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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第8話 『とある魔導師の休日 一日目』(加筆修正版)



「うーん、困った」



なのはからお休みの話を聞いた後、僕はまぁ色々あって家に戻った。戻って・・・・・・考える。

夕飯食べ終わって、ソファーでぐでーとしながら考える。・・・・・・よーく考えよー。外キャラ大事だよー。



≪受ければいいじゃないですか≫

「嫌だ。手札晒したくないもの」



用件は、実に簡単。エリオとキャロに、軽く訓練しようと誘われた。ランニングとか、そういうレベルだね。

ちびっ子はちびっ子なりに、僕とコミュニケーションを取りたいらしい。見ていて、それが切実に伝わった。



≪じゃあ、断ればいいじゃないですか≫

「でも、そうするとフェイトが困るのよ。『出来れば仲良くして欲しいな』とか言われてるし」



でも、僕は・・・・・・うーん、どうしよう。

手札晒したくないし、下手に仕事場で仲好し小好しも、実は好きじゃない。



≪じゃあぶっ飛ばせばいいじゃないですか≫

「そうだね、そうするわ」



・・・・・・いやいや、なんか話の流れおかしくないっ!? 色々間違ってるってっ!!



「あーもう、別に僕は友達作りに来たわけでも、何でもないってのに。
だけど・・・・・・あぁもうめんどくさいっ! もうやってられるかっ!!」

≪失踪します?≫

「いや、しない。そっちがその気なら、こっちも徹底的に付き合ってやろうじゃないのさ。
ただし、遠慮なく巻き込んでひっちゃかめっちゃかにしてやる」










こうして、僕は地雷を踏んでしまった。そう、地雷だった。ただそれは、決してエリキャロが悪いわけじゃない。





・・・・・・僕が、甘いのが原因。冷たくとっとと断ってれば、少しだけでも休みは満喫出来たのに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



六課の前線メンバー・・・・・・というか、管理局に所属する武装局員の朝と言うのは、大抵早い。

例えば、ここ機動六課の場合、大体6時前後には動けるようにしておいて、それから早朝訓練に入る。

とは言うもの、今日は違う。なぜなら、教導の主担当であるスターズ01の高町なのは教導官がお休みだもの。





そして、六課前線メンバーの片割れ。スターズ03と04、スバル・ナカジマとティアナ・ランスターもだね。

この、スターズ分隊の三人が、これから三日間の休養に入るから、教導もお休み。

一応、ヴィータ師匠や、ライトニングのコンビも居るけど、休んでいる三人の分の仕事もあったりする。





というか、僕の分の仕事もあるのよ。だから、そのために訓練はなし。

そう、僕もスターズ分隊の休暇に合わせて、休みを取る事になった。

・・・・・・僕には、なんの説明もなかったんですけど。





なのはに聞いたら、はやてが伝えるって言ってたと返事が帰ってきたし。

つまり、忘れてたんだ。あのチビ・タヌキは。おかげで何の予定も立てられないときたもんだ。

とにかく、その辺りの報復はしっかりすませたから良しとするとして、問題は休みの過ごし方。





まぁ、今日は決まっているので、残りは寝て過ごす気満々である。あとは、ゲームしたりアニメ見たりとか。

そんなわけで、普段は早起きなライトニングの二人も、この三日間だけは基本の出勤時間までは能天気に寝ていられる。

それなのに・・・・・・僕と一緒に元気に走りまわっているのは、どうしてなんだろう。





フェイト、この子達にはサボるって文化を教えるべきだと思うな。うん、絶対必要だよ。










「・・・・・・エリオ、キャロ、あんま飛ばすと仕事がきついよ?」

「大丈夫ですー!!」

「いつも、鍛えてますからっ!!」



なんつうか、元気なお子様二人だよ。でもさ、真面目にサボるって文化を誰か教えてあげない? この子達、生真面目過ぎるって。



≪・・・・・・いいじゃないですか。フェイトさんそっくりで≫

「色々似るんだね。・・・・・・はぁ」



胸元にかけている相棒に対して、そう返しながらも僕は走る。

エリオとキャロと一緒に、練習着姿で朝日を浴びながら一定のペースを保って走る。とにかく走る。



「きゅくるー♪」

「・・・・・・とりあえず、僕の頭に乗るな。そんなに刺身にされたいの?」

「きゅくきゅくっ!!」

≪それは嫌だけど、乗り心地はいいの・・・・・・と言ってます≫

「キャロー! 今すぐこのムカつくチビをドカせるか、どっかにやるか選んでくれるっ!? なんか図々しいこと言い出してるんだけどっ!!」





訓練と言っても、魔法戦闘は抜き。軽い準備運動と言うか、フィジカル面だね。

隊舎をグルグルと回る感じに走っているけど、これはこれで楽しい。

以前も話したと思うけど、六課隊舎は海に面した作りになっている。



街中とは違って、ミッド海上の景色が一望出来る。

なので、今くらいの時間だと丁度水平線から朝日が昇り始めているの。

それを見ながら走るのは、とても気分がいい。



まぁ、チビッ子二人はそういうこと関係なく楽しそうだけどさ。

その上隊舎の敷地は結構広いので、かなり走り応えはあるコースとなっている。

で、それが終わったあとは、全員で中庭に移動。次のメニューに移行である。



再度、軽めのストレッチをして、僕とエリオで組み手をやる事になった。キャロとフリードは見学ね。

さすがにデバイスを出しては出来ない。と言いますか、許可無くそんな事は出来ない。

したら間違いなく怒られるので、自分のパートナー達と同じような物を持ってくる。



エリオは槍。と言っても、自身のアームドデバイス・ストラーダと同サイズの木の棒。





「・・・・・・いきます」





なんて言いながら、エリオが踏み込んでくる。そこから槍が突き出された。

で、僕は木刀を持って、それを払う。・・・・・・訂正、避ける。

スレスレで槍の突きを右に避けた。エリオは、ビックリしたような顔になる。



そのまま、距離を取るためにエリオが後ろに跳ぶ。数メートルの距離を取って、僕と対峙。





「避けられたことが、そんなに意外?」

「いえ。・・・・・・何故、避けるんですか? 基本は払いや打ち込みなのに」

「当たりもしない攻撃を防御する意味、ないでしょ?」



鼻で笑いながら、僕は木刀を構えない。いわゆる無形の位だね。

ただ左手を上げて、クイクイと指を曲げる。そうして、エリオに挑発を続ける。



「悪いけど、長物の相手は僕の専門なんだ。・・・・・・今のじゃ、全然足りない。
もうちょっと本気出してくれなきゃ、3秒で終わっちゃうよ」

「・・・・・・そうですか。というか、それがあなたの戦い方ですか? スバルさんの時も同じでしたし」

「そうだよ。世の中には、どっかの二人の子どもの保護責任者やってる、アホ執務官みたいに」



エリオの表情が、険しくなる。誰の事を言っているのか、分かったらしい。



「くだらない挑発や、犯罪者のモルモットにされてる人間見たくらいで怒って、動揺して、緊縛プレイで壊されかけるのも」





瞬間、エリオが僕の言葉を遮るように、鋭く踏み込んだ。

さっきよりもずっと速い突きが、僕を襲う。頭を狙って、的確に槍は突き出される。

僕は、それを頭を右に動かして避ける。次は、感情任せな薙ぎ払いが来るかと思った。



だけど、それはない。槍は、すぐに引かれた。・・・・・・それで気づいた。

エリオは激昂したかと思ったけど、そうじゃない。すごく冷静に、攻撃をしてる。

僕の挑発にあえて乗った振りをして突っ込んだけど、それは一種のプラフ。



そう言えば、僕が油断するとか思ったから。・・・・・・うん、その狙いは悪くない。

エリオは僕の挑発なんて軽く流して、次の攻撃を即座に仕掛けてきてる。

槍が狙うのは、僕の腹。槍の穂先が下がり、僕の腹を狙って突き出された。



僕は・・・・・・左に跳んだ。そうして、エリオと距離を取る。・・・・・・ちょっと、かすったかな。





「意外と冷静なんだね。そこのパートナーみたいに、怒るかと思ったけど」



なお、キャロの事。僕の事を、相当厳しく見てる。フェイトの事をあれこれ言われたのが、嫌らしい。

僕は、ちょっと意外だった。トントンと軽く跳躍しつつエリオを見ながら・・・・・・心の中は驚きでいっぱい。



「冷静にもなります」





対峙しながら、僕達は時計回りに歩く。そうして・・・・・・数メートルの間合いを維持。

エリオはまた踏み込む。踏み込んで・・・・・・右からの薙ぎ払いが来る。

それは、足元に向かって。僕は、後ろに跳んでそれを避ける。ジャンプでの回避は、選択肢から外した。



そこを狙って、絶対に攻撃が来るもの。そして、そんな僕を狙ってエリオの槍が突き出される。

薙ぎ払いの途中で槍を止め、そのまま突撃するようにエリオが跳んだ。僕は、右に動いて回避。

エリオは跳びながら身を捻って、槍を真一文字に振るって僕に打ち込む。僕はしゃがんで避ける。



エリオはそのまま僕の横を通り過ぎて、地面に着地。すぐに向き直る。向き直って、また数メートルの距離が出来た。





「・・・・・・報告書作成を手伝ってくれてたから、分かりますよね?
僕、そうやって墜とされた事があるんです。感情的になって飛び込んだ隙を突かれました」

「あぁ、隊舎襲撃の時?」

「はい」



あれくらいしか、エリオが墜とされたって覚えはないんだよね。・・・・・・うん、この子一度負けてるのよ。

隊舎を襲撃してきたナンバーズと、さらわれたヴィヴィオを止めようとして・・・・・・あっさり返り討ち。



「僕は報告書だけでしか知らないけど、エリオ・・・・・・普通に激昂してあれだったんだ」

「そうです。あと、あなたの言うようにフェイトさんの事も含めてですね。・・・・・・確かに、バカですから。
そう、僕達はバカでした。あなたに言われるまでもなく、それは知ってる。知ってるから、成長出来る」



槍の穂先を揺らして、軌道を読まれないようにしてる。・・・・・・意外とやるなぁ。

これ教えたの、師匠やシグナムさんかな。フェイトとかなのはは、フィジカルでの戦闘技能は低めだし。



「感情的になり過ぎて、力を半減させるのはきっと間違いです。そうして潰されたら、何の意味も無い」



そこまで言って、エリオがクスリと笑う。なぜいきなり表情を崩して笑うのかが分からなくて、僕は首を傾げる。



「・・・・・・と、最近読んだ古代ベルカの戦闘教本に、書いてました。
何があろうと、頭はどこまでもクールじゃなくちゃいけないって」



・・・・・・あぁ、そういうことですか。うん、納得した。

照れくさそうに笑いながら受け売りだと言い切る所が、この子の良い所なんだろうね。



「そうだよ。心はいくら熱くなってもいい。でも、どこかで冷たい自分も居なくちゃいけないの。
それが、ハードボイルドってやつだよ。戦闘者としての完成形の一つではある」

「あなたは、そうありたいんですよね」

「僕はまだまだトロトロハーフボイルドだから、もっと固茹ででありたいね。
少なくとも、戦ってる時に迷いたくもなければ、動揺もしたくない」



それは、本心。挑発でもなければ、別に動揺したり激昂したフェイトやエリオへの嫌味でも無い。



「・・・・・・人が死ぬのも、傷つくのも、戦いの中では当たり前の事だ。
その中で汚い現実見るのも、当たり前だ。それに負けて、死にたくなんてない」



対峙する時間は、まだ続く。エリオは、穂先を揺らしながらこちらの様子を伺っている。

・・・・・・構えない人間とは、やりにくいでしょ。どういう動きを、攻撃をするか、読み切れないから。



「てゆうか・・・・・・エリオ、僕はエリオの事を見誤ってたわ。中々に出来る子だったんだね」

「ありがとうございます」

「出来れば、魔法戦闘の方が良かったなぁ。そっちだったら、色んな意味で楽しめたのに」



僕は、木刀を構えない。でも・・・・・・少しだけ、握り締める力を強める。

・・・・・・手札は、見せたくないな。でも、ちょっと本気で応えるか。



「なら、休み明けに模擬戦しましょうよ」

「・・・・・・考えておくよ。僕、やっぱり他人の前で手札晒したくないし」

「僕達は、他人ですか?」

「他人でしょ。逆に聞くけど、フェイトやキャロ、部隊のみんなとすぐに仲良くなれた?」

「納得、しました」





言いながらエリオは、飛び込んだ。小さい身体を一杯に動かして、ただひたすら前へ。

そして、ジャンプする。高く跳び・・・・・・僕の頭上に向かって、木の槍を叩き込む。

僕相手に、細かい技は通用しないと踏んだらしい。うん、正解だよ。



長物相手は、師匠やフェイトで慣れてるもの。あと、槍の相手もかなり得意。

鋭く振るわれる宝蔵院槍とかに比べれば、木の槍なんてただの棒切れだもの。

だから・・・・・・僕は、しゃがむ。僕に飛び込み、鋭く一撃を打ち込もうとするエリオを見据えながら。





「・・・・・・飛天御剣流」



そのまま、上に跳ぶ。跳んで、刃を下から振るう。左手を峰に当てて、その勢いも活かして切り上げる。



「龍翔っ!!」





狙うのは、エリオじゃない。エリオが振るった槍の方。槍は、中程から綺麗に僕の斬撃を食らって折れた。

エリオと僕の位置が、入れ替わる。僕が上で、エリオが下。エリオは、そのままビックリした顔で地面に着地しようとする。

当然のように、僕は追撃をかける。・・・・・・身体はもう、落下を始めてる。



だから、木刀を両手で持って、落下の勢いも乗せてエリオに唐竹の斬撃を叩き込むっ!!





「槌閃っ!!」



斬撃は鋭く打ち込まれ、咄嗟に槍の残りをエリオは自分の前に突き出す。

でも、それすらへし折り、僕は着地。木刀は・・・・・・エリオの肩口で、止まっていた。



「・・・・・・もどき。さて、参考までに聞くけど・・・・・・続ける?」

「いえ、やめておきます。というか、参りました」



そのまま、エリオはその場にへたり込む。僕は木刀を引いてから、右薙に振るう。

・・・・・・うん、色々スッキリした。この子が僕が思ったよりも、しっかりして強いってのも分かったし。



「あー、でも悔しい。一発も打ち込めなかった」

「当然でしょ。戦闘経験が年数だけでも4倍とか5倍とかそれくらいよ?」



フェイト曰く、8歳の頃から訓練校通い始めてこれらしいし、大体それくらいだね。



「エリオが超絶的なチート能力持った天才って言うならともかく、そうじゃないのに負けるわけにはいかないよ。
てか、一発でも食らったら、僕の沽券に関わる。それこそ僕の師匠達にどやされまくるし」

「あははは、それは確かに。でも・・・・・・飛天御剣流、でしたよね。それが恭文さんの剣術なんですね」

「え、違うよ? これ、漫画の技だし」

「あぁ、そうなん・・・・・・えぇっ!?」










・・・・・・フェイト、この子達にはサボるって文化だけじゃなくて、他のことも勉強させた方がいいって。





なんでエリオだけじゃなくて、キャロまで驚いてるの? るろうに剣心、すごく有名な名作なのにさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・え、マジでるろうに剣心知らないのっ!? ミッドでもすっごく有名なのにっ!!」

「はい。あの、私は自然保護隊で基本田舎で働いてましたし」

「僕も、あまり漫画やアニメなんかは・・・・・・見ないよね?」

「うん」



・・・・・・クールダウンもしつつ、僕達は中庭に座り込んで会議です。議題は、この二人が子どもらしさに欠けるということ。

なんて言うかフェイト、ダメだよコレ。もうちょりゆとりと遊び心を教えようよ。このままずっとは、ダメだって。



「というか、どうして恭文さんは漫画の技なんて使ってるんですかっ!? エリオ君が格下だとしても、ふざけ過ぎてますっ!!」

「きゅくきゅくっ!!」

「簡単だよ。単純に晒せる手札になるから」



そう言うと、キャロがポカンとした顔になる。それは、エリオも同じかな。今ひとつ意味が分からなくて、首を傾げる。



「前にも言ったと思うけど、僕は基本自分が魔導師として、何が出来るかとかそういうのを見せるのが嫌なのよ」

「そこは分かります。でも、それがどうして漫画やアニメの技に?」

「単純に、そういう技はみんな知ってるじゃない」



もちろん、実戦で有効だって言うのもある。現に、さっきも二連撃出来たし。

でも、それだけじゃない。晒すための手札ってのも、必要なのよ。



「別に僕の完全オリジナルってわけじゃないし、こういうのならまだ晒しやすい」

「つまり、こういう技を多用することで、本命の手札を隠す・・・・・・ですか?」

「うん。まぁ、エリオ達みたいにアニメ・ゲーム、漫画関係さっぱりな子は別としてよ?」

「「あははは・・・・・・なんというか、ごめんなさい」」



いや、別に謝らなくていいから。そんな申し訳なさそうな顔、しなくていいから。



「あとは・・・・・・アレだね、普通の戦闘マニュアルとか教本だけだと、型にハマりやすいの。
僕が前にぶっ飛ばした犯罪者で、こういう事言う奴が居たよ? 『局の魔導師はマニュアル通りにしか動かない』って」

「えっと・・・・・・どういう事でしょうか」

「例えば非殺傷設定。局では、基本的に解除はご法度でしょ? 二人もそう教わってるよね」





エリオ達は、納得したように頷いた。・・・・・・ここは、局の理念の一つだから。

犯罪者だから殺すという理屈は、認めない。人として扱い、可能な限り更生を促す。

甘いって考えるかも知れないけど、僕はこれっていい考えだと思う。



もちろん、被害者の人権をしっかりと保護した上でだよ? ここは絶対。

そうした上でなら、更生への道を誰にでも示すって言うのは・・・・・・良いことだと思う。

間違えたから、失敗したからコイツはダメでいらないなんて理屈、僕は嫌いだもの。



だから、非殺傷設定解除という言葉を聞いただけで表情を苦くする二人を見ると、なんか嬉しくなってしまう。



きっと、こういう子達がそんな理屈をぶっ飛ばしていくから。・・・・・・僕? 僕はそういうキャラじゃないよ。





「例えば、使う魔法。技術が進んでる分、ある程度体系化というか、局の魔導師が使える魔法や武装には限りがある。
非殺傷設定を守り、局の理念を守った上で戦おうと思ったら、ここはある程度は仕方ないんだけどね」



ここは質量攻撃だったりだね。魔法の中には、地面を操作して物理攻撃に持ってくってのもあるから。

普通に死なせるかも知れないような攻撃を、局の魔導師は使わないの。



「そういうのもあるし、局は魔法に頼り切ってる。
AMF対策だって、二人や六課みたいな一部のスーパー魔導師だけしか出来ない」

「そう、ですよね。現にJS事件では、地上部隊のAMF戦の練度の低さが問題になりましたし」

「うん。まぁようするに、漫画だったりアニメだったりの技を使うって言うのは、そういう部分に対する解決策なの。
あ、別にそのまま使うって意味じゃないよ? そういうのを見て、常に自分に問いかけるの。自分の魔法の、新しい使い方を」

「・・・・・・新しい魔法を発想するための、材料って考えればいいんでしょうか。
戦闘教本だけじゃなくて、そういうのを見るのも時としていい刺激になる」

「そうだよ。なお、僕はそういう魔法幾つか持ってるんだ」





・・・・・・僕、何の話してるんだろ。はぁ、まぁいいか。

このちびっ子達は、フェイトの被保護者だしさ。今までは、その・・・・・・ねぇ。

僕の中での複雑怪奇な感情・・・・・・えぇ、ヤキモチです。ちょっとジェラシー感じてました。



とにかく、そんなわけで今一つ会う気がしなかった。あと、仲良くなるつもりも無かった。

まぁ、フェイトの・・・・・・子ども? あぁ、子どもでも弟でも妹でもいいや。

とにかく、そうすると僕とも一応関係者になるんだよなぁ。でもフェイト・・・・・・ダメだって。



こんな子達が居るのに、潰れるようなアホな真似したらさ。

・・・・・・さっきのエリオの目や、プンスカしてたキャロを見て、気づいたよ。

この子達、フェイトの事が好きだし、潰れかけたことを相当気にしてる。まぁ、僕はいいのよ。



たださ、こんな小さな子達に重荷・・・・・・背負わせちゃダメだって。トラウマになるよ?

マジで、ダメだよ。フェイトはこの子達の事、泣かせるために引き取ったわけじゃないんでしょ?

それでさ、フェイトと一緒にアジトに乗り込んでたヴェロッサさんから、様子も聞かせてもらった。



・・・・・・スカリエッティの言う通りなんかじゃ、ないんでしょ? だったら、ダメだよ。



フェイトは誰が何言おうと・・・・・・この子達を理由に、壊れたり不幸になったりしたら、ダメだよ。





「もうちょっと、仕事や魔導師として強くなる事以外に目を向けてみたら?
犯罪や非行関係はアウトだけど、これくらいならいいでしょ」

「そうした方が、いいですか?」

「僕はそう思う。それに楽しくならない? 色々な事を知っていくのとか、触れていくのとか」

「それは・・・・・・はい。私もエリオ君も、六課に来てスバルさん達と会えて、楽しいことばかりですから」



そう言いながらキャロは、エリオを見る。エリオも、同じようにキャロを見る。

どうやら、二人にとって1番楽しかったのは、互いに会えた事らしい。それを見て、ちょっと微笑ましくなる。



「それで・・・・・・あの」

「なにさ」

「出来れば、恭文さんとももうちょっと仲良くなりたいというのが、僕とキャロの前々からの要望なんですけど」

「嫌。僕は仕事場では、きっちりしっかりハードボイルド通すって決めてるのよ。
スバルみたいにフレンドリーに振舞うのなんて、僕の趣味じゃない」





そう一蹴すると、二人は落ち込むような顔になった。なので、続けて追い打ちをかける。

・・・・・・当然でしょうが。僕は二人を基本的には、子ども扱いするつもりはない。

二人は立派な局員で、ライトニング分隊の分隊員。それで・・・・・・同僚なんだから。



そう、同僚なのよ。同僚だから、そんな緩い付き合い方はしたくない。





「だから、仕事場以外でならいいよ」

「え?」

「公私の区別をキチンと付ける事が条件だけど。・・・・・・言っておくけど、二人のためじゃないから」



そうだそうだ、これは二人のためじゃない。僕のためなんだ。もっと言えば、『僕×フェイト』の成立のためだ。



「アレだよ、フェイトを落とすために、二人を利用するのよ。それで3対1の多数決で、フェイトは僕の嫁決定だよ」

「そんな理由ですかっ!? というか、それでお付き合いするってどうなんですかっ!!・・・・・・いや、分かりました。
あの、ありがとうございます。公私の区別は、僕もキャロもキチンと付けます。そこは絶対に。ね、キャロ」

「はい。あの、ありがとう・・・・・・ございました」



・・・・・・ふん。あぁもう、なんでこんな甘く・・・・・・今更か。

あー、僕は結局ハーフボイルドなの? こういうの、嫌いなのに。



≪それなら、あだ名ですね≫

「今まで黙ってたくせに、いきなり口出しするなっ! てゆうか、なんであだ名っ!?」

≪いや、やっぱりこういうのはあだ名で『やすっち』とか『やっちゃん』とか呼ぶのが基本かと≫

「それ全部僕じゃんっ!! ・・・・・・でも、そうだなぁ。二人にそういうの付けるなら」



・・・・・・・・・・・・数秒、考え込む。エリオとキャロが、僕の前で正座しながら緊張した面持ちで待つ。そして、答えを出す。



「じゃあ、エリオは『エリ作』で、キャロは『キャロゴン』で」

「・・・・・・・・・・・・えっと、あの」

「恭文さん、それはその・・・・・・えっと」



どうやら、二人も喜んでくれているらしい。すっごく笑顔になってる。

とっても笑顔に・・・・・なってるよ? 僕には、そういう風に見えてるの。



≪あぁ、それはいいですね。かっこいいじゃないですか≫

「でしょ?」

「どこがかっこいいんですかっ!? あの、すっごくダサいと思うんですけどっ!!」

「そうですよっ! それにキャロゴンって・・・・・・私、怪獣みたいじゃないですかっ!!」










・・・・・・結果、エリオは『恭文』。キャロは『なぎさん』と呼ぶことに決定した。なお、僕は名前。

なんでだろう。エリ太郎とかキャトルミューティレーションとか、色々考えたのに。

そうして、その後はみんなで朝風呂に入り(男女別々に)さっぱりしたところで、解散。





仕事のあるエリオとキャロとは別れて、隊舎入り口へと向かって行った。





ちょっと時間かかっちゃったな。なのはにヴィヴィオ、もう待ってるかな?




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第8話 『とある魔導師の休日 一日目』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ザンクト・ヒルデ魔法学院。僕とアルト。それに高町親子がやってきた場所である。

ここは、古代ベルカの英雄と称される、聖王を信仰するする巨大宗教組織・聖王教会系列のミッション.スクール。

初等教育を行う5年制の初等部、中等教育をおこなう2年制の中等部の二つで構成されている学校。





更に上位の教育も、本人の希望次第で2年おきに進学が可能。

最終的には学士資格までも取得可能という、ミッドでも有数の大型学院がここ。

・・・・・・まさか、ここにヴィヴィオを入学させようとするとは、なのはも思い切ったなぁ。










「なのは、無茶苦茶名門校じゃない。で、いくら積むの?」

「いきなり裏口入学って決めつけないでよっ!! ・・・・・・まだ、正式ってわけじゃないよ。
まずは今日ここを見てみてからってことで。さ、行こっか。ヴィヴィオ」

「うん」





僕が急いで隊舎の玄関まで行くと、すでに二人の女神様はお待ちでした。

二人して『女の子を待たせるなんて最低〜♪』などとお冠でした。

なので、とりあえずなのははサイドポニーを引っ張って『黙れ下僕』と罵った。



そうしたらヴィヴィオが疑問顔だったので、なのはは僕にいじめられるのが好きだと話したら、納得してくれた。





「してないよっ! というか、ママいじめちゃだめー!!」

「ヴィヴィオ、そんな事したら、ママは寂しがるのよ? 昔からそうなんだから」

「ヴィヴィオに変なこと教えないでくれるっ!? というか、私はそんな変態さんじゃないもんっ!!」



ちなみに、今の僕の格好はジーンズ生地の上着にパンツ、黒のインナーという格好。さすがに陸士服で休日過ごしたくない。



「てゆうかさ、なのは」

「何かな」

「裏口入学は冗談だけど、入学って試験あるんじゃないの?」



なのはが、そう言われて固まる。そして見る。学校の入り口で、すっごい楽しそうにしてるヴィヴィオを。



「で、でも騎士カリムの推薦ももらえるだろうし」

「そういうコネを使うと、後々辛いよ? それがバレると、容赦なくイジメの対象になる可能性もあるんだから」

「・・・・・・どうしよう。今の内からもうちょっと、勉強頑張ってもらった方がいいのかな」



一応、ミッドとベルカ文字の読み書きや計算や、一般的な事は勉強してるらしい。

でも、普通にお受験だともうちょっと高いレベルになるよね。うーん、どうしよう。



「よし、その辺りも確認しておこうっと。恭文君、ありがと。私・・・・・・母親としてちょっとダメだったかも」

「あははは、思いつきで言ったから、そう感心されると辛いかも」










とにもかくにも、こうして学校見学はスタートした。





でも、よく考えたらなんで僕付き合ってるんだろ。ヴィヴィオのパパじゃないのに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・エリ作に、キャロゴン」

「その、恭文さん・・・・・・じゃなかった。なぎさんが、少しでも心を開いてくれたのは嬉しいんです」

「ただ、あの・・・・・・ネーミングセンスがちょっと。というかキャトルミューティレーションはもうダジャレですし」



エリオとキャロと一緒に、車で警備部回り・・・・・・なんだけど、私は車を運転しながら、頭が痛くなってた。

ヤスフミと二人が仲良くなってくれたのは、まぁ嬉しい。でも、あの・・・・・・あぁ、やっぱりここは直ってないんだ。



「二人とも、ごめんね。あの、ヤスフミは悪気はないの。・・・・・・本当に、ないの。ただあの」

「ただ・・・・・・なんですか?」

「ヤスフミ、致命的にセンスがないの。服装とかはまだ大丈夫なの。
ただ・・・・・・特にネーミングセンスがもうひどくて」



こう、私やなのはや、はやてが言うところの『微妙』なものを、『かっこいい』っていうの。

それでそれで、どういうわけか知らないんだけど昔から◯◯タロスって名前を付ける癖があって・・・・・・あれ、なんでなんだろう。



「・・・・・・納得しました」

「ちなみにフェイトさん、改善は」

「無理だった。幾度となく挑んだけど、ことごとく敗北」



別に、全部がアウトじゃないの。そこは絶対なんだけど・・・・・・ネーミングセンスと、一部のセンスがアウト。

そう言えば、ジガンスクードのネーミングも当初はヒドかった。盾代わりに使うから『タッちゃん』を正式名称にしようとしてたし。



「ヴィータも早々に匙を投げて、そこは気にしない事にしたんだ」

「でも、正直あれは修正した方が」

「私もそう思います。だって・・・・・・相当だったよね? エリ之介なんて、もう何したいのか分からないし」





・・・・・・服装は、普通なんだよね。何気にヤスフミ、そういうのにこだわりがあるから。

なのはのお兄さんの恭也さんと趣味が合うから、服とか似た感じなの。

ただ、その他の部分でセンスがこう・・・・・・ダメなんだよね。うーん、どうしよう。



お姉さんとしては、やっぱりここも何とかしたいなぁ。だって、彼女が出来た時に大変だよ。





「まぁ、ヤスフミとはちょっと仲良くなれたんだよね」

「はい。ただ、公私のケジメをキチンと付ける事前提ですけど。・・・・・・いい人ですね」

「エリオ、そう思ってくれる?」

「はい。僕達を子ども扱いしてないから、そういう風に言うのかなと思ったら、自然と」



・・・・・・あ、そっか。ちょっと厳しい言い方だなと思ってたけど、そういうことなんだね。

エリオとキャロの事、仕事の出来る同僚と思ってるから、そういう言い方したんだ。



「それに」

「それに?」

「フェイトさんの事、大好きみたいです。色々、事件中の事で心配してる様子でした」

「・・・・・・そっか」










心配、かけちゃってるよね。多分もう、私がスカリエッティのアジトでやった大ポカについては、知ってるだろうから。





そういうのも、ヤスフミが力を抜けない要因なのかな。なんか、ダメだな。私もヤスフミがここで居場所を作る邪魔をしちゃってる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ようこそいらっしゃいました。なのはさん、ヴィヴィオ」

「こんにちはシャッハさん。今日はお世話になります」

「シスター、お世話になります」



なのは親子が、今日一日学校を案内してくれるというシスターに挨拶をしている。

お辞儀したので、僕もそれに習いお辞儀。まぁ、こういうのは基本ですから。



「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。それはいいのですが、なんであなたがいるんですか?」

「・・・・・・久しぶりに会ったのに、いきなりな挨拶ですね。シャッハさん」





清楚なシスター服に身を包む、ショートカットで長身なこの女性はシャッハ・ヌエラさん。

聖王教会に所属するシスターなのだけど、教会のトップの補佐役兼秘書としても働く才女。

それと同時に、陸戦魔導師ランクAAAを保持する、近代ベルカ式魔法の使い手。



聖王教会では、『教会騎士』と呼ばれている猛者。それが、この女性のもう一つの姿である。

その腕前は、あのシグナムさんに『模擬戦をやって楽しい相手』と言わしめるほど。

まー、多少暴力的なところがあるのがタマにきずだったりするけど。



で、なぜそんな女性と僕が知り合いかと言うと、もちろん事情がある。





「以前、クロノ提督経由で、騎士カリムの護衛要員として仕事を依頼したことがあるんです」

「で、その時に知り合ってね。それ以来、聖王教会絡みの仕事の時はお世話になってるの」



二人で、僕とシャッハさんが知り合いだという事に驚いているなのはに、簡単に事情説明。



「・・・・・・つーか、知らなかったのね」

「そうだったんですか。・・・・・・恭文君、そうならそうでなんで教えてくれなかったの?」

「一応、守秘義務とかが発生するような案件になっちゃったから、誰と会ったとか何がどうなったとかは簡単に話せなかったのよ」



学園内に四人で入りながら、僕は軽くお手上げポーズで答える。そこから、ちょっとツッコむ事にした。



「というか、なのは。カリムさんと僕が知り合いだって知ってるでしょ?」

「恭文、そうなの?」

「そうなのよ?」



シャッハさんは、カリムさんの身の回りのことも請け負っているというのに。

いわゆる、秘書であり身辺護衛もやってる人なのよ。強いし、女性だからカリムさんも側に置きやすい。



「なのに、なぜにそこで気付かないのさ」

「あぁ、そうだったね。なんか、こう・・・・・・驚いちゃって」

「それはそれとして、なんであなたがここに居るんですか?」



シャッハさんが、疑問顔で歩きつつも僕を見下ろしながら聞いてくる。だって、僕の方が身長低いから。



「付き添いですよ付き添い。それ以外に何の用があると?
というか・・・・・・強引に巻き込まれたんです。僕、パパでもなんでもないのに」

「・・・・・・納得しました。というより、またそのパターンですか」

「はい。そのパターンでした」










・・・・・・シャッハさんは、色々と納得してくれたらしい。





僕、こういうパターン、多いもんね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、こんな感じで学校見学はスタートした。とりあえず、僕は完全部外者だけど、スタートした。

途中、学園の子ども達に連れられて、ヴィヴィオはその子達の案内で学校を見て回ることになった。

僕となのはは、シャッハさんと大人のお話である。とりあえず、試験は大丈夫だったので、なのはが安堵してた。





あとは、細々とした学校の事とか、制度などについてシャッハさんから説明を受けた。

当然、疑問があればなのははツッコむ。僕は、一切ツッコまない。だって、友達ではあるけど他人だし。

なのはの質問に、シャッハさんがそれに答えて・・・・・・ということを繰り返していると、突然通信が飛んできた。





画面に映るのは、一人の女性。金色の髪をして、シャッハさんの着ている修道服と意匠が似ているデザインの黒い服を纏っている。










『なのはさん、ごきげんよう』

「騎士カリムっ! あの、ごきげんようっ!!」

「あ、カリムさん。どうも」

『恭文君、あなたも来ていたのね』

「はい。お久しぶりです」



軽く挨拶すると、カリムさんはにっこりと微笑む。うーん、相変わらず素敵な笑みだ。



「恭文さん、あなたまた」

「お願いだから、もうちょっとちゃんと挨拶してよ。私、この間すっごくビックリしたし、恥ずかしかったんだから」

「いや、僕とカリムさんはこれくらいの関係性だって。色々付き合いもあるし」

≪まぁ、いつものことですよね。カリムさん、お久しぶりです≫

『えぇ、アルトアイゼンもお久しぶり』





突然の通信をかけてきたのは、金色のウェーブのかかったロングヘアーが眩しい一人の女性。

この学校を作った組織でもある、聖王教会の理事を務めるカリム・グラシアさん。

カリムさんとは、先ほど話した護衛任務の時に知り合い、紅茶やらお菓子の話で意気投合。



それ以来、教会の方で何かあった時には呼んでもらっている。



ちなみに、僕の二人居る、紅茶の淹れ方の先生の一人である(かなりのスパルタ)。





『六課に出向になったとはクロノ提督から聞いてたんだけど、その関係で?』

「はい。・・・・・・そこの横馬から拒否権なしで誘われまして」

「横馬ってひどいよっ!!」

『あらあら。女性には優しくしないとだめよ?』

「あははは、優しくして欲しかったら、真面目に僕の休日を大事にして欲しいんですけど。
僕、ヴィヴィオとなのはとは友達でも、学校見学来ていい立場じゃないんですよ?」



軽くそう言うと、カリムさんが苦笑い。なのははすっごく不満そう・・・・・・なんでそうなる。

現に、事実でしょうが。こういう時来るのは、パパとかだよ? 絶対僕じゃないって。



「恭文君、優しくない。というか、別にいいでしょ? せっかくだし一緒に休みを過ごして、友情を深めたいなと」

「バカじゃないの? 僕と友情深める暇があったら、ヴィヴィオと親子の愛を深めなよ」

「確かにそうかも知れないけど、そんな言い方無くないっ!? というか、ひどいよそれっ!!」

『なんというか、本当に仲がいいのね』



カリムさんが、楽しそうに笑うけど、気のせいだと思う。なので、訂正ですよ。



「いえ、犬猿の中です」

「あなた、なのはさん相手にそこまでするんですか」

≪むしろ、高町教導官だからこそ、これですね≫



ま、落ち込むなのはは置いとくとしようか。ほら、別に特に問題ないしさ。



「カリムさんは、またどうして通信を?」

『ちょうど手が開いたのよ。今はみんなで、学校見学の途中だと思ってかけてみたの』



あぁ、側近のシャッハさんが案内役だしな。カリムさんがスケジュールを把握してるのは当然か。



『でも、安心したわ。あなたも変わりないようですし』

「さすがに一ヶ月やそこらで変わったりはしないですって」

≪そうですね。特に重大イベントが起きたわけでもありませんし≫



なんて言うと、カリムさんとシャッハさんは苦笑い。まぁ、僕も同じような感じで返す。



「私としては、少しは変わってほしいんですけど」

「なのは、変わることはいいことだよ? でも、変わっちゃいけないものだってあるんじゃないかな」

「そんな真面目な顔して話しても、恭文君の意地悪は直すべきだっていうのは変わらないよっ!!」



失礼な。僕は優しいというのに。そう、優しいのよ? 基本的にはそういうキャラだし。



「カリムさん、僕意地悪じゃないですよね?」

『そうね、恭文君は優しいと思うわ。ただ、好きな子にはちょっとだけ素直になれないのよね?』

「いえ、僕はすっごく素直ですけど。フェイトとかリインとか」

≪なかなかに強いですね。私は嬉しいですよ≫



というか、別になのはは友達ですから。好きとかそういう関係じゃないです。

僕がそう言うと・・・・・・みんな、どこか苦いものをかみ締めたような顔で僕を見る。



『なんというか・・・・・・なのはさんも大変ですね』

「もう慣れました」

「慣れたってなんだよ?」

「気にしなくていいよ?」

「じゃあそうする」



なのはが、なんか叫んでるけど当然スルー。いやぁ、元気で良かった良かった。



「でも、ここはいいとこみたいですね」





唐突に話を変えてみる。いや、なのはこれ以上弄って泣かれても嫌だし。

なのは共々細かい説明は受けたし、ここに見学に行くというのを聞いてからも自分で調べたりした。

なのである程度は知っていたのだけど、実際見てみて、また違う感想を抱いている。



さっきヴィヴィオと話していた子ども達はノビノビと笑顔で過ごしていた。

ヴィヴィオも、そうだからなのか人見知りなんてせずに、すぐに溶け込んでいた。

こういうところなら、本当に・・・・・・うん、真っ直ぐに育ってくれるんじゃないかと思う。



『そう言ってくれると嬉しいわ。私やシャッハ、それにロッサも、時期は違うけどここの卒業生だから、環境の良さは保証出来ます』

「あ、なるほど。・・・・・・じゃあ、シャッハさんのバトルマニアやヴェロッサさんのあのノリは」

『そこはツッコまないでもらえると嬉しいわ。特にロッサよ』



あー、そう言えば説明が遅れてたね。カリムさんはファミリーネームが違うけど、ヴェロッサさんの義姉なのよ。

それで、シャッハさんはヴェロッサさんのお目付け役みたいな事をしていたとか。だから、この学校にも通っていたと。



「まぁ、ヴェロッサさんはともかくとして、この学校ならなのは的にも、安心出来るでしょ?」

「そうだね。あとはヴィヴィオ次第だけど」

「あー、そうだね。候補の学校、まだあるんでしょ?」



一応、2〜3箇所は休み中に見て回るらしい。だから、あとはヴィヴィオ次第だね。



「まぁ、それもあの様子なら大丈夫じゃないの?」

≪子ども達と楽しそうにしていましたしね。
六課には同い年の子どもは居ないですから、そのせいもあるのでしょうが≫

「だね。・・・・・・エリオとキャロは、堅苦しいからなぁ。友達って風には見れないんでしょ」

「当然だよ。恭文君みたいに、プライベートと仕事での切り替えがポンポン出来る子ばかりじゃないの」

「でもなのは、そうすると普通にヴィヴィオは現時点で友達は僕とアルトだけになるよ?」



なのはの言葉に、僕はなんとなしに返してた。なんとなしに返して・・・・・・気づいた。

なのはがビックリしたように目を見開いているのを。



「・・・・・・そう言えばそうだよっ! あぁ、よくよく考えたらそうだよねっ!?
スバルやティアナもそういうのじゃないし、もしかして私、子育ての仕方間違えてるんじゃっ!!」

「・・・・・・シャッハさん、カリムさん、ヴィヴィオの事は今後ともよろしくお願いします。
何分、母親がこんな感じなんで、色々抜けてるでしょうけど」

「そうですね。特別扱いにならないように、他の生徒と同じく接していきたいと思います」

『そこは私もね。でも、私が通信をかけてくる前に、他の子達とは意気投合してたんでしょう? だったら大丈夫よ』

「そうだといいんですけど」










僕は、言いながらひたすらに落ち込むなのはを見る。

真面目に友達とかそういうのを考えてなかった自分に、反省らしい。

なお、この後戻ってきたヴィヴィオはこの学校や、ここの子ども達をいたく気に入った。





結果、ヴィヴィオは春からこの学校に通うことになる。・・・・・・まぁ、アレだよね。





エリキャロが友達意識持ってるかどうか、今ひとつ不明だもの。僕とアルトが、ちょっと頑張らなくちゃ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あー、ちかれた」



現在、僕は一人。ヴィヴィオとなのはとは、学校の入口で別れた。

で、一人でのんびりとウィンドウショッピングなんてしつつ、家の近所まで戻ってきた。



「てゆうかさアルト」

≪はい?≫

「なんで僕達、学校見学付き合ったのかな」



あのさ、改めて考えても、全然分からないのよ。もうさっぱりなのよ。

少し日の傾いた街を、僕は腕を組みながら歩く。そうしながら、考える。でも・・・・・・さっぱりだ。



≪まぁ、厳密な言い方をすればありませんよね。まず、高町教導官と恋愛関係じゃないですし。
フェイトさんはともかく、あなたパパでもなんでもないですし≫

「フェイトと付き合ってたとしても、微妙でしょ? うーん、やっぱりあの親子は謎だ」

≪というより、高町教導官でしょ。ヴィヴィオさんが変な影響を受けなければいいんですけど≫

「そうだね。そこ大事だ」



でも、まぁいいか。なんだかんだで楽しくはあったしさ。・・・・・・そう、楽しかった。そして楽しみ。

だからこそ、僕はのんびりとニコニコしながら、歩いていけるのよ。



「さて、どっちにしてもここからお休みだ。あー、楽しみだな。というか、ダラけようっと」

≪完全プライベートモードは、こういう時でもなければ無理ですしね≫

「うん。だって僕、ハードボイルドキャラだし」

≪まだ言いますか≫



平和な時間は、これからである。そう、この三日の間は僕はお仕事モードは無しに出来る。

ようするに、完全プライベート。それに楽しみに・・・・・・してる所で、通信がかかった。



≪・・・・・・シグナムさんからですね≫

「あの・・・・・・凄まじく嫌な予感がするんですけど。出たくないんですけど」

≪恐らく、正解でしょう。まぁ、とりあえず繋ぎますか≫



逃げ場などないのは、僕達は二人とも分かってた。だから、アルトだって通信を繋いだ。

目の前に展開するのは、空間モニター。そこに映るのは・・・・・・シグナムさん。



『蒼凪、休み中すまない。少し頼みごとがあるんだが』

「嫌です。それでは失礼」

『待て待てっ! まず話を聞いて欲しいんだがっ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・ここは、六課隊舎の出入口。本来であれば、僕はここにいなくてもいい。

なのは達と別れて、そのまま家に帰るつもりだったんだから。

でも、そうはならなかった。シグナムさんに、呼びつけられた。





なお、僕へのお願いは、明日とある場所に、とある物をとある人に届けて欲しいというもの。

少し大事なもので、宅配で送るのも不安。だけど、六課メンバーは仕事のために動かせない。

だから・・・・・・僕、なのよ。本当だったら、断るところだよ。だって、休みだもん。





ただ、僕にも少し関係する話ではあったので、ここに来て荷物を引き上げた。

隊舎へ着くと、既に袋詰されていたそれを預かる。それで明日自宅から、その場所へ向かう。

ちなみに中身に関しては・・・・・・ちょこっと教えてもらった。さっきも言ったけど、僕も関係してるから。





とにかくちゃんと対策もしてあるので、基本的な扱いさえ気をつけてくれれば大丈夫だそうだ。










≪なんというか、全く休みになりませんね。シャマル先生に怒られますよ?≫

「・・・・・・それは言わないで」

「それでは蒼凪、すまないがよろしく頼む」

「はい。・・・・・・あー、届け先には話を通しておいてもらえますか? すぐに渡せるように」



そうじゃないと、場所が場所だし、手続きするのとかめんどくさそうだし。



「了解した。それは私の方で連絡を入れておく。私の名前と用件を出せば、すぐに通してもらえるだろう」

「なら大丈夫です。それじゃあシグナムさん、僕達は帰りますんで、また休み明けに」

≪届け終わったら、また報告のメールをこの人に書かせますので、吉報を待っていてください≫



あー、そうだね。書かなきゃいけないよね。というか、通信だね。うん、ここは大事だ。



「あぁ。それと二人とも、気をつけて帰れよ? 怪我でもしたら、シャマルに角が生えるからな」

「・・・・・・だったら、丸一日かかるようなお届けは頼まないで欲しいんですけど」

「そ、そうだな」





そんな会話をしながらも時間は過ぎ、そろそろ帰ることとなった。

見送ってくれたシグナムさんに手を振りながら、僕とアルトは預かり物を抱えて、自宅へと歩きだした。

僕の自宅は、実を言うと機動六課に近い所にある。



レールウェイや車などの移動手段を使うと、だいたい30分。歩きだと、1時間ちょいで着くような場所。

湾岸部と中央の境目に、その家はあるの。結構いい立地なのよ?

位置の割に首都や東西南北に分かれているミッドの各部への交通の便もいい。なので、2年ほど前からそこに居座っている。



そんな自宅を目指し、今日はゆっくりと歩いていく。今の時刻は夕方。

沈み行く夕日に照らされて、なんとなくセンチな気分で歩道を歩く。

レールウェイなどを使えば早く着くのけど、なんというか・・・・・・気分だ。



今日は歩いていたい気分だから。





≪そう言って、今日までの半分以上を歩いて隊舎に向かっているじゃないですか≫

「・・・・・・まぁね」

≪しかし、明日はそうは行きませんよ?≫

「でも、アレを使うし、多少は楽でしょ」



さすがに、場所が場所だからなぁ。徒歩は無理だって。



≪そうですね。でも、シグナムさんは大変そうですね≫

「ちょこっと事後話は聞いてたけど、結構気にかけてるみたいだね」



まぁ、仕方ないか。シグナムさんの性格だと、やっぱ戸惑う事が多そうだし。

いきなり、コレだもんなぁ。なんか、フェイトにも子育てというか、そういうコツを聞いてるらしいし。



「とにかく、パッと行ってパッと届けて、それから休みを満喫するとしましょ」

≪そうですね。行き先はちゃんと覚えていますか?≫

「もちもち」



そう、僕がシグナムさんから預かった荷物をどこに持っていくかというと・・・・・・あそこなのよ。



「ミッドの海上隔離施設にこれを持っていく。明日になったらさくっと片付けるよ、アルト」

≪了解です≫










こうして、休みの二日目の予定は決定してしまった。またまたお出かけですよ。





・・・・・・・・・・・・まぁ、しゃあないか。あそこは、元々行こうと思ってた場所ではあるから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



翌日、僕は実に気持ちよく目が覚めた。窓に目をやると、朝焼けが見える。・・・・・・さて、動きますか。

今日も少し早起き。アルトのモーニングコールより早く目が覚めた僕は、外に出る。

軽くジョギングをしつつ身体をほぐしてから、家に戻る。その後、家に常備してある木刀で素振り。





それからお風呂に入り、さっぱりした後、準備をして、朝食にありつく。

メニューは以下の通り。まず、昨日のうちにセットしておいた炊きたてのご飯。

それに、お味噌汁にすぐ火が通るサイズにカットしたジャガイモやタマネギをぶちこんで、鍋で煮込んだもの。





そして、サトイモの煮っころがし。昨日、家に帰る前に材料を買い込んで、帰ってからさっと作った。

味の方も、一晩置いておくことによって味が染みていい感じである。

炊き合わせは少し残しておいて、夕飯の時にまた食べるのがミソ。





主菜は、半熟の目玉焼きに焼いたウィンナー。

半熟の黄身の部分をウィンナーに絡めながら食べるのがまた美味しい。

多少行儀が悪いと思うので、一人で食べているときだけしかしないけど。





質素と言えば質素だけど、こういう食事を作る時間がある。





それが、とても贅沢なものに思えてくるから不思議だよ。










「・・・・・・とっとと帰ってぐーたらしてやる」

≪いいんですか? 色々話もあるんじゃ≫

「向こうはそうだろうけど、僕は特に」





ついついご飯のおかわりなどしてしまって、アルトに呆れられながらも朝食を終了。

後片付けをしてから、空間モニターを開いて、メールが来てないかどうかをチェック。

えっと、なのはにヴィヴィオからのお礼メールか。別にいいってのに、まぁ返事書いとくか。



あとは、シャーリー・・・・・・メールで休みのお土産の催促するなっ!!

なんでロングアーチ全員分のお土産リクエストが書いてるのさっ!?

・・・・・・あー、これは無視だ無視。というかリクエストが無茶苦茶だし。



適当にミッドバナナでも、どっかの店で買ってもっていけばいいでしょ。



それと、はやてか。





件名:遅くなってごめんな。恭文、休みは満喫しとる・・・・・・わけないわな。
ごめんな、シグナムが面倒なこと頼んでもうて。この埋め合わせは必ずするから、堪忍な?




よし、期待しようじゃないのさ。どんな埋め合わせをしてくれるのかさ。



まぁ、それはそれとして、恭文が来た時に約束した出向祝い、遅くなってもうたけど送らせてもらうわ。
夜天の主、八神はやてのドキドキライブラリーからの自慢の一品や




お、ようやく来たか。いや、待ちくたびれた待ちくたびれた。



ドキドキするからゆうて、あんま変なことに使わんといてな? フェイトちゃんが悲しむよ。
ほな、また休み明けに元気な姿見せてな。アンタの悪友の、八神はやてより






余計な一言さえなければ普通に読めるのに。とにかく、写真データをチェックだね。

おぉ、これは、素晴らしい。ちっちゃい頃のフェイトとなのはがくっついて写っている。

それでフェイトが顔を真っ赤にして、なのはに微笑みかけている。



これは確かにフェイトがドキドキなスクリーンショットっ!!





「・・・・・・って、あほかぁぁぁぁぁっ!!」



いや、可愛いよ? 今のフェイトとは違う、愛らしさは確かに素晴らしいよ? 見てると『はにゃ〜ん』ってなっちゃうよ?

だけど、僕はロリじゃないんだよっ! それで変な事とかしないよ興奮しないよっ!! 可愛くて萌えちゃうだけなんだよっ!!



「とりあえず、はやてはいずれぶっ飛ばす。絶対ぶっ飛ばす。というわけで、画像・・・・・・保存と」

≪結局保存するんですか≫

「しますけど、何か?」



なお、逆恨みではないかという意見はスルーします。さて、他のメールもチェックする。



「あれ? スバルからも来てる」

≪というより、いつの間にアドレス交換・・・・・・してましたね≫

「初日に帰る時にね。しかもこれ、多分プライベート用のアドレスだよ?」

≪・・・・・・またフラグを≫

「立ててないよっ!? むしろベシべシへし折ってると思うんだけどっ!! ・・・・・・とにかく、メールチェックと」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



件名:どうしてる?



やっほー! 恭文元気してる? なのはさんとヴィヴィオとの学校見学どうだったかな?

まぁ、上手くいったとは思うけどさ。メール見たら、どうなったか返事送って欲しいな。

こっちはね、ティアと一緒に母さんと、ティアのお兄さんのお墓参りすませてきたよ。



これから、ティアと一緒に、友だちの顔を見たりしながらゆっくり帰る予定。お土産も用意しているから、期待しててね♪



PS:休みだからって、いい加減に過ごしたらダメだよ? 休みが終わって、シャマル先生の許可が出たら、また模擬戦しようね。



スバルより




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・よし、出かけようか」

≪返信しないんですか?≫

「分かってないね。すぐに返信したら、スバルの性格上すごい勢いでチェーンするよ?
出かける所とか打っても『そうなんだ。ね、どこ行くの? 私は今ね』・・・・・・なんて返信される」



そうなったら、2日目はずーっとスバルとメールのやり取りじゃないのさ。嫌だ。絶対嫌だ。



≪納得しました。普通に否定出来ないのが、恐ろしい所です≫

「分かってくれて嬉しいよ。・・・・・・あ、フェイトからもメール来てるや。よし、返信と」

≪チェーンしますよ?≫

「しても良いのよ。だって、フェイトとの時間は僕の幸せー♪ むしろして欲しいー♪
・・・・・・よし、フェイトの性格を鑑みて、確実に返信してくるように返事しようっと」

≪・・・・・・それが長年の経験から出来るのが、恐ろしいですね≫





なお、フェイトとはこの後ほぼ一日メールし合う事になる。そして、僕は幸せを一杯感じるのだった。

とにもかくにも、僕はお出かけですよ。早めに出て、早めに帰って・・・・・・フェイトとのメールに集中する。

アルトを首にぶら下げて、厚手のジャケットに皮っぽい素材のパンツを身に付ける。



背中にシグナムさんから預かった荷物の入ったリュックを背負う。

というか、やたらとデカイなぁ。だけど軽いし・・・・・・どんな包装の仕方したのさ。

疑問はさておき、フルフェイスのヘルメットにプロテクター仕込みのグローブを持って、外へ飛び出す。



・・・・・・さて、僕がこんな格好をして、ヘルメットにグローブを持って出た時点で、気付いた方もいらっしゃるだろう。

そう、僕はバイクに乗れるのであるっ! 理由っ!? 仮面ライダーになりたいからに決まってるじゃないのさっ!!

せっかくの休みだし、例え人から言付かった用事のために出かけるとしても、そこに自分の趣味を加えるのに何の問題がある?



うん、無いよね。分かってた。すっごい分かってたし。

僕は、住んでいる借家の共用ガレージに行くと、保護シートを外し、バイクを押しながら外に出す。

ガレージの外に出てから、バイクのスタンドを立てて一旦止めてから、まじまじと見てみる。





「・・・・・・うん、すばらしい。何度見ても惚れ惚れする」



感動にも似た気持ちで一杯になる僕の前にあるが、自慢のマイマシンである。

僕が乗っているのは・・・・・・僕の故郷・地球のバイクッ! ホンダ・マシンデンバードッ!!



「・・・・・・あ、フェイトから返信来た。よし、返事書いて・・・・・・と。
うーん、文面末はもうちょっとフェイトが気にする感じがいいよな」

≪真面目に戦略立ててどうするんですか。というか、そこまで出来るのにフラグが立てられないって≫

「言わないで。お願いだから言わないで」





そう、あの過去と今と未来を守り抜いた仮面ライダー電王が乗っていた、青と白のペイントがとても綺麗なオフロードタイプのバイク。

ちなみに、身長の低い・・・・・・低い僕の体型に合わせて、タイヤはモタードタイプに交換してある。

・・・・・・いちおう断っておくけど、色んな意味で本物じゃないからね?



エンジンと車体は、デバイスの技術を応用した物で作られており、公害対策も施されていて非常にクリーン。

それでいながらスピードや出力自体もかなりのレベル。・・・・・・モノホンの設定には敵わないけどね。

ちなみに、動力源は僕の魔力or高電圧の専用バッテリーのどちらかでで動かすことが出来る。



バッテリーは、家のコンセントでも充電できるのがすごいところ。まるで地球の電気自動車だよ。



鍵は、当然例の長方形の黒いパスを差し込むことで起動する。





「・・・・・・うし、メール送信っと」



そんなモノローグをしながらも、僕はフェイトとのメールを打ち終わった。

返信までのタイムをも色々と計算に入れて・・・・・・あぁ、途中で5分起きに端末チェックしなくちゃ。



「ということで・・・・・・起動っ!!」



パスを差し込んで、イグニッションスイッチを押すと、エンジンがあっという間に動き出した。

うん、しばらく乗れなかったのに、すぐに動いてくれてよかったよ。



「アルト、お願い」

≪はい、デンバードとシンクロ開始。・・・・・・オートチェック完了。特に異常有りません≫





このバイクは、実はかなりすごい。まず、アルトとのシンクロ機能がある。

それによって、バイク全体を異常が無いか随時オートチェックが出来る。

あとあと、安全走行のためにナビゲートを行なったりできる。



果てはアルトのコントロールで、無人の自動走行も出来る機能もあるのだ。



・・・・うーん、こうやってあげてみると、やっぱりすごいな、このバイク。





≪それを試作品のテストという名目付きで、使わせてくれてるんです。感謝しないといけませんね≫

「だね」










実はこのバイク、完全に僕の物というわけではない。というか、ぶっちゃけちゃえば借り物なの。

本局の方で、局員が使用するヘリなどの特殊車両の開発と技術研究を行う部署に所属している友達が居る。

借りたのは、その人達からの借り物なのだ。これ、その部署が開発した災害救助用バイクの試作品なの。





なんでも、長期間に及ぶ運用のデータが欲しいとのことで、テスターを依頼された。当然、メンテやらのサポート付きで。





場合によっては、現場での荒事に使ってもらっても構わないとの許可も貰っている。その友達二人曰く・・・・・・こういうことらしい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「バイクは車なんかより小回りが効くし、災害現場での要救助者の捜索、または犯人の追撃などにはとても有効な乗り物なので、作ってみたの。
ただ、頭硬い連中から魔導師に必要ないだろってことで、アレコレ言われたんだけどね」

「・・・・・・いやいや、言われてたのに作ったらだめでしょ」

「あ、そっちは黙らせといたから安心して? もちろん、実力行使で。
つか、私の趣味に口出しするなんて100万年早いよ』

「笑顔で言うなよっ!! ・・・・・・まぁ、アレだ。『電王のデンバードって好き?』って突然聞かれて、素直に『大好きですっ!!』って即答したお前が悪い」



そう言われて、これに結びつけられる人間が居るとは思えないけど、それでも僕が悪いらしい。



「で、アルトアイゼンとのシンクロ機能は、やっさん一人で動かして怪我でもされたらたまったもんじゃないからつけてみた。
というわけでアルトアイゼン、よろしく頼むぞ。気になるとこがあったら、バシバシ言ってくれて構わないから」

「そうですか。てゆうか、それはあれですか? 僕は信用されてなかったりします?」

「気のせいだろ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



まぁ、あんまり文句も言えなかったけど。

実を言うとこれが送られてきたのは、実は去年の僕の誕生日なの。

何故か、届いた時にはリボンまでかけられていた。





それを考えると、テスターなんて話にも説得力が無くなるのは気のせいじゃないと思う。





なんというか、気の合う大事な友人達に、ただただ感謝である。










≪では、そろそろ向かいましょうか≫

「だね、アルト、ナビゲートよろしくね。それじゃあ、海上隔離施設へ・・・・・・とんぼ返りするぞー」

≪やる気ありませんね。いつもの事とは言え≫










ヘルメットを被り、グローブをはめて、バイクに跨る。

そして、ゆっくりとアクセルを捻り、クラッチを繋いで発進する。

時刻は10時になろうという時間。まず、目指すのはハイウェイの入り口。





そこから、海上隔離施設のある区域まで僕とアルトは、デンバードをかっ飛ばす。





なお、5分起きに端末をチェックして、フェイトからのメールに返信していったのは、言うまでもない。




















(第9話へ続く)




















あとがき



≪さて、恒例となってきた座談会形式のあとがき。どうも、メインパーソナリティの古き鉄・アルトアイゼンです≫

「恒例なんですね・・・。初めまして、機動六課所属、部隊長補佐をお仕事にしてる、リインフォースUです♪」

≪さて、意外と出番が少ないリインさんを相方にしつつ、話を進めたいと思います。
なお、加筆修正版と元のものを見比べてみたいというリクエストがありましたので、試験的に両方載せています≫

「それで、8話が二つあるのですね。他の話もやるのですか?」

≪まぁ、反応を見てですね。・・・・・・それであなた、どうしました? なんだか落ち込んでますけど≫

「だって、本当に出番少ないです。リイン、3話から出てないような気がするのですが」

≪まぁ、アレですよ。リインさんはマスターの魔導師になった時の話のヒロインみたいなものですし、やっぱりStS編となると、どうしても≫

「アレですかっ! 元祖ヒロインはいらないのですかっ!?
恭文さんはひどいですっ!! あの時の言葉は嘘だったですか・・・」

≪どの時の言葉ですか。まぁ、どうしても次回作だと、前作のサブキャラがヒロイン昇格という流れがあったりしますしね。継続してヒロインは難しいですよ。
攻略対象になっていたとしても、隠しキャラ扱いだったり≫

「世間は世知辛いのです。そして、妙に話がリアルなのです。
とにかく、今回の話です。えーっと・・・」



(リイン、自分サイズの台本をチェックして、今回の話の内容を確認)



「恭文さんとアルトアイゼンが、なのはさんとヴィヴィオの学校見学に付き合うというお話ですね」

≪そうです。一応、作者的案としては、スバルさんとティアナさんのお墓参りに付き合うというのもあったそうです。
ですが、そこまでの関係性を二週間で築けるかという話になり≫

「作者の技量的な部分で無しになったと・・・。確かに、ちょっと考え辛いかもしれないですね」

≪あぁ、それと断っておきますが、ここに居る私達と、本編内に居る私達は似て非なるものなので、細かい事は気にしないで下さい。
アレですよ、オーディオコメンタリーとでも思ってください≫

「原則的に、恭文さんは出さないそうですけどね。でも、恭文さんは電王好きなのですね・・・」

≪無駄に好きですね。劇場版第二作のクライマックス刑事も、仕事があるというのに、必死になって地球に戻って、劇場で見てましたから。
なお、マスター的には傑作だったそうです。TVそのままのノリで最終回の言葉が実現されたのが、相当嬉しかったようで≫

「感動したとも言ってたそうですね・・・。とにかく、そろそろ締めるですよ。えー、次回は・・・」

≪私とマスターが、シグナムさんからの預かり物を手に、海上隔離施設へと向かうお話です。
ということで・・・あの方たちが出ます≫

「そのついでに、リインも出して欲しいです・・・。え、これを読めばいいですか?」



(黒子から、追加台本を渡されるリイン。それを、少し緊張した面持ちで読み上げる)


「えー、一つ補足です。話の構成の都合上、SS04の内容とは、メンバーの休み中の行動を若干変えているので、そこを踏まえていただけるとありがたいとのことです」

≪この補足の意味は、恐らく次回に分かると思います。さーて、どたばたするといいですね。マスターが見てて面白くなりますから≫

「その発言もどうなのですかっ!? とにかく、次回をお楽しみに♪
そしてっ! 私に出番をくださいですっ!!」










(妖精と、凶悪なウサギのぬいぐるみがカメラに手を振る。そうして少しずつフェードアウトしていって・・・終幕)




















フェイト「・・・・・・私は、和食も好きだな。この間外回り中に食べたお店が」

はやて「フェイトちゃん、何しとるん?」

フェイト「あ、ヤスフミとメールのやり取り」

はやて「・・・・・・いやいや、アイツ休み中やし、付き合ってたら一日経ってまうで?」

フェイト「そうだけど、なんだか嬉しいんだ。ほら、事件のせいでヤスフミとはメールも出来なかったから」

はやて「あぁ、そうやったな。まぁ、仕事はちゃんとしとるみたいやしうちは何も言わんよ? でも、マジで付き合うつもりかい」

フェイト「うん。こう・・・・・・相互理解って、大事なのかなってちょっと思って」

はやて「・・・・・・色々と理解出来てない部分は多いけどなぁ」










(おしまい)






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