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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第58話 『Preparations for a king/未熟な王様の憂鬱』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー』

スゥ「ドキッとスタートドキたまタイムですぅ。さて、本日のお話はなんでしょうかぁ?」

ミキ「はやてさんの家での休日はのんびりゆったり。だけどしんみりもしたり」

ラン「でもでも、せっかく海に来たんだし・・・・・・遊びたいよねー」





(画面に映るのは、水着姿な赤ちゃんキャラと蒼い妖精と妹キャラ)





ミキ「うーん、海は久しぶりだから楽しみだなぁ」

ラン「みんなの水着姿も楽しみだよねー」

スゥ「・・・・・・恭文さん、スゥの水着気に入ってくれるでしょうかぁ」

ラン・ミキ「「用意しちゃってるのっ!?」」

スゥ「してますよぉ。それでは本日も元気よく・・・・・・せーの」





(というわけで、全員揃ってあのポーズ)





ラン・ミキ・スゥ『だっしゅっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「『普通に、お説教されてます』じゃねぇよバカっ! アタシはそんなこと聞いてないんだけどっ!?」

「ヴィータちゃん、どうしたですかっ!?」

「・・・・・あ、悪い。なんか、妙な電波を受け取ってよ」

「ヴィータ、それは上からやな? でもな、ツッコむの遅いって。もう前回の話やし」

「はやて、そこはツッコまないでもらえるとすごく助かる」





とにかくアタシ達はリビングでアイスティーなんて飲みつつ談笑。

・・・・・・なお、唯世と海里とシグナム、ディードは居ねぇ。

あのバカ、海里の話を聞いてやり合いたくなったらしくて相手してんだよ。



で、唯世とディードとザフィーラは付き添い。てーか、唯世は見取り稽古っつってたな。

なんか最近バカ弟子に近接戦闘を教わってるって言ってた。で、こう言ってたらしい。

見取り稽古も行ってしっかり学習していく必要もあると。だから自主的にだ。



アタシはあの目を見てすぐに気づいた。ありゃ、気合い入れれば本当に強くなるタイプだ。



真摯に強くなる事と向き合ってる。うん、マジで強くなっていくタイプだとアタシは思う。





「あの」

「うん、ややちゃんどうしたんだい?」



ヴェロッサがそう聞くけど、もう聞くまでも無く言いたい事は分かった。というか、分からないはずがない。



「外からこう・・・・・・激しい音が聞こえてるんですけど」



木刀がぶつかり合う音・・・・・・うわ、なんかこれすごいな。てーか、シグナム何やってんだ?

確か『軽く』とかって言ってたよな? なのに、なんでこんなエンジンかかりまくるんだよ。



「あぁ、聞こえてるね。三条君とシグナムさん、相当激しくやってるみたい」





アタシは感心したような呆れたような声でそう言った男の子を見る。

名前は藤咲なぎひこ。ガーディアンの新入りで、藤咲なでしこの双子の兄。

しかしよく似てる。双子だとしても、これは似過ぎだ。



顔立ちに体型、そして髪の長さ・・・・・・なんつうか、すげーな。





「なぎひこ、私が思うにこれは激しいってレベルを超えてるわよ。
なによ、この爆竹とか花火が連続して爆発してるような音は」

「そ、そうだね」





えっと、この子は・・・・・・りまっつったな。バカ弟子やあむと唯世と同じクラスの子。

ウェーブのかかった長い髪が綺麗だとアタシら全員思った。でも、顔はとっても苦い。

一応さ、これでも戦技教導官だから分かるんだよ。打ち合いの音から、技量とかさ。



これは普通にヤバイレベルだ。シグナムに火がつく前に、止めるべきか?





「なぁ姉御、アタシちょっと見てくるわ。なんかすっげー不安になってきた」

「あ、じゃあリインも行くですよ。これで海里さんに怪我させちゃったら、申し訳ないのです」

「そうだな、頼めるか? で、シグナムがちょっとアレだったら・・・・・・全力で止めろ。てーか、アタシが止める」

「了解」

「分かったのですー」



そのままフルサイズのアギトとリインがソファーから立ち上がり、とたとたと歩き出す。

で、アタシはため息吐きつつアイスティーを飲む。・・・・・・あぁ、美味しい。



「なんというかヴィータ、君は慣れてるね。というか、一応ディードとザフィーラは居るけど」

「ヴェロッサ、お前はまだまだだな。二人じゃ、エンジンのかかったシグナムは止めらんない。
最悪の場合、シャマルを呼ぶしかないな。それならすぐ止まる」

「それでヤスフミはダメだよね。火がついちゃうから」

「正解だ」



あれのバトルマニアも、筋金入りだからなぁ。てーか、普通に家が半壊するって。

まぁシグナムも家でやってるってことは分かるだろうし・・・・・・そこまでにはならないはずだ。



「でもいいんちょ、大丈夫かなぁ。ディードさんとも相当頑張ってるみたいだし」

「でもあむちゃん、三条君は嬉しそうだったよ?
ほら、シグナムさんから手合わせしたいって言われた時」



あぁ、そうだったそうだった。初対面のアタシでも分かるくらいに、瞳が輝いてたしな。

というか、バカ弟子と色々あったんだよな。・・・・・・確かに気が合いそうだ。



「あ、そうだね。ややもすぐに分かったよ。うーん、ややはそういうのよく分からないんだけど、戦うって楽しいのかなぁ」

「楽しくはねぇぞ」



アイスティーを飲みながら、アタシはややの言葉にツッコむ。・・・・・・そうだな、楽しくはないな。



「結局戦うなんて、誰かを傷つける行為だしな。アタシは魔導師だが楽しくねぇ。
戦うのはむしろ嫌いだ。ただ、それを含めても楽しいと思える場合がある」

「それってどういう時なんですか?」

「心の強い相手と戦う場合だ。力ってのはな、心を映すんだ。
だから心根がしっかりしてる相手と戦うのは楽しいな」



バカ弟子やシグナムはまた違うが、一般的な『戦うことが楽しい』はこれだ。



「ほら、アニメとか漫画でのバトル物でもあるだろ。戦うとただ話すより相手のアレコレが分かるってな」

「そう言えばあるっすね。うんうん、俺もその手のは見た事あるっす」

「私も。興味があってそういう漫画をちょろっと読んだ事が」

「だろ? そしてそれはアタシら魔導師の中では意外と起こりやすい事だ。もちろん原因もある。
それはな、命賭けのぶつかり会いの中で力にこもった心が衝突し合うからだ」



アタシにも覚えがある。だからガーディアンの連中に、一つの確信を持った上で言える。



「ただ、これは力も心もある程度の水準まで高めた相手とじゃなくちゃ出来ない。そしてそんな状況は悲しい事に結構少ない。
ただな、そういう相手と互いの技量を高め鍛え合うために力をぶつけ合う戦い・・・・・・それは楽しいって言っても差し障りないと思う」

「それは私も分かる。こう・・・・・・一回の攻撃をぶつけ合うだけで、色んなことが分かるような感じがするんだよね」



ミッド剣友会のメンバーでバトルマニア気質なフェイトが、頷きつつそう言って来た。

相手は・・・・・・シグナム、だよな。あとはバカ弟子か。なのはとはそういう訓練はしてないし。



「なるほど。俺も・・・・・・まぁ、ちょっとだけど分かります」

「え? なんや、空海君もなんか武術関係やっとるんか」

「いや、俺は恭文や三条みたいなのはないっすよ?
ただ前にも話しましたけど、サッカーとかバスケとかしますから」

「あぁ、そういや言うてたもんなぁ。うんうん、お姉さんちょっと失念しとったわ」



スポーツ・・・・・・あぁ、そういや初等部のサッカー部で、キャプテンしてるとかって言ってたよな。

てーか、バスケもするのか。そこはアタシもみんなも初耳だ。



「スポーツって枠組みの中ですけど、マジで強くてかっこいいプレイヤーと戦うのは楽しいなと。
俺の位置だとプロって感じではないですけど、そういうプレイヤーが居ないわけじゃないっすから」

「・・・・・・そっか。まぁそんな感じだな。もちろん枠組みは違う。
でも、きっとお前やアタシ達が感じているものの根っこは似てると思うぞ」



言葉ではなく、力と力がぶつかる事で伝わることもまぁまぁある。

ただ、アタシの同僚みたいに『お話』ばっかりってのも大問題だけど。



「うーん、ややにはよく分からないなぁ。ねね、あむちんとりまたんも、同じだよね?」

「そうだね。あたしも・・・・・・実は恭文のバトルマニアがちょっと頭痛くて。
なんか見てると、強い相手と戦う時とかマジで楽しそうでしょ?」



思い当たる部分があるのか、フェイトが苦笑いし出した。・・・・・・一応自覚はあるらしい。

まぁ、無かったらさっきのアタシの話に加わるハズないしなぁ。



「そういうとこ見てると・・・・・・うん、不安になる時はあるかな。
特にアイツ、強敵相手には無茶しがちだし、命懸けでも楽しそうだし」



昔馴染みは全員・・・・・・アレコレ思い出して納得している。うん、そうだな。基本そういう感じだな。



「別にそれでアイツと友達やめるとかじゃないけど、そのために大怪我とかするんじゃないかとか考えると・・・・・・かなり、心配」



あむは俯いて、アイスティーの入ったグラスの中を見る。というか、声のトーンが下がる。



「てゆうか現にしてるし、この間も肩とか二の腕とか斬られて大変だったし。
いいんちょの時なんてこっちの血の気が引くくらい血を出しまくって・・・・・・まくって」



涙目になって・・・・・・え、えっと・・・・・・あれ、なんか温度下がってないか?



「よし、ちょっとあたしお説教参加してくる。アイツ、本気で無茶し過ぎだし」



え、なんか立ち上がったっ!? 立ち上がってすごい怒気が放出されてんだけどっ!!



「ちょ、ちょっと待ってっ!? あむ、落ち着いてっ! ヤスフミはシャマルさんがお説教をしてるからっ!!」

「そうやそうやっ! 普通にシャマルのお説教は怖いんよっ!? もう充分すぎるくらいに」

「それじゃあ足りないですからっ!! ・・・・・・よし、マジでお説教だ。マジで叱ってやる。
バトルマニア直せとは言わないけど、それでももうちょっと・・・・・・もうちょっと」



こ、怖い。なんか普通に全員が引くくらいに怖い。てーか怒気がどんどん強まってるし。



「あぁもうムカつくっ! アイツマジでバカ過ぎだしっ!!」

「まぁいいんじゃないの? これはどっちかと言うと男の子の世界よ」



・・・・・・りまがアイスティーを飲みながら、平然と言った。それにアタシ達は、顔を見合わせて苦笑い。

一人知り合いに居るしな。その『男の子の世界』に色々と理解を示せる女が。てゆうか、そのままな生き方してるのが。



「よくないっ! ・・・・・・とりあえず、覚悟決めてもらうからっ!!」

『一体なんの覚悟っ!?』



そしてそのまま・・・・・・あむははやてやフェイトが止めるのも聞かずに二階に上がっていった。

そしてなんとも言えずに全員が押し黙ってからきっちり3分後、二階の瘴気が倍加した。



「あ、あはは・・・・・・どうしようか。というかフェイトちゃん、もしかしてあの子相当溜まってた?」

「まぁその・・・・・・あむってガーディアンの中ではヤスフミと1番仲が良いんです」

「いいんちょとも仲良しだけど、1番はあむちーですよね」



とりあえずそこの辺りが今ひとつ分からないので、アタシ達はフェイトややや達を見る。それで全員が頷いた。



「まぁあれですよ。日奈森の奴、その関係で恭文とほぼコンビ扱いになってるんっすよ。
で、恭文が無茶やらかすとたいてい日奈森も側に居て、一緒に対処して怪我する様とか見てて」

「・・・・・・納得したわ。そりゃああのバカの暴走特急振りを何度も見せられたら、あないなるって」

「現に一時期のハラオウン家も同じ感じだったしね。まぁあむちゃんの方がまだ純粋かな」

「だな。本気でバカ弟子の事心配してくれてんだろ」



あぁ、それでアレか。そういや・・・・・・アギトが引っ張り出された時にあの子も一緒だったんだよな。



”なぁフェイトちゃん、一つ確認やけどこの間アギト引っ張り出した時って”

”うん、あむも一緒だったよ。それでその・・・・・・超・てんこ盛り使った時も相当で。
ヤスフミが怪我したりするとね、いつも本気で心配してくれるんだ”



その声の中に、少しく悔しげな色を感じたのは・・・・・・気のせいじゃない。



”それで怒ったりもしてくれる。『バカじゃん』って言って、泣いてくれるの。
ヤスフミがそういう時にいつも平気な顔するから・・・・・・その分沢山”

”・・・・・・バカ弟子の事、好きなんだな。てーかそれだと、一種のブレーキ役なのか?”

”うん。だから私も結構安心していられるんだ。あむ、本当に強い子なの。
だから同じくらいに強いヤスフミの事もちゃんと止められて・・・・・・支えられるから”



まぁそうだよな。普通にアタシらはアイツの事は止められない人間ばかりだしな。・・・・・・アレ、おかしいな。

10年近く付き合いがあってこれだけ人数居るのに、普通にあむみたいなのが居ないのはアウトなんじゃ。



”うん、悔しいな。私や母さん、アルフとかって・・・・・・どうしてあむみたいに出来なかったんだろうなーって。
あむはヤスフミの中のルールや道理や想いもきっと全部認めてくれてて、その上で心配してくれてるのに”

”あー、アンタらは普通にヤスフミに普通にして欲しい思うてたしなぁ”

”そうだね。うん、そうやってヤスフミの中の夢も否定してたんだ。ホントにバカだったよね。
私・・・・・・以前の自分が目の前に居たら、殴りたいくらいだよ”



・・・・・・そう思えるだけでも成長だと思うけどな。アルフも同じ感じらしいし、リンディさんは・・・・・・まぁ微妙か。

一応は納得の姿勢だけど、それでも渋々って感じだしな。まぁいいか。バカ弟子自らに絶縁状叩きつけられてるんだし。



「というかというか・・・・・・・あの、なんか上が凄く怖いんですけど」



大人組が念話で色々しんみりしてると、顔を青くしてややがそう言った。



「上から凄い妙なコワーイ感じの空気が・・・・・・や、やや泣きたい」

「ややちゃん、気にしたらアカンよ。ほら、ここでスルースキル鍛えんと」

「無理ー! ややにはそんなの絶対無理ー!!」



やや、それでいい。てーか普通にこれを全スルーは無理だ。アタシだって抑え込んでるだけだし。

そう考えると・・・・・・りまってすごいよな。この状況でもアイスティーを普通に飲んでるし。



「というわけで、なぎひこ・・・・・・行って来なさい。お説教はいいから、未だに響く炸裂音を止めるの」

「いやいやっ! 僕は武術関係はサッパリだよっ!? そしてどうしていきなりそっち行くか分かんないからっ!!
・・・・・・あぁ、キャラチェンジしようとしないでー! さすがにダメだからー!!」










とりあえずアイスティーをもう一口。・・・・・・外からは剣撃の音。そして上からは威圧感。





なんというか素晴らしいな。まるで世界中でアタシ達の休日を呪って、邪魔してるみたいだ。





素晴らし過ぎて泣けてくるわ。・・・・・・うし、やっぱアタシもシグナム止めてこよう。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/だっしゅっ!!


第58話 『Preparations for a king/未熟な王様の憂鬱』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私は驚いていた。話では、蒼凪と対等にやり合ったとは聞いていた。

だが、それでも子ども。局員でもなければ、魔導師でもない。どの程度のものかと疑っていた。

蒼凪が身内相手にらしくもなく油断したのかとさえ思っていた。





その疑いは、今までの剣撃の中ですっかり消えてしまった。その疑いを愚かとさえ思う。

確かに目の前で二刀を構える少年は、戦闘のプロから見れば甘い部分もある。

だが、見習うべき点もある。それはその心根だ。とても強く、鋭い刃がその中にある。





焼けるような日差しの中、振るわれる刃を受け止め、弾き、足を動かす。その度に心が踊る。

突き出された刃を左に動いて避け、サイドを取る。そのまま背中に打ち込む。

すぐに少年は反応した。・・・・・・私の木刀の刃を、右の木刀の柄尻で受け止めた。





ズレれば指を怪我する。だが、それでも的確に位置を合わせ逆に打ち込んで来た。





その間に少年の左の刃が動いていた。それは、袈裟に私に打ち込まれる。










「はぁっ!!」





私の右の肩口を狙った斬撃。それを見切って、私は寸前で避ける。そして数歩下がる。

数瞬、互いに時計回りに動きつつにらみ合い、踏み込むタイミングを図る。

そして少年は前に踏み込む。そしてそのまま両の刃を振るい、打ち込んで来る。



それを、私は下がりつつ捌いていく。・・・・・・本当に、惚れ惚れするような斬撃だ。

袈裟に、右薙に、左右の切上に刺突。襲い来るのは、正しく乱舞と言うべき剣撃達。

剣術の基本である、打ち込みの瞬間の握り込みまで、しっかりした上で打ち込んでくる。



その斬撃の全てに強い心が篭っている。それはこの少年の心だ。

物静かな印象とは逆の、熱く燃える感情がそこにある。

ここが私が見習うべきだと思う点だ。忘れかけていた初心を思い出させてくれる。



ここまで真っ直ぐに剣を打ち込める人間は、そうそう居ない。いや、剣以外でもそうか。

確かに・・・・・・納得だ。この心根なら、この斬撃なら、蒼凪と対等に渡り合う事も可能だろう。

襲い来るのは二刀の斬撃。スピードと手数で押していくスタイルのようだ。



後ろに下がり右薙の斬撃を避け、袈裟に打ち込まれたものを左に動き回避。

返す刃で来る薙ぎ払いを、私は同じように打ち込んで払いつつもそのまま踏み込む。

瞬間、私は木刀を袈裟に打ち込んだ。だが、それは少年を捉えなかった。



少年は私に払われた勢いを活かして、回転し私の左側面を捉える。

打ち込むのは左の刃。だから私は、振り切る前に刃を返しながらも踏み込む。

そうして少年の斬撃を止めつつも一気に押し込む。・・・・・・いや、左に大きく跳んだ。



少年は私の胴に目がけて、右の刃の切っ先を叩き込む。それは私のYシャツの端を捉えた。

着地しつつ、また踏み込む。突きを出した直後の隙を狙い、一気にだ。

少年は返す刃で私に打ち込む。だが遅い。その前に私の刃の切っ先が、少年の横腹を捉えている。



なお、寸止めだ。・・・・・・少年はそれが分かるから動きを止めている。





「・・・・・・参りました」




その言葉に私は刃を引いて構えを解く。少年も同じように腕を下ろし、構えを解いた。なお、息が荒めだ。



「中々手こずったな」

「まぁな」





ザフィーラの言葉には頷きつつも適当に返す。・・・・・・だが、楽しかった。

いや、真面目に楽しかった。蒼凪以外で剣術メインの人間は、私の周りには居ないからな。

テスタロッサもライオットを使うが、アレは基本長物専門だ。また趣が違う。



そしてモモタロス殿や桜井さんに幸太郎は、中々会えない。だから何気に溜まっていた。



テスタロッサと蒼凪があの街で長期滞在しているせいで、ミッド剣友会のメンバーが全員集まる機会も中々無かったしな。





「あの、ありがとうございました。とても勉強になりました」



目の前の少年は、木刀を持ちながらも私にお辞儀してきた。

基本的に礼儀正しく、常識的な人間らしい。蒼凪とどうしてウマが合うのか、少し不思議だ。



「いや、私の方こそ突然の申し入れを受けてくれて、ありがたく思っている。確か・・・・・・三条海里君と言ったな」

「・・・・・・はい」

「一つ聞こう。なぜ剣の道を行く?」



荒く息を吐きながらも、彼は私の目を真っ直ぐに見る。見ながら言葉を紡ぐ。

額と首筋には、滝のような汗。というか、私も・・・・・・汗だくだ。



「俺の・・・・・・夢、だからです」

「夢か」

「はい。強きを挫き弱きを助く・・・・・・そんな侍になることが、俺の夢です」



確か主から聞いたしゅごキャラという存在は、夢が一つの形になった者と聞く。

私には全く見えないが・・・・・・なるほど。この意志の強さからそれが生まれるのか。



「それになにより」

「なにより?」

「俺の夢を、『なりたい自分』を、命と想いを賭けて守ってくれた人がいます。
・・・・・・間違えた俺を見捨てずに、手を伸ばしてくれた人が居ます」



私もある程度の経緯は聞いている。だから、誰のことを言っているのかすぐに分かった。



「その人は、間違えても何も変わらない。変わらないなら、何も捨てなくていい。
そう言って俺自身が居たい場所を思い出させてくれました。だから」

「その人に追いつきたいか」

「違います。・・・・・・追い越したいんです。負けないように、止まらないように、追い越したいんです。
そして見せつけます。俺なりの罪の数え方を・・・・・・俺なりの一歩を」



・・・・・・蒼凪、お前は男にまでフラグを立てるのか? これは恋愛的な意味は0だが、相当だぞ。



「なるほど、納得した。・・・・・・ディード、今日は夜までは居る予定だったな」



私は視線を傍らでずっと見ていたディードに向ける。ディードは頷いた。



「はい」

「なら、後でまた相手をしてもらうことにしよう」



言いながらも、私は目の前の少年を見る。汗だくの少年は、驚いたように目を見開く。



「・・・・・・俺が、ですか?」

「あぁ。もちろん、私が相手で問題がなければだが」

「いえ、問題はありません。・・・・・・シグナムさん、ありがとうございます」

「あぁ」



・・・・・・もうすぐ夏か。しかし、これは蒼凪とテスタロッサに感謝だな。

普通に見どころのある若者を連れて来てくれた。色んな意味で楽しめそうだ。



「ところでシグナムさん」

「なんだ?」

「あの・・・・・・さっきから二階辺りに面妖な気配を感じるのですが」

「・・・・・・気づいてたか」



私も実は気づいていた。だから私とこの子は二人で二階を見る。

そこから・・・・・・む、なぜか面妖な気配が強まったぞ。



「だがそこには触れない方がいい。恐らく触れたとしても私達に楽しい事は一つ足りともない」

「・・・・・・分かりました」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「とにかく、アンタ無茶し過ぎ。てゆうか何回怪我してる? 本当に・・・・・毎回だよ。
スゥのリメイクハニーや回復魔法ですぐ治せるから問題無いとか思ってるわけじゃないんだよね」



お説教が終わった直後に、あむが乱入してきた。で、再び正座させられてお説教タイム再開。

何故か隣でシャマルさんまでが正座してるのが気になるけど、その前に角の生えたあむが怖い。



「超・てんこ盛りの時だってそうだよ。すっごい無茶でボロボロになって・・・・・・マジでバカじゃん。
勝ったって、なんとか出来たって、アンタが傷ついたりしたら、意味なんてないじゃん」

「いや、だから・・・・・・あの、あむ? ほら、超・てんこ盛りはもう使わないし」

「そ、そうなのよね。普通に私とも約束してくれて」

「黙ってて」

「「はい」」



とりあえず、僕は横目でキャンディーズを見る。そして視線で訴えかける。『助けて』と。

でも、三人揃って両手を合わせて頭を下げられた。つまり『無理』と・・・・・・嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!



「それになにより」



え、まだあるのっ!? ちょ、ちょっと待ってっ! 普通にどうなってんのさこれはっ!!



「アンタ・・・・・・ううん、フェイトさんも唯世くんもなんか隠してるよね」

『はぁっ!?』

「それも昨日・・・・・・アンタ宛てに通信かかってきて、それでフェイトさんと唯世くんと話してから。
唯世くんの顔色悪くなってて、キセキも無口で・・・・・・何気にあたし達みんな気になってた」

「そ、そんな事は全然」

「あるよね?」



だからその鬼な視線はやめてー! 腕組みして仁王立ちもダメだからー!!



「き、気のせいじゃないかしら。普通に私から見てもそんな様子は」



シャマルさん黙っててー! 普通に今日初対面なのに話に加わったら、余計疑われるよっ!!



「・・・・・恭文、ボク達も実は気づいてたんだ」

「ミ、ミキ?」



あぁ、助けてくれないのはともかくとして、ダメ押ししてきたっ!?

お願いだからもうやめてー! こっちのHPはもう0なのー!!



「恭文とフェイトさんも少し様子がおかしかったもの」

「それでそれで、クロノさんがはやてさんにスゥ達の事をお話したのとか・・・・・・それに関係あるんじゃありませんかぁ?」

「そうだよー。いくらなんでも話が急過ぎるもん」



きゃー! なんか気づかれてるっ!? くそ、すっごい普通にしてたのに・・・・・・失敗したー!!

だ、だからなんか視線が厳しいのっ!? だから僕達は正座モードなんかいっ!!



「気づくのなんて当然じゃん。だってあたし達、ここまで一緒にやってきた仲間じゃん」



そして思考が読まれてるしっ! くそ、いつものパターン通りってわけっ!?



「・・・・・・そりゃあフェイトさん達に比べたら全然だけど、それでも分かるよ」

「え、えっと・・・・・・つまりその、この後の展開としては」

「話せる事なら話して」

『あぁ、やっぱりそうなりますよねぇ』



でも、それから厳しかったあむの表情が・・・・・・少し和らいだ。



「でも・・・・・・今話せない事なら無理には聞かない。仲間だから全部知らなきゃいけないなんて嘘じゃん。
無理には聞かないけど、みんなが心配してる事だけは・・・・・・ちゃんと知っておいて」

「・・・・・・あむ」

「あたしだってそうだよ。マジでそこはお願いしたいんだ。特にアンタには。
もしこの事でアンタがまた今までみたいに無茶するなんて、あたしは絶対認めない」



しゃがんで、僕と目線を合わせるようにしてあむが僕を見る。というか、顔近い。



「・・・・・・あたしに出来る事があるなら、頼って。あたしは何があっても最後まで付き合うから。
まぁ、これが魔法の事絡みであたしにはどうしようもないって言うなら・・・・・・仕方ないけど」

「・・・・・・いや、そこは大丈夫。多分しゅごキャラ絡みだから」

「恭文くんっ!?」



とりあえず僕はシャマルさんにはお手上げポーズで答える。・・・・・・まぁ、しゃあないでしょ。

あむ達にはバレバレみたいだし、話す必要は・・・・・・うん、きっとあるな。



「まずあむやみんなの予測通り、隠し事はしてる。ただ、はやて達がみんなの事を教えてもらったのはまた違うんだ」

≪そこは先程説明した通りです。で・・・・・・来ちゃったんですよ。
フェイトさん達が動けなくなるというのはないんですが、手数が必要なだけの厄介ごと≫

「・・・・・・そっか。それって今話せる感じ?」

「ごめん」



とりあえず素直に頭を下げる。で、頭がごつんとぶつかった。



「痛ぁ・・・・・・! アンタ、何すんのよっ!!」

「ご、ごめん」



とりあえず頭を抑えて、もう一度あむを見る。やっぱり距離は近かった。



「とにかくまだ確定的じゃないから、少し難しい。ただ、僕も唯世もフェイトもと話すつもりだった。
何にしても大事になるし、黙ってるまんまは色々アウトなんだ。まぁそういうわけなので」

「分かった。じゃあこれ以上は聞かない。アンタ達もそれでいいよね」



それでラン達が僕の前に来て、僕を見ながら頷く。



「恭文、何があるか知らないけど・・・・・・ボクは一緒に飛び込むから。
だってボクがそうするって決めたから。何があろうと絶対にだよ」

「スゥだって同じですぅ。スゥは恭文さんの魔法を『魔法』だって信じていますぅ。
恭文さんのキラキラが好きなんですぅ。というか、スゥとキャラなりすれば万事解決ですしねぇ」



それはまたなんか違わないっ!? 普通に色々おかしいからっ!!

あぁ、あむが睨んでくるー! 微笑みながらも威圧感が強まるー!!



「大丈夫大丈夫。絶対の絶対に、なんとかなるよ。ううん、私達みんなで・・・・・・なんとかしちゃお?」



僕はシオンと顔を見合わせて・・・・・・頷く。



「なら・・・・・・シオン」

「えぇ。私達みんなでなんとかしちゃいましょうか。キャンディーズ、ありがとうございます」

「キャンディーズ、ありがと」

『うんっ!! ・・・・・・え、こんな時でもキャンディーズッ!?』



いや、まぁ基本でしょ。ただ・・・・・・問題が一つ。シャマルさん、普通に首を傾げてる。

そりゃそうだよね。普通にしゅごキャラ見えてないんだもの。



「ま・・・・・・元からそういうつもりだったら良かったよ。
うん、そこはマジでさ。なら後はもう一つだけ」



え、まだあるのっ!? 普通にここはおしまいな感じでしょうがっ!!



「な、なんでしょうか」

「歌唄との事、どうすんの?」



きゃー! ここでその名前は出さないでっ!? 普通にシャマルさんの前で歌唄の話はやめてー!!



「歌唄、本気でアンタの事好きだよ? なんか今までのアレコレ見てて分かったんだ。
振り切るにしても受け入れるにしても、アンタの対応は今のままじゃ中途半端じゃないかな」

「あ、あむっ!? お願いだから今その話はやめてっ! 今はまずいのっ!!」

「いいから聞いて。・・・・・・そりゃあさ、お嫁さん三人とかそんなのが一般的におかしいのも分かるよ。
でも、それでも今のままじゃだめだよ。あたし、歌唄の友達としてちょっと見てられない。この間だって」

「あむちゃん、ちょっと待ってくれる?」



・・・・・・あむが言葉を止めた。その理由は当然だけどシャマルさんの言葉。

でも、声が・・・・・・怖い。非常に恐怖を感じてしまう。だからあむと二人、そちらを恐る恐る見る。



「ねぇ恭文くん、『うたう』って・・・・・・誰かしら。あむちゃんともお知り合いみたいだけど、ちょっと気になるの」



微笑みながらも威圧感が凄い。だからあむと二人固まってしまった。というか、あむが若干震えてる。



「というかその子が恭文くんを好き? 覚悟を決める必要がある? うん、とっても気になるわね。
恭文くん、あむちゃん、その子と一体何があったのかしら。よし、ちょっとお話しましょうね」



どうやら僕、普通にお説教の第3ラウンドが始まるらしい。とりあえず・・・・・・あむを見た。

あむは顔を青くして、非常に気まずい顔で僕を見ていた。



「・・・・・・恭文、もしかしてあたし空気読んでなかった?」

「今更気づいた? あむ、おめでとう。これから僕と一緒にシャマルさん主催の詰問タイムに突入だよ」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! なんでこれっ!? あたし、普通にアドバイスしただけなのにっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



シグナムやみんなも家の中に無事に戻ってきて、そろそろお昼にしようかと思った矢先。





家ん中で我が家の医務官の叫びがすごい勢いでこだました。










なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? ちょっとそれはどういう事なのっ!!
第三夫人の有力候補だなんて・・・・・・私はそんなの聞いてないんだけどっ! ほら、二人とも早く答えなさいっ!!


「アイツなにとんでもない声で叫んでんだっ!? てーかアタシらが『どういう事』だって聞きたいしっ!!」

「第三・・・・・・ま、まさかヤスフミとあむ・・・・・・まずいかも」

「テスタロッサ、何がまずいんだっ!? というか、シャマルのこれはなんだっ! 私達にも分かるように説明しろっ!!」



なお、フェイトちゃんや他のみんながただただひたすら半笑いでしか答えてくれんかったことは付け加えておく。

とにかく、意気消沈し切った恭文とあむちゃんとプンプンなシャマルが二階から降りてきて・・・・・・なんかこれはうやむやで終わった。



「恭文・・・・・・なんかこう、ごめん。てゆうかあたし何かだめだった」

「うん、知ってる」

「あはは、そっかぁ。・・・・・・いやいや、知ってるって何っ!? 元はと言えばアンタのせいじゃんっ!!」

「それはこっちのセリフだけど何かっ!? 元はと言えばおのれが空気読めないのが原因でしょうがっ!!」

「逆ギレするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










とりあえず・・・・・・うん、なんか分かったわ。普通にあむちゃんと恭文ほんま仲良しらしいな。





言いながらも二人ともなんや楽しそうやもん。まぁ相当に疲弊しとるけど。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そしてお昼は、いつもよりすごい人数で大騒ぎ。というか、ガチにご馳走出てきたし。

海が近いから魚介類の類が多い。それで普通に美味しい。

うーん、さすがはやて。そしてヴェロッサさんだよ。料理上手なメンバーが多いからこうなるのか。





とにかく大騒ぎしつつもご飯を頂いて・・・・・・あぁ、落ち着いたなぁ。










「さて、そいじゃあ唯世くん・・・・・・ちょおうちのお部屋でお話や」

「えっ!?」

「はやて、いかがわしいことはしちゃだめだよー」

「うん、分かっとる。ほな、ちょお行こうか」



そしてはやてが有無を言わさず唯世の手を握ってそのまますたすたと歩き出す。



「え、あの・・・・・・えぇっ!? 八神さん、これはなんですかっ!!」

「そやからお話や。ほらほら、もたもたせんとうちとお部屋であまーい時間を過ごそうなぁ」

「甘い時間ってなんですかー!?」



そのまま二階へと消えていった。まぁ、お話の内容は分かっているので・・・・・・フォローする事にする。



「あむ」

「・・・・・・なにかな」



いや、何かなじゃなくて。そのクール&スパイシーな顔はしなくていいから。

内心穏やかじゃないのが分かるのは、今までの付き合いの蓄積だからだと思う。



「大丈夫だよ。唯世はほら、王様だからはやて的に色々真剣な話があるだけだから」

「あ、そういう事か。え、でも甘い時間って」

「はやて流のジョークだよ。実際は相当に塩辛いと思うな。・・・・・・さっきの僕達みたいな感じで」

「そ、そっかぁ。でもあの、唯世くん大丈夫かな。
だってさっきのシャマルさん・・・・・・うぅ、もうあんなの嫌だー」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかくうちとロッサの部屋にこの子連れて来た。それでクッションを出してその上に座らせる。






うちもその向かい側に足を崩して座って・・・・・・真っ直ぐに唯世君を見る。










「で、もう予想はついとると思うけどここからは相当に塩辛い時間のスタートや」

「え、そうなんですかっ!? でもさっき『甘い時間』って」

「バカっ! マジでそないな事するわけないやろっ!? うちはあんなに素敵な旦那さん居るっちゅうにっ!!」



あー、そやからこの子はちょお顔が赤かったんか。てゆうか、普通に冗談が通用しないタイプなんやな。

まぁここはえぇやろ。うちは咳払いをしてから話を始める事にした。



「まずは確認や。唯世君、予言の事は聞いとるんやったよな」

「・・・・・・グラシアさんの予言でしょうか」

「そうや。君達や恭文が関わっとるイースターやこころのたまごと思われる記述がある予言や」

「それなら、先日フェイトさんや蒼凪君と一緒に」



しかし、マジでこんな予言が出てくるとは思わんかった。普通にびっくりしてもうたし。

でもだからこそ・・・・・・ガーディアンの王様であるこの子には、今のうちから自覚してもらわんとあかん。



「で、君は予言の話が本当やったとして、どないするつもりや」

「止めます。あの予言通りの状況が本当に来るなら、イースターのせいでそうなるなら・・・・・・絶対に」

「あー、そういう事ちゃうよ。えぇか、うちが今から言う事をすぐに答えられんでも、それは気にする必要ない」



ちゅうか、恐らく無理やろ。そこに対して答えを出すのに、うちかて相当かかった。



「ただアンタが恭文やあむちゃん達の王様やろう言うんやったら、これから絶対にここと向き合う必要がある」

「あの八神さん、一体なにを」

「そして覚悟を決める必要がある。アンタはどっちに転んでもそれからは絶対に逃げられん。そやから聞くよ」



我ながら最低やな。六課で部隊長やっとった時から全然成長しとらん。

でもこれは・・・・・・そんな最低なうちやから出来る事や。しっかりしてこう。



「アンタは下手したら大怪我・・・・・・いいや、命落とすかも知れん現場に、自分の家臣達を送り出せるか?」

「・・・・・・え?」



唯世君の瞳が揺れる。何を言っているのか分からんと顔に書いとる。

その表情に昔のうちの姿を見つけて、少し胸が痛む。



「えぇか。例えばブラックダイヤモンド事件の時や。
恭文、海里君止めるために相当無茶して怪我したらしいな」

「・・・・・・はい」



まぁアレや、そこについて海里君にアレコレ言うつもりはない。

クロノ君からも詳しく聞いた。フェイトちゃんからもさっき念話で話は聞いたしな。



「戦いっちゅんはな、基本アンタが見たその光景そのもの。
そんな綺麗なもんちゃう。何にしても誰かを傷つけて叩き潰す最低な行為や」



自分と似た夢や願いを持つあん子を、恭文はどうしても放っておけなかった言うんもな。

そしてそこを踏まえた上で話せば、この子も分かりやすい・・・・・・はずや。



「今までの話を聞く限り、予言どうこうは抜きにしてもイースターの行動はどんどん過激化しとる。
今度は戦闘関係強い恭文やのうて、ガチに素人なあむちゃん達が怪我するハメになるかも知れん」





ここまで言うなら、普通に『アンタら全員下がっててえぇ。×たま壊そうと後はうちらがやる』とか言えればえぇのに。

でもその手はアウトや。場合によっては、空を埋め尽くすくらいの可能性を破壊することになる。

そんな事をしてもうたら、マジで地球に住む人達の大半の可能性を壊す事になりかねん。それは本末転倒や。



そやからもしも今の予言解釈が確定的になって、止める必要があるなら・・・・・・この子達に頑張ってもらうしかない。



うちらがどんだけエースでもストライカーでも、守護者にはなれんのよ。それは残念ながら無理なんや。





「唯世君、王様・・・・・・人の上に立つ人間にはな、いくつか飲まんとあかん毒があるんや。
一つは下の人間とは違う視点を持つという事。一つは自分の命令や指示で問題を押し付ける事」



この話は以前、クロノ君やリンディさんに言われた事なんよ。上に立つ人間には、そういうもんが必要ってな。

正直、まだ12歳のこの子にそれを飲む覚悟を決めろ言うんは酷やけど・・・・・・そうも言うてられん。



「ぶっちゃけ指揮官は、人に面倒事を押し付けるんが仕事とも言える。
まぁ、そうやって集団が効率良く動けるように回しとるわけや」





あくまでも一つの側面として考えてもらえると、ここは助かるかな。

そこが出来ん人は、指揮官適性が低いいう話もある。

まぁアレや、フェイトちゃんみたいなんは指揮官としてはダメいう事やな。



フェイトちゃんは優しいから、人のために頑張る・・・・・・負担を自らかぶろうとするとこがある。

恭文と付き合うようになってからはそないなことはあんま無くなったけど、それでもよ。

指揮官に求められるのは、平然と人に仕事を押し付ける図太さとも言い換え・・・・・・うわ、最低やな。





「でも、全部が全部上手くいくわけやない。うちらみたいな仕事しとると特にや。
自分の命令や指示、判断のせいで下に居る誰かが傷つくと、マジでヘコむよ?」

「・・・・・・あの、八神さん。それはその・・・・・・まさか」



この子は察しがえぇ。うちがなぜここまで言うか理解してくれた。だからうちは、頷いて肯定する。



「そや。さっきはちょお話さんかったけど、うち・・・・・・『王様』目指しとるんよ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



それで説明してくれた。僕も聞いている機動六課の部隊長だったこと。

そしてその中で色々と問題があって、それに対して自分は失敗ばかりのダメ部隊長だった事。

その上その事件の中で、戦闘要員でもない部隊員にも負傷者を何人も出してしまった事。





ダメ出しでフェイトさんみたいに捕縛されかけた人間まで出した。ここは以前蒼凪君から聞いた話だね。

いや、実際に数人敵方に捕縛されて、洗脳状態に置かれた人まで出したらしい。

あとは敵のアジトや決戦地で救助待ちの人間を数人出した・・・・・・というか、その内の一人になった事。





僕はただ、正座で膝の上で両手を握り締める事しか出来なかった。というか、何も言えない。





そうだ、言えるわけがないんだ。今の後悔の色を顔に浮かべている八神さんに、僕が何を言えるの?










「・・・・・・それで唯世君。今更確認なんやけど・・・・・・アンタはどんな自分になりたいんやったっけ」

「え?」

「いや、しゅごキャラ生まれてる言うことは、アンタにもそういうのあるやろ? そこ聞いておきたいなーと思って」

「・・・・・・はい」



それで僕も話した。なぜそう思うようになったのか。キセキが生まれた時、何を思ったのか。

八神さんはその話を静かに頷きながら聞いてくれた。



「そっかぁ。なら、ちょお言い方悪かったな。あー、ようするに何が言いたいかと言うと・・・・・・アレよ。
もしも今の予言解釈が確定になったら、アンタはガーディアンの王様として、一つ決断せんとあかん」

「・・・・・・みんなに、『戦え』と問題を押し付ける覚悟・・・・・・でしょうか」

「そうや。人の上に立つ人間は、その覚悟が必要なんや。そしてそれは本当に難しい。
うちもな、正直ちゃんと出来てる自信が無いんよ。さっき話した失敗の数々でそれは痛感した」



少し自嘲するような微笑みを浮かべる八神さんを見て、僕はまた拳を握り締める。



「そして言うとくけど、今回の事・・・・・・アンタ一人でどうにかは絶対無理や」



身体が思わず震えてしまう。いつのまにか俯いていた視線を上げると、八神さんが頷いた。



「人が傷つくと、その人だけやない。その人の周りまで心配してまう。家族や恋人、仲間とかな。
だからこの覚悟・・・・・・ちゃうな、自分への問いかけが絶対に必要なんや」

「なぜ・・・・・・ですか」





もしそうなら、自分だけでやればいい。というか、僕は考えてなかった。

今の今まで、ガーディアンの誰かがそんな風に傷つく可能性を全くだ。

本当に予言通りになるなら、今までよりもずっと危険度が上がる。だったら・・・・・・そうだよ。



だったら、ここからは僕だけでなんとかするべきなんだ。これ以上日奈森さん達には。





「そんなん決まっとる。人の上に立つんは、一人じゃ何も出来ん人間にしか出来んからや」

「え?」

「もうちょっと言うと、自分の・・・・・・人間一人の無力さや限界を身を持って知っとる事。
それが分からん奴に上に立つ資格はないよ。『俺ならこれくらい出来る』なんて言う奴は王にはなれん」



八神さんが何を言っているのかよく分からなかった。

でも・・・・・・なんだろう。何かが胸を貫く。でもそれを僕は上手く言えない。



「それが分かるから、上に立って誰もその限界超えて無茶せんように采配を振り回すんや。
そしてそれと矛盾するような覚悟もいる。仲間達に『命を預けて、力を貸してくれ』と伝えていく覚悟や」

「どうしても、なんでしょうか」

「どうしてもや。というか唯世君、アンタはマジで自分一人でなんとか出来ると考えとるんか?」



そう真剣な目で聞かれて僕は・・・・・・首を横に振った。そんな僕を見て、八神さんが安心したように笑った。



「そうや、それでえぇ。もしここでアンタが『必死にやればきっと』とか言うてたら、殴ってたとこや。
・・・・・・アンタかて、周りに大事な人が居る。あむちゃん達と同じように傷ついたら悲しむ人が居る」

「・・・・・・はい」

「でも、それでも戦ってなんとかせなあかん時もある。そやからうちらは・・・・・・どんなに未熟な王様でも、覚悟決めるんや。
一人で何も出来んうちらやから、志を同じくする人達の力を借りて、想いと命を預かって、決して軽くないもんをしょって采配を振るう」

「それが王様の仕事の一つ。そのために毒を飲み干す事が・・・・・・覚悟の証」



そしてこれからイースターの事に関わるなら・・・・・・僕はガーディアンのキングとして、その覚悟がいる。



「そうや。じゃあ改めて聞くな。唯世君・・・・・・アンタにその毒を飲み干せるか?
今話した色々な事を含めて、ガーディアンのみんなに胸張って『僕に命を預けてくれ』と言う覚悟はあるか?」



僕は視線を落として・・・・・・ただ両手を握り締めるしかなかった。分からない。

今ここで頷いても、本当に最後まで通せる自信が・・・・・・ない。



「・・・・・・うん、それでえぇ」



八神さんが右手を伸ばして、そっと僕の頭を撫でてくれる。



「今すぐに答えられるとはうちも思うてないよ。ちゅうか、うちは無理やった。ただ、これだけは約束してくれんかな。
アンタが王様になる夢を捨てる必要は絶対にない。ただそれでも、今分からない答えを出して欲しいんや」



その感触で乱れた気持ちが少し落ち着いた。あとは声だ。声がすごく優しい。



「そしてそれはアンタなりの答えでえぇ。うちや他の人の真似する必要なんて、どこにもない。
・・・・・・今は、それだけでえぇ。今答えられん事を恥じる必要はどこにもない。どうやろ」

「約束・・・・・・します。必ず答えを、僕なりの答えを見つけてみせます」



今はこれだけしか言えなかった。でも、それでも僕は八神さんの目を真っ直ぐに見た上でそう言った。

それに八神さんは満足そうに笑いながら、また撫でてくれた。



「うん、えぇ子や」










王様を通すために必要な毒。アルトアイゼンも以前言っていた毒を前に、僕は色々考える。

隣でずっと話を聞いていたキセキも、両手を組んでずっと唸っている。

答えは見えない。でも、向き合って探していかなきゃいけない。僕は・・・・・・みんなの王様なんだから。





未熟な王様だけど、それでも僕は逃げたくない。そんな事、絶対に嫌だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



お昼を食べてから、あたし日奈森あむは・・・・・・人型になったザフィーラさんと特訓中。





というか、お昼の時にストライクアーツに興味があると話したら、普通に教わる事になってしまった。










「・・・・・・ま、まずは基本から・・・・・・って、ストレッチはキツい」



前屈・・・・・・あぁ、なんか痛いっ! 普通にこの痛さは球技大会のアレコレを思い出させるしっ!!

でも、少しずつ・・・・・・まずは基礎運動とかから少しずつやってくといいみたいだし。



「あむちー頑張れー」

「・・・・・・暑いのによくやるわよね」

「・・・・・・って、普通にあたし見て楽しそうにアイス食べるなー!!」



なお、りまとややは縁側に座って、どこからともかく持ち出したアイスキャンディーを食べてる。

そしてその隣には、幸せそうな顔のヴィータさん。普通にニコニコ顔だし。



「というかというか、ヴィータさんもアイス好きだったんですねー。やや、ちょっと意外ー」

「そうか?」

「はい。ヴィータさんって恭文の先生だし、もっと大人っぽいのかなって」

「いわゆる外キャラがそう見えるだけじゃないの?」



・・・・・・確かにあたし達が一緒に居たのって、ほんの一日だけだしなぁ。それで・・・・・・あぁ、恭文に無茶振りしてたっけ。

先生だから、そこの辺りは色々あるらしい。恭文も頭上がらない感じだったしなぁ。



「まぁそんな感じだな。実際はアイスは大好きだ。てゆうか、上手いだろ?
この近くのアイスキャンディー屋のアイスは中々でな」

「「はい」」



そこは納得なんだけど・・・・・・どうしてあたしを見ながら楽しそうにしてるのかが理解出来ないんですけどっ!?



「あむ、集中しろ」

「はい、ごめんなさいっ!!」



後ろからザフィーラさんがサポート。なお、『我に触られても平気か?』と確認されたので、即答で頷いた。

別に変なとこ触られるわけじゃないし、普通にこれくらいは平気。それにザフィーラさん、優しいもの。



「うーん、日奈森はやっぱこういうところからきっちりやってかないとダメっすよね」

「そうだな。そのキャラなりやキャラチェンジの力が無ければ、運動神経はさほど良くはない感じだ」



空海も補佐みたいにしてくれてるけど・・・・・・あ、あのえっと・・・・・・なんだろ、この豪華な図式。



「あ、それ正解っす。基本日奈森は外キャラのせいでそういうの出来そうに見られがちっすけど」

「外キャラ?」

「外向けのキャラって意味っすよ。本来の自分じゃなくて、他人と話す時とかに見せてるキャラ」



そして少しの沈黙。どうやらザフィーラさんは、空海の言ってる事が今ひとつ飲み込めないらしい。



「あー、なんて言えばいいんだろ。・・・・・・あ、そうだ。
仕事の時とかとプライベートの時と比べると、まるで別人みたいに見える人って居ませんか?」

「・・・・・・なるほど、それならば納得だ。ちょうど蒼凪がそんな感じだからな」



恭文・・・・・・あぁ、そうだった。恭文も何気に外キャラキツい子なんだよね。そこもあたしと同じくだ。

だから最初の時、何か感じてたんだよなぁ。あたしと似てるから、恭文の内キャラを知りたくなったの。



「つまり、仕事用だったり外の相手に見せるのが外キャラか。というより、外見のイメージとでも言えばいいのだろうか。
つまりあむは外見のイメージでは、運動もなんでもこなせる人間に見えるわけだな。そこに中身とのギャップがある」

「そうですそうです」



とにかく前屈は終了。ゆっくりと身体を起こす。それであたしは息を軽く吐く。

き、キツかった。というかこれはアレだね。普通に毎日継続しないとダメかも。



「よし日奈森、ストレッチはこれで終わったから、次はランニングだな」

「え、このままっ!?」

「当然だろ。・・・・・・あ、ザフィーラさん」

「分かっている。お前達はこの近辺の地理には疎いし、我も付き合う。
熱中症になっても困るしな。少し気をつけていくぞ」

「助かります。それじゃあ日奈森、行くぞ」



言いながら、空海があたしの左手を掴む。というかこのパターンはあの・・・・・・まさかっ!!



「走り込みだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっしゅっ!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「・・・・・・これは内と外、どちらのキャラだろうな」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



海が近いという事は、当然だが砂地も近い。なので、私はよくここでランニングなどをする。

あとは海水浴や水遊びだな。ヴィータやシャマルとの水遊びは趣味ではないが、ここは一つ利点がある。

水の中で陸地のような瞬発力を出すには、また違う身体の運用方法があるからだ。





もう少し言うと、陸地に居る時には使わない筋肉を鍛える事にもなり、フィジカル面での強化に繋がる。

ここは蒼凪や恭也殿と美由希殿が警防で教わった事で、私も倣う形でよくやらせてもらっている。

私はプログラム体ではあるから身体の成長に関しては見込めないが、運用方法に関しては勉強になる。





というわけで私は現在、水着に改めて着替えて海里君・・・・・・海里とディードと一緒に海に来て訓練だ。










「・・・・・・なるほど。実際水の中での運動は、足腰に負担をかけないため上手く活用すると効果が高いとは聞いていましたが、そこまでとは」

「そこまでだな。実際蒼凪も、この話を聞いてから週1で私やなのはの兄姉と共にプールに通っては訓練していた」

「シグナムさん、それは今もです。私やフェイトお嬢様とも何回かやりましたから」

「そうか。では私と同じだな」



私が白に紫と青のラインが入ったレオタード。ディードが青のビキニだ。なお、海里は緑の海パン。

なお、今はなぜに海に来たかを説明しているところだったりする。



「まぁこういうのは一回で効果はないが、継続してやっておくと色々ためになるという事だけ覚えておくといい」

「はい。あの、ありがとうございます」

「いや、問題ない。それでどのような事をするかだが」



どうやらこの子は本当に勉強熱心らしい。私の目を見て、私の言葉を一言も聞き逃すまいとしている。

うちの隊の若い連中にも見習わせたいものだ。もしくはヴァイスとかにな。



「まぁアレだ、簡単に言えば・・・・・・遊ぶんだ」

「・・・・・・は?」

「ただし、ある一定の深さのところまで入って地上と同じスピードを目指しながらだ」



さすがに全く同じは無理な部分がある。ただ、それは地上で動く時と同じやり方ではだ。

さっきも言ったが、水の中で速く動くにはそれなりの身体の使い方があるんだ。



「例えばこのビーチボールでバレーをするだけでも違います」



そう言いながら、ディードがさっきから両手で持っていたビーチボールを海里に改めて見せる。



「ディードの言うようにこれで激しいラリーなどすれば、自然とそうなるだろう。
そしてその中で『自然に』水の中の動き方を覚えていくんだ」



白の基本色に、赤と青のストライブが眩しい我が家の遊び道具。

なお、ヴィータとアギトが知らない内に買っていた。



「これは恭文さんの口癖ですが・・・・・・『日々これ精進。暮らしの中にこそ修行の極意あり』だそうです。
それはこれも同じ。一見すると修行に見えないようなものにこそ、自身を鍛える極意が存在するそうです」

「・・・・・・なるほど。俺もまだまだ修行が甘い。ディードさん、シグナムさん、俺は納得しました」





海里、ディード、とりあえず私は蒼凪の昔馴染みとして、お前達に一つ謝らなくてはいけない事がある。

アイツはこう・・・・・・たまに凄まじい理論武装をする時があってな、これもその一つなんだ。

というか、それはアイツやヴィータが好きな特撮物のセリフで・・・・・・いや、本当にここはすまない。



だがまぁ、問題はないだろう。そもそも修行が特別な器具や状況がなければ出来ないという認識が間違っている。



この水辺での基礎訓練とて同じだ。これを聞いた時、私は目からウロコが落ちる思いだったぞ。





「とにかくだ、こうして話していても熱中症になってしまう。早速訓練」

「シグナムー! というか、ディードに海里さんも待つですよー!!」

「そうだそうだー。遊ぶのちょっと待ったー」

「リインさんっ!? それにエースもっ!!」





その声に、私も海里もディードもそちらを向いた。

・・・・・・空色のレオタードにフリフリのスカートを装着したリインが居た。

そしてそれと色違いで、赤に割合近いピンク色の水着を着た子。



確か・・・・・・結木ややだったな。リインと同級生で友達になったという子だ。





「あー、リイン。やっぱりサーフマットは僕が持つよ」

「大丈夫ですー。というかというか、海で泳ぐのは久々なので楽しみですー。
ややちゃん、これは波にプカプカ揺られながら、海の中が見えるですよー」

「なんだよねー。うぅ、楽しみだなー。
ねー、ペペちゃん。・・・・・・うんうん、楽しみだよねー」





あとは髪と同じ色のビキニパンツの上に白い薄手のパーカーを羽織ったヴェロッサだ。

というかなんだ。リインが両手で頭の上に乗せつつ持ってきたアレは。

あのリインの身体より大きい、透明な窓付きのサーフマットは。あんなの知らないぞ。



いや、考えるまでも無い。あんなのを買う人間はうちには数人しか居ない。

ヴィータかアギトかシャマルかヴェロッサか主はやてだけだ。

・・・・・・私とザフィーラ以外の全員じゃないかっ! なんだ、この絶望を感じさせる答えはっ!!





「というかというか、みんなだけで泳ぐとかダメなのですー! 普通にリインも混ぜるですよー!!」

「そうだー! やや達も混ぜろー!!」

「・・・・・・シグナムさん、ディードさん、どうしましょう。リインさんとエースは色々と勘違いを」

「まぁ、遊びながら訓練という目的が達成されれば問題はない・・・・・・はずだ」

「それもそうですね。私もこのままで大丈夫かと」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



アタシはりまと一緒にアイスの二個目を堪能中。うちの縁側に座って・・・・・・のんびりだ。





なんというか普通に和んでしまっている。なんだろ、これ。でもまぁ、さっきの地獄に比べたらマシか。










「・・・・・・でもさ、アタシはやてから話聞いたんだけどよ」

「はい?」

「しゅごキャラってのがお前らだったりバカ弟子には居るんだよな。・・・・・・やっぱ見えねぇな」



見える条件も聞いたんだが・・・・・・まぁしゃあないのかな。アタシらそういうのを見るにしても、色々経験し過ぎだし。

ただ、『そこに居る』という認識が出来ると見えるようになるのはフェイトとシャーリーで実証済みらしいし、いつか見えるかもだな。



「以前向こうに行った時もサッパリだったしな。こういうのは慣れか」

「だと思います。でも、普通は信じられないわよね。
私もクスクスが・・・・・・しゅごたまが産まれた時、ビックリしたから」



そりゃあなぁ。大体、アタシらの周りでたまご産んだのなんてバカ弟子くらいだぞ?



「やっぱりか」

「やっぱりです」



なんて言いながら、二人でバニラのカップアイスをまた一口。なお、普通サイズだ。



「でも、アタシはもっとビックリだったさ。これでもお前らと同年代の連中とは付き合いあるしな」





例えばスバルやヴィヴィオは見えてるらしい。なんでもこころのたまご・・・・・・しゅごたまがちゃんとある可能性があるとか。

ただティアナやエリオにキャロとかは違う。六課に居る時、そんな事相談された覚えがねぇし。

まぁ、見えてなかったティアナはともかくとして、エリキャロはもしかしたら産んでるかも知れないけどな。



ただ単にアタシとかフェイトが見えてなかっただけの話かも知れねぇし、ここは問題ないと思う。

フェイトが『どうして相談してくれなかったのかな』とか言って、膨れそうだけどよ。あー、それであとははやて達も含まれてるのか。

はやてとフェイト、あとなのはとも子どもの頃からの付き合いだけど、そういうのサッパリだったよなぁ。



現に三人とも、バカ弟子だったりあむだったりに話を聞いて衝撃を受けたとか。うん、アタシやシグナム達と同じだな。





「でよ、なんだかんだで結構危険な状況にも飛び込んでんだってな」

「・・・・・・えぇ」

「まぁアレだ、バカ弟子やリインはいいんだよ。アイツらがイースターとか言う連中を放っておくとは思えねぇしよ」



だって、ガチに悪の組織だぞ? いつぞやのネガタロス張りのバカやらかしてるじゃねぇかよ。

そんな状況でバカ弟子が黙ってるとは思えない。というか、現時点でも黙ってないよな。



「でも、なんでお前らは関わってんだ? やっぱこころのたまご・・・・・・夢を助けたいか」

「・・・・・・そうね。でも、私はみんなとはまた違う」



りまの視線が少し落ちる。ちょうど家の庭先を見るような俯き加減に、アタシは首を傾げる。



「私・・・・・・×のついたたまご、壊した事があるの」

「は?」

「ガーディアンの仕事は×たまが出現したら早く止める事。そう言って・・・・・・パリンって。
今思うと、本当にバカだったなって考えてる。それで恭文にキレられるくらいだったから」



×たま・・・・・・確かこころのたまごに何かの原因で×が付いた状態って聞いてる。

その状態だと、持ち主は夢を見れなくなるとかなんとか。



「でもガーディアンであむや恭文と仲良くなって、色々あって恭文とフェイトさんにお世話になるようになった。
そこから考えたの。私なりの償い・・・・・・×の付いたたまごを、誰かの夢を壊した償いが出来るのかなって。でも」

「無理だったんだろ」



なんとなく答えが分かって、アタシはそう言った。りまは頷いて、視線を少し落とした。



「恭文が海里と戦った時に言ってたの。『償いなんて出来ない。罪滅ぼしなんて出来ない』って。
何をしても、誰を助けても・・・・・・何も変わらない。何気にショックだった」



それは以前アタシがバカ弟子に言った事でもある。まぁ、ちょっとした時にな。

うん、変わらねぇんだよ。アタシらが闇の書の騎士として、相当数誰かしらを傷つけてる事とかも含めてな。



「でも、こうも言ってた。変わらないなら・・・・・・変えられないなら、全部抱えて進むしかないって。
だから私、決めたの。私はイースターの行動が認められない。私も同じだったから、余計に」

「だから止めてやろうってか」

「えぇ。それに・・・・・・恭文にも借りがあるしね。私、まだそれをちゃんと返せてない」





陽は高く、青い空の中を白い大きな雲がいくつも流れていく。



そんな空を見上げながら、アタシの隣の小さな女の子は力強くそう言った。



その借りが今の話のアレコレだと言うのは、アタシにも分かった。





「そっか。だったらちゃんと返さないとな。何事も等価交換が基本だ」

「そうですね。でも・・・・・・そのためにはもっと頑張らないと。正直、かなり不安ではあるの。
イースターのボスキャラ的なのを相手にした時、恭文やリインに負担をかけがちだから」

「あー、そこもはやてからちょこちょこ聞いてる。向こうもなんだかんだで相当強いんだろ」





しかし・・・・・・そのキャラなりとかなんとかってそこまでかよ。バカ弟子だってもうエース級の魔導師だぞ?

何の戦闘訓練とか積んでないようなのとそれが互角って・・・・・・いや、考えようによってはそれは当たり前なのか?

しゅごたま・・・・・・しゅごキャラは宿主の可能性の塊だ。そしてその力を借りると通常時よりも高い能力が出せる。



なんでも固有の技とか特殊能力とかもOKらしい。てーか『未来への可能性』が形だもんなぁ。



そう考えると、普通になんでもありなような気がしてくんのはどうしてなんだ?





「なら、ここはやっぱバージョンアップだな。ちょこちょこ訓練してんだろ?」

「はい」

「それならそれで、なのはとかにも事情話して訓練してもらうのも手だぞ?
中身はアレでも教導官・・・・・・あ、今からアタシがやるってのも手だな」

「いいんですか? だってヴィータさんやみんなお休みだって」

「バカ。いいんだよ。お前らが頑張ってくれねぇと、バカ弟子がまた無茶するしな」



また超・てんこ盛りとか使われてもマズいしな。それになにより、多分アタシらは前に出れねぇ。

しゅごキャラも見えねぇし、浄化能力も持ち合わせてないんだ。これくらいはしておいて損は・・・・・・アレ?



「・・・・・・あー、悪いりま。それは次の機会になるかも知れねぇ」

「みたい・・・・・・ですね」










アタシとりまは言いながらもう一度空をよく見る。さっきは見過ごしていたが、遠くに目につくものがある。

それは黒い雨雲。それも大きめでまだかなり遠いとこにあるが、かなりの速度で空を覆い尽くそうとしてる。

てーか天気予報では今日は一日中快晴って出てたぞ? なんで雨モードな気配がするんだよ。





さすがに雨の中みんなに訓練させるわけにもいかないし、結界張るにも許可が必要だし・・・・・・はぁ、間が悪いな。





しゃあない。フェイトやバカ弟子から詳しく話を聞いて、訓練メニュー作っといてやるか。これもアタシだから出来る仕事だ。





















(第59話へ続く)





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