思って」





意外とノリがいいなこの子。・・・だめだ。こいつらなんとかしないと。つーか、スバルは絶対あとでお仕置きしてやるっ!!








「ところで・・・ティアナとジンは恋人なんスか?」


「「・・・ち、違うぞ(わよ)っ!?」」





・・・・・・お二人さん、顔を真っ赤にして否定しても、説得力はまったくないですよ?




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




・・・ハックシュンっ!




「・・・どうしたんですかスバルさん? 風邪ですか?」

「うーん、誰か噂してるとかかな?」



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




まぁ、そんなこんなでいろいろ終わったので六課に戻ってくると、ヤスフミとティアナの事や、俺がどんな格好で乱入したのかが面白おかしく伝わっていた・・・






それで、ヴィヴィオちゃんに『変身して見せて〜!!』って笑顔でよって来られたのが参った。仕方なく装着してみたら、なにやらいろいろ集まってきて改良案が進み始めたのだが・・・




・・・どうなるんだ、これ?









(第8話へ続く)









おまけ:スバルのその後・外典ばーじょん


「あ、恭文。おかえり〜」

「スバルっ!」

「いや、帰って来たって聞いたから、ちょっとね。父さん達、元気だった?」

「うん、元気だったよ。・・・ノーヴェもね」

「え?」



スバルが何故か後ずさりする。当然だろう。いきなり海上隔離施設に居るノーヴェの話が出てきたのだから。

そして・・・僕がにこやかに殺気を放っているのだから。



「色々と話してくれてたみたいだね。・・・お礼、してあげるよ」

「え?」

「大丈夫。師匠達にはたった今、演習場の使用許可はもらった」

「あの・・・なんの話?」

「僕ね、デリカシーの無い人間って・・・斬りたくなるんだ」

「そ、それはやすふ・・・ひっ!」



おかしいな・・・。スバル、なんでそんな怯えた目で見るの?



「まぁ、詳しいことは戦いながら話してあげるよ。さ、スバル♪『実戦演習』、しようか」

「アルトアイゼン・・・」

≪残念ですが、無理です。というか・・・本当に言い過ぎですよアレは。
あぁ、そうそう。私個人としても色々と言いたいことがあるんです。付き合っていただけますね?
反論は認めませんよ。ティアナさんからも、徹底的にミンチになるまで潰してよしと許可はいただいていますから≫





アルト、今なんか『そんなこと言ってないでしょっ!!』って電波が届いたよ?





まーとにかくですよ。これが、後に『S・N事件』と呼ばれ、伝説にも残る演習の・・・始まりだった。





「始まらないよっ! ・・・いや、そんな強く握らないでっ!」







「・・・・・・ヤスフミ、ちょっと待て・・・・・・」







すると、ジンが僕らに声をかけてくる・・・・・・スバルがなんか助かったような表情をしているが・・・・・・ジンの笑みは、君を更なる地獄に落とすものだよ?




「・・・俺も混ぜろ。」

「えぇっ!?ジンは私を助けてくれるんじゃないのっ!?」

「・・・スバル・・・ずいぶん好き勝手言ってくれたみたいだなぁ?」

「ひぃっ!?バ、バルゴラ・・・」

≪・・・すまんな、助けてやれそうもない・・・自業自得と思ってあきらめてくれ。≫

「そ、そんなぁっ!?」





「それじゃヤスフミ、『実践演習』・・・始めるか。」

「そうだね♪いろいろ試したい魔法もあるし・・・」

「奇遇だな。俺も試したい事がたくさんあるんだ、全部やっちゃっていいよなスバル?もちろん・・・」

「「答えは聞いてないけど。」」



「だ、誰か・・・・・・助けてぇぇぇぇぇぇぇっ!!」




(本当に続く)





あとがき


バルゴラ≪という訳で、「とまと・外典」第7話いかがだっただろうか?≫(赤い光を撒いて浮かんでいるゼロマスクをつけたリボーンズガンダムのぬいぐるみ・・・ちなみに、粒子は魔力光なので問題なし。あと、伏字にするの面倒なので解禁です。)

ジン「・・・・・・というか、なんでそのぬいぐるみなんだ?以前のはどうした?」

バルゴラ≪いや、拍手でバルディッシュ殿にディスティニーのぬいぐるみが送られていたのでな・・・このままではネタが被るので、ほぼ被らないと思われる物を選んだら、こうなったのだ。ちなみに・・・超変身!!≫

(魔力光に包まれて、巨大化するバルゴラ・・・リアル体型なのに、ゼロマスクはそのまま)

ジン「おわっ!?なんだよいきなり!!」

バルゴラ≪このように、究極体にもなれる・・・これで、古鉄殿と00の最終決戦ごっこができるぞ!!そして、私達はぬいぐるみを着替えて0ガンダムVSエクシアR2戦を・・・≫

ジン「やめぃ!!というかあれか!?あっちはあの2Pフェイトさんで戦うってのか!?」

バルゴラ≪そうだが?≫

ジン「・・・・・・なんというか、お前マジで敵役だな。それに、ストフリノロウサギ+ミーティアでつぶされる気がするが・・・」

バルゴラ≪ふははははは!!そんな事は百も承知だ!!その為に、絶対守護領域も搭載しているのだからな!!≫(高笑いをするバルゴラ・・・ゼ○マスクって便利ですね。)

ジン「・・・・・・お前、どこまで行く気だよ・・・・・・」

バルゴラ≪本編に触れていないような気もするが、気にするな♪それでは、また次回会おう!!≫

ジン「はぁ・・・大変だな・・・」


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