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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第3話 『本気と全力は似ているようで違う』(加筆修正版)



警備部の打ち合わせがようやく終わった。あぁ、なんか憂鬱だよ。うぅ、お姉ちゃん失格かも。

せっかくヤスフミが六課に来た最初の一日なのに・・・・・・どうせなら最初から居たかった。

ほら、隊舎を案内したり、部隊の仕事だって楽しいんだよって伝えて・・・・・・はぁ。





はやてから昼間に来たメールだと、朝からやらかしたらしいし、落ち込んでたりしてないといいけど。

でも、そこまで考えて心配ないと気付く。ヤスフミはああいう性格だし、多少のことでどうこうはならないよね。

それにアルトアイゼンや、みんなも居るわけだし、うん、きっと大丈夫・・・・・・な、はず。あれ、なんか余計心配になってきた。





アルトアイゼン、ちょっとアレなんだよね。濃いというか、なんというか。

というか、ヤスフミはこう・・・・・・初対面の相手に対してキツイところがあるし。

あぁ、エリオやキャロと上手くやってくれてるかな。そこ、かなり心配かも。





とにかく、今は早く戻ろう。うん、もうお仕事は終わったんだし、全速力で戻ろう。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第3話 『本気と全力は似ているようで違う』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「「セットアップッ!!」」






その声が響くと同時に、僕の身体にバリアジャケットが装着されていく。

バリアジャケット。それは、魔導師が身に纏う戦うための防護服。

基本防御魔法四種のうちの二つ、フィールド系とバリア系を組み合わせて紡ぎあげる、戦う覚悟を示した服。



それまで着ていたトレーニングウェアは一瞬で消え・・・・うん、裸になるんだ。

でも、色々と補正がかかるから直視しても大丈夫よ?

そして、そんなまっはだかーにばるな僕の身体に、すぐにジャケットが装着されていく。



僕のジャケットは、黒い無地のインナーにジーンズ生地に似た色合いの長いパンツ。

上半身には青く、分厚い長袖のジャケットを羽織る。

ちなみに丈は腰まで。こちらのデザインも無地でシンプル、飾り気など微塵も感じられない。



右手には黒い、指が出るタイプの薄手のグローブ。

両足には足首までを包み込む皮素材っぽいブーツを装備。これで基本線は仕上がった。

というわけで・・・・・・次は武装。左腕には、肘から指先までを包み込む、鈍い銀色のガントレットを装備。



・・・・・・ちなみにこのガントレット、リボルバー8連装式のカートリッジシステム付き。

非人格型のアームドデバイスになる。この子の名前は『ジガンスクード』。

僕の相棒のコントロールでカートリッジシステムを使うために作り上げた僕のもう一人の協力者。



相棒は諸事情でカートリッジシステムを付けていない作りになっている。

なので、もしもカートリッジの力が必要になった場合、それをフォローするのがこの子の役割だ。

ジガンスクードを装着すると、目の前に青い、小さな宝石が現れ、高速回転しながら強烈な光を放つ。



すると、どこからともなく幅広で、厚みのある日本刀と、黒塗りの鞘が現れる。

刃は鈍い銀色。鍔は円形の黒塗り。柄も同じ。

ただし、塚尻にはそこに埋め込まれる形で先ほどまで高速回転していた青い宝石が埋め込まれている。



僕は右手で日本刀。左手で鞘を手に取ると、自分の目の前で刀を鞘に納める。そしてそれを腰に指す。



・・・・・・これで全ての準備は完了した。これが僕の魔導師としての戦闘形態。

手にした刀で敵を切り裂くスタイルだ。なんか、この時点で魔導師じゃない気がするけど。

・・・・・・騎士はガラじゃないし、気にしないことにしよう。僕は、魔導師の方が趣味なの。





「・・・・・・アルト」

≪はい≫

「ご欄の通りの状況なのよ。さっそくで悪いけど一戦かますよ。いい?」

≪問題ありません。マスター≫





僕の声に応えてくれたのは、僕のパートナーであるデバイス。

AI搭載式のアームドデバイスで、名前は『アルトアイゼン』

形状は、今さら言うまでもなく日本刀だ。もっと言うと、同田貫。



銀色に輝く刃は、肉厚で幅広い。別名、斬馬刀とも呼ばれている代物だ。

この子は、僕が魔導師になってから、ある人に託された大事なパートナー。

それで、僕はいつもはアルトと呼んでいる。



まぁ、ロングアーチスタッフのアルトさんと紛らわしいのはご愛嬌ですよ。





≪しかし≫

「なに?」

≪はっきり言って、迂闊すぎます≫



・・・・・・分かってるよ。言われるまでもなく、分かってるよ。すっごく分かってるよ。



≪なんで初日にこんなことになってるんですか? ありえませんよ。
あなたそんなにビックリ人間になりたいんですか≫

「知るかボケっ! 僕が聞きたいわっ!! つーか、一番ワケわかんなく思ってるの、僕だからねっ!?」

≪ハッキリ言ってコレはありませんよコレは。いや、本当に。あなたもはやてさん達も一体何考えてるんですか?
いや、あのギンガさんの妹さんも同じですけど。お姉さんに似て人の話聞きませんし≫

「その前に、おのれが僕の話を聞いてないでしょっ!?」



あー、でもそれは同意見。姉妹って似るもんなんだね。

・・・・・・つーか、マスターを差してアレとか言うなっ!!



≪とにかく、私達がこの部隊で上手くやっていくためにも≫

「え、僕の疑問とか、一切無視っ!?」

≪対人関係のアレコレをあなただけに任せておくわけにはいきません。
これからは私は色々と口出しさせていただきます。いいですね?≫



いや、あなた今までも散々口出ししていらっしゃいますよね? 今日は楽したいとか言って、喋ってなかったけど。

とにかく、それで色んな人にふたりはぷり・・・・・・じゃなかった、二人で一人みたいな感じで見られてるじゃありませんか。



「よし、ちょっと待とうか。今の会話の中で、どうしてそういう結論になる?」

≪答えは聞いてませんがね。というか、弄ったら楽しそうなのがいますし、私も暴れたいんですよ≫



コイツは・・・・・・!! ・・・・・・まぁ、いつもこんな感じ。アルトは、デバイスとしてはすごく優秀な子。

なんだけど、一言二言三言四言多いのがタマに傷だったりする。というか、フリーダム?



≪あなたがしっかりすれば済む話です。なのに、あなたは毎度毎度・・・・・・というか、あなたに言われたくありません≫

「待って待ってっ! それはこっちのセリフだからねっ!?」

≪全く、これだからゆとり世代は。どうしてなんでもかんでも人のせいにすればいいと思うんですか≫



誰も思って無いでしょうがそんなことっ! そしてゆとり世代な思考はおのれだっつーのっ!!



≪人のやることなすことにケチつける前に、自分の行動を省みてください。それも出来ないってどういうことですか。
大抵こういうのが批評と中傷の区別もつかずに、偉そうにコメンテーター気取りになったりするんですよ。本当にうざったい≫

「アルトにだけは言われたくないからね、それっ!? つーかその発言はアウトだからっ!!
全てのコメンテーターにごめんなさいだよっ!!」

≪その前にあなたが謝ってくださいよっ!!≫

「一体何に対してっ!? つーか、いきなりキレるなっ!!」




だぁぁぁぁぁぁぁぁっ! コイツは何っ!? JS事件話でのシリアスモードが消えたらこれって、おかしいでしょうがっ!!



「あ、あの」

≪「なにっ!?」≫



・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。



≪こちらの準備は整ったのですが、そろそろよろしいでしょうか?≫

「というか、恭文のデバイス・・・・・・すごくお喋りなんだね」



声の方へと苛立ち混じりに視線をむけると、セットアップが完了したスバルがいた。なんか呆れ顔。



≪あなた、何をやってるんですか? 初登場から5分も経ってないのに面白キャラ認識が広まっちゃったじゃないですか≫

「お前のせいじゃボケッ! つーか、自業自得だからねっ!?」

≪ほら、謝ってくださいよ。主に私に≫

「だが断るっ!!」





とりあえず、腰に下げている相棒にツッコむ。

あー、どうしてこうなるっ!? せっかくのセットアップが台無しじゃないのさっ!!

アニメだったらかっこいい音楽(鋼鉄の○狼とか)とともにバーーーンっと出来るあれだよアレッ!!



こうなる意味が分からないしっ! ・・・・・・いや、と言いますか待って待ってっ!!

もしかして今の漫才をスバルだけじゃなくて、あそこでお祭り騒ぎしてやがる方々にも見られてたってことっ!?

ちくしょぉぉぉっ!! なんか色んなものが初日にしてドンドン失われていくってどういうことさっ!?



・・・・・・とりあえず、そこはいいか。うん、気にするのやめよう。なんか、辛い。

とにかく僕は、スバルを観察しつつ頭をシリアスモードに再度切り替えていこうとする。

だって、さすがにこのままはまずいし。さて、スバルのバリアジャケットはっと。



首から胸元を包み込む紺のインナーの上には、どこかで見たようなデザインの白い長袖のジャケット。

下は短パン。腰元に白いフード・・・でいいのかな? とにかくそれをつけて、その根元にちっこい装甲。

というか、ヘソ出し・・・・・・誰の趣味ですか、アレ。そして武装はローラーブーツに、リボルバーナックル?



・・・・・・あぁ、アレが右手用か。初めて見たよ。あれ、ギンガさんが左手用装備してるの。

ギンガさんは『シューティング・アーツ』と呼ばれる一撃必殺の格闘術を使う。それは、スバルも同様。

なんでもその昔亡くなったギンガさんとスバルさんの母親のクイント・ナカジマさんがその格闘術の使い手だったとか。



で、リボルバーナックルは、そのクイントさんの形見になる。元々両手用あったのよ。

ギンガさんが左手、スバルが右手を受け継いで使っていると、ギンガさんから聞いたことがある。

ちなみに、シューティング・アーツがどういうものかというと、ローラーブーツで敵に接近。



拳での一撃を相手の急所に叩きつけるという分かりやすいもの。

相手が誰かなど、関係ない。狙うはただその一撃のみ。

しかし、それ故に怖い。やってくることはシンプル。



なんだけど、だからこそあるだけの力を真っ直ぐに叩きつけてくる。





「正直、下手な絡め手使ってくるやつよりも遥かにやりにくいよね」

≪それは私達にも言えることだと思いますが?≫

「あいにく、僕はテクニシャンのつもりよ? 手管使ってどうにかってね」

≪自覚がないって、悲しいですね≫

「どういう意味よ」



ま、観察したことでどういう戦い方するかは読めた・・・・・・というか知ってるし、そろそろ本番行きますか。



「・・・・・・つーわけで、始めようか」

「・・・・・・いきなりテンション戻すの、やめない?」





そんな口を叩きながら、お互いに構える。スバルは、右手のナックルを身体の横に持っていく形の構え。

・・・・・・あのローラーブーツで走行して突撃か。普通に走るならあんな構え方しない。

といいますか、まんまギンガさんじゃないのさ。でも、やっぱり姉妹なんだね。こうして対峙してみると、やっぱり似てるわ。



かく言う僕もアルトを鞘から抜き、刀身の切っ先を上に向ける

握りしめた柄を、顔の右真横の高さまで上げる。

僕が突撃する時によく使う構えだ。蜻蛉の構えとも言うかな。



防御とかには向かないけど、上段からの素早い一閃には向いている。

・・・・・・向こうが真正面から突っ込んでくる気なのだ。

だったら、待たせた側としては、同じように突っ込んでくしかないでしょ。それが男の役目ってもんです。



互いに今か今かと飛び出すタイミングを計っている。その場を支配するのは、実にいい感じの緊張感。

やっぱり戦いってのはこうじゃなくちゃね。楽しくないのはいけないわ。

僕達の間を、風が吹き抜ける。その風が止んだ瞬間、スバルの身体が沈み、前に動いた。



スバルはローラーブーツで走行しながら、僕は地上スレスレを高速で飛びながら、相手に向かって突進した。





「はぁっ!!」

「うぉりゃぁぁぁぁぁっ!!」





スバルはその拳を、僕は手にした相棒を、互いの力をもって叩きつけようと振りかざす。

拳と鉄は火花を散らし、刹那交差する。スバルは、そのまま僕の脇をすり抜ける。

くぅ、重いわあの拳っ! 一発で決められなかったっ!! 下手すると、ギンガさんより重いんじゃないのっ!?



などと思っていると、スバルがUターン。またもやこちらに突っ込んでくる。

さて、ここは一撃入れて主導権を握っておきたいとこだねぇ。何事も、最初が肝心なのよ?

タイミングを見計らって、スバルの懐に飛び込む。拳が振り出されようとしてるけど・・・そこは気にしない。



何事も最初が肝心。要は、一発入れることが重要なのだから。





「うぉりゃぁぁぁっ!!」





僕は、迫り来る拳などを気にせずにありったけの力でアルトを右から打ち込むっ!!

すると、スバルを守ろうと青い障壁・・・・・・オートバリアが発生。でも、それだけだった。

青い障壁は発生しただけで、迫り来る刃は止められなかった。



オートバリアは横一線に斬り裂かれ、その後、ガラスのように粉々に砕ける。

その砕けた衝撃に圧されたのか、スバルの体勢が崩れる。

当然このチャンスは逃さない。そこから更に一歩踏み込みつつ刃を返す。



返して・・・・・・左から横薙ぎに一閃っ!!



でも、その刃はスバルに届くことはなかった。





「マッハキャリバーッ!!」

≪Protection≫





スバルと僕を隔てるように生まれたのは、青い障壁。

・・・・・・プロテクション。バリア系の防御魔法の中では、基本とされている魔法。

僕も使える魔法なのだけど、それによって、こちらの斬撃は寸前で防がれる。



やるね。発動の瞬間に、体勢をちゃんと整えた上でこちらの攻撃を受け止めてる。

そんなに時間無かったのに。それに、バリア自体の強度もかなりのものだ。

悔しいけど、今のままじゃ押し込んでも砕けない。なら、一旦下がる。



そう決めた瞬間に刃を引き、後ろへと跳ぶ。1回だけではなく、3回ほど。

そうして距離を取って着地した瞬間に正眼の構えで迎撃態勢を整える。え、何故?

スバルの、こちらが引いた瞬間にもう突撃してきてるからだよっ! あー、むちゃくちゃ速いしっ!!



そのまま直進して、拳を打ち込んでくる。で、僕はそれをアルトで弾いて左に避ける。

スバルはそのまま僕をすり抜ける形になったけど、Uターンしてまた突っ込んでくる。

スバルの拳が、右だけではなく左も絡めて中々のスピードで飛んでくる。



だけど、それを後ろに下がりつつ右へ左へ避けていく。

避けられないと判断したものは・・・訂正。

避けられないと思った『右拳』は、アルトで弾いて直撃を防ぐ。



・・・・・・うん、いい打ち込み。





「はぁぁぁぁぁぁっ!!」



そんな余裕をかましたのがいけなかった。いきなりスバルが軽く跳躍した。

そうかと思うと、右足をこちらに叩き込み・・・・・・ようするにキックしてきた。



「だわぁぁぁぁぁっ!!」





それを、身体を捻るようにして右に回りこんで即座に回避。・・・・・・うわ、ちょっとかすったし。

つーか、スバルっ! ローラーブーツで蹴りなんて入れるなっ!! どう考えても痛いでしょうがそれっ!!

ローラーブーツで人を蹴ってはいけませんって、ギンガさんから教わってないのっ!?



当然のように、スバルは僕の疑問なんてそっちのけ。平然と攻撃を続けてくる。





「うぉりゃぁぁぁぁっ!!」

「話をきけぇぇぇっ!!」





しゃがんだ状態から、僕の足元目掛けて体全体を回転させるような足払いを仕掛けて来た。

くそ、やっぱギンガさんの妹だわ。人の話まったく聞かないし。やっぱり、姉妹って似るもんなんだなぁ。

とにかく僕は、それをジャンプして回避。回避したけど、まだ安心は出来ない。だって、射程内だし。



そこから空中に居る僕目掛けて、飛び込むようにして再びリボルバーナックルを打ち付けてきた。

だけど・・・・・・(秘儀・空中後方ダッシュ)という空戦魔導師の基本技によって、これもまたまた難なく回避。

再びスバルと距離を取った。距離にして・・・・・・150メートル。恐らく、射程外のはず。



そんな僕に、またもやスバルは突撃してきた。

走り出してからすぐに、スバルがこちらに対して拳を振り上げてくる。

当然だけど、あそこで拳をぶん回しても届くはずがない。なら、何が来る?



そう思っていると、スバルのナックルのスピナーの部分が高速回転を始めた。



それだけじゃない、ナックルからカートリッジも消費された。





「リボルバァァァァッ! シュゥゥゥゥットッ!!」





スバルがこちらに拳を突きつけると同時に、強烈なプレッシャーを放つ弾丸が、僕に襲い掛かる。

リボルバーシュート。ありゃ射撃・・・・・・というか、ペガサス彗星拳?

それともシェルブリッドバースト? あれほど無茶な感じはしないけど。



とは言え、こいつは横に避けて回避っていうのは結構難しい。避けた所の隙を狙ってって感じだろうし。

というか、弾丸の周りを渦みたいなのが回っていて・・・攻撃範囲も広いと見た。

というわけで、ここは手っ取り早い方法で行く。・・・・・・アルトを握る手に力を込める。



神経を研ぎ澄ませて、感じ取る。視覚ではなく、触覚で捉えるのは、迫り来るプレッシャーが放つ振動。

その形を、力の流れを、肌で感じ取る。それだけじゃない。刀身に魔力を込める。

・・・・・・ベルカ式の基本、武器への魔力付与。これが、自らの相棒に更なる力を与える。



だから、僕はアルトを打ち込んだ。





「はぁっ!!」





僕は正眼に構えていた鉄刀を、上段から唐竹に打ち込む。そこに感じたのは、確かな手ごたえ。

そして、僕の後ろで聞こえたなにかが廃ビルやら地面やらに派手にぶつかった音が二つ。

そう、リボルバーシュートとその周りで発生していた渦上の衝撃破を真っ二つに斬って、回避したのだ。



刀をぶつけるのでは、ただそこで命中するだけ。防御しても、同じことなのよ。

もしもあの攻撃が高威力でノックバック性能が高い場合、その隙を突かれるので×。

なので、一刀両断にした。僕とアルトであれば、これくらいならば朝飯前といった所だ。



まさかそんなメチャな回避方法を取られるとは思ってなかったのか、スバルは呆気に取られている。

そんなスバルへと、間髪入れずに突撃。つーか、隙だらけ過ぎる。

スバルの胴へと目掛けて打ち込もうと動き出した。タイミング的には問題ない。



・・・・・・はずだった。でも、敵も中々。簡単に潰されてしまった。





「ウィングロードッ!!」





スバルがそう叫んだ瞬間、突撃していた僕目掛けて、道・・・・・・そう、文字通り『道』が迫ってきたのだ。

僕は少し上に飛んで、慌ててそれを回避。発生した道は、ギンガさんも使っていた魔法。

『ウィングロード』と呼ばれる移動補助魔法に乗って、こちらへと接近してきた。



つか、スバルも使えたのかコレ。・・・・・・空戦に持ち込んでじわじわ攻撃ってのは無しだな。

これに乗れば、陸戦魔導師のはずのギンガさんも限定的ではあるけど、空中戦闘が可能になる。

ギンガさんと戦闘スタイルが丸被りなスバルも、同じとみていいでしょ。





「うりゃぁぁぁっ!!」



スバルが拳を振り上げ、そのまま打ち込もうと更に速度を上げて接近。

青い魔力で構成された道の上で、拳と刀がぶつかる。そして、せめぎあい、火花を散らす。



「・・・・・・楽しそうだねっ!!」

「スバルみたいな強いのと戦ってるんだっ!!」



拳を、刃を返して受け流す。正面に向かう力を、左へと流す。



「楽しくならないわけが・・・・・・ないっ!!」





そして、間をおかずにアルトをスバルの胴へ打ち込む。・・・・・・え?



左手の甲に・・・・・・プロテクションっ! 局所発生させて盾にしたっ!?



そうすると・・・・・・ヤバいっ!!





「リボルバァァァァァッ!!」





スバルが、右手を・・・・・・ナックルを向ける。僕は、咄嗟に後ろに下がる。

プロテクションから、アルトを離す。だけど、それじゃあ逃げるのには間に合わない。

相手の間合いの中に居て、ここから一気に離脱・・・・・・手札を使わない限りは、無理。



ならどうする? ・・・・・・攻撃あるのみっ! つーか、こんなので手札使うなんざもったいなさ過ぎっ!!





「キャノンッ!!」



アルトの刃を、スバルの拳に右薙に打ち込む。



「はぁぁぁぁぁっ!!」



衝突した拳と鉄刀を中心に、爆発が起きた。僕はそれに吹き飛ばされる。

・・・・・・あー、手が痺れた。アルト、大丈夫?



≪この程度、問題はありません。もっと激しくていいくらいですよ≫



あはは、さすが我が相棒。頑丈で嬉しいよ。



「なら、もうちょい激しめに踊っておーけー?」

≪えぇ。というか、激しくなるでしょ≫

「だよねぇ」



渦巻く爆煙を、僕は見据える。この場合・・・・・・アニメだと続く展開は、ひとつだけだもの。



「・・・・・・ギア・セカンドッ!!」



あぁもう、やっぱそう来たかっ! 突撃してきたしっ!! ・・・・・・よし、逃げよう。



≪Flier Fin≫





アルトがそう唱えると、僕の両足首から青い羽が生まれる。

フライヤー・フィンというのは、移動・・・・・・飛行補助魔法の一種。

なのはからベルカ式に変換した上で教わった魔法。これがなかなかに使える魔法なのよ。



直進性と加速力が強化されるし、他の機動も良くなるし消費はそれほどでもない。

なのは様教えてくれてありがとうとお礼を言いたくなるほどである。うん、絶対言わないけど。

そんな青い羽を羽ばたかせて、上空へと一直線に飛んで、スバルの拳をぎりぎりで回避。



そしてそのまま、上空へと避難っ!! さようなら〜♪





≪・・・・・・いいんですか?≫

「なにが?」

≪空へ飛んでも、意味はありませんよ?
あの技能があるかぎり、限定的ではありますけど空戦能力があるんですから≫



んなことは分かってるよ。でも、限定的なのは間違いない。



「・・・・・・あくまでもギンガさんの話だけど、空中で戦闘出来るのはウィングロードの上だけ。あとはジャンプしたりとかが関の山だしね。
それよりも、障害物やらなんやら使われて動かれたほうが厄介だよ。なんかパワーアップしたみたいだし」

≪正解です。・・・・・・まぁ、それなら空中の方が多少は有利に進められますからね≫

「そういうこと。手持ちのカードを幾つか切ってやるならともかく、それはなぁ」



目指すは、手札を何も見せない勝ち。つーか、僕は知り合い以外に技能なんざ基本知られたくないのよ。



「つかアルト、分かってて聞いてるでしょ?」



何回もギンガさんと模擬戦してるんだから、了承済みのはずなのに。



≪でも、おさらいは大事ですよ。きっと≫

「確かにね」





僕はギンガさんと何度か模擬戦闘をしたことがあるから分かる。

ローラーブーツでの走行は、やはり空中よりも地上の方が機動性が高い。

そしてこれは、当然と言えば当然のこと。



ローラーブーツで走行可能な遮蔽物が多い場合、下手な空戦魔導師よりも機動力が格段に上になる。

・・・・・・スバルはどうかは知らないけど、ギンガさん、壁走りとか平気でするのよ。

初めて見た時、何かの曲芸かと思ったのは内緒ね?



まぁ、空中に持ち込んでもさっきみたいにウィングロードを有効活用されたりする。

もちろん四方八方注意しなきゃいけないってのはあるけど・・・・・・それでもマシ。

相手の機動性と移動ルートを少しは殺せれば、御の字である。



そんな理由で、ある程度の高さまで飛んで後ろを振り返る。

すると、スバルがウィングロードに乗ってこちらに突撃してきている。

牽制でなんか撃ってくるかなと思ったけど・・・・・・それは無し。



恐らく、先ほどと同じように斬られると思ったんでしょ。そうしてくれると助かるわ。

そのために魔力使うのもったいなかったけど魔力付与で斬ったんだしね。

『そんなちゃちな豆鉄砲じゃあ通用しない』という牽精である。



でも、こちらも使える射撃系統の攻撃は・・・・・・だし。遠距離戦は同じかな。



そうすると、やっぱり勝負のつけどころは、ただ一つ。





≪どちらかが、クロスレンジで高火力の攻撃を相手に叩き込めるかで決まってきますね≫

「だね」




・・・・・・虎穴に入らずんば虎子を得ずってか?

正直、手を突っ込んでも掴む前に、手を入れられた事に怒る親の虎に噛み殺されそうなんだけどね。



「ま、そうも言ってられない・・・かっ!!」



青い翼を羽ばたかせ、ウィングロードに乗って迫ってくるスバルに突撃する。

・・・・・・どっちにしても、近づかなきゃ勝負はつかない。だったら、こっちから行くだけ。



「はぁぁぁぁっ!!」





僕とスバルは再び刹那に力をぶつけ合い、交差する。だけど、それは一度じゃない。

空中でスバルはウィングロードを展開させ、僕はフライヤーフィンを羽ばたかせ、何度もぶつかる。

つか、さっきより拳が重い。加速も凄いし・・・・・・いや、楽しいねっ! 色々とさっ!!



そして、またスバルとせめぎあう。さっきと同じく・・・・・・いや、さっきよりも本気でっ!!

互いに、タイミングを見計らったかのように、同時に距離を取・・・・・・らない?

次の瞬間、アルトからすごい衝撃が伝わり、吹き飛ばされた。

吹き飛ばされながらもスバルを見ると、拳を打ち抜いていた。



・・・・・・零距離からの打突っ!? こんなもんも使えるんかいっ!!

いいねいいね、無茶苦茶楽しくなってきた。でも、まだ足りない。

スバルは、当然のように追撃をかけてくる。僕に向かって、空の道の上を駆ける。



ナックルのスピナー部分は再び激しく回転して、拳に魔力を纏わせている。・・・・・・でも、甘い。

僕はフライヤーフィンを羽ばたかせる。同時進行で、アルトを右に構える。

スバルの拳は直前。もう打ち込み体勢は整ってる。そして、その拳の先が一瞬ぶれた。・・・・・・ここ。



僕はアルトの塚尻に魔力を込めて、迫り来るリボルバーナックル目掛けて叩きつけ、鉄拳を弾く。

・・・・・・うっしゃっ! タイミングはバッチリっ!!

僕に向かっていた迫っていた鉄の拳は機動を逸らされ、僕の肩を掠めていく。



拳を振るっていたスバルは、それによって体勢を崩す。



背中・・・・・・というより、スバルの右側面はガラ空き。というわけで、僕も追撃。





「うぉりゃっ!!」





左から横一文字にアルトで斬るっ!! ・・・・・・手には、明確に斬った手ごたえが伝わる。

・・・・・・正直女の子相手にこれはないと思うけど、これも勝負である。多少は大目に見てもらいたい。

背中から右の胸元くらいの高さのところに斬撃を受けたスバルは、見事に空中へとその身体を投げ出した。



まぁ、当たりは浅かったし、バリアジャケット越しだし、大丈夫でしょ。

吹き飛んだスバルは、そのまま空中に投げ出されて地面へ落下。

・・・・・・しないで、しっかりと足元にウィングロードを展開させて、着地する。



そして、僕を見上げてきた。・・・・・・どこか楽しそうで、感歎するような表情。



場違いにも、ちょっと可愛いとか思ってしまう。リボンとかつけてるしね。





「ハチマキだよっ!!」



・・・・・・スバル、思考を読むのは可愛くないよ?



「つか、リボンの方が可愛いからそっちにしときなさい」

「なにそれっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



可愛いとか思ってくれるのはうれしいけどさ、女の子のオシャレポイントを間違えるのはダメだよ?

そういうところで、色々と決まってくるんだからさ。・・・・・・あ、でもリボンでもいいかも。

そうだよそうだよ。私、女の子なんだもん。うん、リボンでもオッケーだよね。





でも・・・・・・凄い。










「・・・・・・すごいね。恭文、たいしたことないなんて嘘だよ」



あのタイミング、確実に当てられると思ったのに避けられた。

その上カウンター・・・・・・結構痛かったよー。でも、当たりは浅かったからまだやれる。



「あー、そう言ってくれるのは嬉しいけどね、自分ではまだまだと思うのよ。
つか、あんなのはるろうに剣心全話読んでれば誰でも出来るって」



謙遜・・・・・・かな? 違う、ホントにそう思ってるんだ。というか、私は疑問があるの。



「恭文、るろうに剣心ってなに?」

「え、知らないの? 漫画だよ漫画。ジャンプ史上に残る名作だよ」





・・・・・・待って待ってっ! アレ、漫画でやってた事の真似っ!?

なんか・・・・・・うん、やっぱりすごいよそれは。

そりゃあ、なのはさん達と比べたらまだまだなのかも知れない。



だけど、もうちょっと自信を持ったほうがいいと思うよ?



普通は真似ようと思っても、やらないし出来ないんだから。





「・・・・・・スバル、本当に強い人っていうのはね、スターライトブレイカーをカートリッジや形状変換無しで真っ二つに出来る人の事を言うのよ」

「なにそれっ!?」





・・・・・・よくわかんない。そんな人いるのかな? よし、ここはあとで聞いてみよう。今度は漫画じゃなさそうだし。

それはともかく、そんな話をしながら、私たちはまた構える。私は初めの時と同じように。

恭文は・・・・・・シグナム副隊長がよくやる構えだ。確か、正眼の構えだっけ?



さすがに、なのはさん達の昔馴染みだし、私達フォワードより経験があるだけあって、強い。

でも、ちょっと不満がある。それは、多分恭文が本気じゃないこと。

うん、本気出してない。色んなもの、きっと出し惜しみした上で私と戦ってる。



それがちょっと悔しくて・・・・・・腹立たしい。





「こりゃ、長引きそうだなぁ。日が沈むまでには終わらせたかったんだけど。というか・・・・・・沈んだね」



私達がこうしてぶつかりあっている間に、夕日は沈みきって、辺りは闇に包まれ始めている。

・・・・・・あのさ恭文。一つ気になったんだけど。



「私そんなに弱いと思われてたの? ちょっとひどい」

「あぁ、違う違う。そうじゃなくて」

「だったら、何?」

「・・・・・・食堂の空いてる時間って何時までだっけ?」



・・・・・・なるほど、それなら納得だよ。私だってご飯食べそびれるのはゴメンだし。



「大丈夫だよ。ここの食堂、交代部隊の人達も居るから、年中無休っ!!」

「なら安心だ。ま、お腹と背中がくっつくまでには決着つけさせてもらうけど。
というか、もうちょっとエンジンかけてもらえる? そうじゃないと・・・・・・楽しくないし」



ニヤリと笑って、恭文はそんな事を言う。・・・・・・悔しさと腹立たしさが、ちょっとパワーアップする。

うん、そういうこと言うならいいよ。本気、出してもらうから。



「それはこっちのセリフッ! ・・・・・・マッハキャリバーッ!!」

≪はい、相棒≫



恭文は強い。だから、私の全力をぶつける。ぶつけて・・・・・・打ち抜く。



「フルドライブッ!!」

≪Ignition≫



リボルバーナックルに内蔵されているカートリッジが、一気に全て消費される。

そして、発動されるのは・・・・・・これ。



「ギアっ! エクセリオンッ!!」

≪A.C.S. Standby≫



マッハキャリバーから生まれた青い空色の四つの翼が羽ばたき、辺りに青い羽が舞い散る。

・・・・・・ギア・エクセリオン。なのはさんから受け継いだ力。そして、私と相棒の全力全開。



「いくよ・・・・・・! 恭文っ!!」










私とマッハキャリバーは、恭文に対して突撃して行った。





全力でぶつかって、出し惜しみさせてるもの・・・・・・全部、引き出させてあげるからっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・ぶったまげた。正直に言ってぶったまげた。エクセリオン。僕の友達、高町なのはの奥の手。

これはデバイスの自損を防ぐためのリミッターを解除することで、デバイス・術者ともに通常時を超えるパワーを得るフルドライブ用のモード。

そこから、更に出力を上げて力を得ようという無茶苦茶なパワーアップ方法。あのバカのスペック勝負の典型例と言える。





もちろん、そんな真似をすれば術者にもデバイスにも相当な負担がかかるため、滅多な事では使えないシロモノ。

・・・・・・だったはずなんだけどなぁ。とりあえず、なのはが初めてエクセリオンを使ったという10年前は、そうだったの。

昨今の技術発達に伴いエクセリオンの危険度と負担は、本来の使用者であるなのは曰くかなり低下している。





なので、使用時に発生する膨大なパワーの制御が出来るなら、問題なく使えるようにはなっている。

うん、なっているんだけど・・・・・・だからって、こんな危なっかしいモノを広めるなっ!!

いくら教え子と言えど、自分以外の人間に使わせるんじゃないよっ! おのれは一体何を考えてるっ!?





お願いだから、責任持って墓の中まで持っていってよっ! つーか、僕に迷惑だよっ!!

くそ、マジでどいつもこいつもスペック勝負にばっか走りやがってっ! これだから才能豊かな魔力バカは嫌いなんだよっ!!

あの横馬、今日は居ないそうだけど、顔あわせたら魔王呼ばわりしていじめてやる。絶対にいじめてやるっ!!





うんうん、そうだそうだ今決めたっ! その予定だったけど更にサービスすることが今決定されたっ!!





それでそれで、フェイトには絶対こんな真似させないしっ! させるわけにはいかないしっ!!










「・・・・・・・・・・・・どうすりゃいいのさこれっ!?」

≪笑えばいいと思いますよ?≫

「いやじゃボケ」

「そこっ!!」



前から突撃。僕はアルトを右薙に打ち込んで対処。

攻撃を弾く・・・・・・のは無理なので、アルトの刃を使って弾かれる。



「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



弾かれつつも空中を左に移動する。移動して、スバルの射線軸から外れて回避。

正直に言って、今かなりピンチだったりする。



≪あなた、どうしたんですか? 今日はやけに手こずりますね≫

「なんだかお疲れモードなのよっ! 若さ溢れるパッションにはちょっとついてけないのよっ!! 僕、これでもおじさんなんでねっ!!」





エクセリオンを発動させたスバルに押されまくっているのである。

まず、一撃一撃が先ほどに比べて段違いに重くなっている。

フルドライブで、術者・デバイス共にかけられていた安全リミッターが外れたから。



で、そんな100%の攻撃を、今は、なんとか弾いたりカウンターを入れようとしたりで凌いでいる。

けど、まともに受けたらぶっ飛ばされること請け合いの一撃ばかり。下手な反撃は致命傷に繋がる。

機動性に関してもすごい。先天性の技能・ウィングロードとエクセリオン状態のマッハキャリバーによる移動と突撃がすごい。



並みの陸戦魔導師では得られないような突撃力と移動能力をスバルに与えている。

そのおかげで、なかなかこちらも有効打を入れられない。打ち込もうとした瞬間にはもう離脱されているのだ。

くそ、いくらなんでもA.C.S.速すぎだよっ! 下手すると、横馬のA.C.S.より性能いいんじゃないのっ!?



縦横無尽な移動能力とそれを活かした瞬間的な突撃力、そしてクロスレンジでの爆発力。

まさにフロントアタッカーの理想系だよ。これ以上無いって言うくらいに。

・・・・・・手ごわい。はっきりいって、完全に振り回されておりますよ、私。



なら、手札・・・・・・いやいや、正直嫌だ。ここは知ってる人間も多いけど、そればかりじゃない。



基本は、このまま対処だ。・・・・・・もうちょっと、集中するか。





「うりゃぁぁぁぁっ!!」





・・・・・・って、こんな話してる場合じゃなかったっ! スバルがまたもや突撃してきたっ!!

夜に染まりきろうとしている空で、火花を散らしながら、力を、想いをぶつけ合う。

鉄の拳から感じるのは、ドキドキするくらいの真っ直ぐな想いと決意。・・・・・・やっぱ、似てるね。



しかし、ギリだな。・・・・・・こりゃ、いよいよか?





「振動拳っ! ・・・・・・うぉりゃぁぁぁぁぁっ!!」





・・・・・・振動拳? なんか叫びながら、また突っ込んできた。

振動拳。呼んで字の如く、振動する拳。

・・・・・・なにそれ、ダサッ! センス無いにも程があるぞっ!? もうちょっとあるでしょ!!



『必殺っ! 私の必殺技パート○っ!!』とか。『ダイナミックナックルッ!』とか。



もしくは『電車突きっ!!』とかさっ!!





≪あなた、そんなことを言っている場合ですか? ・・・・・・あれを見てください、あれを≫





アルトに促されてスバルの方を見ると、スバルの瞳が金色に見える。

そう、どこのモビルスーツかとツッコミたくなるくらいに綺麗な金色。

それに気付いた瞬間、凄まじく嫌な予感が身体を伝う。



・・・・・・・・・・・・も、もしかしなくてもアレがアレしてアレしちゃってますか? 本気モードってやつですか?





≪魔力とは別系統のエネルギー反応を感知。・・・・・・来ましたね≫





あぁ、神様っ! こういう時の勘は外れていいと思うんですよっ!? いや、心からっ!!



もう避ける余裕は無い。あの攻撃がどんなものか分からない。



だけど、マトモに受けたら終わるのは間違いなし。ここはしっかり防御。





≪Round Shield≫





ラウンドシールド。今アルトが発動させてくれたのは、シールド系の代表格である防御魔法。

プロテクションなどのバリア系に比べて、範囲が固定されるため広範囲攻撃などの防御は難しい

けど、その分防御力は高い。なので、今のスバルみたいに肉弾戦を挑んでくるようなのを相手にする時には重宝する魔法だ。



それを左手で前へとかざして・・・・・・・スバルの拳を受け止める。

このまま吹き飛ばされるんじゃないかと思うような衝撃に、正直うんざり。

うんざりしつつも、足を踏ん張って、拳を弾き返すつもりで受け止める。



僕の瞳には、ベルカ式の魔法陣を模した強固な青い盾と、火花を散らしながら拳を押し込み続けるスバルの姿が映る。

・・・・・・悪いけど防御訓練でさんざんっぱら鍛えられてるんだ。簡単には・・・・・・あれ?

おかしいな。どんどんどんどん、シールドがひび割れ・・・・・・って、えぇぇぇぇっ!?



そう、スバルの拳によって僕を守るラウンドシールドは徐々にひび割れていき、そして・・・・・・砕けた。

それまで僕を守ってくれていた、青き魔力の盾は、スバルの拳により音を立てて崩れ去った。

その砕けた衝撃によって、僕の体勢はいとも簡単に崩れて、いわゆる一つのノーガード状態。



・・・・・・・・・・・・マズイっ!!





「もらったぁぁぁぁぁっ!!」





そのまま拳を僕の腹へと目掛けて・・・・・・・撃ち抜くっ!!



そうして、辺りに爆煙が舞い散り、僕は地上へと落ちていった。・・・・・・痛い。



てか、スバル・・・・・・『振動拳』ってネーミングは、本当に・・・・・・センス、ないよ・・・・・・?





≪マスター? ・・・・・・しっかりしてください、マスターっ!!≫















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「うわぁ、あれ痛そうやなぁ」

「直撃ですので。まぁ、蒼凪ならば問題ないでしょう」

「てーか、遊んでるからあんななるんよ。アイツやったら、もうちょいキビキビ出来るやろ。
・・・・・・アイツ、まーた悪い癖出てもうてるし」

「そうですね。これは・・・・・・どっちにしても医務室行きは確定かしら」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・どう見る、ヴィータ」

「どう見るもなにも、きっちり防御できてなきゃアレで終わりだ。
でも・・・・・・まだまだだ。むしろこれからだろ」

「弟子の事ならお見通しか。いや、信じているというべきか?」

「そんなんじゃねぇよ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・まぁ、エクセリオン発動させたあのスバル相手に、よくやったほうよね」

「はい。恭文さん、強かったです」

「あっさり倒されるかと思ってたんだけどなぁ。こりゃ、アイツに対しての認識、修正しなきゃね」

「・・・・・・いえ、まだ終わりじゃありません」

「エリオ君?」

「はぁ? エリオ何言ってんのよ。いくらなんでもアレ食らったらさすがに」

「ティアさん、気付いてないんですか? 恭文さん、防御してます」

「はぁっ!?」

「それだけじゃありません。・・・・・・ここまで一回も、デバイスの機能を使ってないんですよ。
魔力攻撃に関しても同じです。やったことと言えば、刀への簡単な魔力付与だけなんです」

「あ・・・・・・!!」

「えっと、つまり恭文さんは」

「これまで・・・・・・というか始まった時から、本気出さずにスバルとやりあってたってこと!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「なぎ君、本気出してる出してないっていうのは別として、元々カートリッジや形状変換は使わないからなぁ」

「そうなんですか?」

「うん、なぎ君には刀での戦いを教えてくれた、ヴィータ副隊長とは別にもう一人師匠がいてね。
その剣術の先生の教えで、その手の物は極力使わないようにしてるんだ。もちろん、ヴィータ副隊長は納得の上でね」

「でも、なんでそんな教えを? そんなことしたってなんにもならないのに」

「いや、俺は分かるぜ」

「ヴァイス陸曹、どういうことですか?」

「つまりだ、あえてそういった戒めをつけて修行の一つにしているわけだ」

「正解です。・・・・・・カートリッジや形状変換を使わなくても、戦えるように。
自らの戦闘能力、あとはパートナーデバイスの基本能力だけで、あらゆる状況あらゆる相手に対処出来るように。それが彼らの戒めです」

「なるほど。でも、今のままだとちとヤバいんじゃ?」

「それなら大丈夫です」

「リイン曹長、そりゃまたどうしてですか?」

「恭文さんもアルトアイゼンも、この程度でおしまいになるほど、弱くないのです」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「大丈夫だよアルト。そんなに叫ばなくても、ちゃんと聞こえてるから」

≪マスターっ!! ・・・・・・全く、心配させないでください≫

「心配してたの?」

≪いえ、これっぽっちも≫

「うん、正解だよ」





あー、しかし左腕が痛い。咄嗟にジガンスクードを盾にしたからなぁ。そのお陰で腕以外はダメージなしだけど。

ラウンドシールドを貫通した後で、あのセンスのカケラもないネーミングの攻撃の威力が若干削られていたしね。

あと、アルトが咄嗟に防御フィールドの出力を上げてくれたのも幸いした。そうじゃなかったらこれで終わってたよ。



結構威力あったしなぁ。魔力も余波で削られてるし。

・・・・・・一応説明しておくと、ジガンスクードは別にカートリッジを使うだけがお仕事じゃない。

強度に関しては徹底的に追求した作りにしてあるので、こういう風に盾代わりにも使えるのだ。



とはいえ、滅多な事ではやらない。我ながらまだまだだわ。・・・・・・やっぱ、ダメだなぁ。

もうちょい研ぎ澄ませて・・・・・・潰すつもりでやらないと。そうじゃないと、押し負ける。

魔力量も、出力も資質も、ぜーんぶスバルの方が上なんだもの。





「・・・・・・やるねスバル、僕にジガンを使わせるなんて」

≪いったいどこのキンケドゥ気取りですか。というか、あなたはそんなに強くないでしょ≫





いいじゃん別に。こういうので戦いのノリは変わってくるんだよ。

ま、それはさておき・・・・・・地上と仲良くディープキスする前に、体勢を整えますか。

僕は、両足になんとか残っていたフライヤー・フィンを羽ばたかせて、くるりと一回転。



そして、そのまま空中に停止する。あー、痛いのか痺れてるのかよくわかんないや。

そんなことを思いながら、左手をブンブンと振ってみる。

まぁ、威力設定はちゃんとしてくれてたみたいだし、折れてるとかはないね。



さて、ここまでとなると・・・・・・やっぱやんなきゃだめなのかなぁ。

確かに先生からは、状況を見極めた上でなら使ってよしとは言われてる。

だけど、そんなホイホイ外してたら戒めの意味が無い。



それになにより・・・・・・うん、何よりなのよ。僕は、初対面の人間に手札なんて晒したくもない。

ついでに、カートリッジ使ったら発注書作らなきゃいけないし。

正直さ、めんどいのよアレ〜。使った状況や使用本数しっかり書かないと会計通らないしさ。



六課の会計担当のグリフィスさんは、前に一緒に仕事した事あるから分かるけどその辺り結構厳しいし。



それだったら使わない方が楽ってもんだよ、うん。





「・・・・・・強いね」



僕に拳を打ち込んだ位置から動かずに、スバルが僕の方を見下ろしてそう口にする。



「んー? 強くなんてないよ僕は。余裕こくなら、もうちょっと正しいこき方をして欲しいなぁ」

「でも私、本気で打ち込んだんだよ? これで終わらせる気持ちで。
それなのに防御されて、こうやってまた向き合ってる。恭文強いよ。でも」



スバルの表情が変わる、険しくて、何かを怒っているような顔に。



「そろそろ、恭文の本気、恭文の全力、見せて欲しいかな? じゃないと・・・私、本気で怒るよ?」

「・・・・・・スバル、どっちかにしてもらえない? 本気と全力は、同じように見えてちょこっと違うもんだよ」

「そんなのどうでもいい。・・・・・・このまま勝っても、私嬉しくないもん」



あー、やばい。カートリッジやらなんやら使ってないの相当怒ってるみたい。



「嬉しくないか」

「うん」

「でもね、スバル」

「なに?」



にやりと笑って、言い切ってやる。まぁ、軽めにね。



「手の中のアリを殺さないように握り締めるのは、とっても難しいのよ?」



それに、スバルが表情を険しくする。・・・・・・挑発、乗りやすいタイプなのね。



「・・・・・・そう、私はアリ扱いか。アレかな、厨二的な能力あるとかかな。
使っちゃったら左腕が痛くなっちゃうから嫌とか」

「スバル、何気にそういうの詳しいの?」

「訓練校の友達が色々とね。それで、どうなのかな」

「残念ながら無い。でも、僕にも積み重ねたもんがあってね。それが言ってんのよ」



アルトを、正眼に構える。そうしてスバルを見据えて・・・・・・僕は、覚悟を決める。

目の前の女の子は、強い。正直さ、誠意どうこうなんて嫌いだから、そういうので物は言いたくない。



「何事も最初が肝心。だから、ここでスバルをぶっ潰して威厳を示せってさ」



だから、僕は僕の流儀を通すだけ。僕もアルトも・・・・・・負けるのも、痛いのも嫌いなのよ。



「そっか。ならそれはつまり・・・・・・どうするのかな?」

「それは実地で教えてあげるよ。さて、それじゃあ再開といこうか」



僕は、痺れの取れた左手をスバルに向けると、くいくいと動かした。

要するにアレですよアレ。ちょっと調子こいたやつが挑発するときに使うアレですよ。



「つーかさ、さっきから黙って聞いてれば・・・・・・バカじゃないの?」



嘲るような笑いを浮かべながらの僕の一言で、スバルの周囲の空気が一瞬で張り詰めた。

・・・・・・おぉ、怒ってる怒ってる。なるほど、やっぱりこういうのに乗りやすいんだ。



「どういう・・・・・・意味?」

「言葉どおりの意味だよ。本気を出して欲しいなら、出させてみなよ。頼まないでさ。
それとも、なのははそういうことも出来ないような教え方しかしてないわけ?」

「そんなことない」



だろうね。今までのやり取りで充分過ぎる位に分かったよ。



「だったら、口じゃなくその拳でそれを証明してみせなよ。自分はアリなんかじゃないし、なのはの教導はすごいってさ。
ハッキリ言って、ここまでのじゃ全然足りない。せいぜいお散歩程度にしかカロリー消費してないし」





すみません、挑発するためとは言えフカシこきました。

正直、これで後二回の変身残してるとか言われたら、泣いてギブアップすると思います。

しかし、スバルはどっかの教導官と違ってそんなことはなかった。とても真っ直ぐなのである。



ただひたすらに、僕に向かって突撃してこようとする。・・・・・・もうちょっと、戦ってたいな。



でも、だめ。僕は・・・・・・本気で叩き潰すと決めたから。





「じゃあ、ここから仕切り直しだ。・・・・・・来いよ」

「言われなくてもっ!!」



またもやスバルはこちらに突撃してきた。シンプル・イズ・ベスト。そして、だからこそ力強い。

さて、アルト・・・・・・いくよっ!!



≪Axel Fin≫





アルトのコントロールで、カートリッジがジガンスクードから1発が消費される。

僕の足首の位置にある青き翼の輝きが増す。

更に翼はその数を増し、両足合わせて六枚の羽が生まれた。



このアクセル・フィンという魔法は、フライヤー・フィンの上位版とでもいうべきもの。

これもなのはから教えてもらってベルカ式にアレンジしている。

ただし、速度や加速性能はこちらの方が上なのだけど、少し欠点がある。



飛行機動が直線以外はちょっち難しくなるので、普段はフライヤーの方を使っているというわけ。

でもそれは、僕がカートリッジの魔力分も足して性能を底上げしてるからなんだけど。

戒めにも引っ掛かるの。僕は変わらずに、アルトを正眼に構える。いわゆる一つの迎撃体勢というやつ。



もう弾いてカウンターなんて真似はしない。そしてスバルには攻撃もさせない。防御もさせない。

そうして、気を練る。目の前に立ちはだかる敵を倒すために、斬り裂くために。

・・・・・・僕の剣術は、日本の剣術である『薩摩の示現流』がベースとなっている。



まぁ、先生がそれを魔法戦闘用に合わせたものを使っていたから、教わった僕も必然的にそうなった。

示現流の本気の太刀に『二の太刀』はいらない。全ては『一の太刀』で決まる。

どんな防御も、回避も、迎撃すらも意味をなさないほどの一撃を打ち込むこと。



それこそが、先生と僕の使う剣の全てだ。それは、魔法戦の時も変わらない。

つまり、この一撃でスバルを倒す。それが僕とアルトの本気。僕なりの、スバルへの応え方だ。

・・・・・・その気持ちを形にするように、カートリッジを3発消費。アルトから青い光が生まれる。



カートリッジの魔力が鉄の刀を包み込み、僕とアルトに力をくれる。

その力に、僕自身の魔力を織り込みながら、刀身を軸にただひたすらに凝縮。

これは、さっきの魔力付与とは根本的に違う。武器を強化するのではない。



それとは全く別の姿にする。刀身を包み込んだ魔力を圧縮。

それから今度は薄く・・・・・・鋭く、研ぐようにする。

魔力と言うエネルギーを、どんなバリアでも斬り裂く青い刃へと打ちあげていく。



それによって鉄の刀は、青き閃光へと姿を変える。

僕とアルトは、どっかのエースオブエースみたいにでかい砲撃や、ホーミング性能抜群の誘導弾は撃てない。

どっかの有能な執務官みたいに、全ての機動においてむちゃくちゃ速く動けるわけでもでもない。




僕達二人に出来ることは、全速力で敵に突っ込むこと。

そして、アルトに自分やカートリッジの魔力を纏わせて斬る。基本はこの二つである。

単純明快、猪突猛進、シンプルイズベスト。だからこそ迷わずに済む。



それは、全てを撃ち貫く強さをくれる。そう、それらを用いて、やるべきことはたった一つ。



スバルを、眼前の敵を・・・・・・ぶった斬るだけっ!!





「・・・・・・鉄輝」





青い翼が、再びその羽を広げる。先ほどよりも強く、大きく。辺りに羽を散らせたかと思うと・・・飛び出した。

・・・・・・全ては一瞬の事だった。飛び出した僕はスバルに接近。

拳を僕にたいして打ち込もうとしている彼女に対して、アルトを左から打ち込み・・・・・・そのまま斬り抜ける。



夜の闇に染まり切りつつある世界を斬り裂くように、刃は閃光を生み出した。





「一閃っ!!」





夜空に生まれた一筋の青い閃光が、夜の闇を・・・・・・そしてスバルを、横一文字に斬り裂いた。

スバルは、その直後にバランスを崩して乗っていたウィングロードから落下。

結構なスピードで地上に・・・・・・・って、マズイマズイっ!!



僕は、すぐにアルトを待機モードに戻して、アクセル・フィンを羽ばたかせて一気にスバルに接近。抱きとめる。

ただ、タイミング的にギリギリだったので、こう・・・・・・お姫様抱っことかじゃなくて、ホントにハグする感じで。

スバルを抱いてから、空中で急停止。僕の周囲に、魔力光が、羽の形で夜空に舞い散る。



でも、その光景に感歎とは出来なかった。こう・・・・・・なんというか・・・・・・ねぇ?

初対面の女の子にハグしちゃったので、ちょっとこう、心臓の鼓動が・・・・・・!!

身長が同じくらいだから、顔がすっごい近い。つか、意外とボリュームがこう・・・・・・どーんってあるの。





『随分と楽しそうだな』



その時、聞こえたのは僕のよく知る声。

戦いの場に現れた空間モニターに映るのは、ヴィータ師匠の顔。それを見て、思わず動揺する。



「そんなんじゃありませんよ。これでミンチにでもなられたら、困るだけです。やましい理由なんて、ないし」

『・・・・・・とりあえず落ち着け。大丈夫、理論武装しなくてもアタシはちゃんと分かってるから』

「・・・・・・それならいいんですけど」

『大丈夫だ。セクハラは重罪だけど、罪が軽くなるようにいい弁護士紹介してやるから。
あ、差し入れももっていってやるよ。お前の好きなあそこの芋ようかんをな』

「アンタ一体何が分かってるつもりっ!?」



ちょっと師匠っ!? なに一つ理解してないじゃないですかっ! 僕、マジでそういう感情ないしっ!!



『冗談だ。・・・・・・それより、スバルはどうだ?』



そこで、ようやく抱きとめているスバルの様子に気付く。・・・・・・うん、気を失ってる。



『気ぃ失ってるようなら、これで勝負ありだな』

「・・・・・・僕の勝ちって事で大丈夫ですか?」

『あぁ、問題ねぇよ。・・・・・・また腕上げたな。
見ててハラハラしたけど、中々だったぞ』



ははは、いつもは手厳しい師匠からそう言ってもらえると嬉しいですよ。



「でも・・・・・・戒め、外しちゃいました。やっぱまだまだです」



ここしばらく、頑張ってたんだけどなぁ。うん、まだまだか。



『ま、しゃあねぇだろ。中々じいちゃんみたいにはいかないってことだ。
てゆうか、それで勝たれるとここまでスバルを鍛えてきた、アタシやなのはの立場が無いだろうが』

「無くていいんじゃないですか? 僕が楽ですし」

『ふざけてんじゃねぇっ! このバカ弟子がっ!!』



きゃー! やっぱり怒られたー!!



『あ、それとスバルとティアナ達には戒めの事、ちゃんと説明しとけよ? そうじゃないと後でうるさいからな。
つーか、口先で相手惑わすのはやめとけ。いや、本当に。お前らがそれやるとシャレ効いてねぇから』

「うぃ、了解です。・・・・・・やっぱだめですか?」

『味方内でケンカしたくなきゃな。敵ならいいけど』

「ならそれで。僕は気にしませんし」

『アタシらがよくねぇに決まってんだろっ! お前、どんだけ他人に心開いてねぇんだよっ!!』





冗談ですよ。ちゃーんと分かってますから。とにかく、今はやることやろうっと。

恋人同士でも無いのに空中でハグは、アウトである。相手が気を失っているなら余計にアウト。

なので、近くのビルの屋上までその状態で降りていって、スバルを一端そこで下ろす。



なんというか、さっきも少し思ったけど、こんな細いんだね。

それであの力が出せるんだから、恐ろしいというかなんというか・・・・・・よっと。

僕は、スバルを背中におぶって、そこからゆっくりと立ち上がる。



これなら、ギリギリ・・・・・・かな?





「あー、師匠。シャマルさんいますよね?
今からそっち連れてくんで、少し診てもらえるかどうか聞いてください」





加減せずにぶった斬ったんで、ちょっと心配なのよ。

非殺傷設定で斬ったから大丈夫だとは思うけど、思いっきりやったからなぁ。

威力設定はアルトが責任もってちゃんとやってくれてたので、大丈夫だとは思う。



あとは・・・・・・お嫁にいけないとか、責任取ってとか言い出さないことを願うばかりである。




≪おめでとうございます≫

「はい、お前黙れっ!? つーか本当にそうなったら色々とアウトだよっ!!」

『ホントだよ。・・・・・・で、シャマルには今伝えた。
それなら、医務室に直接そのまま運んでくれるとありがたいそうだ』



遠慮なくこき使う気かい。まぁ、いいけどさ。どっちみちそのつもりだったし。



『あと、お前も診ておきたいって言ってる』

「了解です。すぐに向かいます」



そこまで言うと空間モニターが消える。スバル背負いながら辺りを見回すと、もう真っ暗。遠くの方に、首都のネオンが見える。

・・・・・・長い一日だったなぁ。まぁ、なんとか終わってよかったよかった。・・・・・・ここから、半年かぁ。



「さて、アルト」





さらば電王も観られないし、部隊なんて性に合わないのは、これでもう決定だよなぁ。

来て一日目でこんなことする奴、きっと居ないもん。てゆうか、居たらビックリだよ。

・・・・・・はぁ。まぁ、いいか。自分で決めた事だし、適当に通すか。放置も無理だしさぁ。



とりあえず、僕は毎日この調子が続かない事を祈るよ。続いたら、いくらなんでも神経へし折れる。





≪はい≫



ただ、いい憂さ晴らしと気分転換にはなった。戦うの、楽しいしね。そういう意味では、スバルにも後でお礼言わないと。

これ、体育会系の歓迎会と考えれば、決してナシなわけではないし。ただ、色々ぶっ飛び過ぎなだけでさ。



「戻りながら反省会、しようか」

≪今やらないと、暇が無さそうですしね。≫










そうして、僕達はゆっくりと・・・・・・いや、スバル乗せてるし、慎重にね。

とにかく、スバルを背負いながら安全確実に、演習スペースを後にした。

これが、今日と言う日に起きた一大イベントの終わり。





あとは、シャマル先生の診療が怖いなぁ。何にも言われなきゃいいんだけど。





・・・・・・・・・・・・機動六課、か。




















(第4話へ続く)




















あとがき



≪さて、『とある魔導師と機動六課の日常』第3話・修正版。いかがだったでしょうか?
私、ミスX改め・・・古き鉄・アルトアイゼンです。いや、ようやく初登場ですよー!!≫

「どうも。蒼凪恭文です。・・・アルトさんや、そんなに嬉しいですか」

≪えぇ、主役ですから≫

「違うからっ! 主役は僕だからねっ!?」

≪気のせいでしょ≫

「ちょっとっ!? ・・・あー、もういい。とっとと話を進めるよっ!!
さて、さっそくですが、僕のパートナーデバイスであるアルト・・・アルトアイゼンとジガンスクードの紹介に入りたいと思います」




















AI搭載式日本刀型アームドデバイス・アルトアイゼン(マスターのみ、アルトと呼ぶ)

武器としての基本形状:日本刀(刃渡りは70cm。同田貫と呼ばれるタイプで肉厚で幅広の刃)





待機状態:青い、球体状の宝石

形状変換によるモードチェンジ:通常モード。その他色々。

通常モード:形状は当然日本刀。全ての基本戦闘はこれで行う。取り回しはもちろん○。





性格:女性人格のAI。かなりのお喋り。そして冷静なツッコミ屋。自由奔放にして極めて狡猾。場合によっては、軽口で人を振り回すこともある。

恭文を『マスター』と呼び、その公私にいたる全ての行動をサポートする事を使命としている。もちろん『自分なり』に。

とある事情から、他のAI搭載型デバイスと比べると感情表現が豊か。

そのため、恭文と関わる人間からは、デバイスとしてではなく、人間相手と同じように接してもらえる事も多い。





出自:そのうち詳しく説明します。とにかく、恭文が魔導師なりたての頃からのパートナー。

武器の特性としては破壊力と強度を重視した作りで、そこに刀剣故の切断力をかけあわせており、モードチェンジ時には、それらが強化される形になる。

ただし、比例して取りまわしは悪化。『一撃必殺』の要素が強くなる。

カートリッジシステムを搭載していないのは、製作当時にはまだちゃんとした安全性が確保される形でカートリッジシステムが使えなかったから。

武器としての特性は優れているが、補助魔法などのサポート能力はそれほど高くない。(自身の周囲のサーチなどの、本当に最低限な機能は搭載している)

その代わり、複雑で、基礎フレームに負担をかける機構を、形状変換以外は積んでいないので強度に関しては並みのアームドデバイスを凌ぐ。

そしてそれは、武器としての威力にも反映されている。





AIの声のイメージ:misato hukuen










非人格式ガントレット型アームドデバイス・ジガンスクード。

形状:大型の左腕用ガントレット型。

待機状態:アルトアイゼンの待機モードに収納される形になり、セットアップ時に瞬間装着される。

機能:8連装式のリボルバー形状の、ベルカ式カートリッジシステムによる魔力補強。

頑強さを活かしての防御。ナックルとしての攻撃。アルトアイゼンとのシンクロ機能。










使用魔法解説

飛行補助魔法:フライヤーフィン

なのはから教わった移動系魔法。主に瞬間ダッシュ力を重視した能力設定になっている。





飛行補助魔法:アクセル・フィン(ただし、カートリッジ1発分の魔力を使用しての推力強化バージョン)<

フライヤーフィンの強化版。なのはの使用するものよりも更に速く、鋭いダッシュが可能だが、扱いは難しい。





魔力付与・斬撃魔法:鉄輝一閃(カートリッジ使用時は、3発までの魔力エネルギーをチャージ可能)

アルトアイゼンの刀身を軸に魔力を圧縮し、薄く、鋭い刃を構築。

それを用いて敵を斬り裂く、魔力付与強化と斬撃魔法のハイブリッドとも言える、恭文のオリジナル魔法。

自身の剣術の能力も合わせて、あらゆるフィールド・バリア・シールド、攻撃魔法を斬る事を前提とした術式。

ここに、スタン効果なども掛け合わせて
使用し、あらゆる意味での一撃必殺を実現している。















「・・・とまぁこんな感じですね」

≪なお、名前の意味は、アルトアイゼンは『古き鉄』。ジガンスクードは『巨大な盾』になっています。・・・巨大じゃないですけど≫

「そこは言わないお約束だよ。で、お気づきの方も多いでしょうが、某ゲームからのマルパクリです。はい」

≪ヒネリがありませんよね。それで、どうしてこの名前になったんですっけ?≫

「えっと・・・」





(青い古き鉄、台本をめくる。そして、それを見つつ、話を進める)





「僕とヴィータ師匠を師弟関係にしたいなと思ったところからだって。ぶっちゃけ・・・ナカジマ姉妹とキャリバーズのノリだよ」

≪・・・TV本編の15話のアレですね。また安直な・・・。あと、今さらですけど私のイメージCVって・・・≫

「福○美里さんだね。某黒猫に出てくるイヴや、ロザリオとバンパイ○のサキュバスの女の子とかの声の人。
あ、フェイトの中の人とやってるラジオのアシスタントさんって言えば、分かる人多いかも」

≪スマイルギャングですね。・・・そして、私の喋りはほぼあのイメージと≫

「でも、そういうの考える前に、作者のリアル友人に性格設定とか話したら、一番合うのはこの人だって、力強く言われたらしいよ?」

≪・・・それもどうなんでしょう。とにかく、次回ですね。次回はようやく初日の終わりです。この模擬戦の後、マスターは・・・?≫

「というような話になりますので、期待していただければと思います。それでは、ここまでのお相手は蒼凪恭文と」

≪古き鉄・アルトアイゼンでした。それでは、また次回に・・・シャッスっ!!≫

「アルト、それは使い方違くないかなっ!?」










(とにもかくにも、カメラは二人を映しながらフェードアウト。
本日のED:『プロテイン美里』)




















≪なお、ここからは拍手の返事ですが・・・。これ、修正版ですけど、ここは見易いようにしたくらいで、ほぼ原文のままだったりします。

アホ作者ですが、初々しい時期もあったんですよ。下みたいに≫




















あ、それと第一回目の方で拍手をしてくださった方々がいらっしゃったので、その返事をしたいと思います。

なんというか・・・ありがとうございました。以下がその拍手になります。










※今まで読んだことのないタイプの小説です。





作者「気に入って・・・もらえましたか?」










※JS事件後ですか。新しい事件に首突っ込むわけじゃないから私は嬉しいですね 。 というかギャグ一辺倒が大好物なのでww





作者「実は次回からシリアス一色に・・・なるわけありません。シュールなギャグが延々続きます。
あと、事件に首は・・・うん、どうだろう。別のとこに首突っ込むと思います」










※あぁ・・・こういう主人公好きだな、続き楽しみにしてます





恭文「ほらみなよアルトっ! こういってくれる人もいるから、僕はこのままでいいんだっ!!」

古鉄≪・・・なんと言いましょうか、そう言っていただけるのはありがたいのですが、あまりこの人を誉めないであげてください。
ほら、『動物に餌はやらないでください』って注意書きがされている公園とか動物園とかあるじゃないですか? あんな感じでお願いします≫

恭文「動物扱いっ!?」










※期待・・・する





作者「感謝・・・する。・・・これでいいのかな? 調子乗ってないかな? 大丈夫でした!?」(弱気)










※とある…とくると、「不幸」を思い浮かべてしまう俺がいる(マテ





恭文「僕は別に不幸にならないけどね」

なのは「残念だけど、六課的な意味合いで不幸になるのは・・・もう決まっていることなのですよ? にぱー♪」

恭文「黙れやバラ○スが」(ぺしっ!)

なのは「痛いよ恭文君っ! と言いますか、○ラモスってなにっ!?」










※すごく面白かったです!! 次回を楽しみに待っています。





作者「そう言っていただけると、何度も言っていますけどありがたいです。ありがとうございました」




















・・・以上となります。みなさん、ありがとうございました。










(おしまい)





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