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頂き物の小説
第十四話『どっちに行っても地獄、だけど書庫の方がマシだ!』



……昨日の訓練の後、結局お姉ちゃんは隊舎に泊まった。いや、楽しかったなぁ。久々に姉妹のコミュニケーションを取ってしまいました


ただ、またもスバルやティアの私を見る目が微妙でした。うぅ……そんなにお仕事モードな感じに見えるのかな?


恭文君が来てくれたお陰で、大分そういうのは改善出来たと思うのに


とにかく、朝。みんなでご飯を食べてから、恭文君はお姉ちゃんを自分の家へ送っていきました


お姉ちゃん、ミッドは初めてだしね。こういうのは絶対に必要。そして私は……



「なのは、お待たせ」



ここは、隊員寮の入り口。その声は、目の前に来たミニパトの運転席から。それを運転するのはもちろん……



「ううん、大丈夫。お姉ちゃんは?」


「ちゃんと送ってきたよ。……つか、着いた途端にエイミィさんとクラナガン観光するとか言って、飛び出した。僕が送った意味無いし……」



にゃははは……。想像出来る



「ま、そこはいいから、早く行こう?」


「うん」



そして、私は助手席に乗る。それから、トゥデイは動き出す。これから、ちょっとだけ恭文君とドライブです



《……なのは殿、私と中尉も居るぞ?》



あ、ごめんごめん……恭文君と私、そしてアルトアイゼンとラミアでちょっとだけドライブです。レイ君は何か用事があるらしく、恭文君にラミアを預けたらしいの



「……恭文君」


「うん?」



うん、いい機会だから聞いておこうかな?



「フェイトちゃんとは、本当になにも?」


「……いかがわしい事は0だよ」



やっぱりか……。まぁ、あっても大変だよね。気まずくなりそうだし



「あ、そうだ。なのは、ありがとね」


「なにが?」


「ほら、教導隊の資料やらなんやら、揃えてくれて。助かった」


「いいよ。というか……本気?」



私、今一つ信じられない。恭文君が局員なんて……



「本気で考えるってだけだよ。まー、なっても先生2号な感じが……」


「……うん、そう思うよ」



きっと、命令や規律なんてすっ飛ばすんだろうね。自分の守りたいもののために、壊したいもののために……ね


……そうだよね。それが、恭文君なんだよね


どこに居ても、きっと変わんなくて、いつも通りのノリで……



「でも、恭文君が局員になったら、楽しくなりそう」


「そう?」


「うん、きっと」



色んな事が起きそうだしね。……まぁ、頭を抱える事も多そうだけどさ


上層部の皆さん、御愁傷様です……



「で、帰りは何時だっけ?」


「うんとね……5時くらいかな」


「りょーかい。こっちもそれくらいには終わると思う」



……私達がこれから向かう所は、管理局本局。私は、教導隊のオフィスに顔を出して、解散後……そう、解散後の教導スケジュールの打ち合わせ


そして恭文君とラミアは、ピンチヒッターなのです



魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常〜異邦人と古き鉄〜


第十四話『どっちに行っても地獄、だけど書庫の方がマシだ!』


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


レイだ。現在、俺がいる場所は赤い絨毯が敷かれた、いわゆる城とかにある謁見の間とかいう場所だ


どこにある城だって?
知らん。分かることと言えば、次元の海のどこかを移動していることくらいだ


城というより移動要塞ってのが、一番近いな


なんで俺がそんな場所に居るのかというと……



「……聞いてるの、レイ?」


「もちろんだ。聞いてるよ、レオナ」



2つある玉座の片方に座る、青色の長い髪に金色の瞳の女性――『レオナ・カストール』に呼ばれたからだ


彼女が何者なのかは、あとに話そう。問題は彼女から聞いた話だ


そう遠くない未来、厄介な存在が敵として現れるそうだ。どんな奴が来るか尋ねたが、会えば分かると言われた……ということは、過去に俺が会った存在なのだろう


“本来の”全力で戦えとも忠告をくれた事から、相当だろう



「確認だが、それは本当か?」


「そうだ。首謀者はカルミナと橘家が捜索に徹してる、時期見つけるだろう」


「捜索中なら、なんで厄介な存在が来るってわかったんだ?」


「予告状が届いたのよ……」



レオナが頭が痛いとばかりに額に指を添える。しかし、予告状?
怪盗の真似事か? だとしたら、なんて幼稚な……



「で、なんて書いてあったんだ?」


「『創られし神造の狂い神。破滅の守護を喰らうため、座より帰還する』よ。心当たりあるんじゃない?」


「あ〜、ありまくる。よりによってアイツかよ……最悪極まりない野郎だ」


「どう、勝てそう?」


「難しいかな……前戦った時より強くなってると思うし、なにか嫌な予感がするんだよ」


「……そう。なら、鍛えなおしてあげる。来なさい」


「いや、ちょい待て! 何をどう自己完結してそうなりますっ!?」



目の前に今の今まで座っていたレオナは、いつのまにか背後に立ち、俺の首根っこ――襟だからな?――を掴んで引き摺りだした。くそう、まったく見えなかった……



「あんたが弱気なこと言うからでしょうが……その弱気、叩き壊してあげるよ」


「その前に俺が壊れる!」


「大丈夫大丈夫♪」


「大丈夫じゃないからぁぁぁぁっ!?」



俺は引き摺られながら祈った。どうか無事に帰れますように、と……


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……いやぁ、疲れたね」


「いや、そう言いながら楽しそうだったじゃないのさ」



……時刻は夕方。美由希ちゃんのミッド観光ツアーも滞りなく終了して、臨時の我が家まで帰還の途中。ま、もうすぐなんだけどね


いや、でも楽しかったなぁ。独身時代に戻ったみたいだよ〜



「戻りたいの?」


「……まさか」



今回はちとやりあっちゃったけど、これくらいは昔からだしね。いや、昔よりはマシかな


出会ったころは本当に凄かったしね。全然笑わないし話そうともしてくれないし……



「うん、なら安心だ」


「あー、ごめん。心配かけてたね」



もしかして……そのために来てくれたのかな? だとしたら、悪いことしたなぁ



「別にそれだけってわけじゃないよ。可愛い妹の様子も、ちょっと見ておきたかったしね。
……ね、エイミィ」


「うん?」


「なのはのケガ……相当ヒドイの?」



……え? いや、母さんやフェイトちゃんから聞いて知ってはいたよ。でも、なんですかその聞き方は


だって、まるで知らなかったみたいに……



「昨日のなのはを見るまではね。まー、この間帰って来た時にも、変だなとは思ったけどね」



なのはちゃんは……! 家族に言ってないってどういうことっ!?



「まぁ、心配かけたくなかったとかだと思うから、そこはいいよ。……それで、どう?」


「……私も伝え聞いたくらいなんだけどね。後遺症みたいな感じで、ダメージが残ってるんだって。
ただ、無茶しなければ完治はするものだし、今すぐどうこうって話じゃない。本人も、治す気満々だって」


「……そっか」



そうなのよ。……そのまま、美由希ちゃんは黙った。なに考えてるかなんて……推測するのは、野暮だよね


それでも、私達は歩いていく。夕日が、さっきより少しだけ落ちている



「あー、私も質問」


「うん?」


「恭文君……大丈夫だった?」



ちと、真剣な話しちゃったから、心配ではある



「うん、大丈夫。というか、話したんでしょ?」


「うん、話した。それで言われたよ。わがまま通す。忘れないで、その上で変わるってさ」



いやはや、私とお母さんの予測は外れたよ。2人は納得してくれると思ったんだけどなぁ。まさか、一刀両断するとは


……忘れていいものも、下ろしていいものも、自分達には何一つ無い……か。まったく、あの古き鉄達は。強いってのも考えものだよ



「美由希ちゃん」


「うん?」


「綺麗事だよね」


「そうだね。綺麗事で、身勝手」



うん、綺麗事だ。組織って、そんなに甘くない。たださ……



「そんなの、みんな同じだよね。恭文くん達だけじゃない」


「そう思う?」


「思うよ〜。私の周りはそういう人達多いし」



理想主義者と言ってしまえばそれまで。でも、それでいいじゃないのさ


どこで戦っていても、一番賭けるのは誰でもない自分自身の時間


だったら、身勝手でも、自分が一番信じられて、力を出せる理由で戦えばいいんだよ


……ま、ヘイハチさんの受け売りだけどね



「まぁ、恭文はきっと大丈夫だよ。リインちゃんとアルトアイゼンも居るから。あと、なのはも同じくだね」


「そう思う?」


「思う思う。なのは、ヴィヴィオちゃんのお陰でちょっと落ち着いてきてるし。恭文も、ちゃんと自分の行きたい方向、探し始めてる」



……うん、なら少しは安心かな?



「大丈夫、エイミィやリンディさんの言ったこと、伝わってるよ。たださ……」


「うん?」


「恭文の天然フラグメイカーはそろそろ矯正した方がいいよ。なのはから話も聞いたけど、また増えてるし、ガチな子もいるみたいだし……」



……あれはなんだろうね。フェイトちゃんが本命って公言してるからなんとかなってるだけだよね


あ、私は立てられてないよ? うん、旦那様一筋だし。エイミィさん、意外と一途なのよ〜?



「でも、一番心配だったなのはだよ……」


「なのはちゃん?」



……あの、美由希ちゃん。心配って言ってるわりに嬉しそうだよね?



「だって、部屋に男の子の写真飾ってたんだよ? それとなく聞いてみたら顔を赤くするし、その男の子の話をする時なんか楽しそうで」



仕事一筋のなのはちゃんがねぇ。いったい誰だろ?



「レイ君だよ。初めて会った時なんて女の子かと思っちゃったくらい可愛いの。
レイ君は友達って言ってたけど、なのははどうなのかなって……私、母さんと父さんから、その辺りも見てきて欲しいって言われてたから、いい報告ができるよ」




そんな裏目的があったのっ!? でも、レイ君か……家事なんて恭文君なみに出来るし、あの子が作るお菓子なんて家の子達も気に入ってるものね




「へぇ、料理も出来るのか……なのはとくっついたら家で働いてくれないかなぁ」


「もう永久就職決定?」


「2代目店長として優秀なパティシエは欲しいから。でもよかった……お母さんがすごい心配してたから安心させられるよ」



あはは……、よかったね。安心しきった美由希ちゃんと笑い合いながら歩いている……あれ?


マンションの正面玄関に、人影を見つけた


私より高い身長の黒髪の男性。どこか緊張した面持ちなのは、気のせいじゃない


全く……やっとってわけ?



「エイミィ」


「うん、ちょっと行ってくる」



私は足音を殺して、そっと背後から近づく。まずは……驚かせて待たされた憂さ晴らしを



「何をしている?」



声は振り返らず、私へと飛んできた。少しだけ、呆れたような感じなのは、気のせいじゃない。……可愛くない



「いきなり失礼な」


「心を読まないでくれる? というか、可愛くないのは事実でしょ」


「当然だ。僕を今いくつだと思っている?」


「年齢は関係ないね。昔からそうだったし」



うん、基本は可愛くない。たまにムカついたくらいに



「ちょっとは恭文くんを見習ったら? 恭文くんはこういう時は可愛いよ〜」


「アレと一緒にするなっ! ……その、アレだ」


「うん?」


「待たせて……すまない。それに、悪かった」



振り返って、私に男性はそう言ってきた。頭を、下げながら


なので……私はこう返す



「いーよ。私は……あなたがちゃんと来てくれただけで、嬉しいよ」



甘いよね、きっと。でもまぁ……年上女房は、包容力が大事ですから



「エイミィ……」


「まーとにかく……次はお母さんだよ。私みたいには上手くいかないから、覚悟した方がいいよ〜?」


「……そうだな。気を引き締めていくことにする」



………………さて、愛しい旦那様? 我が家での地位をちゃんと取り戻せるように、頑張ってね


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……いや、なんていうかさ。私、空気か背景だよね


こう、空気が桃色なんだよ。絶対領域? 固有結界?


……結婚っていいかも。でも、相手居ないしなぁ


あ、もしかして……なのはより私の方が危機感覚えなきゃいけないのっ!?


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……時刻は5時。僕のお手伝い時間の終了タイムが来た


書庫が現在早急に片付けなければならない案件は、見事に片付いた


なお、その瞬間に本局が震えるほどかと思うような歓声が上がったのは気にしないで欲しい



「……いや、助かったよ」


「ありがとう、恭文君」


「いえいえ、無事に終わってよかったです。……そだ、ユーノ先生」


「なに」



ま、せっかくだしね。尊敬する先生のために、一肌脱ごうじゃないのさ



「よかったら、一緒に夕飯食べませんか?」


「夕飯? ……あ、ごめん。僕はもうちょっと残って資料の整理を」


「それは私がやっておきますから、恭文君と行ってきて下さい」


「いや、でも……」


「なかなか会えないんだから、しっかり友情を育んで来なさい! 恭文君、ユーノさんをよろしくね」


「はい」


「……じゃあレヴィ、あとはよろしくね」


「うん。お疲れ様」



……僕は、司書さん達にしっかり挨拶をした上で、ユーノ先生と一緒に外に出た


……食事終わりに、アルトにメールを送ってもらった。文面はこうだ


『書庫の手伝いは時間通りに終わりそう。で……魔力ギリギリで疲れたまま運転しても危ないから、一緒に夕飯を食べよう』……と


そして、OKのメールが帰ってきた。……なぜか(苦笑)なんて末尾に入れた上で


あ、もちろんユーノ先生も同席していいかどうかを確認した上で。うん、OKだしてたけど


で、若干色気は無いけど、またもや本局の食堂です。そして、僕達が着いてから数分後……



「ごめーんっ! 遅くなったっ!!」



そう、来ました。高町・W・なのはが



「私は若○ボイスじゃないよっ!!」


「心を読むなっ! つか『W』って言っただけで若○ボイスなんて言ってないしっ!!」


《まぁ、正解ですが》



気にしないで。……さて、仕事はOK?



「うん。後は帰るだけだよ」



そう言いながら、僕達が座るテーブルに着く。で、当然……



「ユーノ君、久しぶり」


「うん、久しぶり。なのは」



お、意外と反応が普通だ。もっとしどろもどろかと思ったのに



「あの、お仕事大丈夫?」


「うん、恭文君が頑張ってくれたしね。いや、はやてには感謝だよ。急な頼みだったのに、引き受けてくれてさ」



……そのまま、楽しそうに話し出した。うん、ユーノ先生はさっきと別人だね。年相応に見えるよ


というかさ、アルト、ラミア



《はい?》


《なんだ、恭文殿?》



僕、いらない子だね



《仕方ないでしょう》


《そうだな。ここは仕方ない》



……なら、ここは黒子に徹しますか。あー、なのは?



“なに?”


“食事、僕が取ってくるね”



……そう、この横馬は自分の分の食事を取らずに直行してきたのだ。全く、抜けてるというかなんというか



“あ、ごめん”


“いーよ。で、リクエストはある?”


“じゃあ、Bランチで”


“りょーかい”



……ま、ここはからかっちゃだめだよね


僕は、楽しそうに話をしている2人の邪魔をしないように、席を立った。本日の一番人気のランチを取ってくるために


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……母さん、すまなかった」



おー、クロノ君が頭下げてる。で、お母さんは……憮然としてるね。あ、子供達は美由希ちゃんとアルフと散歩に出てもらってる。聞かせる話じゃないしね



「なにがどうすまなかったのか、是非聞かせて欲しいわね」



……お母さん、もしかして結構怒ってた? 表情がきつめだし



「無神経だった」


「そうね」


「自分の母親が女性だということを、完全に忘れていた。……もっと言い様があったのではないかと、ずっと後悔していた」



うそ……じゃないな。うん、その場の勢いで飛び出す言葉じゃない



「その考えに至ったのは、どうして?」


「……エイミィが家を出たと気付いた時からです」


「随分遅いわね」


「自分でもそう思います。ただ……」



ただ?



「あの時、痛感しました。そして恥じました。自分の行動は、家族を……自分の帰るべき場所を蔑ろにする行動だったと。
母さんだけのことじゃない。エイミィと話している時もそうです。エイミィはどうしてこうなったかを言ってくれたのに、聞こうともしてませんでした」



……そうだね。クロノ君、母さんを連れ戻すことだけ考えてて、どうしてこうなったのか、考えようともしなかった



「母さん、お願いします。帰ってきて……くれませんか? 僕が、帰るべき場所は、あの家で、母さんはそこに必要なんです」


「なら、ここに帰ってくればいいでしょう?」



いや、お母さんっ!? ここ恭文くんの家ですからっ! さすがにこれ以上の占拠はアウトですよっ!!



「ま、それは冗談よ。……そうね、許してもいいけど。条件があるわ」


「はい……」


「あの水着、着てもいいかしら?」


「……はい、着てください。その……素敵だとは思いましたから」



……あ、ちょっと顔赤い。むむ、これは後でお話かな



「そう、ありがとう。……それでエイミィ、あなたはいいの?」


「あー、そうですね。ちゃんと反省はしてるし、いいかなと……」



ま、これでしてなかったら、追い出すつもりだったけどね



「……2人とも、ありがとう。そして……本当にすまなかった」


「……いいわよ別に。だって、私達は家族なんですもの」


「そーだよ。時々はこういうこともあるって」



時々は喧嘩だってする。だけど、それでも繋がっていける。うん、家族って、そういうものだと、私は思うよ



「じゃあ、アルフと美由希さん達が帰って来る前に、夕飯の下ごしらえ、済ませちゃいましょうか」


「そうですね。あ、クロノ君も手伝ってよね? ここで好感度稼がないと、パパって呼んでもらえないよ〜」



テーブルから立ち上がりながら私がそう言うと、クロノ君がヘコんだ。……さっきもおじさん扱いだったしね。うん、真面目に改善していこう



「……そうだな、頑張っていくことにする。ならエイミィ、アレを作るか?」


「……あぁ、あの焼きそば?」


「そうだ」


「りょーかい。ちょっと頑張っちゃおうか」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……そっか。なのはとユーノ、楽しそうだったんだ」


「もうね、居心地悪かった。僕はほとんど喋ってないし」


「でも、安心した?」


「……まぁね」



さて……あの居心地の悪い食事が終わってから、僕となのはは隊舎に戻った。その時にラミアはなのはに預けた、レイに何か用があるみたいなこと言ってたし


で僕は……恒例のフェイトとのコミュニケーションです


2人でお茶を飲みながら、のんびりとお話です



「でも、ごめんね。いきなり留守にしちゃって」


「大丈夫だよ。ヤスフミ、デスクワーク優秀だしね。問題なかった」



ユーノ先生の手伝い、本当に急だったからなぁ。フェイトとエリオ達に押し付ける結果になったし


そんなことを考えていたのが伝わったのか、フェイトが笑顔を向けてきた。大丈夫だと、言っているように感じる



「言ってるんだよ?」


「……うん、伝わった。あ、それでメール見た?」



フェイトが頷く。そして、2人で嬉しそうな顔になってしまう。……そう、解決したとメールが来たのだ



「今日はクロノさんも一緒にお泊まりか……。本気で別荘にするつもりじゃないだろうね?」



なお、美由希さんは自分がお邪魔と感じたらしくて、またこちらに来ています。……まぁ、ヒロさん達との組み手、またやるから、いいんだけどね



「さすがにそれは……。でも、ヤスフミ戻らなくていいの?」


「うん。クロノさんが双子コンビとのコミュニケーションで四苦八苦してるのは目に浮かぶもん」



そこで僕が居てみなさいよ。どう考えてもうちのお兄さんはヘコむでしょ



「それもそうだね……。でも、これで明日には戻れる。良かったね」



……あー、そうだね



「……ヤスフミ?」


「うん……」



なんだろ。こう……アレなんだよね。家がようやく解放されたのは嬉しいよ? でも……



「寂しい?」


「……かも」



こういうの、感じたこと無いんだけどなぁ。船に乗ってても部隊で寝泊まりしてても、帰れると決まった時は……嬉しかったのになぁ



「……うん、きっといいことだよ」


「そうかな?」


「そうだよ、きっと。……ここに、ヤスフミが自分の居場所を、見つけ始めてるのかなと、思う」居場所……ね



「だとしたら、バカだよね」



お茶を一口。その暖かさと程よい苦味に、心が落ち着く


うん、バカだよね。あと3ヶ月とかそこらで、ここは無くなる。なのに、居場所を見つけても……



「バカなんかじゃないよ」


「……フェイト」



というか、ちょっと怒ってる?



「時間や時期なんて、問題じゃないよ。今まで気付けなかったことに気付けた。感じることが出来た。
ヤスフミが今感じている気持ちは、バカなんかじゃない。……そんなこと、言ったらダメだよ」


「……ごめん」


「謝らなくていいよ。でも、そういうのは無し。いい?」


「うん」



なんか、また居心地の悪い気持ちを感じて……茶をすする。こういうところが、子供なのかね。うん、そうか



「ヤスフミ」


「うん?」


「ヒロさん達が、また打ち合わせするから、時間空けておいて欲しいって」



あ、そうだね。アレも進めないと。書庫の手伝いの報酬として、参考資料は色々調達してきたしね


ま、ちと照れ臭くはあるけど……せっかくだし、いいの作るぞ〜



「……あの」



フェイト、なんでそんなに真っ赤?



「あの時言ってくれた……こと、すごく嬉しかった」



思い出して、身体が熱くなる。うぅ、こう……かっこつけたから、恥ずかしひ



「あの、でもね。ヤスフミが他にやりたいことがあるなら、そっちを選んで? 迷惑とかじゃなくて……その……」


「言われなくても、そうするつもりだよ?」



うん、そのつもり。そうじゃなきゃ、変わっていけないし


ただ……



「ただ、こうも言ったよ? 今ある中で一番やりたいことで、通したいことだって」


「……うん」



だから……その……。アレだよアレっ!!



「……その、フェイトの都合もあるし、局員とか関係なしだから、ちゃんと考えてからだけどさ。でも、今のところは変わってない。あの時言ったこと、全部。
あの、もちろん他の道もちゃんと考えて、その上で決めていくよっ!? それは……絶対」


「あの……大丈夫だよ? 分かってるから。……ただ」


「模擬戦で5割以上?」


「ううん、それもあるけど」



あるんだ



「私に、考える時間……くれる?」



……いや、アレはそれ前提の上で言ったんですが。なんで困り顔っ!?


あ、もしかして……



「あの、僕フェイトのこと……困らせた?」


「あの、そういうのじゃない。……ちゃんと応えたいから。でも、すぐに返事出来そうもなくて……」


「あの、僕はフェイトが考えた上で返事してくれるなら、それでいいから」



返事はイエスでもノーのどちらでも構わない……と、付け加えておく。というか……だよね



「あの、ごめん。やっぱり困らせてる」


「ヤスフミ、お願いだから謝らないで欲しい。……それじゃあ、少しだけ待っててくれる?」



僕が頷くと、フェイトが赤く染まった頬をしながら、微笑みを返してくれた。それが、凄く嬉しくて……



「ヤスフミ」


「なに?」


「……ありがとう。あの、何度も言ってるけど……嬉しかった。本当に。絶対に、迷惑とか、困ってるとかじゃないの。
少し待たせちゃうけど……それだけ、信じてくれる?」


「……うん、信じるよ」



……2人して、同時にお茶を飲む。同時にむせた


ケホケホ言いながらも、また時間は進んでいく


うん、居場所見つけてるのかも


こういう時間は、嫌いじゃないから


(第十五話へ続く)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


おまけ:その頃のレイ


「ちょぉっ!? うわぁぁぁぁぁぁっ!!?」



俺は慌てて転がるように走る。カッコ悪かろうが、避けた者勝ちだ


俺がさっきまでいた場所に、極太のビームが突き刺さる……それを確認する暇などなく、前へと進む



「まだ少ししか進んでないよっ! 早く私に一撃入れてみなさい!」


「――ッ!? だったらもう少し加減してくれたって……ウソォッ!?」



俺が文句を垂れながら前を見ると……



「これを避けてみようか?」



ニッコリ笑顔で立つレオナと、その頭上――さまざまな色の光球が複数浮かんでいた。今いる場所は室内だが、天井が見えない


アレ、全部砲撃魔法かよ……前の時より数増えてないか?

アレを全部避けろと? 無茶言うなっ!!


しかし、そんなこと言っても彼女のことだ。やめたりしないだろう……死なないように頑張りますか


俺が駆け出すのと、レオナの腕が降り下ろされるのは同時だった


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


あとがき



レイ「……………………」


(へんじがない、ただのしかばねのようだ)


レイ「―――生きてるわ、バカ作者……」


ラミア《マスター、何ボロボロになってる? いつも隠し持ってるデバイスを使えば何とかなってただろうに》


レイ「やる前に全部没収されたよ。それに力を使うと数が倍加されるから、身体強化が使えなかったんだよ……」


ラミア《つまり、生身で砲撃を避け続けていたのか?》


レイ「その通りだ。非殺傷なんて使ってないから、もう命懸けで……」


ラミア《…………大変なのだな……私はなのは殿とレイジングハート殿と仕事を片付けておく。生きて帰ってこいよ、マスター》


レイ「……ああ、といっても試験の日に一気に飛ぶんだがな」


ラミア《そうなのか? またなんとも手抜きな……》


レイ「手抜き言わない。簡単な回想後にだから。というかルミナが異邦人クロスの書き直ししてるんだよ。
それに試験の内容が問題で、それに一番力を入れたいらしい。ちなみに新しい異邦人クロスの方にラミアは主役から外れるからな? じゃ、そういうわけだからまた次回!」



ラミア《まて! それはどういう……》





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