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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第57話 『Reunited with his close encounter of the sea/とある魔導師達とガーディアンと八神家の休日』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

スゥ「ドキッとスタートドキたまタイム、本日のお話は・・・・・・海ですよぉー」

ラン「蒼い海、白い砂浜・・・・・・そして白い壁が綺麗な家っ! まるでどこかの避暑地っ!!」

ミキ「今回はガーディアンのみんなでそんな場所で過ごすお話だよ。
あぁ、ミッドの海・・・・・・楽しみだなぁ。相当綺麗だって言うし」





(立ち上がる画面に映るのは、蒼い海と白い砂浜。そして風に揺れる栗色の髪)





ラン「私も私もー! だって海に来るのも久しぶりだしー!!」

スゥ「それでは今日は潮風の匂いもさせつつ行きますよぉ。せーの」





(というわけで、本日もお馴染みなポーズ)





ラン・ミキ・スゥ『だっしゅっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ミイラ取りがミイラになるという言葉がある。中々に人の本質を突いた言葉だと私は思う。

お昼ごろにようやく帰って来た恭文さんとフェイトお嬢様とあむさんがそれだろう。

なのはさん達を迎えに行ったはずなのにこれとは・・・・・・ただ、少し事情が変わった。





どうも迎えに行った時に×たまが出現して浄化していたらしい。それならまぁ、時間がかかったのも分かる。





ただ、普通に新しいメンバーが私達の知らない間で生まれていたのにはびっくりした。










「・・・・・・よー、オレはリズム。よろしくなー。いえー」

「いえーでち」

「いえー。クスクスクスクスー」

「いえー! てーかお前ノリいいなー!!」

「いえー。・・・・・・せ、拙者はこれは恥ずかしいのだが」



なんて言いながら、しゅごキャラなみんなとハグをしまくるのはなぎひこさんのしゅごキャラ。

当然ながら大騒ぎとなったのは察して欲しい。普通にこの段階で生まれるとは思っていなかったから。



「・・・・・・すっかり他のしゅごキャラと仲良くなってるわね」

「そうだねー。ノリがいいみたいだし。・・・・・・一部を除いてだけど」



ややがそう言うのには理由がある。その話から外れてリズムを恨めしそうに見る視線がある。



「く、くそ・・・・・・王を差し置いて目立ちおって」



それは唯世さんのしゅごキャラのキセキ。普通にリズムが注目を浴びているのが辛いらしい。

ハンカチを両手に持ってその一部を噛んで引っ張っている。・・・・・どこの昼メロだろう。



「まぁキセキは大丈夫でしょ。アレもいつもの調子だし」

「そうだね。でもなぎー、良かったね。それもいきなりキャラなりしたんでしょ? ずるいずるいー」

「ですです。リインだってキャラなりしたいのに全然で・・・・・・アレ、なぎひこさん?」

「藤咲さん、どうされましたか?」



他の面々が楽しげにしてる中、なぎひこさんはシオンとキャラなりした恭文さんと同じくヘコんでた。

というか、疲れてる。それも相当に。なのはさんとのバスケのためとはちょっと思えない。



「・・・・・・フェイトさん、なのはさん、まぁ恭文は分かるんっすよ。
でも藤咲はどうしたんですか。普通に疲れ果ててますし」

「あの、もしかして×たま以外にも何か?」

「そこは私も気になります。・・・・・・フェイトお嬢様」

「うん、あの・・・・・・まぁなんて言うか、リズムってノリがすごくいいキャラなんだ」

「そうですね、そこは恭文さんと同じくだと思います」



言いながら、私はもう一度あの子を見る。・・・・・・そのノリの良さですっかり親しんでる。

その結果、キセキがどう思うかというのは・・・・・・まぁ、察しておいて欲しい。



「だからその・・・・・・ねぇ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・おーし、しまっていこー!!」

『おー!!』



それは私達が落ち込むヤスフミを引っ張って帰る途中の事。

近くのコートで野球をしている子ども達が居た。その元気な様子を、私達は歩きつつも微笑ましく見る。



「あ、暑いのに元気だねー。・・・・・・ほらほら、恭文君も元気だそうよ。私は黙ってるし」

「なのはさん、全然聞こえてないです。普通に今日はダメージ大きかったみたいです」

「まぁ『ビートショット』だしね。というかシオン、色々自重していこうよ」



ミキちゃんが、私と手を繋ぐヤスフミを言いながらも見る。

なお、今日のヤスフミは相当に憔悴してる。リズムが止め刺したから。



「ほら、ダメージも大きいし・・・・・・その分ボクが頑張るしさ」

「お断りします。私に自重という文字は存在しません」

「いや、さすがにそれはどうなのっ!?」

「・・・・・・楽しそうだな。よしナギー、せっかくだし混ぜてもらおうぜ」



そうそう、楽しそうだからナギーもやろう・・・・・・え?



「キャラチェンジッ!!」



リズムがそう言うと、ナギー君・・・・・・もとい、なぎひこ君の首元にキャラなりの時にも着けていたヘッドホンが突然に現れた。

装着した途端になぎひこ君の目が軽く釣り上がって、不敵な笑みを浮かべながら走り出す。



「えっ!? あ、あの・・・・・・なぎひこ君っ! どこ行くのー!?」

「イエーイっ! ヘイガイズッ!? オレも混ぜてくれよー!!」



そしてそれから数十秒後。なぎひこ君はバットを持ってバッターボックスに乱入。

私達が止める間もなく野球に加わって、大ホームランを打ってその場に居る全員を唖然とさせた。



「イエー!!」

『イエー!!』



その様子に私達がグラウンドの外で呆然としていると、なぎひこ君のヘッドホンが消えた。

それからなぎひこ君はバットを放り出しリズムを捕まえて、隅の方に蹲る。



「いやぁ、楽しいなー。ワクワクだぜ」

「・・・・・・リズムー!!」

「・・・・・・お、あっちではサッカーしてるな。よし、もういっちょ行くぜ」

「こら、僕の話を」



そして当然だけどまたまたヘッドホンを装着。勢い良くなぎひこ君は立ち上がると、そのまま叫ぶ。



「イエェェェェェェイッ! さぁさぁ行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

『あぁぁぁぁぁぁっ! お願いだから止まってー!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「じゃあもしかして今の今まで」

「・・・・・・うん。その調子でサッカーにバトミントンにテニスにラグビー。
近くでやってたスポーツのあらかたに乱入して大暴れして、ノリの良さで人気者になって」

「それであれなの。普通にそこのクラブ勧誘とかされて大変だった。どこの子かもかなり聞かれた」



なのはさんとフェイトお嬢様が疲れた顔でそう言う。・・・・・・本当に大変だったと思った。

なぎひこさんを責めるわけにもいかないし、リズムも・・・・・・全然懲りてない感じだし。



「うぅ、『まさかキャラチェンジしてました』とは言うわけにもいかないから、本当に大変だった」

「それで恭文以外の全員で『ごめんなさーいっ!!』って言いながら必死に逃げて・・・・・・あたし達ようやく戻って来れたの」

「なんというか・・・・・・大変だったな。しかし、あの藤咲のしゅごキャラがそんなキャラだったとは」

「ちょっと驚きだよね。藤咲君から産まれるしゅごキャラだから、もっと落ち着いたキャラだと思ってたんだけど」



空海さんと唯世さんがどう言えばいいのか分からない顔で、しゅごキャラ勢にすっかり溶け込んでいるリズムを見る。

・・・・・・キャラチェンジだけならまだ大丈夫よね。キャラなりみたいに外見そのものが大きく変わるわけではないから。



「・・・・・・フェイトちゃん、なぎひこ君のアレってキャラチェンジ・・・・・・だっけ」

「うん。それでキャラチェンジは、大きく性格が変わっちゃう場合があるんだ。
というより、キャラチェンジの時に力を貸してくれたしゅごキャラ寄りになる」

「あたしとか恭文がそれなんです。でも、なぎひこもそれだったとは」

「話を聞く限り、思いっきり性格変わってるよね。
というかというか、ヴィヴィオが知ってるなぎひこさんと全然変わってるよ」





フェイトお嬢様から聞いた事があるけど、しゅごキャラには二つのパターンがある。

一つは今の完成された自分の延長線上・・・・・・もっと言うと、別の自分の可能性を探している内にそれが形になる場合。

そしてもう一つはそれとは逆。まだ自分が未完成で、なりたい自分を探している最中。



どちらがダメでどちらが良いという話ではない。ただ、それでも差異が出てくるらしい。



例えば、後者はキャラチェンジだと性格が大きく変わる。それがなぎひこさんやあむさんになる。





「とりあえず、バケツ用意しておこうか。海里君、私にもアレ教えてくれないかな」

「なるほど。藤咲さんがキャラチェンジした途端にバケツをかぶらせるのですね。それはいいアイディアです」

「ちょっと待ってっ!? フェイトちゃんも海里君もなんの話してるのかなっ! というか、バケツってなにっ!!」



なお、リズムによるキャラチェンジがバケツでは止まらない事をこの時の私達は知らなかった。

それによりなぎひこさんがまたヘコむけど・・・・・・まぁ、ここは気にせずにいきたいと思う。



「よし、じゃあ早速練習だよ。あ、もしかしたらシオンのキャラチェンジとかもそれで止まるかも」

「試してみる価値はありますね。ハラオウンさん、俺の技がどこまでお役に立てるかは正直分かりませんが」

「ううん、大丈夫だよ。明後日はまたお出かけだし、ここは頑張りたいんだ」

「だから話を聞いてー!? 二人の世界に入らないでー!!」










なお、シオンのキャラチェンジも全然止まらなかった事も追記しておく。





というより、ここは当然よね。恭文さんのシオンとのキャラチェンジは、他のそれとは全く違うもの。






















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/だっしゅっ!!


第57話 『Reunited with his close encounter of the sea/とある魔導師達とガーディアンと八神家の休日』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



なぎひこ共々大変だったあの日の翌々日。僕達は午前中の宿題を今日はお休みして、朝一番である場所に向かっている。

そこはミッドの中央から南より。僕達の友達の自宅。海沿いの近くの高台に、家なんぞ建てた。

7月の朝にしては日差しが強い中、この集団でレールウェイをひと乗りして揺られる事しばらくワクワクタイム。





潮騒の匂いがする駅に降り立った。で、普通にややとかが騒ぐわけですよ。










「わぁ・・・・・・海だ海だー!!」

「ミッドの海も青いのね」



ややだけじゃない。りまにあむ達も、感嘆とした声をあげる。

駅を降り立った僕達の前には広がるのは海。青い海が、広がっているのだ。



「そうだよ。こういうところは地球に割合近いんだ。それでヤスフミ、はやての家の場所って」

「大丈夫。前に来たこと・・・・・・あれ、フェイトはないの?」

「うん。実際に来るのは初めてかな。なのはもそうじゃないかな」



なお、なのはとヴィヴィオは欠席。なのはは教導隊のお仕事。

で、ヴィヴィオは学校。またウサギのお世話である。



「あ、そうだね。なんだかんだで距離があるから」





そのまま僕達は歩く。・・・・・・ここははやての家の最寄駅。うん、あの狸はミッドにも家があるのよ。

元々こっちに来る時に決めた家(借家)があったけど、六課解散後にいい機会だからって言って、引っ越したのよ。

ほんの少しだけ首都の喧騒から離れた海沿いの街。ここには海鳴と同じ匂いがある。



だからフェイトとリインも、どこか懐かしそうな顔をしている。





「蒼凪さん」

「うん、どうしたの海里?」

「その八神さんという方は、どういう方なのでしょうか。
蒼凪さんとハラオウンさんと高町さんの幼馴染なのは聞いていますが」

「そう言えばそうよね。私と海里となぎひこは、なのはさんとヴィヴィオの時と同じく会った事ないもの」



・・・・・・なお、なぎひこがまた苦笑いをしているのは、気のせいじゃない。

まぁそこにはツッコむことなく、僕は二人の疑問に歩きながら答える事にした。



「関西弁を使う相当に腹黒くなってしまったゆかりさんと思えば、だいたい合ってるよ」

「合ってないよっ! ヤスフミ、その説明は正直どうなのかなっ!?
あと、ゆかりさんのイメージについても疑問があるんだけどっ! 一応私のお友達なんだけどっ!!」

「なるほど、だいたい分かりました」

「理解したわ」



分かるのっ!? 僕は正直ダメだと思ってたのにっ!!



「海里君とりまもそれで分かるって、少しおかしいよっ! 特に海里君っ!! 君ゆかりさんの弟だよねっ!?」

「いえ、とりあえず方向性は分かりましたので」

「私もよ」



海里がメガネを正しながら、りまがサムズアップしながら言ったので、それ以上フェイトは何も言えなくなった。



「とにかく八神さんは・・・・・・高町さんとハラオウンさんと蒼凪さんの幼なじみでしたよね」

「それでそれで、リインの家族なのです。はやてちゃんと会うの、久しぶりなのです。
・・・・・・恭文さんとの婚約の話も、ちゃんとしなくちゃいけないのです」

「うん、そうだね。でも言いながら僕と手を繋ぐのはやめて? その期待に充ち溢れた笑顔もやめて?」

「あ、ダメだよ。私が第一夫人なんだから」



そして右手をフェイト、左手をリインに占領されて・・・・・・あれ、これ何のデジャヴだろ。

なんでリインとフェイトは僕の目の前で火花を散らしてるの? あの、怖いんですけど。



「・・・・・・フェイトさんには負けないのです」

「私だって負けないよ? リインに負けないくらいに、ヤスフミと愛し合うんだから」

「あの、いきなりそういう話はやめないっ!?
てゆうか、あむ達も普通に距離を取るなっ! ディードまで目を背けないでー!!」










・・・・・・・・・・・・普通に僕はフェイトとリインに占領されながら歩く。なお、逆に占領し返す度胸はない。





だって、普通に町中なんだもの。そんなの、無理だって。





あ、そう言えばヴェロッサさんもお休みなんだっけ。いやぁ、きっと肩身が狭いんだろうなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・デザートはこれでよしっと。ヴェロッサさん、手伝ってくれてありがとうございます」

「問題ないよ。僕、八神家の婿養子だし」



太陽の光が差し込むキッチンの中。私はヴェロッサさんとお料理中。

カラフルなアロハシャツを来たヴェロッサさんが、夕飯の仕込みを手伝ってくれていた。



「そう言えば恭文やフェイトちゃん達は」

「もうすぐ来るそうです。あと、例のガーディアンの子達も」

「そっか。クロノの話だと色々と楽しい子達だから、会うのが楽しみですね」

「そうですね」



まぁ、結婚当時は色々あった。うん、本当に。ただ、ヴェロッサさんはいい旦那さんではある。

なので私達も普通に、はやてちゃんの良き旦那様として接している。



「シャマルさん、嬉しそうですね」

「えぇ。・・・・・・恭文くんが学校に通って、ちゃんと友達を作ってるって聞いてたので。
だからガーディアンの子達には、感謝してるんです。会うのもとっても楽しみ」

「そうですか」





もう10年。本当にあっという間。10年前のあの子は・・・・・・本当にボロボロだった。

親から放置され、大事な友達との約束も守れなくて。手を血で染めても、それは変わらなかった。

それでも立ち上がって、守るために真っ直ぐに戦う道を選んだ。ただ、そのために失ったものもある。



学校というひとつのコミュの中に入って、通じ合える友達を作る事。それがその一つ。

もちろんそれが出来なかったから、恭文くんが不幸だなんて言うつもりはない。

うん、そんなつもりはない。あの子は夢に真っ直ぐに向かって行ったとも考えられるしね。



恭文くんの『なりたい自分』は、野上さんや桜井さんに近いから。うん、見ていて気づいちゃったの。

恭文くんはきっと、野上さん達みたいな守るために真っ直ぐに戦える人になりたいんだなーって。

もっと言うと正義のヒーロー・・・・・・というか、泣いている誰かの一番の味方かしら。時々そういう事を言うから。





「・・・・・・でも、現地妻1号はやめた方が」

「いいんです。・・・・・・私、あの子には幸せになって欲しいですから」










多分初めての失恋から1年半。でも、やっぱり好き。だって、フラグを立てられまくったのよ? それも相当。

胸を触られ、手を握られ、一緒にお風呂に入って、添い寝した。あの子と私だけの時間や思い出がちゃんとある。

大事で大切で、胸が温かくなる思い出が本当に沢山あるの。だから私はお姉さんでいい。恋人じゃなくていい。





でも、いつだってあの子を癒す優しい風ではありたいの。あの子は私に本当に大事な時間をくれたから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・リイン達はもうすぐ到着か」

「だな。まぁ、こんな格好だけど問題ねぇか」

「海も近いしな」





庭で日光浴をしながらシグナムと雑談。なお、普通に水着。

いや、この間は大変だったな。アギトの奴がまたバカ弟子と暴れたらしくてよ。

ブレイズフォームやってる時は楽しそうだしなぁ。止めるの気が引けるくらいに。



というか、マジでバカ弟子はどうなんだ?普通に他のマイスターが居るユニゾンデバイスとばかり融合するしよ。

まぁ、リインはいいんだよ。もうバカ弟子のパートナーだから。ただ、アギトもそうだろ?

で、咲耶も孫の恭太郎のパートナーだろ? なんか最近はやての孫のパートナーが色々あって、こっち来てるらしい。



というか、一緒に来るとか。だから内心ドキドキしてる。リインの妹だって言うし。

それでその子も巻き込んで超・てんこ盛りしたとか。・・・・・・アイツ、どこまで行くんだろ。

てーか、普通に自分のユニゾンデバイス・・・・・・あぁ、だめだ。



なんかそれはそれで、今よりも更にスゴいことになりそうな気がする。

融合した時のアクションとかがもう処理追いつかないくらいに・・・・・・なぁ?

それになによりだ、さすがにてんこ盛りはバカ弟子が持たないだろ。



アイツのクライマックスフォーム、使ったらバカ弟子はダウンだしよ。髪も真っ白になるし。

それでフェイトとシャマルが心配するんだよ。初めててんこ盛り使った時も、大変だったな。

パスの力があるとは言え、複数のユニゾンデバイスとの同時融合してるんだ。



そんなの当然のようにこの長い歴史の中では、前例も無ければ無茶なのも変わらない。



バカ弟子、普通にクライマックスフォームはやめとけ? アタシも、正直アレは不安になる。





「そう言えばシャマルが角を出していたな。またてんこ盛り使ったーって」

「さすがにこれで三度目だしな。ただ、身体に後遺症とかはないんだったな?」

「あぁ。でもマジで無茶なのは変わらないから、絶対やめろって言ってる」



この辺りもさっき言ったようなのが理由だ。複数のユニゾンデバイスとの融合なんて、前例がない。

アギトや咲耶とユニゾンしても問題はない。だけど、てんこ盛りになると・・・・・・アレだ。



「確かにそうだな。というよりオーナーが蒼凪にあのパスを渡すのが、そもそもの問題では」

「しゃあねぇだろ。アレ、元々バカ弟子のものなんだしよ。
・・・・・・しかし、ガーディアンの奴らとも久しぶりだな」

「そう言えば、お前は会っていたのだったな」



春・・・・・・あぁ、春なんだな。季節はもう夏。なんかどんどん時間が過ぎるのが早くなるなぁ。

でも、なんか嬉しーや。『生きてる』って感じがしてよ。前はずっと同じような時間だったから。



「どんな子達だ?」

「一言で言うと面白い奴らだな。あ、エリキャロと違って年相応だから安心しろ」

「そうか。・・・・・・いや、それは安心出来ないのだが。それだと余計に気を使う。
その子達は魔法のことや局の仕事に理解を示しているとは言え、局員でもなんでもないのだしな」



シグナム、その発言は色々だめだと思うぞ? まぁ同業者だと、こっちは気を使わなくていいってのはある。

そういやなんかメンバーが入れ替わってんだよな。新顔もあるし、アタシもちょっと気を引き締めるか。



「・・・・・・姉御、シグナムー! ジュース持ってきたぞー!!」



アギトが言いながらお盆を持ちながらこちらに歩いてくる。なお、当然のように慎重に。

アタシとシグナムは身体を起こして、アギトの方を見る。



「アギト、すまないな。・・・・・・調理場の方はいいのか?」

「あぁ。シャマ姉をロッサの奴が手伝ってるしな。アタシ、あんまやることなかったりする」

「そうか。そう言えば、主はやては」



現在、はやては海沿いを散歩中。でも・・・・・・ちょっと遅いな。



「あ、それなら心配ねぇ。ザフィーラが迎えに行ってるから」

「そうか」

「なら、もしかしたらバカ弟子達と鉢合わせしてるかも知れないな」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕達はゆっくりと海沿いの道を歩く。歩いていて、僕とリインとフェイトはひとつの影を見つけた。

蒼のワンピースに、上に半袖のシャツを羽織っている女の子を。

ただ、僕達が知っているのよりも髪が長い。少なくともこの間会った時よりは少し。





なので、僕達はそのままその女の子が居る砂浜へと降り立ち、声をかける。










「・・・・・・なーに黄昏てんのよ」



その子は、こちらを振り向いてビックリした顔をする。そして、笑う。



「別にそういうわけとちゃうよ。普通に仕事の連絡をもらっただけやから。
しっかし、久しぶりやなぁ。リイン、元気しとったか?」

「はいです、はやてちゃん」



いの一番でリインに声をかけるのは、家族だからだと納得することにする。

そう、目の前に居るのははやてだ。でも、髪が長い。いつの間にかセミロングになってるし。



「恭文もフェイトちゃんもディードも、あとガーディアンのみんなもお久しぶりや。よう来てくれたな」

「うん、久しぶり。はやて」

「八神さん、お久しぶりです。私もお誘いを受けて来てしまいました」

『お久しぶりです』



・・・・・・なお、ここでは当然のように抜けている人間も居る。それはあの四人です。



「うん。ディードも久しぶりやな。念願叶って恭文の妹やけど、どないな調子や?」

「毎日楽しく過ごしています。・・・・・・こういう穏やかな生活は、私に合っているようです」



嬉しそうにディードが微笑む。それを見てはやてもそうだけど僕も笑う。だって嬉しいもの。そう言ってもらえると本当に。



「・・・・・・えっと」

「お、リースお帰りなぁ。いやぁ、恭文の補佐は大変やろ」

「い、いえ。あの・・・・・・えっと、只今戻りました」



はやてに笑顔で言われて、リースが緊張し気味に返す。なお、このやり取りは正解。

だってデンライナーの事を知らない人間も居るもの。ここで『初めまして』はおかしい。



「そういやそっちの子達は初めてやな。初めまして、八神はやてです。
・・・・・・あぁ、そっちのメガネをかけた君が三条海里君やろ」



はやてが笑いながら海里を見る。で、海里は驚いた顔をする。というか普通に僕達もビックリなんだけど。



「は、はい。初めまして、元ガーディアン・Jチェアの三条海里です。・・・・・・あの、八神さん」

「なんや?」

「なぜ俺の名を?」



そう、ここがビックリな理由。普通に初対面のはずなのに。僕も細かくは話してない。

で、フェイトとリインを見る。二人も首を横に振った。



「色々とうちらのコミュの間では、君は有名なんよ?
このデンジャラスチビスケと肉体言語で語り合って、親交を深めた勇士ってな」

「そうなのですかっ!?」



はやてがどこか嬉しそうに頷く。・・・・・・てーか、誰がデンジャラスチビスケだよ。



「はやて、それは誰経由の情報? 僕もフェイトもリインも、そこは知らなかったんだけど」

「クロノ君からちょろちょろとな」



クロノさん、余計なことを。てーか、普通に海里とは色々あったのは事実だけど、そこまでじゃないって。



「でな、フェイトちゃん。あと他のみんなもか。
実はうち、それと一緒に例の件について触りだけは聞いとるんよ」

「例の件? 触りって・・・・・・もしかして」

「なんやみんなでエンブリオっちゅう、正体不明のもん探しとるんやろ?
『願いを叶える』力を持った・・・・・・下手したら、秘匿級のロストロギアになるようなシロモン」



あむ達は驚いてるけど、僕達は納得した。ようするに聞いたのはお仕事絡みだったと。



「なんかあって管理局で処理せなあかんような事件に発展した場合、力を貸して欲しいって頼まれてるんよ」

「それで八神さんは三条君と蒼凪君の間で有った事も、知っていたんですね」

「まぁな。・・・・・・あぁ、クロノ君怒るんはなしよ? やっぱ最悪の自体は想定しておかんとあかんし」



はやての言っている『最悪の場合』というのは、エンブリオ絡みで次元災害が起こる場合なのは留意しておいてね?

というか、先日のアレでそこは確定になってしまった。図らずもクロノさんの危惧は当たったのよ。



「ガーディアンのみんなは知らんやろうけど、うちはフェイトちゃんやなのはちゃんとちゃうんよ」

「それはどういうことかしら。あなたも局員なんですよね?」



りまが聞くので、はやては簡潔にみんなの疑問に答えることにしたようだ。そのまま言葉を続ける。



「そうや。ただ、うちはフリーの捜査官・・・・・・ようするに、事件が何か起きるやろ?
そうしたらそこの管轄の部隊の要請を受けて、捜査活動をするんが仕事なんよ」

「あ、一応補足ね。はやてはそういう立場だから、元々色んな所で仕事をすることが多いのよ。
一つの部隊に入ってたらもうそこの管轄だけで仕事って感じなんだけど、はやてはそうじゃない」



そして全員が納得してくれた。まぁ、ややとあむがちょっとはてなマーク浮かべてるけど。



「今恭文が言うたみたいに、常に一つ所に居るわけちゃうから。うちみたいなんはやっぱ動かしやすいんよ」

「・・・・・・納得した。でも、クロノは私には何も無かったんだけど?」

「あー、ちょうど会うし、うちから話したかったんよ。まぁ、色々確認する意味も含めてな」





現在はやてはフリーの特別捜査官を続けている。まぁ、事件ごとの捜査チームの指揮を取る感じかな。

六課解散後、色んな所から部隊の部隊長をやらないかと誘いを受けていた。でも、全部断ってこれ。

はやて的に機動六課でのアレコレは、反省材料が多いらしい。部隊長はしばらくやめにしたとか。



ただ、それで夢を諦めたわけじゃない。経験を積みながら、夢を追いかけているのである。

ひとつの部隊の部隊長になって、成果を上げて、局を変えるという夢をずっと。

・・・・・・だからだろうか。はやてもなのはと同じく、この間の結婚式の時に相当ヘコんだ。



そんな自分なのに夢が見えないのは、自分がそれを大事にしてないからなのかと・・・・・・かなり。





「ま、いざという時は頼むよ? 基本僕とあむ達が前に出るけど」

「なんや、そうせんとあかんらしいな。そこも聞いてるわ。
で、あむちゃんだけやのうて、みんなのしゅごキャラも居るんよな」

「しゅごキャラの事まで聞いていた・・・・・・って、当然ですよね」



なぎひこが言いかけて納得した。うん、当然なのよ。

だってエンブリオは、そのたまごが変化したものかも知れないんだから。



「でも、それだけちゃうんよ。つい最近あむちゃんと恭文から教えてもろうてな」

「あ、このあたりはなのはが知っているのと同じ理由なんだ。海鳴で偶然私達、あむと遭遇しちゃって」

「あ、あむちーの従兄弟の結婚式ですよね。
・・・・・・そっか。フェイトさんの同級生なら、はやてさん達も知ってて当然ですよね」

「そういう事やな。うーん、やっぱりうちはどうもダメっぽいなぁ」



はやてがあむ達の方をジーッと見る。

・・・・・・多分、みんなの周りのしゅごキャラを見ようとしてるんだと思う。



「これ、うちもフェイトちゃんと同じく後方支援専門かも。
・・・・・・ほんまやったら、マジでみんなみたいな素人を突っ込ませたくないんやけど」





こうなってくるともしかしたら、エンブリオ自体も同じかも知れない。

ようするに、キャラ持ちだったり見える人間にしか手に出来ないのよ。

その場合、マジで対処はキャラ持ちの人間に任せるしかない。



・・・・・・例の予言の事もあるから、普通に戦力は欲しいけど・・・・・・かなり厳しいな。





「うん、そこは私もずっと思ってる。特にブラックダイヤモンド事件では、相当危険な目にも遭わせちゃってるし。なんというか・・・・・・ごめん」



フェイトがまた申し訳無さげに・・・・・・とりあえず、頭を撫でてフォローする。




「しゃあないでしょ。普通の魔法では、たまごの浄化も無理。
その上、普通に大半の人間はしゅごキャラが見えないと来てる」



実際最初の頃はフェイトは見えてなかったもの。そして、今も浄化は無理。



「いやいや、良いわけないやろ。色々事情込みとは言え、局の都合にこの子達巻き込んでるも同然やし」





・・・・・・恭太郎と咲耶、リース以外は。あのバカ孫達は、普通に浄化用のプログラム持ってたし。

この間の月夜の一件で気づいた。そうじゃなかったら、ビルちゃんであんなど派手に斬りつけるはずないし。

多分リースも持ってるね。超・てんこ盛りや紫ビルちゃん形態時に、色々頑張ってたし。



ただ、僕はツッコまない。恭太郎達が言わなかった理由、なんとなく察しが付くから。





「・・・・・・あぁもうっ!!」



あ、なんかややが頭抱えてたと思ったら、いきなりキレた。



「フェイトさんもはやてさんも、そういうのはもう無しっ!! というか、フェイトさんっ!?」

「な、なにかな」

「やや達、前に言いましたよねっ!? エンブリオを探すのも×たまを助けるのも、全部やや達がやりたいからやってるだけだってっ!!」



ややに苛立ち混じりにそう言われて、フェイトがハッとしたような顔になる。そしてはやてがフェイトを見る。フェイトは・・・・・・頷いた。



「別にやや達、管理局のためにやってるわけじゃないんですよー!? ね、みんなもそうだよねっ!!」



そしてガーディアンメンバーは全員、ややの言葉に頷く。

全員だから、僕とリインも頷く。それにはやてが少し驚いた顔をする。



「ややの言う通りっすよ。まぁ俺はもうガーディアンじゃないっすけど、それでも」

「・・・・・・こころに×が付いちゃうのって、すごく悲しい事なんです。だから絶対助けたい。
×が付いたなら全部取りたい。そう思うからあたし達みんな、今までやってきたんです」

「フェイトさん、あと・・・・・・八神さんもお気持ちは嬉しいですけど、そんなこと言わないでください。
僕達は管理局やお二人に利用されてるつもりなんて、これっぽっちもありません。それに」



唯世が言いながら、僕とリインを見る。なので、僕はお手上げポーズで返す。



「僕達だけじゃなくて、蒼凪君とリインさんがいます。二人はガーディアンのジョーカーUとVです。
とても心強い切り札を二枚、ちゃんと貸してもらってます。だから、大丈夫です」

「・・・・・・そっか。なら、納得するわ。な、フェイトちゃん」

「うん。・・・・・・というか、ごめんね。やっぱり、心苦しくはあって」

「分かってます。僕もそうですし、みんなもフェイトさん達の気持ちは分かっていますから」



唯世の言葉に、フェイトが安心したような顔になる。それを見て、はやてはなんか嬉しそう。



”・・・・・・恭文”



嬉しそうだから念話が来るのかも知れない。なので、返事をする。



”なに?”

”みんなえぇ子やな。クロノ君から少し聞いてはいたし、この間会った印象も有ったんやけどそれでもや。特にややちゃんやな”

”・・・・・・なんでやや?”

”この子ちょっと子どもっぽい感じやけど、フェイトちゃんの落ち込み空気を一瞬で変えたんよ?
それで全員の事も引っ張った。もしかしたら、一種のカリスマ性があるんやないかな”



言いながら、はやてはフェイトと話し始めたややを見る。あと僕も同じ。

・・・・・・ややが、カリスマ性。赤ちゃんキャラなのに。



”なるほど、ちょっと納得かも。やや、そういうところがあるから”

”やろ? ただ、そんな常にリーダーシップ取る感じやないな。
こう・・・・・・周りがこの子を放っておけないイメージや。ようするに可愛らしいんよ”

”確かにね。ある意味親和力かも”

”あ、それは言えるかも知れんなぁ。まぁこっちの方が相当に微笑ましいけどな”





ブラックダイヤモンド事件の時、サリさんから自分達が主役と言われたのをきっかけにみんなの士気を上げたりしてたもの。

それにややはなんだかんだでガーディアンの中では、親しまれてる方だと思う。

ガーディアンは『唯世様』とか『りま様』みたいに、尊敬というか崇められている節がある。



でも、ややに対してだけはそういうのじゃない。まぁ、ここはこの間のPちゃん捜索でも言ってる所だね。

そういうのも、はやての言うややの『カリスマ性』のおかげなのかも。あ、ややがこっちを見て笑った。

まるで空に浮かぶ太陽のようにまぶしく。なので、僕も笑い返す。・・・・・・ヤバい、なんかこの表現はクサいわ。





「・・・・・・主はやて」



はやてにかかってきた声は、僕達が歩いていた歩道側から。

その人・・・・・・というか狼は、普通に砂浜を歩いてくる。



「あぁ、ザフィーラ。もしかして、呼びに来てくれたん?」

「はい。・・・・・・あぁ、お前達も久しぶりだな」

「ザフィーラ、久しぶりですー」

「・・・・・・すごーいっ! ワンちゃんが喋ってるー!!」



一言そう言うと、ややがザフィーラさんに抱きついた。なお、止める間はなかった。



「わわ、毛並みもふさふさー! あぁ、この子いいなー!!」

「・・・・・・娘、我は犬ではないのだが」

「あ、またしゃべったー! 恭文、ミッドって喋るワンちゃんが居るんだっ!!」



いや、あの・・・・・・とりあえずフェイト達と顔を見合わせる。僕と同じように、困った顔をしていた。



「蒼凪、すまんが頼む。どうもこの娘は、我の話を聞いていないようだ」

「分かってます。・・・・・・あのやや? ミッドのワンちゃんは基本喋らないから。そしてザフィーラさんは狼だから」

「あ、そうだよね。じゃあ、狼が喋るんだね。でも、怖くない。あぁ、可愛いなー」

「違うよっ!? てゆうか、とりあえず離れてっ! 行きながら説明するからっ!!」










とにかくはやての家にみんなで向かいながら、説明と自己紹介をしていくことにした。





でも、もう夏なんだな。気候からして、変わってきてるし。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・じゃあ、ザフィーラさんは守護獣という存在なんですか」

「そうだ。主の魔力と生命エネルギーを分け与えられて、存在している存在だ。
ミッドの言い方をすると、使い魔というものになるな。我はそれとはまた違うが」

「えっと・・・・・・どういうこと?」



ややは今ひとつ話が理解出来てないらしい。そして、そこにはやてが補足をする。



「まぁアレや。毛並みふさふさで人間形態にもなれる凄い子って考えれば、4割くらいは合ってるから」

「あ、なるほどっ!!」

「待て待てっ!? その認識は色々間違ってるってっ! というか、4割ってまた微妙な数字だねオイッ!!」

「・・・・・・蒼凪、もういい。とりあえずややの認識が直れば、我はもう何も言うことはない」

「あぁ、すみませんすみませんっ! あの、ややはこういう子なんで、あんま気にしないでいいですからねっ!?」



夏の日差しが周りの木々の葉の合間から溢れる。

そんな中を僕達は歩いていく。ザフィーラさんについての話をしながら。



「でも、使い魔って・・・・・・なに? 魔力と生命エネルギーを分け与えるって」

「あ、使い魔って言うのは魔導師の・・・・・・うーん、友達って言えばいいのかな。
死亡した直後の生物と、特殊な契約を結ぶことで使役出来る存在なんだ」



自分も使い魔を持つフェイトが、りまの言葉を受けて、みんなに歩きながら説明していく。で、僕もそこにちょっと乗っかる。



「使い魔はその契約がある限り、主となる魔導師の魔力と生命エネルギーを分け与えられる。
それで生命維持を行うんだ。さっきザフィーラさんが言ってたのは、それだね」

「それは・・・・・・蘇らせるというのとは、また違うのですよね?」

「そうだね。海里が言ってる事も分かるけど違う」



これ、結構昔に作られた魔法術式なんだけど謎も多いんだよなぁ。

誰が作ったとか、どうして生まれたとか、そういうのも判明してないし。



「へぇ、魔法技術ってそんなのもあるんですね。あたし、ちょっと驚きかも」

「ただ使い魔は欠点というか・・・・・・ちょっと問題があるのよ」

「問題?」



僕はあむの言葉に頷く。まぁこれも社会勉強の一つということで、説明しよう。



「まず使い魔は、魔力と生命エネルギーを主のそれに依存し切ってること。
だから相当能力がある魔導師じゃないと、維持出来ない」

≪だからこそ優秀な使い魔を持つということは、それ自体が一つのステータスになるんです。
・・・・・・あ、使い魔も魔法戦闘を行う事が可能なので、そういう意味合いで言っています≫



つまりだ、あんな強い使い魔を二人も引き連れてるグレアムさんは、どんだけかと。

はやての結婚式で久々に会ったけど・・・・・・変わってなかったなぁ。ロッテさんの勢いとか。



「それで、使い魔の問題はこれとイコールとも言える。
使い魔は時に使い捨てとして扱われる事があるの」

「・・・・・・使い捨て? なんだよ、また穏やかな言い方じゃないな」

「でもその通りなの。使い魔は、契約がある限りは生存出来る」



フェイトが僕の言葉を引き継ぐ形で、歩きながらみんなに説明していく。



「だけど、その契約が満了したり契約者が使い魔との契約を解除したら、使い魔はそのまま消滅するの」

≪この辺りはマスターがさっき話したように、生命維持の全てを主との契約に依存し切ってる故です≫

「それは・・・・・・逆を言えば、主は使い魔の生殺与奪権を常に所持しているということでしょうか」



唯世が考えながら、そう言って来た。だから、僕達は頷いた。



「そうだね。だから契約を盾に、使い魔に望まない事をさせる主も・・・・・・居るの」

≪例えば奴隷のように扱い、無休金での奉仕活動をさせる。
例えば、犯罪行為に手を染めさせる・・・・・・などです≫

「大体30年前くらいまでは、それが普通だったんだ」

「・・・・・・そんな」



これが使い魔の問題点。まぁ死んだ生物の再利用をしてるだけだとか、抜かすのも居るけどさ。

基本フェイトだったりグレアムさんみたいなのは、昔は本当に少なかったらしいのよ。うん、悲しいことにね。



「あむ、ややもそんな泣きそうな顔しなくていいから。・・・・・・そこの辺りは、契約者次第だから」

「だけど、契約が満了しちゃったら消えちゃうんでしょ?」

「うん、そうだね。でも、契約の仕方次第なんだ」

「フェイトさん、どういう事ですか? あの、ややとあむちーにも分かるようにお願いしますー」



フェイトの言うように契約の仕方で、使い魔は使い捨ての道具なんかじゃなくなる。

生殺与奪権を主に握られているとしても、それでも。



「これはあくまでも一例だけど・・・・・・私も実は使い魔と契約してるんだ。本当に子どもの頃に契約したの。
その子とは、簡単に言えば『死ぬまでずっと一緒に居る事』って契約を結んでる」

「ずっと一緒に? ・・・・・・あ、そっか」



ややも他もみんなも気づいたらしい。

フェイトが小さな頃に思いついて交わした契約が、この問題に対してのひとつの答えになることを。



「そうすればハラオウンさんは、その使い魔と本当にずっと一緒に居られるのですね」

≪そうです。それを成す事が、Sirと彼女が交わした契約ですから≫

「てーかそれだと、契約がどうしたら満了になるのか分からないよな。
少なくとも『◯◯をしろ』って言うような、簡潔なゴールが見えないって」

「そうだよ。もちろん主であり魔力と生命エネルギーの供給元である私には寿命がある。
空海君の言う『ゴール』は、私達にとってはそこなんだ。私の死がゴール」



フェイト、不死身でも不老不死でもなんでもないもの。普通に死ぬ時は死ぬ。



「だから私が死んじゃったら、契約は満了される。でも私が死ぬまでは、一緒に生きていられるの。
・・・・・・私もね、あの子と本契約を結ぶ時にこの問題を知って、どうしようかって考えたんだ」

「それでずっと一緒に・・・・・・フェイトさん、ややなんだか感動しました」

「あの、その・・・・・・そんなことないよ? 私はただ、命を使い捨てみたいに扱いたくなかっただけだし」



ややのキラキラした視線を受け止め照れながらも、フェイトは両手を振る。・・・・・・でも、それってすごいことだと思うけどな。

人同士はまぁ、大丈夫としてよ? そうじゃないと軽く見ちゃう風潮って、あるにはあるから。



「ちなみに現在では使い魔にも人権や法的保護が約束されてる。
使い捨ての道具扱いは禁止されてるの。だからもしも使い魔と契約する場合は」

「ハラオウンさんのように友達というか家族というか、とにかくずっと付き合う覚悟を決めて・・・・・・ですね」

「そうだよ」

「使い魔やろうとなんやろうと、心があってそこに居る以上、生きてる存在なんは変わらないからなぁ。
例え見えんでも同じやないかとうちは思う。みんなのしゅごキャラかてきっと同じやないかな」



それでみんなはそれぞれのしゅごキャラを見る。なお、僕はシオン。

シオンは軽く右手で髪をかき上げながら微笑んでいた。それが・・・・・・うん、なんか嬉しかった。



「・・・・・・あぁ、そうや。恭文」



はやてがいきなり僕の方に矛先を向けてきた。なので、僕は笑顔でこう返す。



「なに? タヌキ」

「アンタ、まだうちをタヌキ扱いかっ!? こんな素敵な人妻やのにっ!!
・・・・・・まぁえぇわ。アンタは普通にこれから地獄を見るんやしな」

「地獄? いやいや、なんでそうな」



言いかけて気づいた。確かにその可能性があることを、僕は知ってる。



「まさか」



そして搾り出すような僕の声に、はやてとザフィーラさんが頷いた。



「そうだ。お前、またてんこ盛りを使ったそうだな。まぁアギトから大体の事情は聞いているが」

「それでシャマルが角出してるんよ。普通にお説教は覚悟しといた方がえぇな。
てーかマジでうちらも使わんで欲しいんよ。アンタもそうやし、リイン達も心配やもん」



一応てんこ盛りを使って負担がかかるのは僕だけ。リイン達は平然としてる。

でもそうだよなぁ。同時融合なんて前例がないって、泣かれた事あるしなぁ。



「・・・・・・だ、大丈夫。ほら、使いようがないでしょ?」



咲耶は未来の人間だし、アギトは基本シグナムさんについてるし。



”あの、私達ユニゾンデバイス組は特に問題はないので”

”いやいやリース、そういうわけにもいかんよ。コイツ、普通に楽しそうやし。
・・・・・・でも、マジでリインの妹なんやなぁ。で、うちの孫のパートナー”



はやてが左隣を歩くリースを見る。どこか本当に感慨深い目をしている。



”はい。さきほど挨拶させて頂きましたけど、なんというか・・・・・・色々と感慨深いです”

”あ、うちもや。なんか、ようやっと良太郎さんや恭文の気持ちが分かったわ。うん、こういうのめっちゃ嬉しいなぁ”










・・・・・・はやては一応結婚している身。だけど、色々思う所はあるらしい。





自分の時間が未来に繋がっていく可能性を見て、色々と。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして楽しくみんなで話しながら、あたし達は八神家に到着した。

二階建てのかなり大きめな家。あ、なんか広めの庭まであるや。

白塗りの壁と青い屋根のコントラストが綺麗で・・・・・・なんか、すごいなぁ。





局って福利厚生もお給金もいいってリンディさんから聞いてるけど、これはそのせいなのかな。










「・・・・・・恭文くーんっ!!」



玄関に入ったあたし達を見つけて、声をかける女性が居る。それは・・・・・・え?

金色の髪をして翡翠色のワンピースを着た女性は、そのまま恭文に抱きついた。



「シャ、シャマルさんっ!?」

「会いたかった・・・・・・! あぁ、この抱き心地も久しぶりっ!!」

「だからっていきなり抱きつくなー! ほら、みんな見てるしっ!!」



フェイトさんにシャマルさんと呼ばれたその人は、すぐに恭文から離れた。

離れて恭文の両肩に手をかけながら、あたし達に優しく微笑む。



「はやてちゃんにザフィーラ、リインちゃんもおかえり。あと、聖夜小ガーディアンのみんなよね?」

『はい』

「初めまして。八神家のシャマルです。いつもリインちゃんや恭文くんのこと、ありがとね。・・・・・・あ、それとあなたが結木ややちゃんよね」

「え? や、ややですかっ!?」



いきなりややに話が回った。驚くややを見つけて、シャマルさんが微笑む。



「・・・・・・うん、リインちゃんから聞いてた通り。私、あなたと会いたかったの」

「あの、どうしてですか?」

「リインちゃんからメールで聞いてるの。同じクラスになって、あなたが良くしてくれてるって。
リインちゃん、同級生みたいな子が今まで居なかったから本当に嬉しそうで」

「シャ、シャマルー! バラさないでくださいですー!!」



リインちゃんが慌ててシャマルさんを止めようとするけど、それで止まるわけがない。普通にそのまま話を続けようとしている。



「もし良ければ、これからもリインちゃんと仲良くしてあげてくれないかしら?
そっちに居る間もそうだし、距離が開いても。お願い出来る?」

「シャ、シャマルー!?」

「・・・・・・はい。あの、ややもリインちゃんの事、大事なお友達だと思ってます。
あ、でもリインちゃんだけじゃないです。恭文や、こてつちゃんとジガンちゃんもです」

「そう。ありがと、そう言ってもらえると嬉しいわ。・・・・・・というわけで」



・・・・・・あたし達全員、気づいてしまった。シャマルさんの両手が、強く握られたのを。

そして笑っているけど目が笑ってない。思わず全員で後退りしてしまった。



「恭文くん、てんこ盛りを使った事についてちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉっとお話しましょうか」

「え? ・・・・・・あ、あの・・・・・・やっぱりですか」

「やっぱりよ。それも、なにやら上に『超』まで付けたそうね?
いわゆる超・てんこ盛り。私、話を聞いた時に本当にビックリしたわ」



超・てんこ盛り・・・・・・あぁ、超・クライマックスフォームか。あのダサくて気色悪いデザインの最強形態。

でも、あの時も大変だったなぁ。恭文、変身を解除したら髪の毛真っ白になってるし。



「というわけで、みんなはゆっくりしててね? 私は恭文くんと少しお話があるから。さ、いきましょ」

「あの、言いながら引きずらないでー! 痛いっ!! 両肩持って引きずるのは、凄く痛いのよっ!?」



そのまま恭文は家の中に引きずり込まれた。とりあえずあたし達は全員手を振って見送った。



「・・・・・・ハラオウンさん、てんこ盛りとはなんでしょうか」

「というか、しかも上に超って・・・・・・恭文、大食いでもしたのかな」

「うん。ちょっと事情があって、やる必要があったんだ。やっぱり怒ってたかぁ」



海里君とややの言葉に、フェイトさんが困ったように答える。というか、そうだよね。

空海以外は全員記憶が変わってた事は覚えてないんだし、そうとしかいえないよね。



「あのフェイトさん、アレは一体」

「あ、あむは知らなかったね。・・・・・・シャマルさん、魔導師のお医者さんなんだ。
それでヤスフミやなのはの主治医もしてくれてるの。ほら、ヤスフミがあんな状態だったでしょ?」



『あんな状態』というのが、超・クライマックスフォームを解除した後の恭文だと言うのはすぐに分かった。

だから唯世くんやいいんちょ達に聞こえないように、小声で話してきたフェイトさんに頷く。



「リイン達はともかく、ヤスフミに本当に負担のかかる変身形態だから使わないようにって言われてたの。まぁ、今までは大丈夫だったんだ」

「咲耶さんが未来の人間だから・・・・・・ですよね。てんこ盛りになる事自体が無理だった」

「うん。・・・・・・ヤスフミ、夜まで合流出来ないかも」

「そんなに怖いんですか?」

「悪い患者さんにはって条件が付くけどね。だからなのはもシャマルさんには、頭が上がらないの」










どうやらなのはさんもその『悪い患者』らしい。その理由はあたしには分からないけど。





とりあえず恭文に合掌しつつ、あたし達は普通に家の中に入った。二階から感じる、妙な威圧感は気にしないようにしつつ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・よく来てくれた。私がシグナムだ。そして、私がアギトのマイスターだ。
よく覚えておいてくれ。アギトと蒼凪もユニゾンは可能だが、私がアギトのマイスターなんだ」

「いや、シグナム。そんな力強く、しかも何度も言わなくても」



全くだ。ほら見ろ、コイツら全員苦笑いしまくってるじゃねぇかよ。

しかもお前、マイスターじゃなくてロードだろうが。必死過ぎてこんがらがってるし。



「・・・・・・でも、久しぶりだなー」

「アギトさん、お久しぶりでーす♪」

「おう。ややも元気してたかー?」

「はいっ!!」





バカ弟子が二階でシャマルにお説教されてる間に、あたし達はリビングで自己紹介。

なお普通に服を着てる。さすがに水着はアウトだと判断した。

そして二階から感じる禍々しい威圧感は、気にしないことにする。というか、しちゃいけねぇ。



気にして触れようとした時点で、アタシら全員ノックダウンだ。あれはそれくらいに強烈なんだ。





「でも、八神さん・・・・・・ご結婚されてたんですね」

「そうですね。あたし、ビックリしてます。しかも・・・・・・かっこいい」

「あはは、ありがと。でも、君も中々魅力的だと思うな」



待て待て、なぜ口説く? いや、リップサービスなのは分かるけどやめてくれ。

お前、今のはやてが一瞬二階から感じる『アレ』と同じものを出す目をしてたんだぞ?



「あ、ありがとうございますっ!!」



あむや唯世達が見るのは、当然ヴェロッサ。うちにとってのマスオさん。

そういや、みんなには話してなかったんだよな。



「そうや。まぁ、ちょお仕事の都合で夫婦別姓にしてるんや。
けど・・・・・・そろそろ、アコース名乗ってもえぇかも知れんなぁ」

「はやて、僕が八神性を名乗るというのもありだよ? ほら、『ヴェロッサ・アコース・八神』みたいに」



ヴェロッサが躊躇いもなくそう言ったのを聞いて、アタシ達は驚いた。

・・・・・・もしかしてコイツ、八神の性を残そうとしてくれてる?



「あ、それはいいかも知れませんね。その・・・・・・私も『フェイト・テスタロッサ・ハラオウン・蒼凪』になるし」



そしてヴェロッサに乗っかるようにフェイトがそんなことを言う。

それを見てみんなが思う。糖分過多なイチャラブは継続・・・・・・え?



『いやいやっ! それは長いってっ!!』

「でも、テスタロッサもハラオウンもそうだし、きっと蒼凪も大事な名前になるんだ。
だったら全部名乗りたいの。どれか消すなんて・・・・・・嫌だ。アコースさんもそうですよね?」

「ま、まぁね。でもフェイトちゃん、さすがにそれは長過ぎるんじゃ」

「大丈夫です。噛まないように、早口言葉の訓練を始めてますから」



なにガッツポーズで自信満々に言い切ってんだっ!? コイツはっ!!



「生麦生米生卵っ! 隣の客はよく柿食う客だっ!!」



なんかいきなり訓練の成果を披露したっ!?



「・・・・・・えっと、これはなんとか出来るようになったんです。だから途中で噛んだりしません」

「そ、そうなんだ。あははは・・・・・・すごいね」










そしてヴェロッサがアタシやガーディアンのみんなを見る。

もちろん困ったようにだ。そして『どうすればいいの、これ?』と思ってる。

もう伝わる伝わらないじゃない。だってアタシ達全員、同じこと考えてたから。





あぁ、バカが進行してるっ! すっげー勢いで、バカが進行してるよオイっ!!





普通にコイツの天然、酷くなってるっ! バカ弟子は一体なにやってんだっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・普通にお説教されてます」

「そうね、お説教されてるわよね。・・・・・・でも、本当に自重して。
リインちゃん達はなんともないけど、逆にその負担をあなたが背負ってるのよ?」

「はい。・・・・・・それで、その」

「前回からは1年近く・・・・・・本当に間が開いてるし、問題はないわよ?」



そっか、それはよく・・・・・・ないよなぁ。普通にシャマルさんの視線が厳しいもの。



「ただ、最大魔力値が4%近く落ちてる。症状としては、なのはちゃんのブラスターと同じよ」



シャマルさんは二階の自分の部屋で僕を正座させながら、僕の手を見る。僕の右手に持っている、ライダーパスを。



「いくらそのパスとベルトにユニゾンカード経由で恭文くん自身のオーラから生まれるフリーエネルギーの補助があっても」



ベルトやパス、あとはユニゾンカードは僕のオーラをフリーエネルギーと呼ばれるものに変換する能力がある。

電王やゼロノスはそれでアーマーや武装を構築しているけど、僕の場合はそれでユニゾンを可能にしてるの。



「複数の融合騎との同時ユニゾンが無茶なのは変わらないわ。
そんな無茶をしてロードであるあなたの身体やリンカーコアに、負担がかからないはずがないもの」

「身体の痛みとかは無いんですけど、それでも・・・・・・なんですね。
僕の身体には、てんこ盛りの後遺ダメージが残ってる。また」

「えぇ」





そう、『また』なのよ。初めて使った時も、一時的に魔力値がありえない量下がった。

4%も一応ギリギリありえない量の範疇なのよ? 体調とかでは、せいぜい1〜2%だから。

なお、リインやアギトは知らない。というか、まさかこう何度もてんこ盛りを使うと思わなかったもの。



なので僕もシャマルさんも普通に安心して、黙ってたんだけど・・・・・・そうもいかなくなったかも。





「・・・・・・いい、恭文くん。これは医務官としての警告。それも最終警告よ」



いきなり最終警告っ!? まだドキたまでは一回目なのにっ!!

・・・・・・でも、シャマルさんは頷く。驚く僕の顔を見て『当然』だと表情で思いっ切り言ってる。



「てんこ盛りは封印して。少なくとも今残ってる後遺ダメージが無くなるまでは無理よ。だいたい・・・・・・半年かしら」



半年・・・・・・それまでに解決したらいいんだけどなぁ。

だって、エンブリオはマジで見つからないし。その上予言の事もあるし。



「もしこれでまたすぐに使ったりしたら・・・・・・あなたの身体、どうなるか分からない。
リンカーコアへの負担が本当に大きいの。見て取れるくらいに摩耗していく」

「例えそれを無事に越えてもダメージは蓄積するし、使う度に爆発直前な爆弾を抱えるのと同じ・・・・・・ですか」

「えぇ。もちろん普通ならこんなことは言わない。でも、今は普通じゃない。
未来の時間の人間である恭太郎や咲耶、それにリースがここに居るもの」





だからこそシャマルさんだってここまで言っているのだ。

てんこ盛りは最低でもリインとアギト、咲耶が居て初めて使えるフォーム。

本来なら使用条件そのものが成り立たない。だけど、今は成り立っている。



だからこの間も、使えたわけだしね。でも、ここまでか。





「全く。後遺ダメージの事は、最初の時にも説明していたはずなのに」

「すみません。出来ればやりたくなかったんですけど」

「そこもアギトちゃんから聞いてるわ。というより、アギトちゃんからあまり怒らないでくれって頼まれてるの」



アギト・・・・・・あぁ、なんて良い子なんだ。僕がすっごい疲労するって程度しか、知らないはずなのに。

よし、ブレイズフォームはバシバシ使おう。普通に使おうっと。



「事情は聞いてる。それでどうしても必要があったのも、聞いてる。だから、今回はこれでおしまい。
でも、次はそうはいかないわ。私はもう最終警告を出したもの。・・・・・・お願いね」

「はい。・・・・・・というか、ごめんなさい」

「いいわよ。しばらくは・・・・・・キャラなり、だったわよね。しゅごキャラと一体化する変身」



なお、シャマルさんは普通に知ってた。どうもはやてから聞いたらしい。



「それが出来る子に助けてもらった方がいいわ。てんこ盛りの後遺ダメージ以外は、問題ないから」

「そうします。というか、実はですね・・・・・・その、色々反省しまして。てんこ盛りは完全封印することにしたんです」



それで説明した。スペック勝負に走ったのがムカつくと。ムカつくので、自分をもっと鍛える事にしたと。

・・・・・・その前に、唯世を鍛える事に終始してるのがアレだけどさ。



「正直、かっこいいので使いたくないかと言われれば嘘になるんですけど・・・・・・やっぱりダメージがダメージですし」

「そうね。・・・・・・というか、あれはカッコいいの?」

「カッコいいじゃないですか。特に配色が」

「・・・・・・あぁ、このセンスだけは・・・・・・このセンスだけは直したいのに。
うぅ、どうすればいいの? 恭文くんはこれさえ無ければ完璧なのに」



・・・・・・なぜかシャマルさんが泣き出した。というか、号泣?

なんでだろう。僕、何にも悪いこと話してないよね?



「でも、それなら問題ないわよね? だって今は夏休みで、事件があるわけでもなんでもないもの」

「・・・・・・ヴィヴィオの学校に行った時に、×キャラ相手に戦ったんですが。
というか先日はまたまた×キャラと遭遇して、バスケ対決して浄化しました」

「嘘っ!!」





まぁさすがに・・・・・・なぁ。今を使い潰すような選択は、したくない。うん、したくないのよ。

フェイトやリイン、それにあむとの約束破りたくない。というか、大丈夫。きっとなんとかするんだから。

てんこ盛りに頼らなくてもすむくらいに、僕自身をレベルアップすればいい。



夢は進化していく。そして僕という器も同じ。夢と同じように、もっと進化していかなきゃ。





「というかですよ? キャラなりに頼り過ぎるとまた問題が出てくるんです。
あむに『あたしのしゅごキャラを取らないでー』って目で見られるんです」



シオン・・・・・・だめだ。女装は嫌だ。毎回シオン登場は嫌だ。

シオンは楽しそうだけど、僕は辛いの。すっごく辛いの。



「あぁ、あの×のアクセサリーを付けた子よね。だけど、うーん・・・・・・だめだなぁ。
私も話は聞いてたから注意深く見てたのよ。でも、さっぱりだった。ね、一応居たのよね」

「居ました。というか今も僕の肩に乗ってます」



普通について来たからなぁ。・・・・・・物好きな子だとちょっと思ってしまった。



「まぁはやてとザフィーラさんも同じくだったので、あまり気にしないでください」



僕はフォローのつもりでそう言った。だけど、それでもこのお姉さんは止まらない。



「だけど悔しいのー。だってアギトちゃんは見えるって言うし」

「あぁ、明治時代でようやくって感じですね」



それで自分とイルのキャラかぶりについて嘆いたっけ。僕にはどうしようもなかったけど。



「うー、現地妻1号として、あなたと同じものを見たいのに」

「それはもうやめてっ!? 僕、フェイトとリインと婚約したんですからっ!!」

「あ、そう言えばそうだったわね。・・・・・・それとリインちゃんから聞いたわよ? 婚約の証に唇を奪われたって」

「なんでそこまで知ってるんですかっ! てーか、リインもバラすなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



とにもかくにも、こうして僕達の海沿いでの休日は始まったのである。



「それでシャマルさん、はやてには」

「大丈夫よ。・・・・・・恭文くん、一応はやてちゃんの事気をつけておいてね?」

「了解です。フェイトにも伝えておきます」

「うん、お願いね」










とりあえずお説教は無事に済んで、僕は安心。・・・・・・あとは夜までバレない事を祈るのみだよ。





あー、それと天気も良いし、みんなで泳ぐのも楽しそうだよなー。お昼食べた後に軽く・・・・・・うぅ、楽しみー。





何気に水着を持って来てるのさー。ふふふ、フェイトのおニューの水着が楽しみだなー♪



















(第58話へ続く)




















あとがき



恭文「・・・・・・歌唄とマジでどうしたもんかと悩んでる蒼凪恭文です」

ヴィヴィオ「恭文、いきなりテンション低いね。と、とにかく本日のあとがきのお相手はそんな恭文と高町ヴィヴィオですー」

恭文「だって・・・・・・『彼女が居るから』という理由で断ると『歌唄に向き合ってない』って言われるのよ?
それで第三夫人にもらうよりそっちの方が最低って言われるのよ? ねぇ、これなんかおかしくない?」

ヴィヴィオ「おかしくないんじゃないかな。普通に覚悟を決めて第三夫人にもらっちゃえば」

恭文「だからお前ら落ち着けっ!? それやるとハーレムだからー! 普通にハーレムは無理だからー!!」





(第二夫人をもらってる時点でアウトだと思う人間は、きっと沢山居る)





恭文「・・・・・・まぁいい。この話はやめよう。実はね、フェイトと一緒に銀魂の映画見に行ってきたの」

ヴィヴィオ「あ、今やってる『新訳紅桜篇』だよね。いいなぁー。ね、どうだった?」

恭文「あのさ、時間の都合で水曜の10時35分の回だったのよ。シネ・リーブル池袋だったのよ。
そうしたら・・・・・・女性が大半だったんですけど。それも平日のはずなのに」

ヴィヴィオ「・・・・・・え、女性?」

恭文「フェイトはともかく、僕は初めての体験だったよ。大体アニメ映画行くと男が大半なのに。
なのはもそうだったし、ずっと前のカードキャプターさくらの映画もそうだったよ。それも二作とも」





(ほぼ女性だけは初体験だったので、どうやら普通に緊張したらしい)





恭文「というかさ、フェイトが腕組んで離してくれなかった。トイレ行きたかったのに中に入ろうとして大変だった」

ヴィヴィオ「フェイトママ・・・・・・恭文に余所見してもらいたくなかったのかな」

恭文「多分ね。それで」

ヴィヴィオ「それでそれで、映画館の中でキスとかしたの?」

恭文「そんなKYなことするかボケッ! 普通に迷惑でしょうがっ!!」

ヴィヴィオ「えー、でもややさんが貸してくれた漫画でそういうのが」

恭文「あのバカ何読んでるっ!? そしてヴィヴィオもどうしてそんなウキウキした目で僕を見るっ!!」





(普通にお年頃らしい。こういう話は大好きっぽい)





恭文「だからあれだよ、普通に指を絡めて右手と左手を繋いで、隣の席に座って・・・・・・映画鑑賞だよ」

ヴィヴィオ「あ、結構一般的だね。それでそれで?」

恭文「映画の内容自体はあれだよ、新作カットも交える形で紅桜篇の総集編って感じで」

ヴィヴィオ「どっかのあれみたいにしないんだね。ラストが原作と変わるとか」

恭文「ないない。ただね、最後の挿入歌がかかる戦闘シーンがすごかった。もうあれ見るだけでも劇場行く価値はある」





(テレビだとDOESの『修羅』がかかるあのシーンです。劇場ゆえにパワーアップしていました)





恭文「あとは・・・・・・最初と最後の数分間? あれのために劇場やったとも言える」

ヴィヴィオ「・・・・・・何かあったの?」

恭文「あったね。基本静かな劇場が、その二つの場面だけは笑いが巻き起こるのよ。
まぁあれだね。テレビの銀魂を見てる人は、スタッフがどんだけ病気かを知ってると思う」





(基本あのノリです。そして見てない方々はまぁ劇場で確認を。そして察してください)





恭文「いや、でも良かったなぁ。フェイトもクスクス笑って楽しそうだったし・・・・・・あ、その後はフェイトと軽くデートだね。
夜になる前に電車に乗って家に戻ったけど、うーん・・・・・・幸せだなぁ。フェイトをずーっと独り占めだったし」

ヴィヴィオ「というか、リインさんはどうしたの?」

恭文「・・・・・・いや、リインはややと買い物してたのよ。なのに戻ったら角生やしてて」

ヴィヴィオ「それは恭文が悪いよね」

恭文「なんでっ!? リインはリインで予定あったんだから仕方ないでしょうがっ! てーか、ちゃんと聞いたってっ!!」





(それでも青い古き鉄が悪いらしい。普通に視線が厳しい)





ヴィヴィオ「というか、そこで歌唄さんを誘わないとダメだよ」

恭文「なんでっ!? それもまた色々違うでしょっ!!」

ヴィヴィオ「だって歌唄さんの事好きになりかけてるよね? だからすずかさんとかギンガさんとかみたいに断れない」

恭文「そんなことないからー! 僕かなりしっかり断ってるよっ!! ね、そうだよねっ!?」





(でも、普通に視線が厳しい。どうやら断ってはいないようである)





ヴィヴィオ「というわけで、みんな・・・・・・恭文が『恭文×フェイトママ+リインさん+歌唄さん』な関係を受け入れられるように応援してね?」

恭文「なんじゃそれっ! 普通に応援する必要ないでしょうがっ!!」

ヴィヴィオ「それじゃあ本日はここまで。お相手は超・電王トリロジーが楽しみな高町ヴィヴィオと」

恭文「あ、僕も楽しみーな蒼凪恭文・・・・・・って、違うからっ! お願いだから話を聞いてー!!」










(当然だけど、誰も話を聞いてくれない。そしてそのままカメラはフェードアウト。
本日のED:DOES『バクチ・ダンサー』)










歌唄「・・・・・・暇ね」

エル「そうですねぇ。うぅ、あむちゃんも恭文さんも居ないので寂しいのです」

イル「アタシらもミッドチルダ行ければよかったのにな。そうしたら色々遊べんのに」

歌唄「そういうわけにはいかないわよ。ここで踏ん張らないと・・・・・・うん、ダメなんだから」

エル「でも歌唄ちゃん、肝心のお仕事が」

イル「てーかどいつもこいつも・・・・・・手の平マジで返してきやがって」

歌唄「大丈夫よ。・・・・・・うん、大丈夫。だって私、アイツの背中を押し続けるって決めたから。
私の本当の歌で沢山輝いて、新しい輝きを生み出していくって決めた。だから絶対に負けない」

イル「歌唄・・・・・・あ、それなら電話してみようぜ? 今何してるかーとかさ」

エル「あ、そうですねぇ。せっかくミッドチルダとかにも電話が繋がるようにしてもらいましたし、そうしましょう」

歌唄「・・・・・・そうね。うん、それくらい・・・・・・それくらいは許されるわよね。よし、そうしようっと」










(おしまい)





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