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頂き物の小説
第3話「本気と全力は似ているようで違う……あなたのご注文は、どっち!?」






 ふぅっ……警備部の打ち合わせがようやく終わった。



 けど……なんか憂鬱だよ。

 せっかくヤスフミが六課に来た最初の一日なのに……どうせなら最初からいたかった。

 はやてから昼間に来たメールだと、朝からやらかしたらしいし、落ち込んでたりしてないといいけど。



 …………いや、それはないかな。

 ヤスフミはああいう性格だし、多少のことでどうこうは……ならないよね。

 それに、パートナーデバイスのアルトアイゼンや、みんなもいるワケだし、うん、きっと大丈夫だ。

 アルトアイゼンは……ちょっとアレだけど。



 とにかく、今は早く戻ろう。うん。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 んん〜っ、やっと着いたぁっ!



 転送ポートからレールウェイを乗り継いで、やってきましたクラナガン港湾区っ!

 ここからはタクシーを拾っての移動。ちょっと財布に優しくないけど、スカイクェイクから交通費は巻き上げてきたからのーぷろぶれむっ!

 宿についても、すでにアイナさんに連絡して隊舎の空き部屋を用意してもらってるからもーまんたいっ!



 けど……やっぱりみんなで来たかったかも。せっかくの新隊舎へのお引越しの日なのに。

 まぁ、そこはしょうがないよね。平日だから学校あるし。“JS事件”に首を突っ込んでた頃はともかく、みんなそろって学校を休むワケにはいかないし。



 そんなワケで、代表して私が来ることに。

 いやー、日頃の行いって大事だね。しょっちゅうゲームで徹夜して仮病休みしてるから、今さら休んでも怪しまれないし。



 では――いざ行かん、機動六課!

 待っててよスバル! 今、みんなからの祝辞とお土産を携えて、姉弟子のおねーさんが行くからねっ!









とある魔導師と機動六課の日常×魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜



とある魔導師と守護者と機動六課の日常



第3話「本気と全力は似ているようで違う……あなたのご注文は、どっち!?」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「セットアップッ!」



 その声が響くと同時に、僕の身体にバリアジャケットが装着されていく。



 バリアジャケット、魔導師が身にまとう戦うための防護服。

 基本防御魔法四種のうちの二つ、フィールド系とバリア系を組み合わせて紡ぎ上げる、戦う覚悟を示した服だ。

 それまで着ていたトレーニングウェアは一瞬で消え……うん、裸になるんだ。

 でも、色々と補正がかかるから直視しても大丈夫よ?



 そして、そんな僕の身体に、すぐにジャケットが装着されていく。

 僕のジャケットは、黒い無地のインナーにジーンズ生地に似た色合いの長いパンツ。

 そして、上半身には青く、分厚い長袖のジャケットを羽織る。



 ちなみに、丈は腰まで。こちらのデザインも無地でシンプル、飾り気など微塵も感じられない。

 右手には黒い、指が出るタイプの薄手のグローブ。

 両足には足首までを包み込む皮素材っぽいブーツを装備。これで基本線は仕上がった。



 というワケで……次は武装。

 左腕には、ヒジから指先までを包み込む、鈍い銀色のガントレットを装備。

 ……ちなみにこのガントレット、リボルバー8連装式のカートリッジシステムつきで、非人格型のアームドデバイスだったりする。



 この子の名前は“ジガンスクード”。

 僕の相棒のコントロールでカートリッジシステムを使うために作り上げた、僕のもうひとりの協力者。

 相棒は諸事情でカートリッジシステムを組み込んでいない作りになっている。

 なので、もしもカートリッジの力が必要になった場合、それをフォローするのがこの子の役割だ。



 そして、ジガンスクードを装着すると、目の前に青い、小さな宝石が現れ、高速回転しながら強烈な光を放つ。



 すると、どこからともなく幅広で、厚みのある日本刀と、黒塗りの鞘が現れる。

 刃は鈍い銀色。鍔は円形の黒塗り。柄も同じ。

 ただし、柄尻にはそこに埋め込まれる形で先ほどまで高速回転していた青い宝石が埋め込まれている。



 僕は右手で日本刀。左手で鞘を手に取ると、自分の目の前で刀を鞘に納める。そしてそれを腰に差す。



 これですべての準備は完了した。



 これが僕の魔導師としての戦闘形態。手にした刀で敵を切り裂くスタイルだ。

 なんか、この時点で魔導師じゃない気がするけど……騎士はガラじゃないし、シャープエッジの言う侍とも違う気がする。うん。気にしないことにしよう。



「……アルト、さっそくで悪いけど一戦かますよ。いい?」

《問題ありません。マスター》



 今の問いかけに応えてくれたのは、僕のパートナーであるデバイス。

 人格型AI搭載のアームドデバイスで、名前は“アルトアイゼン”。



 形状は、今さら言うまでもなく日本刀だ。もっと言うと、同田貫。銀色に輝く刃は、肉厚で幅広い。

 別名、斬馬刀とも呼ばれている代物だ。

 この子は、僕が魔導師になってから、ある人から託された大事なパートナーで、僕はいつもは『アルト』と呼んでいる。



 まぁ、ロングアーチスタッフのアルトさんと紛らわしいのはご愛嬌ですよ。





《しかし、マスター》

「なに?」

《はっきり言って、うかつすぎます》



 ……は?



《なんで初日にこんなことになってるんですか? ありえませんよ。
 あなたそんなにビックリ人間になりたいんですか》

「……アルト、状況わかってるかな?
 今はそんなことを言っている場合じゃないでしょ」

《わかっていないのはあなたの方です。
 もう救いようがないほどにアレなのは何も言いませんけど、何ですかコレ?》



 知るかボケっ! 僕が聞きたいわっ! つーか、一番ワケわかんなく思ってるの、僕だからねっ!?

 ……つーか、マスターを指してアレとか言うなっ!



《ハッキリ言ってコレはありませんよコレは。いや、本当に。あなたもはやてさん達も一体何考えてるんですか?
 いや、あのギンガさんの妹さんも同じですけど。お義兄さんやお姉さんに似て人の話聞きませんし》



 あー、それは同意見。姉妹って似るもんなんだね……それが義理の兄妹でも同じくだ。



《とにかく、私達がこの部隊で上手くやっていくためにも》

「え、僕の疑問とか、一切無視っ!?」

《対人関係のアレコレをあなただけに任せておくワケにはいきません。
 これからは私は色々と口出しさせていただきます。いいですね?》



 いや、あなた今までも散々口出ししていらっしゃいますよね? 今日は楽したいとか言って、しゃべってなかったけど。

 とにかく、それで色んな人にふたりはぷり……じゃなかった、二人でひとりみたいな感じで見られてるじゃありませんか。



 そして、今の会話の中でどうしてそういう結論になるっ!?



《答えは聞いてませんがね》



 あぁもうっ、コイツは……!



 ……まぁ、いつもこんな感じだ。

 アルトは、デバイスとしてはすごく優秀な子なんだけど、一言二言三言四言多いのがタマに傷だったりする。

 というか、フリーダム? あんまりに発言が自由過ぎて恐ろしい時が……



《マスターがしっかりすればすむ話です。なのに、あなたは毎度毎度……というか、あなたに言われたくありません》

「待って待ってっ!
 キミ、それはこっちのセリフだからねっ!?」

《全く、これだからゆとり世代は。
 どうしてなんでもかんでも人のせいにすればいいと思うんですか》



 誰も思ってないでしょうがそんなことっ!



《人のやることなすことにケチつける前に、自分の行動を省みてください。それも出来ないってどういうことですか。
 大抵こういうのが批評と中傷の区別もつかずに、偉そうにコメンテーター気取りになったりするんですよ》

「アルトにだけは言われたくないからね、それっ!?
 つーかその発言はアウトだからっ! 全てのコメンテーターにごめんなさいだよっ!」

《その前にあなたが謝ってくださいよっ!》

「一体何に対してっ!? つーか、いきなりキレるなっ!」

「あ、あのぉ……」

《「なにっ!?」》





 …………………………あ。





《いい加減、始めたいと思うんだが……その漫才モドキはまだ続くのか?》

「というか、恭文のデバイス……すごくおしゃべりなんだね」



 声の方へと苛立ちまじりに視線を向けると、先にセットアップからマスターコンボイとのゴッドオンまでを済ませていたスバルがいた。

 今は一体化したマスターコンボイの顔だけど、なんか呆れ顔。



「……アルト」

《……マスター》



 うん。



《あなたっ! 何をやってるんですかっ!?
 私の初登場から5分も経ってないのに面白キャラ認識が広まっちゃったじゃないですかっ!》

「お前のせいじゃボケッ! つーか、自業自得だからねっ!?」



 とりあえず、腰に下げている相棒にツッコむ。

 あー、どうしてこうなるっ!? せっかくのセットアップが台無しじゃないのさっ!

 アニメだったらかっこいい音楽(『OO』のBGM、もっと言うと“00 GUNDAM”とか)と共にバーーーンっとできるあれだよアレッ! こうなる意味がわからないしっ!



 いや、と言いますか待って待ってっ!

 もしかして今の漫才をスバルやマスターコンボイだけじゃなくて、あそこでお祭り騒ぎしてやがる方々にも見られてたってことっ!?

 ちくしょぉぉぉっ! なんか色んなものが初日にしてドンドン失われていくってどういうことさっ!?

 っつーか、あそこで腹を抱えてバカ笑いしてるガスケットとアームバレット、ブッ飛ばしてもジャスティスだよねっ!?



 ……とりあえず、そこはいいか。うん、気にするのやめよう。なんか、辛い。暴走コンビをブッ飛ばすのも後回しだ。



 とにかく僕は、スバル達を観察しつつ頭をシリアスモードに再度切り替えていこうとする。だって、さすがにこのままはまずいし。

 マスターコンボイのロボットモード、一見すると大型の火器とかは見られない……ってことは、火器類は内蔵型、もしくはエネルギー放出系か。少なくとも、あのガタイで搭載する余裕がないってことはないと思う。

 ただ――今はスバルがあの身体を操ってるからなぁ。シューティングアーツの使い手ってことは、そういう火器類よりも彼女自身の突撃が怖い。



 などと僕が警戒しているのは、シューティングアーツがどういうものか。その戦闘スタイルに原因がある。

 シューティングアーツの基本はローラーブーツで敵に接近。そして、拳での一撃を相手の急所に叩きつけるというわかりやすいもの。相手が誰か、どんな戦いをするか、なんて関係ない。狙うはただその一撃のみ。

 しかし、だからこそ怖い。やってくることはシンプルなのだが、その分あるだけの力を真っ直ぐに叩きつけてくる。

 正直、下手な絡め手使ってくるヤツよりもはるかにやりにくいのだ。



《それは私達にも言えることだと思いますが?》



 うん、確かにね。

 けど、スバル達にはトランスフォーマーの、しかも重量級のボディというアドバンテージがある。

 女の子相手にするべきコメントじゃないんだろうけど、あのウェイトでまともにぶん殴られれば、僕なんか簡単に吹っ飛ばされることだろう。そういう意味じゃ人間のシューティングアーツ使いよりもはるかに厄介だ。

 というか……そう考えると、シューティングアーツって人間よりもむしろトランスフォーマー向けなんじゃないかな?



 ま、観察したことでどういう戦い方するかは読めた……というかギンガさんを通じて知ってるし、そろそろ本番行きますか。



「……悪い、ずいぶん待たせちゃったわなぁ。
 さっき『女の子を待たせちゃいけない』って言われたばかりなのにね」

「そうだよ。あたしなら大丈夫だけど、ティアとかはすっごい怒るよ〜。
 『あんたやる気ないでしょっ!?』とか言ってさ」



 そんな口を叩きながら、お互いにかまえる。

 スバルは、右手のナックルを身体の横に持っていく形のかまえ……やっぱりシンプルに突撃か。

 普通に走るならあんなかまえ方しない。といいますか、まんまギンガさんじゃないのさ。

 でも、やっぱり姉妹なんだね。こうして対峙してみると、やっぱり似てるわ。


 ただ……気になるのは、シューティングアーツの要である高速突撃、それを支えるローラー系の装備がマスターコンボイの両足に見当たらないことだ。

 つまり、ローラーを使わずに突っ込んでくるつもりだってことだ。さて、どう突撃してくるか……



 かく言う僕も、アルトを鞘から抜き、刀身の切っ先を上に向け、握りしめた柄を、顔の右真横の高さまで上げる。

 僕が突撃する時によく使うかまえだ。蜻蛉のかまえとも言うかな。

 防御とかには向かないけど、上段からの素早い一閃には向いている。



 ……向こうが真正面から突っ込んでくる気なのだ。だったら、待たせた側としては、同じように突っ込んでくしかないでしょ。それが男の役目ってもんです。



「あぁ、あの子ならありえそうだわ……
 ね、だったらなんでスバルはここまで僕の事待っててくれたの? 怒らずにさ」

「うーん、なんでだと思う?」



 こんな会話をしながらも、お互いに今か今かと飛び出すタイミングを計っている。

 その場を支配するのは、実にいい感じの緊張感。



 ……やっぱり戦いってのはこうじゃなくちゃね。楽しくないのはいけないわ。





「やっぱり忠犬だから?」

「なにそれっ!?」

「勘だよっ!」



 その言葉がきっかけだった。

 轟音と共に足元の地面を踏み砕き――スバルのゴッドオンしたマスターコンボイがこちらに向けて突っ込んでくる!



 ――って、この距離を一足飛びかいっ!

 ローラーなしでこのダッシュ力って、どーゆー脚力だよっ!?



 驚く僕とスバル達の距離が一瞬にして零になる――くそっ、驚いて反応が遅れたっ!

 一手遅れた状態でムリに対応してもかえって危ない。迷わず左に跳び、僕を狙ったスバル達の右拳をかわす。

 そのまま振り向くと、スバル達は突っ込んできた勢いのままに駆け抜けていく――途中にステップをまぜて身体を反転。勢いに振り回されることなく、僕を視界に捉えたまま体勢を立て直す。



「マスターコンボイさん!」

《レッグダッシャー、アクティブ!》



 どうやら、向こうの選択としてはこのまま攻め続けるつもりみたいだ。スバルの指示を受け、マスターコンボイが両足にローラーユニットを展開……って、ローラーあったんかいっ!

 要するに、さっきのはローラーダッシュがないと思わせての奇襲、そしてそれを外したもんだから、オーソドックスなシューティングアーツのスタイルに切り替えた、ってところか……

 一応、それなりに考えてはいるみたいだけど、僕から言わせればまだまだ素直なもんだよ。というか、あのジュンイチさんの教えも受けてたってことを考えるとむしろ素直すぎるくらいかも。



 ま、何を言いたいのかっていうと……



「おぉりゃあぁぁぁぁぁっ!」

「ハァッ!」



 そんな素直な攻めに、いつまでも先手を許すつもりはないって事。レッグダッシャーとかいうローラーユニットによるダッシュで飛び込んできたスバルの拳を紙一重でかわして、僕はアルトを左から右、横一文字に叩き込む!

 瞬間、スバル達を守るように空色の障壁――オートバリアが発生するけど、そんな自動設定の防御で、僕とアルトの斬撃が止められるはずもない。

 当然、オートバリアはあっさりと粉砕。衝撃でスバル達の体勢が崩れる中をもう一歩踏み込んで――刃を返し、右から左にアルトを一閃っ!



 けど――



《オメガ!》

《Protection》



 目の前に現れたのは紫色の障壁。それがこちらの斬撃を受け止める。

 これ――スバルの魔力じゃない。魔力光の色が違う。

 ってことは、マスターコンボイの!? スバルに主導権を渡しても、魔法によるサポートはできるってワケか!



 しかも、スバルもただ守られたワケじゃない。あの一瞬できちんと体勢を立て直して、マスターコンボイの展開した障壁を支えている。タイミング的にギリギリだったはずなのに。

 それに、マスターコンボイの展開したバリアの強度もかなりのもの。僕の斬撃をものともせず、しっかりと受け止めている。

 その向こうで、スバルが握りしめた拳が空色の魔力をまとい――って、ヤバっ!?



「く――――――っ!」



「リボルバァァァァッ! シュゥゥゥゥットッ!」



 とっさに真上に飛んだ僕の真下、まさにさっきまで僕がいたその場所の空間を、スバルが右ストレートのモーションから撃ち出した魔力弾が撃ち貫いていく。

 あ、あっぶねーっ!? 一瞬気づくのが遅れてたら直撃もらってたわ。

 冷や汗を流しながら、僕は着地と同時に数回バックステップ。そこで足を止めると同時にアルトを正眼にかまえて迎撃態勢。

 なぜかって……?



 もうスバル達が突っ込んできてるからだよっ!



 単純にダッシュ力だけの問題じゃない。防御から反撃への切り替えがムチャクチャ早いんだ。実際、僕が最初のバックステップから着地した瞬間にはもう動き出していた。

 こちらを間合いに捉えるベストなタイミングで、右の拳が打ち落とされてくる――この体格差。まともにくらえばそれだけで撃墜判定は必至。

 なので、ムリに受け止めず、サイドステップと共にアルトでさばいて受け流す。続く左の拳も同様に。そのまま左右の連打を受け流していく。

 うん。悪くない。ちゃんとフェイントも織り交ぜて、こちらにそう簡単に読ませないようにしてる。

 けれど、さっきも言ったようにまだまだ素直な方だ。だから――



「たぁっ!」



 スバルが振り上げるように放った蹴りも、サイドステップで回避。さらに踏みつけるような形のカカト落としも後退してやりすごす。



 さて――そろそろ反撃、いきますか!



「――――――っ!」



 着地と同時、鋭く息を吐きながら前方に向けて跳躍。一気に距離を詰めると袈裟斬りにアルトを叩き込む。

 スバルが冷静に展開したプロテクションに止められるけど――ムリに押し合うつもりはない。アルトが弾かれた勢いのままに身をひるがえし、反対側から水平にアルトを叩き込む。

 最初の防御点の反対側からの一撃。ここならプロテクションも薄いはず――って!?



 結論から言うと僕の二撃目も止められた。

 スバルのプロテクションではない。またしてもマスターコンボイが展開した紫色のプロテクションだ。

 くそっ、スバルの虚をついてもマスターコンボイがいるってか! また厄介なっ!



 間髪入れずにスバルがの右ストレートが放たれる――けど、僕だって攻撃が失敗したのにいつまでもその場に留まっているはずがない。あっさりと後退してやり過ごすと飛行魔法によるバックダッシュで距離を取る。

 開いた両者の距離は――目測でだいたい150メートル。着地してスバル達の様子をうかがう。



 そのスバル達は、どうやら僕達を逃がすつもりはないようだ。迷うことなく地を蹴り、こちらに向けて突っ込んでくる。

 けど、真っ向から突っ込んでくるだけじゃ、僕だって余裕で迎撃できる。そしてそれは向こうだってわかってるはず。

 さて、どう出る――



「マスターコンボイさん!」

《おぅっ!」



 スバルの声にマスターコンボイが答え――同時、向こうの雰囲気が変わった。

 なんというか、人が変わったような――“人が変わった”!?



《マスター!》

「わかってる!」



 たぶん、スバルとマスターコンボイが主導権を交代したんだ。まとう空気の変化はきっとそのため。

 となると、ここから攻めてくるのはスバルじゃなくてマスターコンボイ――今までの攻防で得た情報はあてにならないと思っていいか!



「くらえっ!」



 その予感はまさに的中。マスターコンボイが叫ぶと同時、その右手から広範囲に、紫色の電撃が放たれる!

 まき散らすように放たれた雷撃は僕の周囲で荒れ狂い、土煙を巻き上げて――



「むんっ!」

「――――っ、とぉっ!」



 土煙に紛れて距離を詰めてきたマスターコンボイの右拳を、僕は身を沈めて回避。そのまま地面を転がって追撃の左拳もかわすと、すぐさま立ち上がってアルトをかまえ直す。



「さすがに、このくらいは読んでくるか」

「あからさまに視界を奪いにきておいて、よく言うよ!」



 告げるマスターコンボイに言い返し――今度は僕が仕掛ける。一足飛びに飛び込み、横なぎにアルトを振るう。

 けど――止められた。マスターコンボイも左腕に装備したオメガの片刃で受け止めて、すかさず右で反撃してくる。

 それをとっさにサイドステップでかわし、さらに斬りつける――さすがにこれはマスターコンボイも対応できなかったか、素直にかわして後退する。



 けど、僕だって逃がすつもりはない。後退するマスターコンボイとの距離を保ちながらアルトで斬りつけていく。



「さっきから、思ってたんだけど!」


「何をだ!?」



 僕が斬りつけ、マスターコンボイが受ける――刃のついでに言葉も交わし、マスターコンボイはこちらに向けて裏拳の要領で右腕を振るう。

 回避は間に合わず、バックステップで勢いを殺しながら受け止める――それでも僕の身体は簡単に後ろにはね飛ばされ、僕とマスターコンボイ達は距離をとって対峙する。



「僕らの攻撃なんて、トランスフォーマーのマスターコンボイには物足りないんじゃないの?」

「そのトランスフォーマーの身を守るために展開したプロテクションを、あっさりと斬り砕いたんだろうが、貴様は!」



 僕に言い返すと同時、マスターコンボイはこちらに向けて地を蹴り――



「たぁぁぁぁぁっ!」



 って、今度はスバルかいっ! 両足のレッグダッシャーをうならせ、僕らの方へと突っ込んでくる。



「リボルバァァァァッ! シュゥゥゥゥットッ!」



 その体勢から放たれるのは、さっきも使った、拳から放つ形の魔力弾。

 けど――さっきと違い真っ向勝負。距離もある。



 …………うん。かわすなり受け止めるなりしたところを叩くつもりだね、こりゃ。

 となれば、こちらの対応は決まってる。



 回避も防御も狙われてるなら――どっちもしないっ!



 アルトを握る手に力を込め、神経を研ぎ澄ませる。

 視覚だけじゃなく、触覚まで動員して相手の“力”の接近を感じ取りながら、アルトの刀身に魔力を込める。

 ベルカ式の基本、武器への魔力付与。スバルやマスターコンボイもやってるこれが、僕の相棒に更なる力を与える。



 そして――僕はアルトを打ち込んだ。





「はぁっ!」





 正眼にかまえていた刃を、上段から唐竹に打ち込む。

 その手に伝わる、確かな手ごたえ――直後、僕の後ろで何かが廃ビルやら地面やらにぶつかった音がふたつ。

 要するに、リボルバーシュートとその周りで発生していた衝撃波をまとめて真っ二つに叩き斬り、やりすごしたのだ。



 刀をぶつけるのでは防御するのと変わらない。ただそこで命中するだけだ。

 もしあの攻撃が高威力でノックバック性能が高い場合、それで姿勢を崩され、たたみ込まれる危険がある。

 だからこその魔力付与――受け止めるのではなく、一刀両断にした。僕とアルトなら、これくらいのことは朝飯前といったところだ。





 …………はい。ごめんなさい。少しちょーしこきました。

 朝飯前ではあるけど、もっと上手い人なんてゴロゴロしてるんですよ。

 ジュンイチさんくらいになると精神集中なしでも軽くこなすし、僕の先生にいたっては、魔力付与すらなしで簡単にできる。



 とにかく、僕らはリボルバーシュートで僕のスキを作ろうとしていたスバルに向けて突撃。一気に間合いを詰める。

 タイミングは問題なし。防ぐか避けるかするだろうと思っていたところに虚を突かれたスバルに向け、横薙ぎに胴を狙う。





「ウィングロードっ!」



 けど、その突撃はつぶされてしまった。

 スバルが叫んだ瞬間、突撃していた僕めがけて、道……そう。文字通り“道”が迫ってきたのだ。

 僕は少し上に飛んで、あわててそれを回避。けど、スバルもそんな僕らを追ってきた。

 発生した道は、ギンガさんも使っていた魔法――“ウィングロード”と呼ばれる移動補助魔法に乗って、こちらへと接近してくる。



 つか、スバルも使えたのか、これ。マスターコンボイも飛べないみたいだし、空戦に持ち込んでじわじわ……とか思ってたけど、ナシだな、これじゃ。

 これに乗れば、陸戦魔導師のはずのギンガさんも限定的にではあるけど、空中戦闘が可能になる。ギンガさんと同じシューティングアーツの使い手であるスバルも、同じとみていいでしょ。



「ぅりゃあぁぁぁぁぁっ!」



 スバルが巨大な拳を振り上げ、そのまま打ち込もうとさらに速度を上げて接近。

 こちらを狙った拳を紙一重でかわし、アルトで反撃。スバルもそれを受け止め、僕らは青い魔力で構成された道の上で火花を散らす。



「……楽しそうだねっ!」



 そりゃそうだよ。



「スバルとマスターコンボイみたいな強いのと戦ってるんだっ!」



 拳を、刃を返して受け流す。正面に向かう力を、左へと流す。



「楽しくならないワケが……ないっ!」



 そして、間をおかずにアルトをスバルの胴へ打ち込む……え?



 スバルの、すなわちマスターコンボイの左手。そこに装着されたオメガの切っ先に……プロテクションっ!?

 局所発生させて盾にしたっ!?

 そうすると……ヤバいっ!



「リボルバァァァァァッ!」



 スバルが、右手を……ナックルを向ける。とっさに下がる。プロテクションから、アルトを離す。

 だけど、それじゃあ逃げるのには間に合わない。

 ならどうする?





 ……さっきと同じ! 攻撃あるのみでしょっ!





「キャノンッ!」



 アルトの刃を、スバルの拳に横薙ぎに打ち込むっ!



「はぁぁぁぁぁっ!」



 そして、拳と鉄刀を中心に、爆発が起きた。僕はそれに巻き込まれ、吹き飛ばされる。

 あー、手がシビれた。アルト、大丈夫?



《この程度、問題はありません。もっと激しくていいくらいですよ》



 あはは……さすが我が相棒。頑丈で嬉しいよ。

 でも……



《スバル!》

「うんっ!
 ギア……セカンド!」



 向こうも同じくかっ! 突撃してきたしっ!

 ……よし、逃げよう。



《Flier Fin》



 アルトがそう唱えると、僕の両足首から青い羽が生まれる。その翼を羽ばたかせ、僕らはスバルの突撃をやり過ごし、上空に逃れる。



 フライヤーフィンというのは、移動……飛行補助魔法の一種。

 なのはから、ベルカ式に変換した上で教わった魔法。これがなかなかに使える魔法なのよ。

 直進性と加速力が強化されるし、他の機動も良くなるし消費はそれほどでもない。

 なのは様教えてくれてありがとうとお礼を言いたくなるほどである。







 うん、絶対言わないけど。





 そんな青い羽を羽ばたかせて、上空へと一直線に飛んで、追撃してきたスバルの拳をギリギリで回避っ!

 そしてそのまま上空へと避難っ! さようなら〜♪



 もちろん、ただ考えなしに逃げているワケではない。

 ギンガさんとの模擬戦の経験から学んだウィングロード、そしてシューティングアーツの特性。そこをしっかりと押さえた上での対応だ。



 あくまでギンガさんの場合だけど、空中で戦闘出来るのはウィングロードの上だけ。あとはジャンプしたりとかが関の山。

 陸戦魔導師の空中戦を可能とするウィングロードだけど、やっぱり空戦魔導師のように自由自在というワケにはいかないのだ。

 だから、向こうがウィングロードで空中に出てきてくれるのは、向こうの機動を絞るという意味では望むところ。むしろ、地上にこだわって障害物や何やらを利用されて攻められる方が厄介なくらいだ。



 そんな理由で、ある程度の高さまで飛んで後ろを振り返ると、スバルがウィングロードに乗ってこちらに突撃してきている。

 牽制でなんか撃ってくるかなと思ったけど……それはなし。

 恐らく、先ほどと同じように斬られると思ったんでしょ。そうしてくれると助かるわ。



 だからこそ、魔力使うのもったいなかったけど魔力付与で斬ったんだしね。

 『そんなちゃちな豆鉄砲じゃあ通用しない』という牽制である。



 でも、こちらも使える射撃系統の攻撃は……だし。遠距離戦は同じかな。



 そうすると、やっぱり勝負のつけどころは……





《どちらかが、クロスレンジで高火力の攻撃を相手に叩き込めるかで決まってきますね》



 だね……虎穴に入らずんば虎子を得ずってか?

 正直、手を突っ込んでもつかむ前に、手を入れられた事に怒る親の虎に噛み殺されそうなんだけどね。



 ま、そうも言ってられない……かっ!



 青い翼を羽ばたかせ、ウィングロードに乗って迫ってくるスバルに突撃する。



 ……どっちにしても、近づかなきゃ勝負はつかない。だったら、こっちから行くだけっ!



「はぁぁぁぁぁっ!」

「やぁぁぁぁぁっ!」



 そして、僕とスバルは再び刹那に力をぶつけ合い、交差する。



 だけど、それは一度じゃない。

 空中で、スバルはウィングロードを展開させ、僕はフライヤーフィンを羽ばたかせ、何度もぶつかる。

 つか、さっきより拳が重い。加速も凄いし……いや、楽しいね。色々とさっ!



 そして、またスバルとせめぎ合う。さっきと同じく……いや、さっきよりも本気でっ!





 向こうもノッてきたみたいだし……さぁ、まだまだいくよっ!





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



《やるじゃないか、向こうも……》

「うん……
 マッハキャリバーをセカンドに上げてるのに、しっかり対応してくる……!」



 打ち込んだ拳を恭文に弾かれて、あたし達は一旦距離を離す――マスターコンボイさんの言葉に、あたしは迷うことなく同意した。



「……すごいね。恭文、大したことないなんてウソだよ」



 うん。本当にそう思う。



 少なくとも、マスターコンボイさんとゴッドオンしたあたし達と互角に戦えるくらいには強い。それは間違いない。

 それに、お兄ちゃんだって恭文のことを認めてる。でなきゃ、恭文ひとりだけ“友達”としてカテゴライズしたりなんかしない。

 だから、もっと自信を持ってもいいと思うよ?



「スバル。ホントに僕なんてまだまだなんだよ?
 本当に強い人っていうのはね、スターライトブレイカーをカートリッジや形状変換なしで真っ二つに出来る人の事を言うのよ」

「なにそれっ!?」



 ……よくわかんない。そんな人……いるのかな? あとで聞いてみよう。



 それはともかく、そんな話をしながら、あたし達はまたかまえる。あたしとマスターコンボイさんは始めの時と同じように。

 恭文は……シグナム副隊長がよくやるかまえだ。確か、正眼のかまえだっけ?



「こりゃ、長引きそうだなぁ。
 日が沈むまでには終わらせたかったんだけど……というか、沈んだね」



 そう、あたし達がこうしてぶつかり合っている間に、夕日は沈みきって、辺りは闇に包まれ始めている。

 ……あのさ恭文。ひとつ気になったんだけど。



「あたし達、そんなに弱いと思われてたの? ちょっとひどい」

「あぁ、違う違う。そうじゃなくて」

「だったら、何?」

「……食堂の空いてる時間って何時までだっけ?」



 ……なるほど、それなら納得だよ。あたしだってご飯食べそびれるのはゴメンだし。



「大丈夫だよ。
 ここの食堂、交代部隊の人達もいるから、24時間営業の年中無休っ!」

「なら、安心だ。
 ま、お腹と背中がくっつくまでには決着つけさせてもらうけど」

「それはこっちのセリフ!
 ……マスターコンボイさん!」

《おぅっ!》



 恭文は強い。だから、あたし達が今出せる限りの全力をぶつけるっ!



「《フォースチップ、イグニッション!》」



 その叫びと同時――それはあたし達のもとへと飛来した。



 “フォースチップ”。トランスフォーマーを生み出したっていう創造神、プライマスの“力”の欠片。

 使い手の出身地によってそれぞれデザインが違って――あたし達が呼び出したのは、マスターコンボイさんの故郷であるセイバートロン星のもの。

 それが、あたしが宿っているマスターコンボイさんの背中、そこに備えられた専用スロットに飛び込んでいく――体内に取り込まれたフォースチップは物質としての結合が崩れて、エネルギーとなってあたし達の身体の中に染み渡っていく。



 そして発動させるのは――



「《バースト、ドライヴ!》」



 あたしの空色とマスターコンボイの紫色。二種類の光に彩られた魔力の渦が、あたし達の周りで荒れ狂う。



 バーストドライヴ。

 お兄ちゃんが考えたものを基本に、あたしの妹みたいな子が編み出した、フォースチップの新しい使い道。



「いくよ……っ! 恭文っ!」



 そして、あたしとマスターコンボイさんは、恭文に対して突撃していった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ……ぶったまげた。



 正直に言ってぶったまげた。



 “バーストドライヴ”――“JS事件”の後、ジュンイチさんがメールで教えてくれた。

 事件の中で面倒を見ることになった子が、土壇場でそういうモードを編み出して大金星を挙げたって、それはもう嬉しそうに自慢していた。



 基本的に、フォースチップの役目はトランスフォーマーのリミッター解除だ。みんなの中で、普段は自損を防ぐために抑えられている力を解放して、必殺技みたいな感じで大技を放つのが主な使い道。

 そんなワケで、普通は必殺技の流れの中で使うものなんだけど――このバーストドライヴは違う。

 フォースチップのイグニッションによって解放された力を、必殺技として使うのではなく、そのまま体内に留めて自分自身をパワーアップさせる。それがバーストドライヴだ。

 もちろん、そんな真似をすれば相当な負担がかかるため、滅多な事では使えないシロモノ。



 ……の、はずなんだけど……



「ちょっとちょっと!
 これ、どー見ても制御できてるよね!?」

《そのようですね。
 相当使い込んでますよ、彼女達。もしくは、何かしらの理由で、同等かそれ以上の大きな力を扱った経験があるか……》



 そう。

 今現在、思いっきり押されています。バーストドライヴのパワーを安定させて攻めてくるスバル達に。



 まず、一撃一撃が先ほどに比べて段違いに重くなっている。フォースチップのイグニッションで、マスターコンボイのリミッターが外れたから。

 で、そんな100%どころか120%の攻撃を、今は、なんとか弾いたりカウンターを入れようとしたりでしのいでいる。

 けど、ただでさえまともに受けたらぶっ飛ばされること請け合いの一撃ばかりだったのがさらに凶悪になってる。下手な反撃は即座に致命傷につながる。



 そして、機動性に関してもすごい。



 マスターコンボイのリミッターが外れたことで、機動をサポートしているマッハキャリバーにも余裕が生まれたみたいなのだ。おかげで移動と突撃がすごい。

 並みの陸戦魔導師では得られないような突撃力と移動能力をスバル達に与えている。

 そのせいで、こちらもなかなか有効打を入れられない。打ち込もうとした瞬間にはもう離脱されているのだ。

 くそ、いくらなんでも速すぎだよっ! バーストドライヴってこんなにすごいのっ!?



 縦横無尽な移動能力とそれを活かした瞬間的な突撃力、そしてクロスレンジでの爆発力。

 まさにフロントアタッカーの理想系だよ。これ以上ないって言うくらいに。



 ……ちくしょー、手ごわいなぁ。ハッキリ言って、完全に振り回されておりますよ私。



「うりゃぁぁぁぁっ!」



 ……って、こんな話してる場合じゃなかったっ! スバルがまたもや突撃してきたっ!

 夜に染まりきろうとしている空で、火花を散らしながら、力を、想いをぶつけ合う。

 鉄の拳から感じるのは、ドキドキするくらいの真っ直ぐな想いと決意……やっぱ、似てるね。

 ギンガさんに……そしてなのはにも、ジュンイチさんにも。



 ……いや、だからそんなこと考えてる場合じゃないんだってばっ!



「リボルバァァァァァッ!」



 拳をうならせながら、スバル達が突っ込んでくる。

 シュートを撃つには今度は近い――キャノンが来ると見たっ!



 ハッキリ言って、もう避ける余裕はない。あの攻撃がバーストドライヴでどこまでパワーアップしているかわからないけど、マトモに受けたら終わるのは間違いなし。

 ここはしっかり防御するっ!





《Round Shield》



「キャノンッ!」





 ラウンドシールド、今アルトが発動させてくれたのは、シールド系の代表格である防御魔法。

 プロテクションなどのバリア系に比べて、範囲が固定されるため広範囲攻撃などの防御は難しい。



 けど、その分防御力は高い。

 なので、今のスバルみたいに肉弾戦を挑んでくるようなのを相手にする時には重宝する魔法だ。

 それを左手で前へとかざして……スバルの拳を受け止めるっ!



 このまま吹き飛ばされるんじゃないかと思うような衝撃にうんざりしつつも、足を踏んばって、拳を弾き返すつもりで受け止める。

 僕の瞳には、ベルカ式の魔法陣を模した強固な青い盾と、火花を散らしながら、打ち落とすように拳を押し込み続ける、マスターコンボイの身体を借りたスバルの姿が映る。



 ……悪いけど防御訓練でさんざんっぱら鍛えられてるんだ。簡単には……あれ?

 その時、スバルがあっさりと拳を引いた。そして、目の前に魔力スフィアが形成される。

 そのスフィアの周りには、まるで囲うように展開された帯状の魔法陣。



 ……って、そのスフィアの展開ぶりにものすごく見覚えがあるんですがっ!?



「《ディバイン――テンペスト!》」



 やっぱりあの横馬のバスターが元ネタかぁぁぁぁぁっ!

 放たれたのはなのはの主砲、ディバインバスターのアレンジ版――スフィアに打ち込まれたスバル達の拳を引き金に解放された魔力が、その名の如く嵐のように僕のラウンドシールドに襲いかかる!



「っ、のぉっ!」



 それでも、なんとか耐えられるレベルだった。先ほどよりも格段に増した圧力にラウンドシールドが悲鳴を上げるけど、それでもなんとか踏みとどまる。

 ったく、大技連発だなんて、ジュンイチさんじゃあるまいしっ!







 ………………あれ?



 “大技連発”?



 “ジュンイチさん”?







 …………おいおいおいおいっ! ちょっと待てっ!

 まさかとは思うけど、アレですかっ!?



 チャージサイクルに優れた技から始まり、徐々に技の威力を上げていく――相手を防御でその場に釘付けにして、傷ついた防壁ごと本命の一撃によって相手を粉砕する。

 スバルの最初の師、ジュンイチさんが好んで使う連携――



「マスターコンボイさん!》

《おぅっ!」



 スバルとマスターコンボイが主導権を交代したのが雰囲気でわかる――同時、その両腕からオメガが分離し、最初に起動させた時と同じ大剣形態となってマスターコンボイの手に収まる。



 ――って、すでに思いっきり刀身が魔力帯びてんですけどっ!?

 まさか、スバルが撃ってきてる間にマスターコンボイがチャージ!? ちょっとサポートの自由度がフリーダムすぎませんか、ゴッドオンシステム!



 そんな悪態をつきながらも、僕はスバルのディバインテンペストを防いでいて動けない――うん。まだ普通に荒れ狂ってるの。

 つまり、マスターコンボイは何の妨害もなく技を放つ――



「《エナジー、ヴォルテクス!》」

《Energy Vortex》



 マスターコンボイの放った一撃は、スバルの維持していたディバインテンペストの魔力も巻き込んで僕目がけて突っ込んでくる。

 たて続けの大技を耐えしのぎ、限界に近かったラウンドシールドでは当然受け止められず――あっけなく防壁を粉砕した魔力の渦はそのまま僕を飲み込み、吹き飛ばしていた。



 そして僕は、放物線を描きながら地面に向けて落ちていく……痛い。



《マスター? ……しっかりしてくださいマスターっ!》





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「うわぁ、あれ痛そうやなぁ……」



 マスターコンボイとスバル、二人の連携は恭文の防御を真っ向勝負でぶち破った。

 で、恭文は現在落下中――少なくとも演技じゃなさそう。

 まぁ、撃墜レベルではないやろうけど……スバルとマスターコンボイ、恭文相手にそこまでできるくらいに強くなっとったんか。

 ノーマルのゴッドオンでこれやったら、“アレ”までやったら……



「直撃ですので。まぁ、蒼凪ならば問題ないでしょう」

「恭文くん……どっちにしても医務室行きは確定ね」



 そんなことを考える私の周りのリアクションは様々。ザフィーラは達観、シャマルはため息――



「……どう見る、ヴィータ」

「どう見るもナニも、きっちり防御できてなきゃアレで終わりだ。
 でも……まだまだだ。むしろこれからだろ」

「弟子の事ならお見通しか。いや、信じているというべきか?」

「そんなんじゃねぇよ」



「スターセイバー、お前はどう見る?」

「あのスバル達の連携……柾木のそれには及ばんが、かなりの威力のはずだ。何しろ締めがマスターコンボイのエナジーボルテクスだ。
 まともにくらえば、恭文が全開でも危ない。だが……」

「…………『だが』?」

「恭文もまともにくらってはいないはず……戦いはまだまだこれからだ」



 で、シグナムとヴィータ、スターセイバーとビクトリーレオは純粋に模擬戦内容の吟味か。

 4人とも、ものの見事に恭文への心配ゼロやな……まぁ、恭文の強さを知っとるんやし、当然やけど。



「せやけど……立て直したとしても、実際問題として恭文はどうするつもりやろ?
 このままやったら力押しで押し切られるで」

「まぁ……何の考えもない、ってこたぁねぇだろ」

「せやねぇ……」



 背後からの声に、私はそううなずいて……って!?



「えぇっ!?」



 驚いて、私は思わず振り向いた。シグナム達も同じく。

 そんな私達の注目を浴びるのは――



「よっ、はやて♪」

「ジュンイチさんっ!?」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「まぁ……バーストドライヴを発動させたスバル達相手に、よくやった方よね」

「はい。恭文さん、強かったです」



 スバルとマスターコンボイが撃ったのは、ジュンイチさんの得意とするコンビネーションのひとつ、“ギガフレア三連”を自分達なりにアレンジしたもの。

 “エネルギー制御特化”というスキルを持ち、その恩恵で常人離れしたチャージサイクルを誇るジュンイチさんだからこそできる“大技同士のコンビネーション”――それを、スバル達は互いに連携し合うことで実現したワケだ。



「スバルとマスターコンボイ、ノーマルのゴッドオンでなら完璧にバーストドライヴを使いこなせてるものね。
 その二人とあそこまでやり合えるなんて……こりゃ、アイツに対しての認識、修正しなきゃね」



 その直撃を受け、アイツは成す術なく落下していく――たぶん、これで終わり。

 あたしの言葉に、となりでキャロもコクコクとうなずいているけど――



「……いえ、まだ終わりじゃありません」

「エリオくん?」

「はぁ?
 エリオ何言ってんのよ。いくらなんでもアレ食らったらさすがに……」

「ティアさん、気づいてないんですか?
 恭文さん、防御してます」



 はぁっ!?



「それだけじゃありません……ここまで一回もデバイスの機能を使ってないんですよ。魔力攻撃に関しても同じです。
 やったことと言えば、刀への簡単な魔力付与だけなんです」



 あ……



「えっと、つまり恭文さんは……」

「これまで、というか始まった時から、本気出さずにスバルとやり合ってたってこと!?」

「そういうこと」

「あずささん!?」



 驚くあたし達に対して、答えたあずささんは軽く肩をすくめてみせる。



「まぁ……デバイスの機能やカートリッジを使わずにいることを『本気を出さずに』って言えるなら……だけどね。
 恭文くん、基本的にカートリッジやデバイスのモードチェンジは使わないから」

「そうなんですか?」

「うん。
 恭文くんにはヴィータちゃんやお兄ちゃんとは別にもうひとり、刀での戦いを教えてくれた師匠がいてね。
 その剣術の先生の教えで、その手の物は極力使わないようにしてるんだよ。もちろん、ヴィータちゃんもお兄ちゃんも納得の上でね」

「でも、なんでそんな教えを?
 そんなことしたって何にもならないし、今だってスバルさんと兄さんのコンビを相手にそんなことしてたら……」

「いや、オレはわかるぜ」



 と、観戦していたあたし達に声をかけてきたのはヘリパイロットのヴァイス・グランセニック陸曹。



「あ、ヴァイスく〜ん♪」



 ……捕捉。

 あずささんはヴァイス陸曹にベタ惚れ状態。普段から熱愛ぶりを見せつけてくれるけど、そんな態度とは裏腹にけっこう清い付き合いをしてるみたい。



 ……っと、それはともかく……



「ヴァイス陸曹、どういうことですか?」

「つまりだ、あえてそういった戒めをつけて、修行のひとつにしているワケだ」

「はい、ヴァイスくん正解。
 カートリッジや形状変換を使わなくても、戦えるように……自らの戦闘能力、あとはパートナーデバイスの基本能力だけで、あらゆる状況、あらゆる相手に対処出来るように。
 それがあの子達の“戒め”なの」

「なるほど……
 でも、今のままだと、恭文さん、スバルさんや兄さんに……」

「それなら大丈夫です」


 キャロの言葉にキッパリと言い切ったのは、ヴァイス陸曹と一緒にやってきていたリイン曹長だ。



「リイン曹長……?
 大丈夫、って……どうしてですか?」

「恭文さんもアルトアイゼンも、負けるのは大嫌いですから」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「大丈夫だよアルト。そんなに叫ばなくても、ちゃんと聞こえてるから」

《マスターっ!
 ……全く、心配させないでください》

「心配してたの?」

《いえ、これっぽっちも》

「うん、正解だよ」



 あー、しかしあちこち痛い。

 とっさにジガンスクードを盾にしたからなぁ。そのおかげでかろうじて急所はダメージなしだけど。

 ラウンドシールドが少しは持ちこたえてくれたおかげで、あのシャレにならない攻撃の威力が若干削られていたしね。



 あと、アルトがとっさに防御フィールドの出力を上げてくれたのも幸いした。そうじゃなかったらこれで終わってたよ。

 結構威力あったしなぁ。魔力も余波で削られてるし。



 一応説明しておくと、ジガンスクードは別にカートリッジを使うだけがお仕事じゃない。

 強度に関しては徹底的に追求した作りにしてあるので、こういう風に盾代わりにも使えるのだ。

 とはいえ、滅多な事ではやらない。使わないですむように戦ってる。



 けれど……使わされた。我ながらまだまだだわ。



「……やるねスバル、僕にジガンを使わせるなんて」

《いったいどこのキンケド○気取りですか。というか、あなたはそんなに強くないでしょ》



 いいじゃん別に。こういうので戦いのノリは変わってくるんだよ。



 ま、それはさておき……地上と仲良くディープキスする前に、体勢を整えますか。

 僕は、両足になんとか残っていたフライヤーフィンを羽ばたかせて、くるりと一回転。

 そして、そのまま空中に停止する。



 あー、痛いのかしびれてるのかよくわかんないや。そんなことを思いながら、左手をブンブンと振ってみる。

 まぁ、威力設定はちゃんとしてくれてたみたいだし、折れてるとかはないね。



 さて、ここまでとなると……やっぱやんなきゃだめなのかなぁ。

 確かに先生からは、状況を見極めた上でなら使ってよしとは言われてるけど、そんなホイホイ外してたら戒めの意味がない。

 初対面の人間に手札さらしたくもないしなぁ。ギャラリーだってワンサといるワケだし。



 ついでに、カートリッジ使ったら発注書作らなきゃいけないし。

 正直さ、めんどいのよアレ〜。使った状況や使用本数しっかり書かないと会計通らないしさ。

 六課の会計担当のグリフィスさんは、前に一緒に仕事した事あるからわかるけどその辺りけっこー厳しいし。



 それだったら使わない方が楽ってもんだよ、うん。



「……強いね」



 僕を吹っ飛ばした位置から動かずに、マスターコンボイと主導権を交代したスバルが僕の方を見下ろしてそう口にする。



 んー? 強くなんてないよ僕は。



「でも、あたし達、本気で打ち込んだんだよ? これで終わらせる気持ちで。
 それなのに防御されて、こうやってまた向き合ってる。恭文強いよ。でも……」



 スバルの周囲の空気が変わる。

 マスターコンボイと交代したワケじゃない。何かを怒ってるみたいに、プレッシャーが増していく。



「そろそろ、恭文の本気、恭文の全力、見せて欲しいかな?
 じゃないと……あたし、本気で怒るよ?」

「……スバル、どっちかにしてもらえない?
 本気と全力は、同じように見えてちょこっと違うもんだよ」

「そんなのどうでもいい……このまま勝っても、あたし嬉しくないもん」



 あー、やばい。カートリッジやらなんやら使ってないの相当怒ってるみたい。

 うーん、どうすりゃいいのよこれ。

 っていうか、ジュンイチさん、ひょっとして“戒め”とかそういう関係の概念とか教えてない?

 自分に“枷”をはめて修行するとか、あの人の好きそうな話だと思うんだけど……



 と、そんな僕らの間で、新たな声が上がる。



《あの、スバルさん……とお呼びしても大丈夫でしょうか?》

「えっ!? あ、うん」



 アルトだ。スバルがいきなり話しかけられて、驚いてる。

 ……まぁ、アルトは普通のデバイスよりかなりしゃべるからなぁ。それに慣れていないと驚くよ、うん。



《スバルさん、あなたに対して行なった無礼の数々。マスターのパートナーデバイスとして謝らせていただきます。
 ……ごめんなさい》



 その言葉に、僕とスバル達が同時にずっこける。

 まてマテ、戦闘中に相手に謝るんじゃないよあーた! いったい何を考えてるのさっ!?



《仕方ないではありませんか? マスターがへタレなのがいけないんですっ!》

「誰がへタレだっ! てーか意味わかんないしっ!」

「え、えーと……」

《あぁ、すみませんスバルさん。
 そういうワケなので、本気で怒るなどとは言わないで、ぜひともマスターと仲良くしてあげてください。
 マスターには私から後できつく逝っておきますので》



 いや、なんでっ!?

 つか、なんで『イっておく』の字がそれなワケっ!?



「あ、うん。それはいいよ?
 でもそれなら、そろそろ本気の全力全開で戦って欲しいと思うんだけど」

《ならばどっちかにしてください。二兎を追うものは馬に蹴られて瓢箪から駒ですよ?》



 混じって何がなんだかわかんなくなってるしっ! 言葉はちゃんと正しく使おうよっ!



「えっと、それなら本気できてよ。まだ、本気じゃないよね?」



 それを聞くとアルトが一瞬だけ黙った……あぁ、なんかイヤな予感がする。

 そしてそれは、次の言葉で現実となった。



《なるほど、スバルさんは“マスターと私が本気で戦う”のがお望みなんですね?》

「そうだよ」

《では、そうすればマスターと仲良くしていただけると約束してくれますか?》

「いいよ」



 いや、話の流れがおかしいから。



《では、せっかくですので友だちになっていただけますか?》

「……いいってば」

《そのついでに、彼女になっていただけますか?》

「いいって言ってるでしょっ!?」





 ……え?





「…………え?」

《わかりましたっ!
 では、マスター。素敵なレディのご要望です。しっかりきっちり応えてくださいっ!!》

「待ってっ!
 ……なんで無視するの? お願いだから話を聞いてーーー!」





 空気を読まずに好き勝手に話を進めてくれた相棒は、これまた好き勝手に僕に要望をぶつける。

 長い付き合いだからこーいうヤツだって知ってるけど、ホント何なのさコレっ!?



 つか、僕はフェイトがいるんですけどっ!?

 そして何よりっ! お前はギンガさんとジュンイチさんに殺されたいのかっ!?

 双方合意ならともかく、口先三寸で交際に持ち込んだ、なんて知れたらあの二人はまずキレるぞっ!



《気にしないでください。
 ……これで、空気は変わったでしょう? 実に私達らしい空気です》



 ……いきなり真面目モードはやめて。



《まぁ、彼女は後悔することになるとは思いますが、それは自己責任ということで。マスター、私が許します……戒めを外しますよ。
 でも、ただ外しては“私”が面白くありません。彼女の望み通り……私達の“本気”を見せてあげましょう》



 アルトが、僕にしか聞こえないような小さな声でそう口にした……なるほど、そういうことですか。

 まぁ、このままじゃ約束はちゃんとした形では果たせないし、やるしかないか。あとで反省会だけどね。



《仕方ないでしょう。そういうワケですので、彼女にはしっかりと味わってもらいましょうか。
 迂闊な発言は身を滅ぼすということを……あははははははっ!》



 アルト、怖いからその笑いはやめて。本気で寒気がするわっ!

 まぁそれは置いといて……始めますか。



「さて、それじゃあ再開といこうか」



 僕は、痺れの取れた左手をスバルに向けると、くいくいと動かした。

 要するにアレですよアレ。ちょっと調子こいたヤツが挑発するときに使うアレですよ。



「……本気出すの?」

「さぁ、どうだろうね。ただ、こっからは勝ちに行くよ。
 つーかさ、さっきから黙って聞いてれば……バカじゃないの?」



 あざけるような笑いを浮かべながらの僕の一言で、スバルの周囲の空気が一瞬で張り詰めた。

 ……おぉ、怒ってる怒ってる。なるほど、こういうのにノリ易いんだ。



《はぁ…………》



 で……マスターコンボイはちゃんと挑発だって気づいてるワケね。ロコツにため息ついてくれたよ。

 けど……止める気配はなし。挑発に乗ろうと乗るまいと、きっちりスバルに付き合うつもりですか。



「どういう……意味?」

「言葉どおりの意味だよ。本気を出して欲しいなら、出させてみなよ。頼まないでさ。
 それとも、なのはもジュンイチさんも、そういうことも出来ないような教え方しかしてないワケ?」

「そんなことないっ!」



 だろうね。今までのやり取りで充分過ぎる位にわかったよ。



「だったら、口じゃなくその拳でそれを証明してみせなよ。
 ハッキリ言って、ここまでのじゃ全然足りない。せいぜいお散歩程度にしかカロリー消費してないし」





 すみません、挑発するためとはいえフカシこきました。現状ではいっぱいっぱいもいいとこです。

 正直、これで後二回の変身残してるとか言われたら、泣いてギブアップすると思います。



 ……いや、言おうと思えば言えるのか、向こうは。

 だって「今は使えないけどまだ上位形態がある」って言ってたし。



「言ったね? だったら……出させてあげるよっ!」

「……わかった」

「へっ!?」



 いや、本気出そうかなと。



「まぁ、『可愛い女の子』に嫌われるのもイヤだしね。お望み通り本気、出してあげる……来なよ」



 その言葉に満足したのか、またもやスバルはこちらに突撃してきた。



 さて、アルト……いくよっ!



《Axel Fin》



 アルトのコントロールで、カートリッジがジガンスクードから1発が消費される。

 僕の足首の位置にある青き翼の輝きが増す。さらに翼はその数を増し、両足合わせて六枚の羽が生まれた。



 このアクセルフィンという魔法は、フライヤーフィンの上位版とでもいうべきもの。これもなのはから教えてもらってベルカ式にアレンジしている。

 ただし、速度や加速性能はこちらの方が上なのだけど、飛行機動が直線以外はちょっち難しくなるので、普段はフライヤーの方を使っているというワケだ。

 まぁ、僕がカートリッジの魔力分も足して性能を底上げしてるからなんだけど。戒めにも引っかかるのよ。



 そして、僕はアルトを正眼にかまえる。いわゆるひとつの迎撃体勢というやつ。

 もう弾いてカウンターなんてマネはしない。そしてスバルには攻撃もさせない。防御もさせない。



 そうして、気を練る。目の前に立ちはだかる敵を倒すために、斬り裂くために。

 僕の剣術は、日本の剣術である“薩摩の示現流”がベースとなっている。

 まぁ、先生がそれを魔法戦闘用に合わせたものを使っていたから、教わった僕も必然的にそうなった。



 示現流の本気の太刀に“二の太刀”はいらない。全ては“一の太刀”で決まる。

 どんな防御も、回避も、迎撃すらも意味をなさないほどの一撃を打ち込むこと。それこそが、先生と僕の使う剣の全てだ。

 そしてそれは、魔法戦の時も、対トランスフォーマー戦でも変わらない。



 つまり、この一撃でスバルとマスターコンボイを倒すっ! それが僕とアルトの本気だっ!



 その気持ちを形にするように、ジガンスクードがカートリッジを一気に3発消費。アルトから青い光が生まれる。

 カートリッジの魔力が鉄の刀を包み込み、僕とアルトに力をくれる。

 その力に、僕自身の魔力を織り込みながら、刀身を軸にただひたすらに凝縮。



 これは、さっきの魔力付与とは根本的に違う。

 武器を強化するのではなく……別の姿にする。刀身を包み込んだ魔力を圧縮。それから今度は薄く……鋭く研ぐようにする。

 魔力というエネルギーを、どんなバリアでも斬り裂く青い刃へと打ち上げていく。

 それによって、鉄の刀は、青き閃光へと姿を変える。



 僕とアルトは、どっかのエース・オブ・エースみたいにでかい砲撃や、ホーミング性能抜群の誘導弾は撃てない。

 どっかの有能な片想い相手みたいに、すべての機動においてむちゃくちゃ速く動けるワケでもでもない。

 どっかの狸みたいに、周りの敵全部をまとめて薙ぎ払えるような広域攻撃をぶちかませるワケでもない。

 そして……どっかの暴君みたいに、どんなことでもできるオールマイティーなスキルを持ってるワケでもない。



 僕達二人に出来ることは、全速力で敵に突っ込むこと、そして、アルトに自分やカートリッジの魔力をまとわせて斬る。基本はこの二つである。



 先生の教えてくれた剣と、師匠のくれた突破力。そしてジュンイチさんが磨き上げてくれた魔力の精密制御スキル。このすべてを、そのためだけに注ぎ込む。



 単純明快、猪突猛進、シンプルイズベスト。だからこそ迷わずにすむ。それは、総てを撃ち貫く強さをくれる。



 そう、それらを用いて、やるべきことはたったひとつ。





 スバルを、眼前の敵を……





 ただ、斬り伏せるのみっ!





「……鉄輝」





 青い翼が、再びその羽を広げる。先ほどよりも強く、大きく。





 そして辺りに羽を散らせたかと思うと……飛び出したっ!





 全ては一瞬の事だった。





 飛び出した僕はスバルに接近。





 拳を僕に対して打ち込もうとしている彼女、スバルの宿る鋼の巨体に対して、アルトを左から打ち込み――







「一閃っ!」







 夜空に生まれた一筋の青い閃光が――









 鋼の左拳と激突する!









 って、合わせてきたっ!?

 スバルの反応は間に合うタイミングじゃなかったはず――マスターコンボイか!



 渾身の力を込めたはずの僕とアルトの一撃は、マスターコンボイの左拳とガッチリとかみ合っている。

 しかも、向こうの拳はしっかりと魔力をまとい、強度や威力を上げてきている。とっさの判断で放った反撃ではこうはならない。

 つまり――スバルと違って、マスターコンボイはしっかりと読んでいたワケだ。僕が“鉄輝一閃”で、一撃必倒で来るって。



 けど――かまわない。



 防御されようが――その防御ごと、叩き斬るっ!







「おぉぉぉぉぉっ!」



「《オォォォォォッ!》」







 僕らとスバル達。刀と拳――力と力。



 二つは互いにその身を削り合い――









 弾けた。







「――――――っ!」





 ぶつかり合う両者の魔力が炸裂――生じた爆発の中から飛び出し、すぐに相手の姿を探る。





 ――――――いた。



 僕のほぼ真下の位置を、鋼の巨体が落下していく。



 ――いや、違う。

 あれは“落下”じゃない。意図的に“急降下”しているんだ。



 くそっ、一太刀で仕留められなかった――僕もまだまだってことか。

 けど、今は反省よりも向こうっ!



《Axel Fin》



 何を考えてるのかはわからないけど、まだ勝ちを捨てていないのだとすれば放ってはおけない。アクセルフィンで一気に加速。急降下していく鋼の巨体を追う。



 そのまま、“少し先を落下するスバルに向けて手を伸ばすマスターコンボイ”へとアルトを――







 ――って、待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!







「――――――っ、とぉっ!?」



 知らずに繰り出してしまった刃はどうにか止められた。



 そしてマスターコンボイも無事にスバルを拾えた。身をひるがえしてなんとか着地。僕も急ブレーキをかけて彼の目の前で停止する。



 あ、あっぶなー……

 スバル、あの一発で放り出されてたんだ……マスターコンボイの急降下は、そんなスバルを救出するため。

 で……僕はそうとも気づかずに追撃をかけてた、と。

 ちょっとテンション上がりすぎてたかな? ぜんぜん気づかなかった。うん。そこは反省だわ。



「マスターコンボイ、ゴメン。気づかず手ェ出した。
 それで……スバルは?」

「気にするな。
 スバルなら無事だ。最後の激突で、完全に目を回しているだけだ」



 謝罪する僕に答え、マスターコンボイは自分の腕の中のスバルを見せる。

 さすがに体格的にお姫様抱っことかはムリで……スバルの小さな身体をマスターコンボイが右腕一本でハグする形だ。

 そんな彼の腕の中で――スバルは意識を手放していた。

 ただ、痛みに苦悶している、とかそういうことはない。眠っているのと変わらない、穏やかな表情――けっこう本気で叩きこんだ上での気絶。ケガとか心配だったけど、大丈夫みたいだ。



「スバルがこれでは、オレが健在でも続けられんな――元々コイツと貴様の勝負だったワケだし」

「えっと……つまり、僕の勝ちってことでOK?」



『そうだな』



 尋ねる僕に答えたのは、展開されたウィンドウに映るヴィータ師匠。



 っていうか……結局最後の一撃、ちゃんと通ってなかったワケで、僕としてはちょっとスッキリしないんですけど。



『マスターコンボイも認めたワケだし、勝負あり、だよ。
 にしても……また腕上げたな。見ててハラハラしたけど中々だったぞ』



 ははは、いつもは手厳しい師匠からそう言ってもらえると嬉しいですよ。

 でも……



「戒め、外しちゃいました。
 それに、一太刀で決め切れなかったし……やっぱまだまだです」



 ここしばらく、がんばってたんだけどなぁ。うん、まだまだか。



『……ま、しゃあねぇだろ。なかなかあのじーさんみたいにはいかないってことだ。
 つか、それで勝たれると、ここまでスバル達を鍛えてきたアタシやなのはの立場がないだろうが』



 あー、そうですね。それを完全に忘れてましたわ。



『忘れてんじゃねぇバカ弟子がっ!』



 きゃー! 怒られたー!



『あ、それとスバルとティアナ達には戒めの事、ちゃんと説明しとけよ? そうじゃないと後できっと「手を抜いた」とか言い出してうるさいぞ』

「…………オレはいいのか?」

『何言ってやがる、マスターコンボイ。
 お前のことだ。とっくに気づいてたんだろ? で、その上でスバルに付き合ってた、と』

「……お見通しというのは正直気に入らんな」

 不満げにつぶやくマスターコンボイに対し、師匠は肩をすくめて苦笑。クルリと僕へと振り向いて、

『あと、口先で相手惑わすのはやめとけ。いや、本当に。
 お前らがそれやるとシャレ効いてねぇから』

「うぃ、了解です……やっぱだめですか?」

『ジュンイチみたいに味方内でケンカしたくなきゃな。敵ならいいけど』



 うにゅぅ……それもそうか。

 とにかく、今はやることやろうっと。



 マスターコンボイによって地面に寝かされたスバルに駆け寄り、簡単に状態を診る。



 ……うん。大丈夫。大きなケガとかもないね。



 というか、さっきも少し思ったけど、こんな細いんだね。

 それであの力が出せるんだから恐ろしいというかなんというか……



 と――



「蒼凪恭文。もういいか?」



 かけられた声に振り向くと、そこにはマスターコンボイが。

 ただ――



「なんでヒューマンフォーム?」

「ロボットモードでは小脇に抱える感じになって抱えづらい。
 こっちの方がコイツを運ぶには都合がいい――ちょうどいい。手伝え」



 答えるマスターコンボイにうながされ、僕はマスターコンボイがスバルを背負うのを手伝ってあげる。



「あー、師匠。シャマルさんいますよね? 今からマスターコンボイと二人でスバルをそっち連れてくんで、少し診てもらえるかどうか聞いてください。
 加減せずにぶった斬ったんで。一応今軽く確認しましたけど、ちょっと心配なんですよ」



 非殺傷設定で斬ったし、直撃したワケではないから大丈夫だとは思うけど、思いっきりやったからなぁ。

 威力設定はアルトが責任もってちゃんとやってくれてたけど、お嫁にいけないとか、責任取ってとか言い出さないことを願うばかりである。



《おめでとうございます》

「アルト、お願いだから黙ってくれないかなっ!? つーか本当にそうなったら色々とアウトだよっ!」

『ホントだよ……で、シャマルには今伝えた。それなら、医務室に直接そのまま運んでくれるとありがたいそうだ。
 あと、お前も診ておきたいって言ってる』

「了解です。すぐに向かいます」



 そこまで言うとウィンドウが消える。



「貴様……どこかケガでもしたのか?
 “三連”以外にクリーンヒットを打ち込んだ記憶はないのだが」

「あぁ、それとは別件。
 マスターコンボイは気にしなくていいよ」

「………………?」



 スバルを背負うマスターコンボイに答えて辺りを見回すと、もう真っ暗。遠くの方に、首都のネオンが見える。



 あー、そうだ。

 ところでマスターコンボイ。



「…………ん?」

「最後、スバルを押しのけて返してきたけど……ひょっとして読んでた? 僕の“鉄輝一閃”」

「鉄輝……あぁ、最後のあの技か。
 読めていたことは読めていたが、それほど詳細に読めていたワケではないな。
 最低限……高速の踏み込みからの一撃必殺が来る。そこまでは読めていたのでな。それを前提に備えさせてもらった」

「タネ明かしとか、期待してもいいかな?」

「貴様のそのデバイス――アルトアイゼンの言動だ」

《私……ですか?》

「あぁ。
 なかなかに好感の持てる性格のようだったからな。スバルが悔しがるような楽しい展開を望むだろうと判断した。
 だが、単に絡め手で撃墜しても、“全力で戦ってほしい”というスバルとの約束を果たすことにはならず、こちらは蒼凪恭文が納得しそうにない。
 そうなると、後は連想ゲームのようなものだ。スバルの望みどおり全力の真っ向勝負で戦い、且つ、スバルが悔しがるような決着のつけ方となると……」

「せっかく見せた僕らの全力を、スバル自身が見られないこと。
 つまり、全力勝負を楽しむ間を与えず、全力全開の一撃必倒でそっちを墜とす……ってワケか」

「そういうことだ」



 ぅわ、何ソレ。

 つまり、僕らの性格まで踏まえて、その思考まで含めて読みきったってこと?

 どういう読みしてるのさ。あなたはどこのル○ーシュですか。



《大した洞察力ですね。
 頭カラッポのマスターならまだしも、聡明な私の思考までも読みきるなんて》



 そうそう。頭カラッポの僕なら……って、待てやコラっ!
 カラッポじゃない代わりにいろいろ余計なモンの詰まってるおのれに言われたくないわっ!



「そう言ってやるな、アルトアイゼン。
 『頭カラッポの方が夢詰め込める』と有名な歌でも言っているじゃないか」



 おどれもノるな、マスターコンボイっ! つか知ってんのか、ドラ○ンボール!



「今は不在にしている民間協力者がメディアを提供してくれた」



 …………さいですか。



「まぁ、今はそんなことよりもスバルだ。
 シャマルを待たせるのもうるさいから避けたいしな……そろそろ戻るぞ」

「あ、うん」



 ……長い一日だったなぁ。まぁ、なんとか終わってよかったよかった。





「さて、アルト」

《はい》

「戻りながら反省会、しようか」

《今やらないと、ヒマがなさそうですしね》











 そうして、僕達はゆっくりと……いや、マスターコンボイがスバル背負ってるし、慎重にね。

 とにかく、僕よりも低い背丈をものともしないでスバルを背負うマスターコンボイを気遣いながら安全確実に、演習スペースを後にした。





 これが、今日という日に起きた一大イベントの終わり。





 あとは、シャマル先生の診療が怖いなぁ。何にも言われなきゃいいんだけど。




















(第4話に続く)





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回予告っ!



恭文「マスターコンボイ、スバル運ぶの代わろうか?」

Mコンボイ「気にするな。
 この程度の重さ、どうということはない」

恭文「いや、そうじゃなくて……
 マスターコンボイの背丈じゃ、スバルの足、引きずるんじゃないかなー、と」

Mコンボイ「貴様に身長のことをとやかく言われたくないわっ!」

恭文「うるさいよっ!」





第4話「何事も程ほどが一番。まったりしたい時なんかは特にそう」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



(あとがき)



オメガ《丸々1話使っての模擬戦、いかがでしたか?
 『とある魔導師と守護者と機動六課の日常』、第3話をお送りしました、オメガです》

Mコンボイ「マスターコンボイだ。
 さて、今回はオレ達と蒼凪恭文の模擬戦だったワケだが……大筋が同じでも、攻防の流れが変わるだけでこうも本家と別物に見えてくるものか」

オメガ《そこは私達の存在が絡んでいますからね。
 私達とのゴッドオンが加わることで、ミス・スバルの戦闘スタイルは大きく変化していますから》

Mコンボイ「スバルのシューティングアーツに加え、交代したオレの戦闘スタイルまで加わっているからな。
 蒼凪恭文にしてみれば、二人の人間が入れ代わり立ち代わり襲いかかってくるようなものだ」

オメガ《ミスタ・ジュンイチの“三連”の応用バージョンまで撃ちましたからね、私達……
 そんな私達に勝利したミスタ・恭文は大したものですよ……彼にとってはスッキリした勝利とはいかなかったようですが》

Mコンボイ「オレとしては、スバルさえ避難させれば、あそこからヤツがスッキリするまで戦ってやってもよかったのだが……そこはスバルへの義理立てだな。
 本来はスバルがヤツと戦いたくてセッティングした模擬戦だったのだから。
 …………さて、模擬戦の話はこのくらいにして、次はオレのパートナーデバイスであるオメガの紹介だ」





AI搭載型アームドデバイス“オメガ”

基本形状:両刃で幅広のロングソード
刃渡りはロボットモード対応時で約4m。ヒューマンフォーム対応時で約1m。

待機状態:銀色の金属製のカード。別形態で漆黒の宝石モードも選択可能。

形状変化によるモードチェンジ:ブレードモードの他、ゴッドオンするゴッドマスターのスキルに応じ随時モードチェンジが可能(例:スバル⇒アームブレードモード)

ブレードモード:いわゆる通常モード。ブランク/ヒューマンフォーム、及び各フォームでマスターコンボイが主人格の際に使用

カートリッジシステム:単発装填式。マスターコンボイがカートリッジを使わないため出番に恵まれない不遇のシステムと化している



性格:男口調の女性人格。

 マスターコンボイのことを威勢よく「ボス」と呼び、また過去のシリーズでは魔法の使用宣言以外はほとんどと言っていいほどしゃべらなかった。
 さらに今までイメージCVが未公開であったことも重なり、ほとんどの読者が男性人格だと認識。本シリーズ第1話あとがきで女性人格だと判明した際の読者諸兄の衝撃は記憶にも新しいところと思う。

 本作でも現時点では寡黙な性格を維持しているが、この後アルトアイゼンとの出会いによって盛大に“ぶっ壊れていく”ことになる。
 …………すでにあとがきでぶっ壊れているのはツッコまないのが優しさというものである(笑)。



出自:元々は管理局内にて次世代デバイス開発の試作機として開発されていたもの。
 デバイス初起動時の形状設定(なのはが『無印』第1話でレイジングハートの形状を決めたアレ)をモードチェンジに応用できないか、というコンセプトの元に開発された。
 しかし、その結果モードチェンジの自由度があまりにも高くなりすぎたため、テストを任された当時の教導隊の中にも使いこなせる者がおらず、失敗作として本局の倉庫でほこりをかぶっていた。

 “GBH戦役”の最中、マスターメガトロン(当事のマスターコンボイ)を利用しようとしたユニクロン軍によって持ち出され、マスターガルバトロンへと転生したマスターメガトロンの手に。以後彼のパートナーデバイスとして“GBH戦役”、“JS事件”を戦い抜くこととなる。

 なお、“GBH戦役”終結後、特攻し生死不明となったマスターメガトロンが“JS事件”で復活するまでの間はなのはが所持していた。



AIのイメージCV:Akiko Hiramatsu





使用魔法解説

砲撃魔法:ディバインテンペスト

 スバル版ディバインバスターのゴッドオン・バージョンであり、マスターコンボイ・ウィンドフォームの事実上の必殺技。
 本来はフォースチップ・イグニッションから放つ技だが、今回はすでにバーストドライヴのためにイグニッションしていたため、それらのプロセスを省いた速射版として放っている。



砲撃魔法:エナジーヴォルテクス

 マスターコンボイ自身の固有砲撃魔法。
 オメガの刀身に集めた魔力を解放し、目標を力ずくで粉砕する。
 ごく一般的な砲撃魔法であるが、それだけに信頼性は高く、魔法戦におけるマスターコンボイの主砲となっている。







Mコンボイ「名前の由来としてはギリシャ文字の“Ω”だ。
 手にした当時のオレがデストロンの破壊大帝であったことから、ギリシャ文字の最終文字として“終末”としての意味を持つこの名がつけられたワケだ。
 今回はスバルにあわせたために未使用に終わった起動キー、『目覚めよ、終末の黒龍!』もここからの発案だ」

オメガ《それが“JS事件”でボスが復活、さらにコンボイを名乗るようになったことで、新たに“終末から始まりに至る者”としての意味が新たに加えられたそうです》

Mコンボイ「シンプル、且つ意味のある名……あの作者もたまにはいい仕事をする」

オメガ《今後は私の活躍も増えそうですしね……主に戦闘以外で》

Mコンボイ「いや、戦闘で活躍してくれ、貴様は。
 さて、それでは今回はこの辺で。
 お相手はこのオレ、マスターコンボイと……」

オメガ《オメガでお送りしました。
 またお会いいたしましょう!》





(おわり)



 

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