頂き物の小説
第2話「何事も最初が肝心……その“最初”でつまずいたんですけど」:1
「………………ふぅ」
一通りの準備を終え、電子音と共に目の前のウィンドウが消滅する。
深く……本当に深く息をつき――
「………………終わったぁぁぁぁぁっ!」
オレ、柾木ジュンイチの咆哮が、アジトにしているクラナガン市街の雑居ビルの一室に響き渡った。
いや、叫びたくもなるワケよ。“JS事件”の後始末とも言える、買い占めていた大量の株の処分がようやく片づいたんだから。
「一気に売っちゃえばいいじゃん」とか思ったそこのキミ。さては株をやったことがないな?
株式市場っていうのは敏感なもの。ちょっとでも大量の売り注文が出たりすると、すぐにそれが不安材料になって株価は大きく下がる。最悪の場合はそれが周りの同業他社にまで広がって、市場全体が冷え込んでしまったりもする。
そんなワケで一気に売るワケにはいかない。株価を下げることなく大量の売りをさばこうと思ったら、微妙な変化の兆しを見極めながら、他の銘柄の売買とかも絡めて市場の動きを維持しつつ、少しずつ売買しなくちゃならないのだ。
そのまま持っている、というのも論外だ。地上本部の動きを経済面から押さえ込むため、スポンサー企業各社の支配権を根こそぎ奪い取るほどに株を買い占めまくったからな。今のオレは、間違いなくミッドチルダ一の株長者だ。
そのオレが株を手放さなければ、市場に出回る株の量が減り、やはり市場を冷え込ませる原因になる。
何よりも根本的に、それだけ大量の株を保有した状態だと、株価がほんの少し下がっただけでも大損だ。別に金もうけがしたくて株を買い占めたワケじゃないし、その辺りのリスクを冒してまで持ち続ける理由がそもそもない。どう考えてもリスクが大きすぎる。というかリスクしかない。
そんなワケで手放し始めた大量の株。売っても売っても片づかないエンドレス地獄を潜り抜け、ついに今、最後の売りが成立したワケだ。
これで、作業に専念するためにこのアジトに詰めていた日々ともさよなら。ようやく六課の方に戻ることができる。
けど……
結局、恭文の着任には間に合わなかったな。いや、まだ当日だけど。
アイツ、妙に運が悪いところがあるからなぁ……
何か、朝礼でやらかしてなきゃいいんだけど。
とある魔導師と機動六課の日常×魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜
とある魔導師と守護者と機動六課の日常
第2話「何事も最初が肝心……その“最初”でつまずいたんですけど」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
現在、僕は部隊長室に移動して、そこで待ちかまえていた八神部隊長――はやてと対面中。
だけど……正直帰りたい。
だって、しょっぱながアレなんてありえませんぜ旦那? いや、やったの僕だけど。
あぁ、そうか。これはきっと全部夢なんだ。
きっとまだ出向前に見ている夢で、起きればいつもの布団の中。
ははははっ、イヤだなぁ僕は。なーんで出向前にこんな縁起の悪い夢見ちゃったんだろ?
それに気づけばもう大丈夫だ。
こうやって目をつぶれば、きっと自宅の布団の中でよだれたらしながら寝てるに決まってるんだ。そうだそうに違いない。
「でも、それはただの現実逃避や」
「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉっ!」
容赦なく希望は粉砕され、僕の悲痛な叫びが部隊長室に響いた。
そうだよね。わかってたよ、わかってたさ。
でもいいじゃないかよっ! 現実逃避くらいさせてくれてもいいじゃないかっ! もう現実逃避くらいしかすることがないんだよっ!
それだけのことがあったんだよっ! 僕のライフポイントはとっくにゼロよっ!?
いや、ネタとかじゃなくてマジ話で。ここに来るまでどんだけ書類地獄と格闘してたと思ってるのさっ!?
そうやって体力すり減らしていたところにアレだよっ!? 精神的にもライフはゼロさっ!
なので――
「すみません部隊長。今日はこのまま帰って自宅警備員のバイトに勤しみたいんですがよろしいでしょうか?」
「あかんで♪」
「大丈夫ですよ。ほんの半年程行ってくるだけですから。
マグロ漁船よりは短期間ですよ。うぅっ……」
「あぁもう。別に泣くことないやろ? 私は面白かったし。
大丈夫や。あれで自分は愛すべきキャラとして認識されたはずや」
「……そう思うなら、お願い。僕と目を合わせて。
なんで微妙に合わないの? 僕の髪とか耳とか見てるよね」
つーか、そもそもおのれが面白くても僕が面白くなきゃ意味ないんだよっ!
「相変わらずわがままやなぁ。そんなんやと彼女できへんで?」
いや、別にほしくないし。
「ウソつき。フェイトちゃんにゾッコンLOVEやんか」
「待て待て19歳っ! 絶対年齢詐称してるでしょっ!? いつの時代の言い回しだよそれっ!
なんで平成じゃなくて昭和の匂いがするのっ!? おかしいでしょうがっ!」
「そないなこと気にしたらあかんよ。つか、それを抜いても前に私が遊びに行った時に、あんなところにあんな本が……」
………………うん。
「マッテ。その話は止めにしませんか?」
「えぇやんか。恭文かて男の子なワケやし、私は別に軽蔑したりとかはせぇへんよ?
というか、アリシアちゃんも含めて一緒にその手の同人本読みあさった仲やんか。何を今さら……」
「……聞こえなかったかな?
その話は、止めに、しようって、言ってるんだけど」
「……なぁ。久しぶりに会ったんやから、そんな怖い目で睨むのはやめてな。私、これでもか弱い女の子よ?」
「やかましい。僕の中でお前は女性の欄には入ってないのよ。
っつーかたった今含める理由がなくなった」
「自分ひどいなっ!」
「ひどくないわっ! 事ある毎にチクチクからかいやがってっ!
さっきのことで僕がどんだけヒドイ目に遭ったと思ってるんだよっ!?」
フェイトのあの時の目を思い出して、僕がどれだけ枕を露でぬらしたとっ!?
二次性長に理解を示してくれていたはずなのに、なんで……いや、今はそこはいいっ!
「そんなことするヒマがあったら、あのワーカーホリックな砲撃魔導師を見習って仕事しろ仕事っ! 仕事に溺れろっ!
もちろん倒れない程度にっ! 倒れられたら僕が困るからっ!
つか、そんな余計なこと考えるからチビタヌキなんて言われるんだよっ!」
具体的にはゲンヤさんと僕とジュンイチさんに。
「そこまでにしてやってくれるか?」
と――そんなはやてに対し、出さなくてもいい助け舟が出された。
出してきたのははやてのパートナートランスフォーマー、ビッグコンボイ。
元々はセイバートロン星のコンボイを務めたこともあるくらい凄腕のトランスフォーマーなんだけど、はやてと組んだのが運の尽き。“JS事件”でも出番減少の憂き目にあうことになった苦労人だ。
それが一番顕著に現れたのが、この間の復活したユニクロンとの戦い。みんなが次々にリンクアップ、つまりパワーアップ合体していく中でひとりだけ取り残されて……
「うるさいよっ!
気にしてるんだから、そのことに触れるなっ!」
あ、気にしてたんだ。
「まぁ、とにかく。
そのくらいも何も、先にこっちの心の傷を抉ってきたのははやてだよ? はやてがかよわい女の子なら、そのはやてにもてあそばれた僕はどーなるのさ?」
「ふーん……そういう事言う?
出向祝いにフェイトちゃんのドキドキスクリーンショットをプレゼントしようかと思ってたんやけど」
「イヤだなぁ。ほんの出会い頭の小粋なジョークじゃないですか八神部隊長。私はあなたほど素敵な女性と出会った覚えがありませんよ。タヌキなんてとんでもないっ! 誰ですかそ んな事言ったの? 信じられませんよそいつの神経を疑いますね〜。まさにあなたは現代のジャンヌ・ダルクっ! ミロのヴィーナスっ! 小野小町か楊貴妃か、さてはクレオパトラかっ! もう、こうして貴方の前で立っているだけで胸の鼓動は切なく高鳴っているんですよ?」
はやての手を握り一息にまくし立てる。ハッキリ言えば口からデマカセUSO八百。
だけど、これも全てはドキドキスクリーンショットのため。若干アレだと思うがそこはガマンだ。
「……自分、プライドないな」
「プライドでドキドキスクリーンショットは手に入らないでしょ?」
フッ、甘く見たな、八神はやてっ!
この蒼凪恭文、フェイトのドキドキスクリーンショットのためなら鬼にも修羅にも太鼓持ちにもなってやろうぞっ!
「まぁ、ちょっとだけえぇ気分になれたから許したるわ」
あんなのでなれるんかい。なんちゅう安上がりないい子ですかあなた。
「お望み通り、選りすぐりのをメールで送付しとくわ。楽しみにしとき?」
「……恩に着るよ」
「まーそれはそれとして、冗談抜きで自宅警備員はホントにやめた方がえぇと思うで? フェイトちゃんやなのはちゃん、アリシアちゃんが悲しむよ。
3人とも今日はおらへんけど、恭文が六課に出向してくるって聞いて、やっぱり嬉しそうやったもん」
「そなの?」
そうなんだ、3人がそんなことを。あぁ、なのはは別にいいけど、フェイトとアリシアが……
「……相変わらずなのはちゃんに対する扱いがひどいな」
「だって、なのはをからかうの楽しいし」
「…………せやったね。
あんたの中では、なのはちゃんの立ち位置ってそんなんやったよね」
僕の言葉に、はやてはなぜかため息ひとつ。
「まぁ、あれやで。あんまやりすぎたらあかんよ?
それでなくても最近ジュンイチさんに対してツッコみまくりでツッコみ疲れがたまっとるし」
何さ、その“ツッコみ疲れ”って。っつーかあの人はそんなになのはで遊んでるのか。
正直やめてほしいかも。だってなのはをいぢるのは数少ない楽しみのひとつなんだから。なのはのリアクションのキレが鈍るとつまらないんだよね。
「それと……多分、なのはちゃんは大事な友達と会えるのが嬉しいんやと思うし」
あー、そうだよね。あの横馬は予想してた。
「アリシアちゃんは、同好の士が増えて……ってな感じやな。
後、本を書くための人手とか」
こっちでも本書いてんのか、あいつは。
「こっちでもシャッター前常連になりつつあるよ。
私も行けへん時は委託頼んでるし」
そしてお前もか。
まぁ、そっち関係について、アリシアははやての師匠みたいなもんだし、シャッター前くらいの地位は簡単に築くでしょ。
で、フェイトは……
「フェイトちゃんは……弟分が来るのが楽しみ、っちゅー感じかな?
つか、覚悟しといた方がえぇよ?」
「なんで?」
「『いい機会だから、部隊の仕事を覚えて、局に入る気になってくれればいいな』……とか言うてたし」
……マジですか。
まだあきらめてないのか……僕はそんな気ないのに。
「マジや。
ま、海鳴でお世話になっとった頃から“お姉ちゃん”しとったからな。やっぱ根無し草のままやと心配なんよ。
恭文の気持ちはわかるけど、少しは理解したり?」
「……だね。あー、またゴタゴタするのかな」
よし、覚悟はしておこう。覚悟だけは。
「まぁ、それはヴィータやシグナム達もそうやし、私も嬉しかったよ。
……来てくれてありがとな」
そう言って、いきなり頭を下げる八神部隊長。
……うん。そういう殊勝なマネは似合わないのでやめてほしいのですが。
というか……一回断ろうとした手前、ちょっと辛い。
「まぁ、そこは気にせんでえぇで? 休みの要求は当然の権利やし。
あと、もう私の事はいつもどおり『はやて』でかまわんよ。恭文に『八神部隊長』なんて言われたら、なにか気持ち悪くてかなわんわ」
「失礼な。
どういう意味だよ」
「そういう意味や。
まぁ、これからよろしくな恭文」
あいさつと共に手が差し出された。だから、こう返事をする。
「こちらこそ、よろしく。はやて」
そう言って、僕も同じように手を差し出し、硬く握手する。
この瞬間から、僕の機動六課での生活は始まる。
次元世界を救った女神や英雄達との、忘れられない日々が――
数週間後、自宅警備員の方がよかったかなと思う事が起きたけど、それはまた別の話とする。
「違うですっ! ナニ失礼なナレーションつけてるですかっ!?」
「そうよっ! みんなあなたが来るのを楽しみにしてたのにっ!」
「蒼凪、相変わらずだな」
「……いきなり前フリもなく出てきて、そろいもそろって地の文にツッコまないでください」
間髪入れずにツッコんできたのは、ちっこい妖精サイズの少女にショートカットの金髪美女、それに青い犬。
「狼だ」
ええ、わかってますからその鋭い視線を向けないでくださいよ。怖いじゃないですか。
「恭文さんがいけないんですよっ!
せっかく久しぶりに会ったのにいきなりこれですかっ!? ひどいですっ!」
「頼むからそんな恨めしい目で見ないでよ。僕が悪かったから」
「反省してますか?」
「もちろん、マリアナ海溝よりも深く」
はやてもビッグコンボイも、「実は反省してないだろ」って目で見るのはやめてよ。
心当たりがないワケじゃないだけに心が痛いじゃないのさ。
「なら、許してあげるです。
ではでは、気を取り直して……恭文さん、久しぶりです〜♪」
そういって、少女は僕の胸に飛び込み、抱きつく。
「うん、久しぶりだね。リイン」
僕はそんな彼女を優しく抱きしめる。
「シャマルさん、ザフィーラさんも久しぶりです」
「お久しぶり、恭文くん」
「元気そうで安心したぞ」
今、僕の腕の中にいる子の名前はリインフォースU。通称リイン。
部隊長であるはやての家の末っ子で、僕にとっては妹みたいな存在で一番の友達。
そして――僕が魔導師になったきっかけの、一番大きな部分を占めている大切な女の子。
で、僕とリインがハグハグしているのを楽しそうに見ているお姉さんは――
「シャマルさんもお久しぶりです。
聞きましたよ。料理でみんな撃墜して、部隊機能マヒさせたそうですね? 腕を上げましたか?」
シャマルさん。はやて……八神家の一員で、局に所属を置く医務官。
そして誰もが認める殺人料理の使い手で、六課でも被害を出したとか何とか……
「違うもんっ! シャマル先生悪くないもんっ!
私だって被害者なんだからっ!」
え? そうなの?
みんなが料理が原因で倒れたって聞いたから、てっきりシャマルさんの仕業かと……
「違うわよ! 料理関係のネタを全部私に直結させないで!
今回の犯人はあずさちゃんなんだから!」
あ、あの人かぁぁぁぁぁっ!
そういえばあの人も六課にいたんだったっけか。最初は身分を隠してたらしくって、途中までぜんぜん気づかなかったらしいけど。
けど……そうか。犯人はあの人か。
シャマルさんなら、まぁ、仕方ないかとも思ってたけど、あの人となれば話は別だ。
それがなのはとかだけだったならいいけど、フェイトや師匠まで巻き込まれたとなると……
「…………よし、後でしばくか」
「やめておいてやってくれ、蒼凪。
すでに十分罰は受けている」
そして、ため息まじりに僕を止める青い“狼”は、同じくはやての家族で、ザフィーラさん。
今の狼の姿の他に人間の姿にもなれる、シャマルさんと同じく古代ベルカ式の使い手。
防御の魔法を得意としている盾の守護獣で、さらに人の姿になれば格闘戦も強い。
二人とも、昔から色々とお世話になっている人達だ。
「……というかザフィーラさん」
「なんだ?」
ついバカをやってしまったけど、ツッコミたいところがある。
「『元気そう』ってのはこっちのセリフですよ。
リンディさんからみんなズタボロだって聞いてたんで」
だからこそ、出向もOKしたくらいなのに。
「日常生活には問題ないレベルには、みんな回復してるわ。ただ……」
「ヴィータや高町など一部の人間は戦闘となると、まだ本調子で行けないのが現状でな。
テスタロッサも捜査方面で出歩くことが多く、シグナムやアリシアにしわ寄せが集まっている状態だ」
「ジュンイチさんも事件の後始末のために今は六課を離れてますですし、ライカさん達“Bネット”組も、報告のために向こうに戻ってていないんです」
「……そうですか」
シャマルさん、ザフィーラさん、そしてリインから聞いた現状は、僕の想像以上にひどいものだった。
そっか……そこまでだったのか。
ま、しゃあないか。その場にいなかったし、僕があーだこーだ言うのは間違いでしょ。
「……せやな。
リンディさんから聞いとるとは思うけど、今の六課主要メンバーの……いうよりは、隊長陣の大半はこんな感じや」
とはいえ……口は出せなくても、やっぱり先行き不安な状態なのは変わらない。答えるはやての言葉も、さっきまでのおふざけモードは消え去ってマジメなものだ。
「万が一に備えて、恭文には休み返上で来てもらっとるワケやし……残り半年近く、何がなんでも何とかしていかないとあかん」
「はいですっ!」
はやての言葉に気合いを入れるリインだけど……僕はそれでも正直不安だった。
だって、六課の運用期間は残り半年。仮に何か起きるとしたら、十分すぎる期間だもの。
ううん、十分すぎる、どころじゃない。
何しろ、“JS事件”だって、本格的に動き出してから解決するまでがその“半年”の間に収まったのだ。それ以上の事件が起きたってぜんぜん不思議じゃない。“JS事件”のようにもうすでに火種が……なんて仮定したらなおさらだ。
「恭文くん、あなたにはそういう事情で来てもらっているワケだけど、もちろんあなたひとりにすべてを押しつけるような事はしないわ」
「もし何か起こった時、我らにお前の力を貸してほしい。頼みたい事はそれだけだ」
「別にかまいませんよ。そのためにここに来たワケですしね。そこで頼られなかったらウソでしょ。
……ただしっ! なんにも起こんなかったら、定期的に休みはきちんともらいますからねっ!?」
「こだわるところはそこなんですね」
「本当に変わっていないな……」
人さし指をピンと上に向けて宣言する。僕以外の全員が呆れてるけど、なんと言われようとここだけは譲れない。
その一点だけ約束してくれれば、僕としては協力することには何の問題もない。
それに、みんなにはたくさん助けてもらってるしね。その恩を返すいい機会と考えればむしろ望むところだ。
何より、ドキドキスクリーンショットもいただく約束を取りつけた以上、口ではどう言ってもホントに逃げるワケにはいかない。
といいますか、いい加減休まないと体外的にも僕の身体的にも色々とですね。結局、あのムチャぶり提督のおかげで、この二週間もほぼ休み無しだし。
リゲ○ン飲んでないのに24時間戦えましたよ。えぇ。
「それはもちろんや。
リンディさんからもストライキとか起こされたくなかったら、そこはちゃんとするようにと言われてるしな」
あの人は僕を何だと思っていますか?
「可愛い問題児ってところかしら?」
「蒼凪なら実際ありえるしな」
「です……」
あなた達も何だと思っていますか?
「まぁ……ストライキ起こせるなら起こしたかったけどさ」
『えっ!?』
「……『さらば電○』、見に行けなかった」
途中で、必死に書類をさばいて、一日休みを確保出来たのに……。あのバカ提督が追加で書類作成を命じてこなければ……見れたのに。
昨日? 転送ポートの使用許可がとれなかった。おかげでグチもひどかったさ。
……ちくしょお、僕が何したっていうのさ。
「……あぁ、自分ら好きやったな」
「ね、提督つぶしても罪にならないよね? ジャスティスだよね?」
「お願いやからそれはやめてーなっ! 間違いなく罪になるからなっ!? ジャスティスちゃうからっ!」
「嘘だっ!」
「嘘ちゃうからっ! なんでいきなりひぐら○っ!? そしてちょっと涙目はやめてくれんかなっ!
……とにかく、休みは善処していくし、『さらば○王』もディスク発売されたらプレゼントするから、元気出してくれへんかな?」
……僕はその言葉に頷いた。あの提督には、きっちり仕返しをすることを決意した上で。
ジュンイチさんに言いつけてもいいけど、ここは僕の手でキッチリとしておく。でなきゃ、今回はさすがに僕の気がすまない。
それはそうと……
「3人とも、そもそも何しに部隊長室に?」
「はいですっ! フフフっ!」
僕の問いになぜかいきなりニヤニヤと笑い出す祝福の風。あの、用件を早く言ってもらえませんか? 怖いから。
「恭文さん! あなたを生まれ変わった機動六課隊舎見学ツアーにご招待に来たです〜♪」
『……はい?』
はやてとついハモってしまった。
「はいですっ! 私、祝福の風・リインフォースUが責任持ってガイドするですよっ!」
「あぁ、つまるところオリエンテーション言うワケやな?」
「ですです♪」
待てまてマテっ! 見学ツアーって、みんなが仕事してる中を跳梁闊歩するワケですか? それはないって……
といいますか、僕は小学生ですかっ!?
「見た目はそうだろう?」
「うるさいよっ!」
余計な口をはさんできたのはビッグコンボイ。後で覚えてろよちくしょうめ。
「恭文くん、そう言わないであげて。
リインちゃんったら、恭文くんに早く六課に慣れてもらうんだって言って、昨日までアレコレ考えてたのよ?」
「そうなん? 私は全然知らんかったんやけど」
「申し訳ありません主。
リインに当日まで秘密にしておくようにと頼まれましたので」
なるほど、そういうことですか。
でも、はやてだって僕がらみで予定を立てていただろうし、いきなりそんな話をされて「はいそうですか」と納得するワケが――
「まぁ、そういうワケなら仕方ないなぁ。恭文、部隊長命令や。見学ツアー行っとき」
「ありがとうですっ!」
「納得したっ!? つーか即決だねおいっ!
部隊長、一応確認……仕事はいいの?」
みんなから白い目で見られるのとか、イヤだよ? いや、真面目な話よ。
「別に今日一日くらいやったらかまわんやろ。
どっちにしてもオリエンテーションは必要やしな」
さいですか。素晴らしい英断に感謝します。
でも、ニヤニヤするのはやめて。なんかムカつくじゃないのさ。
「というワケでリイン。
見学ツアーそのものはかまわへんけど、恭文を連れて改めて主要メンバーにあいさつさせてな。
さっきはアレやったし、何事も最初が肝心や」
「はいですっ!」
「あの、二人して少しばかり子ども扱いなのが気になるんですけど」
「あきらめろ。蒼凪」
「そうそう、あなたは女の子の尻にしかれるタイプなんですもの」
「それでなくても、はやてもリインも仲間内では妹分扱いの立ち位置だ。たまには姉貴風を吹かせてやってくれ」
ちくしょう、来て早々なのにまた泣きたくなってきたぞ。でも、こうなったら腹をくくろう。
「わかったよ。
リイン、ガイドよろしくね」
「はいです♪」
……そういや、リインと一緒に来たってことはシャマルとザフィーラさんもツアー参加者?
「いいえ、私達は違うわよ」
「別の用件だ」
「別の?」
「恭文さんへのあいさつですよ」
リインがそこまで言うと、シャマルさんとザフィーラさんが僕の方を向いて、柔らかい表情でこう切り出した。
「恭文くん、機動六課へようこそ。あなたを新しい仲間として歓迎します。
そして……来てくれてありがとう」
「まさか休みを返上してまで来てくれるとは思わなかったぞ。
フォートレスやアトラスも、ここには来れなかったが本当に感謝していた。
これから色々とあるとは思うが……何かあればいつでも言ってくれ。必ずや我らが力になる」
「……こちらこそ、また面倒かけるとは思いますがよろしくお願いします」
そうして、まず最初のあいさつを無事にすませた僕は、はやて達に見送られリイン先導のもと、機動六課隊舎見学+あいさつ参りツアーへと向かった。
……あのさ、リイン。
「何ですか?」
「これからよろしくね。で、もし何かあったら……がんばろ」
「……もちろんです。
リイン達が力を合わせれば、どんな理不尽も、きっと覆していけるですよ」
「うん」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「えへへ〜♪」
「何よ、なんかニヤニヤして」
あたし、エリオ、キャロ、あずささん、そしてコイツ――元祖六課フォワード陣5人、そろって隊舎の廊下を歩きながら、あたし、ティアナ・ランスターはとなりでニヤニヤしているスバルにそう尋ねた。
……いや、尋ねたくもなるわよ。朝礼が終わってからずっとこの調子だもの。ここが天下の往来のド真ん中だったら、他人のフリをしたくなるくらいに。
「なんかさー、嬉しいな〜、と思って」
「嬉しい……?」
「だって、隊舎も復活したし、こうしてみんな無事に帰ってこれたし、新しい人も来てくれたし、いいこと尽くめじゃない?」
両手を大きく広げて、そう口にするスバルは本当に楽しそうだ。純粋に今の状況が嬉しいのが見ているだけでよくわかる。
まぁ、確かにあたしだって嬉しいわよ。ただ、ねぇ……
「隊舎とみんなの無事は解るけど、最後のは正直微妙よ。
だって、アレはないわよ、アレは」
言いながら思い出すのは今日の朝礼での紹介。
今日から六課で仕事をする事になったひとりの男。
身長はスバルと同じくらいで細身の体系……って、ちっちゃいわね。まぁ、マスターコンボイの方が小さいけど。
あと、女の子っぽい顔立ちで、栗色の髪と、黒い瞳をしたアイツ。
年は私達と同じくらいよね? 正直そうは見えない。
「あれは、きっと私達を和ませようとしてくれてたんだよっ!」
「いや、絶対違うから」
うん。それだけは断言出来る。
あれは間違いなく素だ。てーかホントにそれでアレなら、色々と読み間違えてるから。
「蒼凪恭文の話か?」
と、そんなあたし達に声がかけられた――振り向くと、いつの間に追いついていたのか、ヒューマンフォームのマスターコンボイがそこにいた。
…………うん、やっぱりカワイイ。
本人は未だに納得していないみたいだけど、マスターコンボイのヒューマンフォーム、実のところ、あたしはけっこう悪くないと思っていたりする。
デザインしたっていう八神部隊長やリイン曹長は実にイイ仕事をしてくれたわ。
……別に、マスターコンボイ自身が好きだってワケじゃないからね。そこは念を押しておく。
で……
「マスターコンボイはどう思ってるの? 今朝のアイツのこと」
「評価待ちだ」
あっさり返された。
まぁ、「対面してから評価する」って言ってたし、コイツがアイツのことを評価するのはこの先ってことだわね。
となると、あとアイツについて語れそうなのは……
「ライトニングの二人はどうよ。
アイツについて知ってることある?」
アイツは、八神部隊長やなのはさん、フェイトさんの友達らしいから、二人はあたし達より詳しいかもしれない。
「すみません、ボク達も会った事があるワケじゃないんです」
「そうなの?」
「はい。一応フェイトさんから、一緒に暮らしている弟みたいな男の子がいるとは聞いていたんですけど……」
……へ? 一緒にっ!?
つまり……それは……
「あ、そういう意味ではなくてですね。なんでも海鳴の家の方に居候……のようなことをしていたらしいんです」
「リンディ提督が保護責任者だったらしいんですけど、そのリンディ提督がお仕事で帰れない時とかを考えると、フェイトさん達と暮らした方がいいだろう、って……」
「あぁ、なるほどね」
この二人の保護者で、六課の隊長陣のひとりでもあるフェイト・テスタロッサ・高町という人がいる。
その人は、4年前まで、地球の海鳴という街で暮らしていた。その時に同居してたってことか。
「フェイトさんからは『前にも言ったけど、ちょっと変わっているけど、真っ直ぐでいい子だから、仲良くしてあげてね』とは言われてるんですけど……」
「確かに、変わってはいるかもね」
あの男については、あたし達は事前になのはさん達から説明を受けている。
なのはさんの友達で、あっちこっちの現場を渡り歩いている優秀なフリーの魔導師だと。
名前は蒼凪恭文。年はあたしよりひとつ上。
とは言うものの、魔導師としての腕前は実際には見てないが正直微妙な感じがする。だって、アレだしね……
「そんなことないよっ! すっごく強いんだからっ!」
「……あんた、なんでそんなこと言い切れるのよ。つか、知り合いってワケじゃないんでしょ?」
あたしのあきらめも混じった発言は、胸を張って自身満々なうちの相方にあっさり否定された。
……ちくしょうっ、負けたっ! あたしなんてまだまだなのに!
…………とりあえず、何が負けたのかは女のプライドにかけて黙秘させてもらうわ。
「だって、あの人は空戦魔導師のA+ランクなんだよ?」
「……空戦Aの+(プラス)ッ!?」
「そうだよ。私達より1.5ランク上」
ここで、ちょっと補足説明。
……魔導師には、能力を示すランクというものがある。
陸戦・空戦・総合の三つの分類に、上から『SSS→SS→S→AAA→AA→A→B→C→D』と言った風に分けられる。
あとは、0.5ランクを意味する『+』とか『−』がついたり。
で……トランスフォーマーの場合も、この人間の魔導師ランクを元にして設定されている。
たとえばAランクだったら「あなたは人間のAランク魔導師と同等の能力がありますからAランクで」っていう感じ。
まぁ、あくまでも目安みたいなものなんだけどね。ちなみに、私とスバル、エリオが陸戦B。キャロがCになる。で、あずささんが総合のB。
マスターコンボイは……って、そーいえばマスターコンボイってランク認定試験受けたことないのよね。
技だけならウチの隊長格にも匹敵するんだけど……マスターコンボイ、単独だとボディスペックの半分も出せないしなぁ……
で、新入りに話を戻すけど、アイツの空戦A+というのは、ウチの隊長格とまでいかなくても、なかなかに優秀な方になる。
特に空戦、つまり飛行技能を持つ魔導師は、先天的なものか、訓練による後天的なものかを問わず、ある一定以上の適正がないとなれないものだから。
っていうか――
「つかスバル、あんたなんでそれを知ってるワケ?」
「あのね、その人について、お兄ちゃんに聞いてみたんだ」
「柾木ジュンイチに?」
ランクの話に続いてここでも捕捉。
スバルが「お兄ちゃん」と呼んでいるのはあずささんの兄。そしてスバルやスバルの姉、ギンガさんにとっても兄妹同然に暮らしていた兄貴分である柾木ジュンイチさん。
魔導師ってワケじゃなくて、別系統の特殊能力者。でも、とんでもなく強い。
能力的にはウチの隊長格より下なんだけど、工夫でその差を簡単にひっくり返してしまう。簡単に言えば知略とテクニカル方面に極端に特化しているのだ。
過去に何度も八神部隊長達を蹴散らしているらしいし、今回の“JS事件”でもなのはさん達とぶつかった際、たったひとりでうちの隊長格を圧倒した……って言えば、その実力はわかってもらえると思う。
……と、それはともかく。
「うん。
もしかしたら知ってるかも、って思って……
そしたら知ってた。というか、知り合いだった」
「……たまに、あの男の人脈を根こそぎ調べ上げたくなることがあるんだが」
「…………うん。あたしも、たまに……」
それはあたしも同感。
あの人、ムダに顔が広い……というか、あの人の周りの縁ってムダに絡み合ってるからなぁ……
あたし達も、それぞれあの人とソロで縁があったクチだし。
…………あれ?
ジュンイチさんがアイツのことを知ってるってことは、その妹の……
「ひょっとして……あずささんも知り合いなんですか?」
「うん。まぁね。
……というか、ようやく話振ってもらえたよ。忘れられたかと思って、ちょっと寂しかったんだから」
尋ねるキャロに対し、あずささんは肩を落としてそう答えた。
軽くすねた様子で口を尖らせるあずささんの様子に、キャロはあわててなぐさめにかかる――寮が相部屋なだけあって、まるで本当の姉妹みたいに仲がいいのよね、この二人って。
それはともかく、今はアイツの話よ。
「それで……ジュンイチさんは何て?」
「うん…………」
「えっと……」
しかし、あたしの問いにスバルも、そしてあずささんも何やら考え込むように視線を伏せた。
…………あれ? 何か変なこと聞いた? とか思っていたら、やがてスバルはポツリ、とつぶやいた。
「『友達だ』って……」
『は………………?』
スバルのその言葉に、あたし達は思わず動きを止めた。
だって、あのジュンイチさんが……「友達」よ?
他の人達なら、何てことのない友達紹介だけど……ジュンイチさんの場合、少しばかり毛色が違ってくる。
何しろ――
「『友達』……か?
あの、自分の身内は“家族”か“仲間”の2種類でしか区分けしないあの男が、『友達』だと?」
「う、うん……」
マスターコンボイの言ったとおり、あの人は身内の分類がすごく極端なんだ。
家族かそれに近しい人は“家族”、それ以外は“仲間”、それを全部ひっくるめて“身内”、って具合に区切りがハッキリしてる。
だから――あの人が“家族”でも“仲間”でもなく、“友達”と言い切った相手がいるなんて、あたしは正直知らない。知らなかった。
けど、それは裏を返せばあのジュンイチさんにとっても特別な認識の相手、ってことで……実力なり何なり、認めるだけの何かしらがあるってことか。まぁ、そこは見てからよね。うん。
「でもね、お兄ちゃん……『会って仲良くなってからのお楽しみ』って言って、あんまり細かい事は教えてくれなかったの。
あー、でも楽しみだな〜。お兄ちゃんの話を聞いてたら、どんな感じか戦ってみたくなってさ。なのはさん達に頼んで模擬戦組んでもらわないとっ!」
「……アイツの意思は確認しときなさいよ? 強引に話決めたら迷惑でしょうから」
「うん、もちろんっ!」
この分じゃ、アイツも来た早々大変なことになりそうね。スバルが押し切る光景が目に浮かぶわ。
まぁ、なのはさんやヴィータ副隊長達がそんなにすぐ許可をくれるとは思わないけど。仕事の都合だってあるし。
「……貴様に聞けばすぐに解決するということに気づいてないな、スバルのヤツ」
「うん。
でも面白いからほっとこう」
「了解だ」
後ろでそんなことを話しているマスターコンボイとあずささんはとりあえず無視しておく。教えたら教えたでスバルがうるさそうだし。
それはそれとして、今、あたし達がどこへ向かっているかというと、デバイスルームだ。
一応、訓練の再開前に私達のデバイスや相棒の子達の調整と整備をしっかりとしておきたいと言われ、一週間程前にシャーリーさんにパートナー達を預けていた。
そのメンテナンスも今日で終わり。今から相棒を受け取りに行くところなのだ。
そして、部屋の前に到着した。
「マッハキャリバーもクロくん達も元気かなぁ〜。
なんかドキドキしてきちゃった」
「あんた、いくら何でも大げさよ」
などとスバルと話しながら中に入る。
「失礼しまーす」
「失礼するなら帰ってくださ〜い」
「す、すみません! 失礼しました!」
間髪入れずに返され、あたし達は全員失礼しないようにデバイスルームから退出し――
「ちょっとジャマするわよ!」
我に返ったあたしは再びデバイスルームに突撃。
そしていた。小さい男の子と、さらに小さい“小鬼”が。
「……リイン、どうしてそんな怖い顔でにらんでるのかな?
ほら、かわいい顔が台無しだよ?」
「何言ってるですかっ!? 怒っててもリインはかわいいんですっ!」
「また自意識過剰に磨きがかかってるね、をいっ!?」
「というかっ! どこの世界にあんなこと言って追い出す人がいますかっ!?」
「え、吉○新喜劇でやってたよ?
というか休みの日にいっしょに見たじゃないのさ」
「……お仕置きだべぇ〜〜っ! です〜〜っ!」
「いや、だって、てっきりシャーリーかと思って、本当にお客様とは思わな……って、痛い痛いっ! 髪の毛引っ張るなぁぁぁぁっ!」
……よし。
“……何これ?”
“さぁ……?”
“お仕置き……ですよね。でも”
“あんなリインさん、初めて見ました”
“リインちゃん、滝○順平さんのモノマネうまいなぁ〜”
念話で尋ねるあたしにそう答えるのはスバルやエリオ、キャロの3人。あずささんのズレたコメントは全力でスルーする。
……とにかく、リイン曹長が新入りの髪の毛をぐいぐい引っぱってお仕置きしてる。
てか、アイツがなんでここにいるの?
「あ、みんなどうしたの〜」
「あ、シャーリーさん」
「えっと、マッハキャリバー達を受け取りにきたんですけど」
「あのありさまで……」
「なんであの方がここにいるんですか……?」
やってきたのはシャーリーさん。とりあえずあたし、スバル、エリオとキャロの順番で口々に答える。
で、シャーリーさんは、部屋の様子を見て納得したような顔になった。
「……あぁ、気にしなくていいよ」
「いや、ムリですよ」
思わずあたしが即答する。
「どうせ、なぎくんが何かしたんでしょ?
すぐに終わると思うから、入って入って」
「いや待て。お前はどうしてそう冷静なんだ?
まさかこれは普通の光景だったりするのか? 蒼凪恭文にとって」
「普通の光景だったりするんだよねぇ……残念ながら」
シャーリーさんに尋ねるマスターコンボイに答えたのはあずささんだ。
「けどさ、シャーリーちゃん。
どーして恭文くんがここに?」
「あぁ、ロングアーチにあいさつに来てて……なぎくんのデバイスもちょっと見たかったし、ここに連れてきたんですよ。
それより、みんな。そんなところに立ってないで、ほら、入って」
あずささんに答えるシャーリーさんに促されて、あたし達はようやくデバイスルームに入室することができた。
……というか、アイツのいる部屋に入るだけでこれって……
……これから……不安だわ。
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