[携帯モード] [URL送信]

頂き物の小説
第6話『騙しあいは、より狡猾な奴が勝つ・・・なら、自らがより狡猾になるべきだ』







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「恭文、朝早くから悪いなぁ」

「いーよ別に。・・・で、用件はなに?」



うん、話が早くて助かるわ。つか、言いたい事にも察しがついてそうな感じが素晴らしいわ〜。



「アンタとアルトアイゼンに、ちょこっとやってもらいたいことがあるんよ」

「なに、タヌキの悪巧みに僕を引き入れようってこと?」

「まぁ、そう言わんといてな。実際、アンタかて気になってると踏んでるんやけどな」

「・・・ま、話を聞いてからだね。で、僕はどうすればいいの?」

「いや、話が早くて助かるわ。実はな・・・」









まぁ、恭文には貧乏くじ引かせてまうけど、それでもこやつしか適任者が居らんしな。今度、フォローはしとかななぁ。

なお、恭文もアルトアイゼンも、すんなり納得してくれたわ。うちが言わんでも、前々からやろうとは考えていたそうやし。





こうして、今回の話は始まる。





古き鉄と蜃気楼。二つの力が全力全開でぶつかりあう、一つの戦いの話や・・・。















とある魔道師と軌道六課の日常・外典


第6話『騙しあいは、より狡猾な奴が勝つ・・・なら、自らがより狡猾になるべきだ』






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





・・・あー、やる気でない。

出来る事なら、戦いたくなかった。だって、勝率絶対低いしさ。負けるの嫌だもん。





「あいにくだけど、私はアンタとやりあいたかったわよ? 実力も見たかったしね。
・・・最初に言っとくけど、戒め無しで来なさい。全力で潰しにいくから」

「言われなくてもそのつもり。はっきり言って、フォワード四人の中で一番強いの、ティアナだと思ってるし」

≪加減などすれば、私もマスターも簡単に潰されるでしょう≫










ここは、皆さんご存知六課所有の陸戦演習スペース。今回は森林地帯をシュミレートしている。当然僕達も、森の中。

はやてから話を聞いた翌日のこと。僕とティアナはバリアジャケット装着状態でここに立っている。そう、僕とティアナとの模擬戦のためだ。





正直、非常に辛い。あの夢が、ある意味現実となって襲ってきたのだから。

夢の中の僕。人を疑うのはいけないことだよ?

つーか、お前が決闘やらブラックメールやら言うからこんな状況になってんだよっ! どうしてくれんだこれっ!?





・・・とは言っても、決まってしまったのだから仕方ない。ちなみに、今回はかなり本気でやる。





確かめておきたいたいこともあるし(Notティアナの気持ち)、気持ちの上では実戦と変わりはない。





理由はいたって簡単。僕の事情は抜きにして、目の前の相手が強いからだ。

そう、僕がさっき言った通り、スバル、エリオ、キャロ、そしてティアナ。この四人の中で一番強いと感じるのはティアナだからだ。










「実力を買ってくれているのはうれしいんだけどさ。私は射撃と幻術しか使えない凡人よ?
AAAクラスの試験を受けられるアンタなら、軽く捻れるでしょ」

「強さってのが、ランクや魔導師やデバイスの性能。そして手持ちの技能の目新しさだけで決まるならそうなんだろうけどね。
でも、そうじゃないし。つか、それなら僕は最初の時、スバルには勝ってないでしょ。総合能力的には、エクセリオン使ってた向こうが上だったんだから」

「・・・確かにそうね」





確かに、ティアナは他の三人のように、限定的でも空戦能力があるわけではない。

スバルのような近接戦闘での爆発力や、エクセリオンという切り札があるわけでもない。

エリオのようなスピードがあるわけでも、キャロのように竜召喚や支援魔法によるブーストが出来るわけでもない。

ただし、それは当たり前のことだ。



他の三人にも同じ事が言える。三人は、ティアナのような状況に応じた的確かつ強力な射撃を撃つ技能は恐らく無い。

こちらのセンサーをあっさりと誤魔化せる、凶悪な幻影を発生させることなど、まず出来ない。



とにかく、手持ちの技能の目新しさや派手さだけを見るなら、ティアナは凡人と言えるだろう。でも、そうじゃない。



目新しかろうがそうじゃなかろうが、その事項を徹底的に鍛え上げた時、それは、あらゆる物を打ち砕く杭となる。

訓練を見ていてそれを強く実感した。

ティアナ・ランスターという魔導師が持っている射撃と幻術という杭は・・・充分に僕を撃ちぬくだけの力を備えている。





≪ティアナさん、私も、マスターも、あなたのことを高く評価しています。そして・・・天敵とも思っています。
すみませんが、加減をするしないではなく、出来ません。遠慮なく、潰します≫

「いーわよ。でも・・・期待はずれだったら怒るわよっ!!」





そんな感じで、構えあう。さて、楽しくいくといいなぁ。



そして・・・僕は前へと飛び出したっ!!



まずは第一案。先手必勝で一気に終わらせる。まぁ・・・そう簡単にはいかないけどさっ!





それを見た瞬間に、ティアナの周囲に魔力弾が発生する。その数・・・12。



くそ、やっぱ読まれてたか。普通なら斬って対処って形なんだけど、ここは突っ切る。

飛び出す時に発生させてたフライヤーフィンを羽ばたかせて、一気にティアナの懐まで飛ぶ!

でも、当たったら痛そうだから予防策は張らせてもらう。アルト!





≪Round Shield≫





前方にシールドを張って、そのままダッシュっ!

ここで重要なのは、一気に近づけるかどうか。多少のダメージは無視。相手の骨を断てれば・・・って、あれ?



ティアナが撃ってきたオレンジ色の弾丸は、バラバラに飛ばずに、一直線に・・・というか、12発が螺旋を描いて一発にまとまりながら、こちらに迫ってきたっ!

くそ、あんな真似も出来・・・あれ?

つか、あれって、前になのは達に見せてもらった、『あの』模擬戦の時のやつじゃないのさっ! ちゃっかり身につけてたってわけっ!?



あの一発で多分終わる。

きっと、こちらのシールドは貫通される。そうすると・・・・プラン変更、あの弾丸をぶった斬るっ!

アルトに魔力を込めて、いつもの如く、鉄の刀を青い刃へと変えていく。鉄輝・・・!





「一閃っ!!」





前方のシールドを解除、迫り来る弾丸を飛びながら、右斜め上から袈裟斬り!!

それにより、弾丸は真っ二つになり、爆散した。でも・・・。





≪・・・見失いましたね≫





そう、爆発が収まってから辺りを見回すと、もうそこにティアナの姿はなかった。

そうだよね。そうくるよね・・・。あーもう、らしくないことしたなぁ。いや、こうしなきゃ意味ないんだけど。



とにかく、ティアナは弾丸を、僕が対処するしかないレベルにまで威力を引き上げて、その相手をしている間に自分はアウトレンジに移動。



あとは・・・。





そんなことを考えていると、背後から弾丸が三つ。木の合間をすり抜けて飛んで来たっ!!



振り返って、その弾丸に向かって走りながら、アルトを振るって斬り裂いていく。



・・・まずは、じわじわと攻撃ってとこだよね?



さて、どうする? 突っ込んでも・・・突かれるだけだよね。絶対に幻影と実体の混合でやってくるし。



・・・勝負の最初の分かれ目は、僕がティアナを見失うかどうかだと思っていた。

ティアナは僕よりも攻撃の射程距離が長い。しかも、幻影を交えて攻撃する事が出来る。

こういう状況になるのを防ぐために、間違いなく本物のティアナが目の前に居る時に勝負をつけたかった。



だけど、向こうもそれは当然読んでいたというわけである。

まぁ、当然だよね。自分の得意射程に持ち込むってのは、戦いの永遠のテーマだし。



こうなると、まともにやったら僕は負ける。いや、大げさじゃなくてよ。さっきも言ったけど、ティアナは強いもん。

まず、幻影を斬るっていうのは、正直むちゃくちゃ疲れるのだ。

本物だと思ったのに、そうじゃなかった時の徒労感。ある意味精神攻撃だよ。



それに、相手が出てきても、常に本物か幻影かの二択を迫られなければならない。これもその類だね。

この精神的疲労は、かなりキツイ。というか・・・・イライラするんだよっ! もっとシンプルに派手にかっこよく行きたいんだよこっちはっ!!



それよりなによりっ! 『さぁちあんどですとろい』って素晴らしいじゃないかよっ!!





≪マスター、そんなことを言っても・・・って、また飛んできましたっ!≫





木の間を器用にすり抜けながら、またもや弾丸が飛んで来たっ! 数は先ほどと同じ。それを、同じ要領で斬り裂くっ!!

そうこうしている間に、どんどんと弾が飛んでくる・・・あぁもう、遠慮なしかいっ! だったら・・・。





≪マスター、ティアナさんの位置、掴みました。突撃しますか?≫

「・・・いや。突撃しても疲れるだけだしさ、ここは逃げようか」

≪あの・・・マスター≫

「なに?」



襲いくる弾丸を斬り払い、アルトが掴んだティアナの位置とは逆方向に逃げる。なんのためかって? そんなの決まっている。



≪なぜでしょう? マスターの背中やお尻や頭の方に、悪魔っぽい装飾品が見えるのですが≫

「・・・気のせいだよアルト。ちょっとばっかし、汚い手を使って勝つだけだから」

≪ま、そうじゃないと・・・確かめられませんしね≫

「そういうこと」










そう、ずっと考えていた、昨日からずっとだ。





そして・・・結論が出た。いや、他にやりようがなかったんだけど。





とにかく、今日の朝、朝食のウィンナーをほうばっている時に。神は日ごろの行いの素晴らしい僕に天啓をもたらした。





結論から言うと、こっちがイライラしながら突撃する必要などないのだ。

イライラするお役目は、全てあのツンデレガンナーにお任せしよう。そうすれば僕は勝つ。それは何故か?





戦いなんてのは、強い方が勝つんじゃないのよ。何時だって、どんな時だって、ノリのいい方が勝つっ!!

こっちのペースに乗せて、最初からクライマックスになればいいのよ。スバルの時みたいに、前振りなどしないで、徹底的にね。





そんなわけなので、ティアナには、これから思う存分イライラしてもらうことにする。





・・・ククククク、楽しみだねぇっ! ティアナ、最初の段階で倒されてればよかったって、たっぷりと後悔させてあげるからね?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







・・・・・・ヤスフミの奴、妙な笑顔を浮かべているな・・・?どう思う、バルゴラ。


≪・・・・・・今の表情は、ヤスフミが人をからかったりする時に見せる表情と一緒だな・・・・・・≫


・・・・・・やっぱりか。つまり、アイツ・・・・・・


≪マスターの想像が正しいと思うぞ?・・・ティアナも災難だな。≫




・・・・・・はぁ・・・・・・何考えてんだアイツ?





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・ぶっ飛ばす。アイツぶっ飛ばすっ! 絶対ぶっ飛ばすっ!!



待ちに待たされてすでに30分。もう私の広い心も限界だった。



クロスミラージュっ! 生体反応サーチっ!! あのバカを見つけ出して・・・ギッタンギッタンのバッタンバッタンにするわよっ!!





≪了解です。・・・反応、キャッチしました≫

「ありがと。さて、ここまでやってくれたんだから、覚悟できてるんでしょうねっ!!」





そうして、私はアイツの元へ駆け出した。走りながら・・・アイツを撃ち抜くための弾丸を、私は放つっ!!





「クロスファイア・・・・シュゥゥゥゥゥゥトッ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・来たね。



≪はい。反応・・・そこそこですね。全部で20≫

「全部同じ方向から?」

≪そうですね。まぁ、ここはエリアギリギリですし、そうなっても仕方ないでしょう≫





といってもさ、屋外なんだし、エリアを飛び出して、海を経由して背後に一発とか入れればいいのに・・・律儀と言うかなんというか。



だから・・・。



僕は、弾丸の来るほうへと走り出した。それほど時間を置かずに、目の前には大量の弾丸。

それを確認するより前に、僕の左手の掌には魔力球が出来上がっている。・・・クレイモア。





≪ファイアっ!≫





掌をかざして、青い魔力スフィアが小型の散弾へと変わり、一定範囲を埋め尽くすようにして飛び散るっ!

それによって、オレンジ色の誘導弾たちの大半は撃墜っ!!





・・・クレイモア。僕が魔導師成り立てのころから使っている瞬間掃射魔法である。

掌に形成した魔力スフィアを、瞬間的に小型の散弾へと分散掃射する魔法。

瞬間なれど、しっかりと圧縮されて掃射される散弾は、立ちはだかる全てのものを撃ち貫く。

僕とアルトの使用する魔法の中で、一番最大火力効率の高い魔法だ。・・・いや、高すぎて、対人戦は使い道迷うけど。

あと、散弾の分散範囲の関係で、どうしても射程短いし。



まぁ、対人戦での主な役割は、掃射による多数の魔力弾の撃墜かな。いい感じでつぶしてくれるのだ。



とにかく、その後は、あの凶悪ガンナーの誘導、もしくは木の陰に隠れていたことによって、クレイモアの範囲を逃れた数発も、全て斬り払われる。





・・・こんな風に、全て対処される・・・のよっ!





背後に迫ってた一発の弾丸を、振り向き様に横一文字に斬るっ!



見事に真っ二つになったかと思うと、目の前で爆散する弾丸。

その弾道の狙い先は、僕の後頭部。恐らく、スタンとかそのあたりの属性もち。

・・・最初の20発は囮。今の一発を隠れるようにして誘導して、後頭部に直撃させてノックアウト。やることエグイね。



ま、一体多数は僕の得意な状況。それは、弾丸だろうが変わらない。そんな僕にたいして、こんな手が通用するとは思わないほうがいいよ〜?





≪待たせに待たせてイライラさせたマスターの言うことじゃないですってそれは≫

「そうかな?」

≪そうです。・・・それで、どうするんですか? また身を隠すなら、ナビしますが≫





うーん、それでもいいだろうけど、ちょっと同じ手を二回連続ってのは・・・つまんないよねぇ。

どっかのポッポな野球監督さんならやるだろうけどさ。

それに、あんまりにもこれを何回もやると、なのはと師匠に介入されるだろうし、なにより決着がつけられない。



ということだから、ここはきっちり攻めていきましょ。ただし・・・。





ただし・・・まともにはやらない。ティアナに少しばかり・・・『嫌がらせ』してあげるよ。





さっきも言ったけど、僕のノリに付き合ってもらうからねっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・やっと突っ込んできたわね、そうじゃなくっちゃ。





てか、私こういうの多いなぁ。待ち受けて、幻術で振り回してカウンターって。

仕方ないか。私は、アイツのクレイモアやスバルみたいに一撃必殺の技なんてないし。

どんな手を使おうと、勝ちは勝ちよ。問題ないわ。





サーチでアイツの反応を捕まえた。・・・私は、前方にシルエットを配置して、アイツを待ち構えている。

ただし、アイツの武器の射程を考えて、1体1体は多少距離を置く形で配置。





さっき、アイツが撃ってきたクレイモアの射程も含めているから、一気には撃墜出来ない。

アイツの突撃力と瞬間的な攻撃力は、スバル以上。クレイモアなんてぶっ放されたら、すぐに終る。





・・・つか、ありえないでしょっ! なんなのよあの殺る気満々の魔法っ!? どこぞの武装隊だって、あんなの使わないわよっ!!

しかも、データ見せてもらったら、プログラム容量無茶苦茶重いしっ!!

それを、どうしてアイツは即時発射とか、移動しながら構築とか出来るわけ? 間違いなくおかしいでしょうがっ!!





・・・とにかくよ。移動しながらあんなもんぶっ放されたらキリがない。ここは、足を止めざるを得ない状況を作り出して・・・そこを狙うっ!





そうこうしている間に・・・来たっ!





木々の間をすり抜けながら・・・・え?





なんか、戦闘中とは思えないくらいにゆっくりと歩きながら、アイツが現れた。










「・・・あ、ティアナみーっけ♪
あ、そだそだ。今回はこれ言っておかなきゃ。・・・お前」





アイツは、私にニッコリ笑いかけながら・・・言い切った。





「僕に、釣られてみる?」





それを聞いた瞬間、どうしてか頭が沸騰した。いや、理屈じゃなくて版権的に色々と。





「釣られるわけないでしょうがこのバカっ!!」





私は意識を戦闘モードへと戻して、あいつを迎撃するために、シルエットに混じって弾丸を撃ちまくる。



誘導弾に直射弾。ありとあらゆる弾丸のパレード。



でも・・・・アイツはそれにかまわずに、駆け出して、アルトアイゼンを構えて・・・。





「チェストっ!!」










勢い良く振りぬかれた青い魔力を帯びた、鉄刀の右薙ぎの一閃。その斬撃の壁によって、弾丸が斬り払われる。





だけど、全部じゃない。





そして、その攻撃直後の隙を狙って飛んできた弾丸をひょいっと避けると、刃を返して左からまた一閃っ!

いや、その場で右足を軸に回転した。そうして、後ろから迫ってきた誘導弾の全てを撃墜。





≪Stinger Snipe≫





アイツの左手で螺旋を描く光が生まれる。そしてそれは・・・放たれると、木々を縫うように素早く飛びかい、私の幻影を貫く。



それも一体じゃない。複数体を高速で貫き、クレイモアや剣劇だけではどうにもならない距離の幻影を、全て撃墜。

・・・って、誘導弾っ!? なんでこんなの使えるのよっ!!





コイツ・・・! 今まで手札隠してたわねっ!?





「どうしたのっ!? そんなに狙いが甘かったら、釣れる魚も釣れないよっ!!」





軽口言える余裕まであるってどういうことっ!? あー、ムカつくっ!!

そうこうしている間に、私へと魔力弾が迫る。木々の合間をすり抜け、上から打ち下ろすように。

それを・・・クロスミラージュの銃口を向ける。そして、撃つっ!!



私が放った魔力弾は、狙ったように光の弾丸とぶつかり合い、爆発したっ!!



アイツがこちらにむかって駆け出してきた。





「はぁぁぁぁっ!!」





そして、上段から、アルトアイゼンを振り下ろす。刀身には、青い魔力。

ダガーモードでも、あれは捌ききれない。受け止めた瞬間に私まで一緒に斬られる。



そう思った私は左へと飛んで、アイツの斬撃を回避。

それと同時に、飛びながら、クロスミラージュを構えて、アイツを狙うっ!

でも、撃つ前には至らなかった。アイツが、振り下ろした刀を少し持ち上げる。

すると、私の居る方向へと突っ込みつつ、横薙ぎに斬りつけてきたからだ。



くっ、クロスミラージュっ!





≪Dagger Mode≫





クロスミラージュが変形して、魔力刃が形成されて、私の両手に刀身が生まれる。


ダガーモード。私が今みたいな近接戦闘を強いられた時に用いる補助用の形態。それで、迫り来る鉄の刃を受け止める。



襲いくる衝撃。青とオレンジが混じりあいあたりにはじける火花。

そして、私はそのまま斬られはしなかったけど、空中に居た事もあり、私は、そのまま吹き飛ばされたっ!



吹き飛ばされながらも・・・撃つっ!!



ダガーモードから、元の銃へと変化。アイツに向かって数発の弾丸を打ち込む。そして・・・爆発。



直撃? ・・・いや、全部斬られたっ!?




とにかく、私はなんとか体制を整えて着地。それと同時に立ち上がりながら魔力弾を生成。それでつっこんで・・・こない?



そう、アイツは、魔力弾を防いだら、私の居る方向とは逆に走り出したのだ。



・・・まさかアイツっ!!





「アンタ待ちなさいよっ! また逃げて隠れるつもりなのっ!?」

「黙秘権を行使します。そして、待てと言われて待つ馬鹿は居ないよっ!」

≪すみませんティアナさん。これも戦略ということで納得を≫

「出来るわけないでしょうがっ! クロスファイア・シュゥゥゥゥットっ!!」



怒り混じりに、逃げるあいつに向かって魔力弾を撃ち出すっ! でも・・・。



「・・・はぁ、仕方ないなぁ」





逃げながら、手を飛び交う魔力弾の方へとかざす。そして・・・。





「クレイモアっ!!」





撃つ直前に、カートリッジが1発排出された。そうして、放たれた散弾は、先ほどよりも数が多く、範囲も広い。

魔力弾の全てが、見事に撃墜された。



だけど、そのままでいくわけがないでしょうがっ!



私は、クロスミラージュを構え、魔力弾を数発放つ。狙うはアイツ。速度重視の直進弾。

カートリッジを排出したことで、誘導弾は捨てた。速度による衝撃ダメージを狙った魔力の弾丸は、真っ直ぐにアイツへと飛ぶ。



私のクロスファイアと、クレイモアがぶつかり合い、未だ硝煙のやまない空間を突っ切り、アイツのもとへと真っ直ぐに飛ぶ。



アイツがそれを、アルトアイゼンを、左から横薙ぎに一振りして払う。だけど、一発はそれを逃れた。そして・・・っ!



アイツの左の胸元へと、見事に直撃。アイツが吹き飛ぶ。



うっしゃっ! これで終わりよっ!! 体制が崩れてるところにドンドン打ち込んで・・・!!





≪Stinger Ray≫





多分、反応できたのは本当に偶然。吹き飛ばされアイツの左手に、一瞬光が見えた。なので、左に飛んだ。

すると、それまで私が居た空間を、光の線が数発、埋め尽くした。

それがぶつかった個所から、まるで弾丸が着弾したような音が聞こえる。



これも、射撃魔法っ!? つか、なによこの速度っ! つかアイツ、何時こんなの詠唱したのっ!!





だけど、その問いかけに答える声は無かった。何時の間にか、私の視界の中から、吹き飛ばされたアイツの姿は・・・消えていたから。
















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「・・・やっぱり、こういうことになっちゃったね」

「だな。わかっちゃいたけど・・・」

「ティア、そうとうイライラしてるだろうね。・・・あ、またシルエットだけ潰された」

「そして、すぐ逃げやがった。潰し方が丁寧だから、文句も言えねぇなこれ。
・・・なぁ、なのは。アイツ、今なんか言ってなかったか?」

「うんとね・・・・。『ティアナのおうましかさん♪』って言ってたよ」

「おうましかさん? あ、『お馬鹿さん』って意味か」

「そうそう。ティアも気付いたみたいだね、あぁ、すごく怒ってるよ。クロスファイアをあんなに沢山撃って・・・」

「そして全部潰され・・・ねぇな。それも当てやがるか。いや、ジガンで防御したりして、直撃コースではないけどよ。
つか、あえて解り難く言って、相手に気付かせるところがアイツらしいっていうかなんつうか・・・」

「なんていうか・・・うん、恭文君楽しそうだね」




・・・・・案の定、ヤスフミは相手を挑発して自分のペースに巻き込んで行く戦い方を始めた。

それを見学していた六課の皆さんは、それぞれの感想を述べている。



「アイツら、またあんな戦い方を・・・。イライラする。イライラしてかなわんっ!!」

「・・・姐さん。またってことは・・・よくやるんですか? あの楽しそうな卑怯な戦法」

「正解だ、ヴァイス。ヘイハチ殿は、ああいう手をよく使う。
人をからかうのがお好きな方だからな。必然的に・・・」

「その生徒である坊主と、元パートナーであるアルトアイゼンも、アレって事っスか」

「だが、蒼凪には別に狙いがあるように見えるがな」

「別に狙い?」

「あぁ。二人は、滅多な事では味方内にはあんな真似はしない。やるにしても、もう少し加減してやる。スバルの時のようにな。
敵方なら今のように、遠慮なく挑発して、蹂躙するが」

「あぁ、そりゃ納得だ。確かにそれは味方内にはやらねぇや」

「だが、その真意は聞けまい。というより、聞く前に・・・」

「蒼凪、後でしっかりと修正せんといけないな。・・・ふふふ、楽しみだな、レヴァンティン」

「シグナムに消し炭にされるだろうな。シグナムは、前にヘイハチ殿に同じ手を使われているから、余計に燃え上がりそうだ」

「・・・納得しました。つか姐さん、怖いんで、レヴァンティン握り締めて笑うのはやめてくださいよ」





・・・・・・シグナムさんは確かに怖いが、ザフィーラさんの言う事にも一理ある。



別に、今の戦法はティアナ相手にやる必要がないのだ。いくらヤスフミとティアナの相性が最悪でも、勝とうと思えば勝てるはずだ。

なのに、今の戦法を取るのはいったい・・・・・・




「あぁ、またシルエットが・・・」

「ティアさん、大分疲れてますね」

「恭文がそうなるようにしてるから。・・・あー、作戦だってわかってても、あの戦い方はむかつくー!
もっと、こう、ずばっと突っ込んでいけないのかなぁっ!? というか、あんな口先使わなくてもいいじゃんっ!!」

「突っ込んだら負けるって思ってるんじゃ? なぎさんは、やっぱりティアさん相手だと相性が悪いですし」

「うー、それ分かる。分かるけど・・・・でも、もっとばーっていこうよ恭文っ!!
というか、汚いよっ! 恭文強いんだから、精神攻撃なんてする必要ないじゃんっ!! どうしてちゃんとやらないのっ!?
というかというかっ! こんな戦い方、ぜぇぇぇぇぇぇぇったいにダメっ!!」




・・・・・・他にも気になるのは、皆の反応だったりする・・・・・・特にスバル。


ヤスフミの戦い方に文句を言っているが・・・・・・過剰反応しすぎじゃないか?


確かに、味方内での模擬戦ならこれはやりすぎかもしれない・・・・・・


・・・・・・だが、模擬戦じゃなければ・・・ティアナは死ぬかもしれないんだぜ?











◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



だが断るっ!!



つか、真面目に強いんだよあのツンデレガンナーッ! 油断してたら潰されるわっ!!





さて、ただ今シルエットだけを潰し続けているけど、いい感じ・・・じゃないな。僕も、何発か掠ったり直撃喰らいそうになってるし。

とにかく、ティアナ本体の様子を見るに、結構きつそうだし、こりゃもうそろそろ・・・。





僕は、呼吸を整えると、再び森の中へと走っていく。さっきからこれの繰り返しだ。

ティアナが撃ってくる誘導弾、そして、僕を惑わそうとする幻影を全て叩き斬る。

もしくは、スティンガーでの撃墜だよ。




ティアナの幻影は、どうも魔力攻撃かどうかは問わず、衝撃を受けると簡単に消えるようだ。

スナイプなりを絡めて使えば・・・魔力消費はほぼ0で、撃墜しまくりである。




そうして、その場にあるそれらを全て潰したら、全速力で逃げて、敵の射程距離外へと移動。

少し深呼吸して、幻影、もしくは魔力弾の反応を掴んだら、また突っ込む。

それを探知したティアナが・・・の恐怖の無限ループ。





普通の状態のティアナなら、こうはならないだろう。なにかしらの対策を立てるはずだ。

これは、僕が去り際に余計な一言を言って怒らせているのが大きい。





いやぁ、『ティアナって、ステータスで希少価値だね♪』って言ったのはきつかったみたいだね。

一気に40発くらい撃ってきたもの。全速力で逃げたけど。





ちなみに、ティアナはステータスで希少価値と言ったのは、別に胸のことではない。

・・・当たり前でしょうが。仲間うちに対して、そんなセクハラ紛いのことをいう訳がない。





ティアナの持っているある属性についてのことだ。





それについてヒントを出すと、『性格』『ツインテール』『ツリ目』である。ティアナはこの三種の神器を持っている。それこそがステータスで希少価値なのだ。





いやぁ、現代社会において、ここまで要素が揃っている人も珍しいよ。

王道というかスタンダードというか、亜種がやたらめったら繁殖しているしね。

この昨今の状況において、ティアナの存在はまさに『ステータスで希少価値』だと、心から思う。










≪・・・胸の方に誤解させるために言ったんじゃありませんか。ティアナさんは気付いてないみたいですけど≫










だね。なんか顔真っ赤にしてブチ切れながら魔力弾無駄撃ちしてたし。





『私のどこが希少価値でステータスなのよっ!? 確認したこともないくせにに変なこと言うなっ!!』とか言ってた。





なので僕としては・・・





『ごめん。・・・じゃあ、確認しないといけないのかな。そうだよね、確認しないでこんなこと言っちゃいけないよね。
というか、確認させてもらっていい? この後、じっくり二人っきりで時間をかけて・・・』





という素晴らしい返事をしたら、また怒って無駄撃ちしまくるし。





いやぁ、あそこまでやってくれるとうれしいね。というか、ツンデレの確認ってどうすればいいんだろ?
・・・まさか、フラグ立てるわけにもいかないし。僕、フェイト一筋だし。










≪マスター、あとでティアナさんに謝りましょうね? 許してもらえるとは思えませんが≫

「んー? 必要ないでしょ。戦いは、正攻法で戦ってる奴ばかりじゃないんだし。
というか、単独行動が多い執務官志望で、熱くなるほうが問題でしょ。あれじゃあ、COOLじゃなくて、KOOLだよ。というか、似合いすぎて怖いよ」





あ、言っておくけど、技能的な部分じゃなくて、精神的な部分ね。

クロスミラージュも、単独行動を考えられて作られてるみたいだし。ダガーモードなんて搭載してるのがいい例だよ。

にも関わらず、ティアナ本体はちょっとした挑発を受けたくらいで熱くなって、幻影も魔力も無駄撃ちしまくりときてる。



・・・だめでしょ、それは。挑発されたからって、それはいただけない。

技能から見るに、どちらかというと後の先。先手必勝というより、カウンター狙いな攻撃ばかりなのにさ。





≪それもそうですね。KOOLはいけません。ティアナさんには似合いすぎて怖いですし。分校の屋上で、うちの近所の前原さんと部活とかやりそうですよ。
しかし、ここまで精神攻撃に弱いとは・・・予想よりヒドイですね。いや、マスターのやり口が、更にヒドイからですけど≫





なにやら、失礼なことを言う古き鉄。

あ、そういえばフェイトに『あんまりやりすぎちゃだめだよヤスフミ。なんか・・・今日のヤスフミはすっごく悪い感じがするし』って言われてた。



今の今まで忘れてたけど。なお、フェイトは現在外回りで、またまた留守にしております。



ま、いっか〜♪ 今となっては後の祭りだって。うんうん。



・・・よし、覚悟だけはしておこう。さすがに今回は謹慎はないだろうけど・・・お説教かな?





とにかく、僕とアルトは再びティアナ+幻影軍団と接触。



先ほどまでと同じ要領で、幻影を斬っていく。というか、撃っていく。



・・・ダメージに繋がると分かっていても、手ごたえのない物を斬るのはちょっとアレだけど、そこは我慢だ。

そうして、後ろに控えて居たティアナを残して全てを切り払う。・・・射撃体勢に入ってる。

逃げて誘導弾を撃たれても面倒だね。ここは・・・つぶすっ!



そして、アルトで突っ込みながら、切っ先をティアナへと向け・・・突き立てるっ!!



避けるだろうと見越しての攻撃だ。少し精度は甘めにしてある。・・・でも、ティアナは避けなかった。










いや、ティアナじゃない。・・・これは、幻影。










今まで、ティアナは、幻影を配置して、自分はその後方に居て射撃というパターンで動いていた。

後方に下がるのは、僕が幻術があろうが木があろうが、かまわずに全てぶった斬っていったからだ。

まともに食らったら、防御してても大怪我は必至。おそらく、そう判断してのこと。

かと言って、幻術だけを配置しても無駄になる。・・・僕が、全部潰したと思ったら逃げちゃうしね。



そんなわけで、ティアナとしては下がる事も出来る、前に進む事も出来ず、けっこう辛い位置で戦う事になってたんだけど。



だけど、今回は全て幻影だった。これがどういう意味かというと・・・。










・・・幻影に刃を突き立てた形で止まって、考えていたのはほんの一瞬。

でも、その一瞬あれば、彼女には十分だったらしい。

僕の周囲を囲むようにして飛んで来たのは大量の魔法弾。恐らく誘導性の弾丸。数にして・・・30。










「これで・・・・沈めぇぇぇぇっ!!」





後ろから、飛び出してきたティアナの銃口が、僕に向けられた。

銃口には、オレンジ色の魔力の弾丸。それがこちらへと放たれた。





そして、それと同時に、僕は伏せた。

だけど、それだけでなんとかなるような攻撃じゃない。周囲の魔力弾は僕へと飛び出し・・・辺りに爆煙が舞った。




・・・魔力は半分を切った。アイツがこちらの疲弊を狙っているのは明白。



そして、それに気付かせないために・・・というか、その・・・ために・・・あんなことやこんなことを私に対して言いまくってる。

特に、ステータスで希少価値って・・・ふざけんじゃないわよっ!!



私だって、人並みに成長してるのよっ! えぇ、人並みにっ!!

そりゃあうちのライトング隊長コンビには負けるけどっ! ついでにスバルにもっ!!



だけど、スバルにセクハラされたおかげかどうかは知らないけど、そこそこのサイズなんだから、あんなこと言われる筋合い無いわよっ!



それに、か・・・か・・・確認っ!? 二人っきりでじっくり時間をかけてってなによっ!!

つまりそれは、アイツに・・・私の・・・を・・・! それだけじゃなくて、多分・・・あんなことを・・・!!



させるわけないでしょうがあのバカっ! アンタとは恋人でもなければ夫婦でも婚約者でもないのよっ!?

あと、億が一にもそういう関係になったとしても、絶対確認なんかさせないんだからっ! アイツ、本当にムカツクわねっ!!





あぁ、もう。だめよだめだめっ!! ・・・KOOLだ。KOOLになれ、KOOLになれ、ティアナ・ランスター。

そうよ、KOOLになりなさい。これは、アイツの作戦なんだから。分かってるのに乗る必要なんてないわよ。





とりあえず、アイツの戦ってる時の性格の悪さはよーく理解したわ。えぇ、骨身に染みるくらいに。

とにかくよ、やり口がワンパターン過ぎたわね。

ガジェットみたいな判断力の低い機械兵器とかならともかく、私相手にその手を何度も続けているのは・・・失敗よっ!





まず、シルエットを大量配置。

アイツは、眼前に居たシルエットを全て撃墜したあと、後方に控えてた最期の一体を貫く。そして、一瞬だけど動きが止まった。

・・・今まで、私がシルエットの後方に下がって射撃っていう『ワンパターンな幻影の使い方』をしていたのは、全てこのため。



アイツは、全てが幻影だろうが私だろうが構わずに斬っていく。だから、アイツの思考に刷り込むところから始めた。

あえて、普段ではやらないようなワンパターンな動き方をすることによって、『後方に居て銃を構えている私=本物』という図式を刷り込ませた。

つまり、知らず知らずのうちに、アイツはその法則に乗っ取って戦っていたわけだ。



だから、シルエットの一団に離れるようにして控えて居た私の幻影に刃を付きたてて、それが幻影だと気付いたときに、動きが止まった。



戦略眼を持っているが故の弊害ね。不足の事態が起こると、すぐに状況を判断しようとする。でも・・・それが命取りっ!!





クロスミラージュのカートリッジをロード。それによって、私の周囲には30程の魔力弾。

それをアイツの周囲を取り囲むようにして撃ち出すと、私も飛び出して、魔力弾を撃ち出す。



そりゃあ、ここまでの数が全弾命中すれば少し痛いかもしれないけど、非殺傷設定にはしてるから、問題なし。



なのはさん達にも威力調整を監修してもらっているし・・・乙女の心を傷つけた罪、甘んじて受けなさいっ!!



そんな思いで放った一撃は、アイツを爆煙の中へと消し去った。

・・・勝った。なんか伏せたみたいだけど、そんなのじゃアレは防ぎ切れない。これで、おしまいよ。










「クロスミラージュ」

≪Sir 全弾命中確認≫





なら、回避されたってのも無いわね。そう、私はこの時、自らの勝利を、確かに感じていた・・・。




















≪・・・これはっ!≫

「なに?」

≪Struggle Bind≫




















聞こえた声は、私のよく知る声。そして・・・体が動く。だけど、それじゃあ遅かった。



私の身体は、青い魔力の縄で縛り付けられていた。



というか、なんでっ!? 肉体強化の魔法だって、かけてたのに、全く力が出ないっ!!

あれ? 強化魔法・・・無効化されてるっ!? つか、これまさか・・・。




















「・・・力で引きちぎろうとしても無駄だよ。
ストラグルバインド。強化魔法等を強制的に解除・無効化する特殊バインドだよ。さて・・・ティアナ」





その瞬間、一つの影が迫り・・・私に突きつけられた。

それは、古き鉄。その刃が、私の首を捕らえる。まぁ、斬られてはいないけど。





「選択して。斬られるか、降参するか、ぶっ飛ばされるか。もしくは、三枚に下ろされるか」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・・・辺りに舞うのは爆煙。そして、それを見ながら勝利の確信などと、あのツインテールはしているだろう。

残念無念また来週ってやつだね。ま、来週やるかどうかわからないけど。





・・・最期のが幻影だっていうの、先生なら見抜けてただろうなぁ。ま、しゃあないか。まだまだってことだよ。





ティアナの行動がワンパターンなのは、なにかを狙ってのことだというのは読めていた。

なら、何を狙っている? いや、追い詰められて、どういう手を使ってくる?

・・・あのツンデレ・オブ・ツンデレの勝気な性格と、普段の戦い方を考えれば答えは一つ。





幻影を潰されまくって、魔力も少なくなってる。

そして、現状は、今までの戦法では覆せない。なぜなら、僕はティアナ本体をどうこうするつもりがさらさらないから。

自分をあえて囮ってのも無し。だって、僕には遠距離攻撃の手段がある。その状況で、近づくわけがないし。





その他色んな可能性を考慮した上でやってくるのは・・・一撃必殺の突撃戦法。もしくは、カウンター。

ただし、さっき言った自分をあえて餌にするってのはなし。





とにかく、確実にこちらを倒せるだけの手はずを踏んだ上での攻撃を仕掛けてくる。そこまでは読めていた。

まさか、魔力弾で囲んで、駄目押しで一発ぶち込んでくるなんていうエグイ真似をしてくるとは思わなかったけど。

それでも、来ると分かっているものを対処するのはすっごく簡単。





・・・ま、カウンターはいいか。ティアナの持ち味だもの。それに、分かっててもヒヤっとしちゃったしね。やっぱ強いわ、うん。

なんというか、やっぱり面白い子だよ。あと、ツンデレだしね♪





とにかく、撃墜もされずに僕は立っている。ティアナはバインドでR12程度の緊縛プレイ。

で、アルトの刃を首に当てている。





ちなみに・・・全くのノーダメージ♪





・・・で、行けばいいんだけど、何発当たった。ティアナが飛び出してぶっ放してきたのが、丁度、僕の背中に。

あと、防御対策が完了する寸前に、その合間を縫うようにして飛んできたのを何発か。痛かったです、はい。

くそ、どんだけスピード重視な撃ち方したんだよ。誘導弾やなんかを突き抜けて飛んできたぞ。あー、当たった時きつかったし。

とにかく、どうやってこの状況をクリアしたかというと・・・。一つの魔法を、即時発動したのだ。




















・・・アルトを待機状態へと戻す。



これで問題はない。なぜなら、こうでもしないと邪魔になるから。



そして、身体を伏せる。それは、弾丸を避けるためじゃない。・・・全てを、防ぐために。



地面へと身体を落としながら、左手を地面へと押し当てる。そして、魔力を流し込む。



そう、地面へと魔力付与を施したのだ。

そして、硬質化属性の付与。これで、僕の周辺の地面は、魔力を帯びるのと同時に、コンクリートよりも硬い素材へと変わる。



そして、発動っ!!





「ブレイクハウト」





僕が口の中で小さく唱えると、僕の周りを取り囲むように、地面が隆起。即席の壁が出来上がった。そして、それらに魔力弾が激突。

だけど、魔力付与に硬質化までしているこの壁が、簡単に貫けるわけがない。

強度は、なのはやフェイトに協力してもらって、散々っぱら実験しているしね。・・・さすがにバスターは無理だったよ? うん。

激突した魔力弾は、まるで当然のように、全てが空しく爆散した。僕に届いたものなど、一つたりともない。





・・・だとよかったんだけどなぁ。何発か発当たったよ。壁が立ち上がるギリギリなところをすり抜けて、背中や腕やらにドガンッ!。

ティアナの弾丸、フィールド出力上げて、気をしっかり持って、受けるつもりで対処しなかったら、沈んでたって。

うー、やっぱ勝率低いよー。というか、僕とティアナは相性悪いって・・・。





・・・とにかく、ブレイクハウトというこの魔法は、地面へと干渉して、色々と効果を起こす魔法である。

今のように地面を隆起させるという使い方も出来るし、ある一定範囲内に魔力を送り込んで、爆発を起こす事も出来る。

あと、隆起で大地の波を起こして、それで相手を吹っ飛ばす・・・とかね。



僕が魔導師になってすぐの頃、スレイヤー○の魔法なんかを参考に、組んだ魔法。

地面さえあれば、この魔法はいつでも使える。もちろん、材質も関係ない。

足元がヌメヌメの泥だろうが、魔力付与で補正をかければ、どこでだって使える。

そして、発動スピードにも徹底的にこだわった。補正込みでも、1秒あれば、この魔法はフルパフォーマンスで発動出来る。





ティアナの誤算は、僕が防御魔法以外にも、攻撃を防ぐ手段を色々構築しているのを知らなかったこと。

いや、予想しなかったこと・・・かな?

非殺傷設定の魔法は、直撃すれば、魔力が削られる。そうして、その魔力ダメージで、相手をノックアウトするのである。





だから、魔法能力のない人間が、魔力弾なんて喰らえば、あっという間に倒れる。

それは、魔力量の少ない僕のような人間も同じ。

防御魔法で防御すればいいという話でもない。防御魔法が破壊されれば、その分魔力を丸々無駄に消費させられてしまうのだ。

なので、それ対策に、防御魔法よりも燃費重視でこういう術を構築したのだ。防御性能の実験もした上で。







ふっ! 伊達に、リ○・インバー○を尊敬しているわけではないっ!! ということで・・・。





今度はこっちの番。・・・ティアナを、斬る・・・予定だったけど、ここは別の方法で詰みとしますか。確実に潰す。



まず詠唱開始。せっかく隙を突けるんだ、逃がしたら意味がない。

そうして、一瞬で詠唱終了。そして・・・発動する魔法は、コレっ!!





≪Struggle Bind≫





ティアナのうめき声が聞こえる。というか、驚き気味。・・・そりゃそうでしょ。いきなり縛り上げられたんだから。

僕は、隆起した地面に手をあて、もう一度魔力を送る。かかっている魔法を解除するために。そして、壁は、一瞬で土へと帰った。





「・・・力で引きちぎろうとしても無駄だよ。
ストラグルバインド。強化魔法等を強制的に解除・無効化する特殊バインドだよ。さて・・・ティアナ」





僕は、一気に駆け出す。アルトを待機状態から、通常モードへと戻すと、僕の左手に握られ、鞘に納められた形で出てきた。

そのまま抜き放って、ティアナの喉元に、切っ先を突きつける。





「選択して。斬られるか、降参するか、ぶっ飛ばされるか。もしくは、三枚に下ろされるか」

「・・・アンタ、これで勝ちのつもり?」

「嫌だなぁ。そのつもりならとっくに帰ってるよ。もしくは、とっくに斬ってる。だから・・・選択させてあげてるんじゃない」





そう、僕はティアナに選択権をあげてるだけだ。ニッコリと笑って、言葉を続ける。





「ティアナに、自分が負けるって選択をしてもらおうかなと。
ほら、釣られたまな板の上の鯉は、覚悟を決めるのが定めだし、僕的にもそっちの方が楽しいし♪」

「ほんとに性悪ね」

「よく言われるよ。
あぁ、それと一応警告ね。誘導弾でどうこうってのはやめたほうがいいよ? 例えば・・・そこに隠してるやつとか」





その瞬間、ティアナの表情が変わる。

やっぱりか。試しにハッタリかましてみたんだけど、ホントにやってたとは。恐ろしいツインテールである。





「・・・よく気づいたわね」

「僕ならそうする。失敗したときの保険としてね」



ハッタリだったとは顔に出しません。えぇ、それが駆け引きってやつですよ。



「そうすると・・・マズイわよね。気づかれてるとすると、私が命中させる間に私を潰すことなんて・・・」

「楽だね」



どこにあるかすらわかんないけどねっ!



「・・・あー、悔しいっ! それじゃあ、完全に私の負けじゃないのよっ!!」

「じゃあ・・・降参?」

「いいわよそれで。今回は私の負け。ただし、『今回は』・・・だからね?」

「いーよそれで。次回は次回の話としようじゃないのさ」





僕は、アルトを引いてから、バインドを解除する。ティアナがそこから解放されて、息を吐く。・・・というか、大丈夫?





「まーね。てか、あんたきつく縛り過ぎよ。見てみなさいよこれ。アザできてるし」

「あー、ごめん。幻影の可能性も考えて、バインドの縄をぶつけるつもりで操作したから」

「そこまで考えてたっての?」



当然である。つか、あんな凶悪魔法を前にしたら、それくらいはしたくなるのが人情だ。



「全く・・・仕方ないわね。でも、傷が残ったら責任取ってもらうわよ?」

「よし、シャマルさんすぐに来てー! フェイトならともかく、ティアナには責任とりたくないの僕はー!!」

「アンタ、ホントにムカツクわねっ!!」

『・・・お前ら、なんでアレだけやりあって、そんなに仲良さそうなんだよ。てーか、ティアナ』

「あ、はい」





いきなり出てきた空間モニターに現れた顔は、みなさんご存知、僕の師匠です。というか・・・なぜにそんなの諦め顔?





『巻き込まれたくなかったら、すぐ逃げろ。つーか頼む。逃げてくれ。アタシには止められなかった』

≪・・・そうですね。ティアナさんはすぐに逃げたほうがいいと思いますよ≫

「いや、それ意味がわから・・・・な・・・い・・・」





・・・ティアナと師匠が、僕の後ろを見て固まってる。





「蒼凪・・・随分と楽しそうだったな」




というか、僕も固まった。だって・・・聞こえてきた声が鬼としか思えなかったんだもん。

そうして、一縷の希望にすがりつきながらも、後ろを見た。あぁ、希望が砕けた。鬼が居たよ鬼が。





「さて・・・! 今度は私の相手をしてもらおうかっ!!」






そして・・・・、この戦いは僕の勝利で終わりを告げた。

うん、だけど・・・その前にシグナムさんの相手か。いや、本気でやらないと死ぬよねこれ。



とりあえず・・・。





「ティアナっ! 逃げてっ!! 巻き込んでも責任取れないから早くっ!!」

「言われなくてもそうするわよっ! あぁもうっ!! なんでこんなことにっ!?」

≪マスターのせいですよ≫

「納得したわっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





≪・・・・・・あの二人、完璧にたがが外れたな・・・・・・≫


・・・・・・え〜、ただいま演習場は火の海と化しております。


ちなみに、演習場ではシグナムさんとヤスフミが死闘を繰り広げている。

なんか、ヴィータさんがすごく疲れた表情で小さく『うちのバトルマニアどもは本当に・・・』と呟いたのが、確かに聞こえた。





・・・・・・いや、あの二人バカだろ?模擬戦って事完璧に忘れてるだろ?





・・・・・・あ、フェイトさんが現れた。二人とも怒られてやがる・・・

・・・いいや、あそこは放っておこう・・・・・・それより・・・・・・




「・・・・・・ティアナ、大丈夫か?」

「なによ、あんたまで心配するの?」


なんかスバル達に囲まれているティアナに声をかける。そんなティアナに俺は苦笑する。


「・・・・・・いや、スバル達に囲まれて大変そうだったからな・・・ヤスフミとの模擬戦、いろいろ得られる物があったんじゃねぇか?」

「・・・そうね・・・そう言われてみるとそうかも・・・」

「何言ってるのジンッ!!恭文の戦い方はひどいよっ!!汚いし、嘘つきだし・・・痛っ!?」

「少し落ち着けよ。」


・・・・・・なにやら口を出してきたスバルにデコピンをすると、俺はため息をつく・・・さて、俺なりの説明をしますか。



「・・・確かに、ヤスフミの戦い方は模擬戦という事を考えてもやりすぎだ・・・けど、ティアナの事を考えると、ヤスフミがやってくれてむしろ良かったと思っている。」

「どうしてですか?」

「・・・・・・エリオ、ティアナの目標はなんだ?」

「・・・執務官になる事ですよね・・・?」

「でも、それが恭文の戦い方と何の関係が・・・」

「・・・当然執務官になったら、1人で戦わなきゃならない状況だって出てくる・・・その時、今回のヤスフミみたいな戦法を取られたら、どうなると思う?」

「・・・今回みたいな状況に陥る・・・そういうことですか?」














「キャロの言っている事も正解だが・・・・・・最悪死ぬかもしれない。」










俺が出した言葉に、スバル達の顔が引きつる・・・極端な例を出しすぎたか?



「・・・・・・まぁ、あくまでの話だ・・・・・・でも、今回ヤスフミがそういった戦法を取ったから、ティアナには対策が出来る。」

「・・・そうね・・・今回の私は、アイツの言葉に振り回されてばっかりだったわ・・・」

「けど、模擬戦ならそういった反省を生かして次に繋げる事が出来る・・・・・・という事ですね。」

「エリオ、正解。・・・ただ、これは俺の考えに過ぎないし、ヤスフミが実際どういう気持ちなのかはわからないけど・・・頭ごなしに否定するんじゃなくて、そこから何が得られるかも考えてみたらどうだ?」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「・・・情けないわね。私に勝っておいて、なんでそんなボロ雑巾みたいになってんのよ?」

「・・・ほっといて」




・・・うん、お願いだから放っておいて欲しい。正直、あなたのツンとした喋り口調に対応するだけの気力が今はないからさ。

つか、なぜにこんなことに? いや、僕が原因なんだけどさ。





模擬戦が終わったあと、シグナムさんに『実戦演習』を受けた。いや、あれはもう・・・ねぇ。





そのあと・・・えっと、一時間かな? シグナムさんの炎熱魔法のせいで炎の海になりかけてた演習場の上で説教くらいました。

というか、シグナムさんも怒られました。だって、目的忘れてるんだもの。演習場火の海なんだもの。



そして、その後に僕はスバルからも少し怒られた。というか、汚いと。嘘ついてたと。・・・いや、だから嘘じゃないってのにっ!



なんで隠し手出して、嘘つき呼ばわりされなきゃいけないんだよっ!?

あれかっ! スバル相手だとバインドもクレイモアもスティンガーレイも使ってなかったからかっ!!

仕方ないじゃん。スバルとはガチで殴り合いしてるほうが楽しかったんだからっ! クレイモアやバインドなんて使っても、楽しくなかったんだよっ!!





相手をバカにしてるとは言うことなかれ。戦いは楽しくなければいけないのだ。楽しく暴れられない戦いなど、僕は嫌だっ!





というわけで、もう・・・無理。お願いだから休ませて欲しい。










「いや、どういうわけっ!?
まぁ、アレよ。みんなアンタの事を思ってやってくれてるわけだし、甘んじて受けなさい」



それは分かる。でもアレだ。とくにアレだ。『実戦演習』が悔しい。フェイトのおかげで決着、つけられなかった。

すごく楽しくなってきたのに。久々に僕の修羅が騒いだのに。いえいえだったのに・・・。



「アンタ、全然反省なしってどういうことよ。つか、アレが楽しいって・・・」

「シグナムさんとやるときは、いつもあんな感じだよ?
なんていうかね、途中からすごく楽しくなってきて、時間も忘れて斬りあうの。いやぁ、あの人素晴らしいよね」

「・・・うん、わかった。アンタがバトルマニアだってのはよくわかった」



・・・なぜだろう? シグナムさんとやる時のことを思い出して、つい嬉しそうにしてしまった僕を見るティアナの表情が、微妙だ。

こう、作画崩れじゃないかって言いたくなるくらいに。



「ティアナ、お願いだからそんな理解出来ない何かを見るような目で、僕を見ないで?」

≪いや、実際理解出来ないんでしょう≫

「ごめん、真面目な話あれは理解出来ないわ。ま、それはいいわよ。さて・・・」





ゴツンっ!!





・・・ティアナに、いきなり頭を叩かれた。ゲンコツですよゲンコツ。あの、なんでっ!?





「昼間のお返しよ。言っとくけど、模擬戦のことじゃないから。いや、ある意味それか・・・。
とにかく、あんなセクハラ紛いのことを女の子に言うんじゃないわよっ!」

「セクハラ? いやだなぁ。僕がそんなことするわけないじゃないのさ。僕は紳士というなの変態だよ?」

「あぁ、なるほ・・・納得出来るわけないでしょうがっ! なによそれっ!? 自分で変態だって認めてるんじゃないわよっ!!」

「なに言ってるのっ! いいっ!? 男はすべからく変態なんだよっ!!
それを認めるか稲かで、男の価値は天と地ほども変わってくるっ!!、うちの近所の前原さんだって、そう言ってるよっ!?」

「知らないわよそんなのっ! つか、誰よ前原さんってっ!!」



全く、なにをどうしたいんだこの人は・・・。



「私のセリフよそれはっ!! ・・・つか、あれよ。『ステータスで希少価値』がどーたらこーたらって」

≪ほらマスター、やっぱり誤解してるじゃないですか≫

「そーよ。私だからいいけど、他の女の子にそんなこと言ったら・・・誤解?」

≪えぇ、そうです。マスターはですね・・・≫



疲れている神経に鞭を打って、ティアナに事情説明。・・・なんか顔を赤くしてるけど、なんで?



「ね、ティアナ、どこがセクハラなの? 僕、よくわからないんだけど」

「アンタ、いい度胸してるわね。この私を指して・・・つ、つ・・・・ツンデレですってっ!?」

「ティ、ティアナ? お願いだから、そんな怖い顔はやめてほしいなぁ・・・? ほら、綺麗な顔が台無しだよ」





あ、ひょっとしてツンデレって言われるのに何かトラウマがあるとか。

いや、違うか。ツンデレだからこそ、ツンデレって言われると怒るんだよね。わかります。ツンデレって、そういう生態だしね。





「うっさいバカっ! つか、あいにく私は怒っても綺麗なのよっ!!」

「ティアナ、自意識過剰って今度辞書で引いてみなよ。いまのてぃあ・・・ごめんなさい。お願いですから襟首掴むのやめてください」

「・・・あれよ。アンタ、本気でああいうのはやめなさい。人間関係壊すだけよ?」

「・・・ティアナ、知ってる? 戦いってのは、何時だって空しい結果しか残さないんだよ。
それはなぜか? 簡単だよ。戦うってことはね・・・壊すことなんだ」










そう、戦いは、いつだって空しい結果しか残さないのだ。戦いのあとには、壊れたものがいつだって存在しているから。

僕は、窓の外の夕暮れ時の空を見て思う。きっと、これからも人は戦いを繰り返す。そして・・・ぐはっ!










「なんでいきなり殴るんだよっ!?」

「かっこいいこと言ってどうにかなると思ってんじゃないわよ、このバカっ! どうして『やりすぎた』の一言もいえないのよぉぉぉぉぉぉっ!!」



そう言って、ティアナは・・・こ、こ、コブラツイストをかけてきたっ!

痛い痛いっ! ほんとに痛いからやめてティアナっ!!



「うっさいっ! アンタが謝るまではこうしてるわよっ!! 模擬戦はいいわよ模擬戦はっ!!
でもね、あんなセクハラを周りでかまされたら、私が迷惑なのよっ!!」

「なんだそれっ!? じゃあ・・・謝らないっ!!」

「はぁっ!?」

「こんな暴力に屈してたまるかっ! 正義はなにものに・・・・いや、痛いから! 痛い痛い痛いー!!」

「だぁぁぁれが正義よっ! 明らかに悪党でしょうがっ!! つーかエロガキよエロガキっ!!」



こ、今度は海老剃り固めっ!?

あ、ひょっとして、あの夢ってこれの予知夢? なんちゅう前振りがめんどくさい夢だよ。気付くのにここまでかかったじゃないかよっ!!



「失礼なこと言うなっ! 僕のどこが悪党だとっ!? あと、エロいのは男として当然だっ!!」

≪そうですね。この人エロいですよ。偶数日とか。もっと言うと昨日とか。
具体的に何処がエロくなったというと、今あなたが丁度目にしてる・・・≫

「中途半端な開き直りするなこのバカっ! アルトアイゼンもそんな確定情報だして認めんじゃないわよっ!!
つーか、そんな思考してる時点で、完全無欠に悪党でしょうがっ!!」



何を言うかっ! 正義っていうのは僕のために存在してるんだよっ!!

すなわち、僕が正義だっ!!



「どの口がそんなこと言うのっ! その口? その口なのねっ!! 海老反りしてなければ、広げてイジり倒してやるとこよっ!!」

「イジり・・・ティアナいやらしい。ティアナだって、エロいじゃないのさ」

「・・・あぁぁぁんたぁぁぁねぇぇぇぇぇっ!!」



ティアナが、更に力を加えてくる。いや、真面目にこれは痛い。だけど・・・言いたいことがあるっ!!



「だってホントのことでしょうがっ! 僕の友達が言っていた。『男も女も、全てはエロの一言で片付けられる』と。あ、フェイト以外ね」

「片付けられるわけないでしょっ! なんなのよあんたの友達っ!? つーか、アンタの周りの人間おかしいやつばかりじゃないのよっ!!」

「なるほど。じゃあ六課もおかしいのか。そしてティアナもおかしいんだね。わかります」

「わかってんじゃないわよこのバカっ!
あと、フェイトさんは別個ってどういうことよっ!? つーか、女の子にそういうこと言うんじゃないっ!!」



・・・そうだね、ごめん。今のは・・・言い過ぎた。



「な、なんかいきなり素直ね。・・・てか、いいわよ別に。そんなに素直に謝れるんだったら、昼間のもそうしなさいよ」

「それはイヤだ」



・・・あれ? なんで場の空気が凍る?



「ティアナ? ・・・痛い痛いっ! 足首捻るのはやめてっ! そんなにやったら折れちゃうからぁぁぁぁっ!!」

「・・・ぶっとばすっ!」

「なぜにそんな不穏な宣言をかますっ!?」

「アンタが反省してないからでしょうがっ! どーしてさっきのは謝って、昼間のは謝れないのよっ!!」

「謝る必要ないでしょうがっ! つか、ツンデレの何処がセクハラだよっ!?」

「そこじゃないわよっ! アンタ、まだ現状をちゃんと認識してなかったのっ!?」

「気にするなっ! いいっ!? 勝負っていうのは基本勝つためにするんだよ!!
勝つためには、ありとあらゆる努力をするのは当然でしょっ!!」

「努力の方向性がまちがってるわよっ!」

「気のせいだっ!」

「気のせいじゃないわよっ! つか、ちょっとは気にしなさいよっ!!」

「とりあえず、僕は気にしないからいいんだよっ!!」




















「ダメよなぎ君。そういうのは気にしないと、女の子には嫌われちゃうわよ?」




















・・・よし、幻聴だ。絶対幻聴だ。間違いなく幻聴だ。そうだ、そうに違いない。

こんな状況でこんな場所であのお方がいらっしゃるはずがないじゃないですか。あははははは、僕も耄碌したのかな?



お願いだから誰か嘘だと言って、僕の妄想だといってお願いだからお願いだからお願いだからぁぁぁぁぁっ!!




















「・・・ひどいな。せっかく会いに来たのに、そんなこと言うなんて」

「というか、なんでいるんだよギンガさんっ!!」

「ぎ、ギンガさん・・・?」

「二人とも、今日の模擬戦おつかれさま。あと、ここに居る理由ならさっき言ったでしょ?」





そう言いながら、僕とティアナの方に来たのは、ギンガさん。



そう、スバルの姉で108部隊所属のギンガ・ナカジマ姉さんだった。

本来なら、ギンガさんがこんなとこにいるはずはない。だって、部隊が違うんだもの。





「ちょっとだけ、なぎ君に用事があって来たの。
・・・それと、今日の模擬戦での君の行動について、後で色々と話があります。その時に、用件は伝えるわね」

「ちょ、ちょっとまってっ! 僕は特に変な行動はしてないよっ!?」

「・・・なぎ君、私の目を真っ直ぐに見て、そう言える?」



・・・・・ごめんなさい、いえません。だって、目がいつもと違って怖いんだもん。



「よろしい。それじゃあ、ティアナにお仕置きされながらでいいから、色々な話、聞かせてもらえるかな?」





あぁ、もうだめだ。ゲームオーバーだ。





そんなことを思いながら、それから一時間。

妙にニコニコなギンガさんの表情に、生きた心地のしない恐怖を感じたままティアナにお説教をくらいつつご飯を食べた。





その直後に、取調室へと連行され、ギンガさんと『お話』タイムとなった。なぜだかティアナとフェイトも同席して。



・・・勝ったのに。僕が勝利者なのに・・・・・この扱いは・・・・あんまりだぁぁぁぁぁぁぁっ!!








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「あ〜あ、ジン君においしいところ取られちゃったな・・・」

「いや、何言っているんですか?」

「気にすんなよ・・・それで、聞きたいんだが・・・・・・お前は今回の模擬戦、どう思った?」



スバル達に俺が思った事を話し終わると、後ろで聞いていたらしいなのはさんにヴィータさんと談話室で話をしていた。

そして、ヴィータさんに尋ねられたことに、素直に答えることにした。



「あくまで俺の感想ですが・・・・・・ヤスフミの戦い方に関してはスバル達に言った通りです。むしろ、気になるのは他の皆さんの態度です。」

「・・・へぇ・・・どんな事が気になるの?」

「・・・・・・ヤスフミの戦い方への反応ですよ。シグナムさんは元来の気性からだと思いますが・・・・・・スバルやフェイトさんの反応は少し過剰に思えました。」

「なるほど・・・他には?」

「あと・・・ティアナが俺との模擬戦時よりも格段に伸びているので、なのはさん達の教導は素晴らしいと思いますが・・・精神攻撃系の耐性があまりない気がしますね。」

「耳が痛いなぁ・・・確かに、その通りだよ・・・」



・・・・・・俺の言葉に、なのはさんとヴィータさんは苦笑いをする・・・話を聞くと、JS事件の時に実際にフェイトさんがつぶされかけたらしい・・・マジかよ。



「・・・・・・フェイトさん、執務官ですよね?それ・・・まずくないですか?」

≪一番精神攻撃に強くないといけない人物がそれで・・・よくあの事件を解決できたな?≫

「にゃはははは・・・そうだよねぇ・・・ほんとにどうしよう?」

「けど、アタシ達にはそういった指導が出来る奴がいねぇ・・・これは問題だな・・・」




そうですねぇ・・・・・・フォワード陣のことを考えると、そういった指導が出来る人が欲しい・・・・・・俺?

とてもじゃないけど、人に教えるようなスキルは無い・・・






なんというか、大変だなぁ・・・




(7話に続く)









おまけ:説教後のヤスフミ




あぁ・・・・・酷い目にあった・・・


取調室から出てきた僕を見た人は多分驚くだろう・・・それほど僕は疲れきっていたのだから。



「・・・ヤスフミ、何があったんだ?」



すると、ジンと師匠、そしてなのはが談話室の方から歩いてくる・・・放っておいてくれよ・・・



「・・・あぁ・・・それじゃ、俺は先に帰るから・・・」



そういうと、ジンは手を振りながら歩いていった・・・そういえば、ジンは僕になんも言ってこなかったな・・・


「・・・恭文君、ジン君に感謝したほうがいいよ?」


へ?なんでさ。


「今日のお前の戦い方に難癖つけなかったの、アイツだけだぜ?それどころか、お前の戦い方から六課の教導の問題点まで挙げやがった・・・ありゃ、教導官に向いているぜ。」

「そうそう、私達も勉強になったし・・・ジン君の指摘は結構鋭かったよ?」


・・・そうなんだ・・・すごいね。










なのはと師匠が去っていったのを確認すると、僕はアルトに声をかける・・・アルト、どう思う?



≪・・・恐らく私達の目的にはまだ気づいていないと思いますが・・・しかし、最初に気づくのはジンだと思っていましたよ。≫






僕もそう思っていた・・・なんだかんだでジンはするどい部分があるし・・・これは、ヒロさん達に追加で連絡しておくべきかな?




(本当に続く)




あとがき




バルゴラ≪・・・・・・さて、今回は喋るのが少なかったバルゴラだ。≫

ジン「いや・・・仕方ねぇだろ・・・あ、ジン・フレイホークです。今回の話はどうだったでしょうか?」

バルゴラ≪今回の話では、マスターもチート化してきたな・・・≫

ジン「おい、どういう意味だそりゃ?」

バルゴラ≪本来もっと後に明かされるヤスフミの行動の訳を、ほぼ見破っているのだからな。≫

ジン「・・・・・・それは作者に言え。あいつがこのプロット考えたんだろうが・・・・・」

バルゴラ≪・・・・・・まぁ、それが原因でマスターはとんでもない目にあうのだがな・・・・・・≫

ジン「ちょっと待て、何不吉なこと言ってんだっ!?」

バルゴラ≪・・・・・・ちなみに、その第一弾がこれだ。≫(どこからか台本を取り出すSD体型にゼ○マスクの運命G)

ジン「どれどれ・・・・・・!?ふざけんなっ!?絶対やんねぇぞ!!」

バルゴラ≪無駄だ。既に準備は整っている・・・・・・楽しみだなぁ♪≫

ジン「ま、まさか・・・今まで言っていたのはこれのことだったのか!?」

バルゴラ≪それでは、次回も楽しみにしていてくれ・・・・・・お兄さんとの約束だぞ!!≫

ジン「だれがお兄さんだよ!?・・・・・・はぁ・・・ホントにどうしよう・・・」



[*前へ][次へ#]

8/17ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!