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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第13話 『美しい醜さも見ないふり?』



「・・・・・・・・・・・・飛天御剣流」



僕の居合いを寸前で足を止めて避けたスバルは、そのまま僕に突っ込む。だって、今なら攻撃の直後で隙だらけだから。

だから僕は前へと踏み込み、スバルの右わき腹に向かって徹も込みな一撃を逆手に持った鞘で叩き込んだ。



「双龍閃、もどき」





森林をイメージした演習場のど真ん中。そこから衝撃とドンという音が炸裂する。

それにより、スバルが口から透明な体液を吐く。飛んできた拳は、僕の左頬と髪を僅かに掠めるだけに終わった。

頬が少し切れるけど、それに構わずそのまま鞘を振り抜いた。



スバルの身体は後方へと吹き飛び、木に叩きつけられる。木が衝撃でスバルの体の形にヘコむ。



スバルはそのまま地面へと蹲るようにして崩れ落ちた。





「・・・・・・漫画にあった技で倒される気分はどう?」



スバルが苦しそうに息を吐きながら、僕を見る。



「ま、漫画って・・・・・・恭文、ふざけないでよ。私、言ったよね。全力でやろうって」

「バカじゃないの?」



鼻で笑ってやる。いや、嘲笑ってやる。あんまりに言ってる事がズレてるから、ついやってしまう。



「全力を出して欲しかったら、出させてみろよ。
僕はお前に、自分の技を出してまで倒す価値は見出せない」



スバルが睨み気味に僕を見る。だけど、構わずに言葉を続ける。



「てゆうか、甘いんだよ。僕が自分の技の利点欠点を知らないとでも思った?
それを補填するための技を、僕が何一つ保持していないとでも?」



確かに狙いは良かった。速度も十分、威力も恐らく十分。でもそれだけ。そう、スバルの拳はたったそれだけだった。



「いい加減分かれ。・・・・・・これが、守るために力を使うと言ったお前と、壊すために力を使うと言った僕との差だ」





抜き・・・・・・抜刀術が、一撃外せば大きな隙を作るもんだってことは、僕が一番良く分かってる。

それを防ぐための瞬(またたき)の極(きわみ)までの連撃であり、超零距離抜刀術である断(たち)であり、これだ。

てか、先生に覚えておくようにと言われたもん。先生、るろうに剣心好きだから。



・・・・・・そうだ、僕も九頭龍閃とか練習しようかな。

とにかく、さっきも言った通り中々にいい感じだったけど・・・・・・それだけだ。

スバルの拳じゃ、僕と『お話』なんて10年早い。





≪開始から5分。まぁ、予想よりもった方じゃないでしょうか≫

「だね。・・・・・・んじゃ、納得してもらおうか。もうこれは仕方ないよね。
だって今のお前じゃ、僕と『お話』なんて逆立ちしたって無理なんだから」

「そんなこと・・・・・・ない」



スバルが立ち上がる。ふらふらと、立ち上がりながら左手で自分の口元を拭う。

足がふらつく。ふらつきながらも、真っ直ぐに僕を見据える。見据えて、構える。



「まだ、やれる」

「そんなに、自分と同じじゃなきゃ不満なわけ?
また傲慢だね。傲慢過ぎて吐き気すら覚えるわ」





僕は別に違ってていい。同じである事も嬉しいけど、違うこともまた別の喜びをくれるから。

違うから、触れ合ったり仲良くなったり、知っていくのが楽しいって、フェイトに教えてもらった。

フェイトとは、喧嘩ばっかりで、相性悪くて、だけど・・・・・・それでも通じ合えると嬉しかった。



だから僕は、人と自分が同じじゃなきゃいけないなんて思わない。バラバラでいい。





「違う。違うよ」



スバルは首を振りつつ、僕を真っ直ぐに見る。見ながら、口を動かす。



「違わないでしょ。エリオがいつも視線で言ってるみたいに、おかしいからとか思ってればいいよ。
別に僕はそれをどうこう言わないし、気にしない。だって、他人事なんだから」

「違うよっ!!」



少し挑発気味に言った言葉に、スバルは叫びでそれを止めた。

荒く、息を吐きながらも真っ直ぐに僕を見る。瞳には、先ほどよりも強い意志。



「・・・・・・それは違う。エリオはあんな感じだけど、私にはそう思えない。
ギン姉、言ってた。恭文は、すごく強いんだって」



ギンガさん、またどうしてそんな・・・・・・別に僕、強くなんてないのに。てか、ギンガさんの方が強いでしょうが。

それにスバルもだ。僕には、力を守るために使いたいなんて、真っ直ぐには言えない。



「私、ホントバカだからさ。正直、それがよく分からなかった。だから、ずっと迷ってた。私、きっと恭文のこと傷つけた。
謝ろうかとか、普通にしてようかとか、色々考えて考えて・・・・・・それでもやっぱり答えは出ない。今も、出ない」



スバルの右手のリボルバーナックルから、カートリッジがロードされる。



「だから、ぶつかる。・・・・・・どうして、そんなに強いのか、もっとちゃんと知りたいから。
終わってない。まだ、何にも終わってない。だから、まだ倒れたりなんて、私には出来ない」

「・・・・・・分かった」



順手に持っていたアルトをクルリと回して、逆手に持ち変える。それでもう一度鞘に納める。



「スバル」

「うん」

超電磁砲レールガン使っていい?」



どうやら本気らしいし、僕もちょっと本気で応えたいのよ。



「それはやめてっ!? あんなの見切れないし防げないからっ!!」



そう、本気だ。だから、言いながらも納めて、構える。使うのは当然、抜き。

・・・・・・うん、使うのは『抜き』だ。僕が先生から教わった、正真正銘の僕の技。



「ま、そこは冗談だよ」

「冗談になってないよっ!! ・・・・・・じゃあ、なに?」

「・・・・・・僕は、お前やエリオ達に殺してどう思ったとか、そんな話をするつもりは一切ない。そして、お前らと同じになるつもりもない」



足に力を溜めていく。ゆっくりとすり足で、スバルとの距離を詰める。



「僕には僕の決めた道がある。お前らが、力を『守るため』に使うと決めたのと同じように。
その道を突っ走る邪魔をするなら・・・・・・叩き伏せる。間違ってようがなんだろうが、そんなの関係ない」

「分かってる。・・・・・・ううん、分かった」



今の僕達に必要なのは、言葉でも、想いでも、理屈でも、道理でもなかった。



「僕は傲慢なんでね。人に『自分を信じろ』なんて、軽々しく言えないのよ。
だから、僕を信じるかどうかは、そっちの勝手だ」

「信じるよ」



その子はアッサリと言い切った。言い切りながらも、足元にベルカ式の魔法陣が発生。

徹を打ち込まれた身体が痛むのを堪えつつ、僕にニッコリと笑った。



「私だって恭文と同じ。別に私達は、違っててもいい。同じじゃなくていいって思ってる。
なのに、納得出来なかった。どうしてかって考えて・・・・・・分かったんだ」



目の前に居るのは、戦う意思を示した一人の女の子。この子は強い。だから、笑う。

この一撃は、先に繋がるものを作るためのものだと、信じているから。



「私、まだ恭文のこと、ちゃんと知らない。なにも分からないことが、嫌なだけだった。
それが見られるなら、それが本当の恭文なら、私は信じるよ」



だから、言い切れる。笑顔のまま、言い切った。

僕はこの子より弱い。だから・・・・・・一言だけしか、返せない。



「・・・・・・そう」

「うん。だから、自己紹介。言葉じゃなくて、積み重ねたもので。今から二人で『初めまして』をするの。
私達はまずそこから。そこから始めて、認めて・・・・・・繋がっていきたい」

「スバル、やっぱバカだわ」



バカ過ぎてバカ過ぎて・・・・・・面白いとか感じちゃうのがアレだね。



「バカでいいよ。今目の前に居る恭文を信じられないで、何も見せられないが利口で、正しいことだって言うなら、私はバカでいい。間違っていていい」





言いながら、目の前の女の子は拳を固く握り締める。握り締めて力を、想いを込める。

それを表すように、スバルの足元に変化が現れる。足元に広がるのは空色の三角形に剣十字のマーク。

それはベルカ式の魔法陣。マッハキャリバーのマフラーから、白い煙が出続ける。



・・・・・・それを見て、楽しくなってきた。





「・・・・・・そうだ、それでいい。だから、恭文も少しでいいから、見せて。
私は見せる。バカで、間違ってる私の全部、そのまま見せるから」

「だが断る」

「断らないでよっ!!」





そう言いながら、僕達は笑っていた。・・・・・・風が、演習場に吹き抜ける。



そして木々の枝から生えている緑色の葉がそれに触れ、飛んだ。



そのうちの一枚が僕達の目の前へ飛ぶ。そしてさっきまで見えていた相手の顔を隠す。





「「・・・・・・はぁっ!!」」










スバルのローラーブレードの駆動音が響く。僕は、一気に右足を踏み込む。





そして、その葉・・・・・・いや、相手の得物目掛けて、互いの存在をぶつけ合った。





葉は拳と刃に挟まれ、木っ端微塵に粉砕された。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・腕、痺れて動かせない。恭文、なにしたの?」

「だろうね。内部打撃叩き込んだから」

「徹?」

「そうだよ」



スバルは、あの後、前のめりに倒れた。、今は寝返りを打った上で、仰向けになりながら空を見てる。

僕はその傍らに立ちスバルを見る。というか、見下ろす。そして思った。なんか気分がやけにスッキリしていると。



「・・・・・・恭文のエッチ」

「なぜそうなる」

「だって、さっきから私の胸ばっかり見てる。・・・・・・ふふ、気になる?」

「ならない」



あと、僕は一切胸は見てない。スバルは色々と勘違いをしているようだ。



「うーん、恭文が女の子だったら揉ませてあげてもよかったんだけど、さすがになぁ」



いいんかい、そういう返答もまたビックリなんですけど。



「あ、それなら・・・・・・見たかったら好きなだけ見ていいよ?」



・・・・・・とりあえず、顔面踏んでいいかな。結構本気で。

僕の印象がどうなっているのか、非常に気になるんですけど。



「あぁ、足で踏むの無しっ!! ・・・・・・大丈夫大丈夫。フェイトさんには、内緒にしててあげるから」

「だが断る」

「だから断らないでよっ!!」



だってー、せっかくフェイトフラグがいい感じなんだもん。ここで下手なことしたくないもん。

うし、帰ってきたら絶対に成立させるために頑張ろう。そうだ、ここからが正念場だ。



「てゆうかさ・・・・・・やっぱり、守るための力とは思えないんだよね」

「思えないね。そういうのは、スバルやフェイト達に任せてるから」

「そっか。それは・・・・・・責任重大だなぁ」



そう言って、地面で空を見上げている女の子は笑う。なんだか嬉しそうに。そして、誇らしそうに。



「それだと私達、恭文から任された分まで頑張らないといけないもの」

「・・・・・・はい?」

「恭文は、私達を信じて任せてくれた」



いや、あの・・・・・・ちょっとっ!?



「だからその分、私達みんなの力でその意味や想いを、これから少しずつでもちゃんとした形にしていかないといけない。
でも、この間みたいにただ言うだけなんて絶対だめ。そんなの意味が無い。だから・・・・・・私、決めたよ」



スバルは、右手を伸ばす。伸ばして、空に浮かぶ二つの月を見ながら・・・・・・ギュッと、握り締めた。



「私、今の自分の想いを現実にしていく。あの時の恭文も納得してくれるくらいに、力のある形に。
あの時思いつかなかった、別の選択も導き出せるくらいに、今よりもハッキリした強い形に」



そして、表情を崩す。崩して右腕を下ろして、スバルは笑う。

なんだか楽しそうに・・・・・・そして、照れくさそうに。



「・・・・・・やっぱり責任重大だ。私、もっともっと頑張らないと」



なんだろう。この子はフェイト達と同じで、人の言葉を都合のいいように解釈する癖があるなぁ。

正直、ここは修正した方がいいと思う。いや、結構真面目によ?



「恭文」

「なに?」

「違っても、いいんだよね。違ってたって、私達は・・・・・・繋がれるんだよね」

「繋がれるわけないでしょうが」



ため息混じりに、スバルを否定する。そう、否定するのだ。

それだけでは足りないから。だから、スバルを見下ろしながら、僕は言葉を続けた。



「それと繋がろうと思ったら・・・・・・まず、認めるとこからやんないとだめなのよ」

「あはは、そうだね。うん、その通りだ。・・・・・・実はさ、私も結構普通とは違うとこ、あるんだ」

「あら、そうなの」

「そうなの。機会があったら、教えるね」



僕の足元の女の子は、ニッコリと笑う。・・・・・・なので、僕はこう返事をする。



「うん、楽しみにしてる」



普通にまたビックリさせるよなぁと思い、心の中で謝りつつである。

しかし、ビックリしたなぁ。まさかそこまで言ってくれるとは。



「しかし・・・・・・人とは違うバストの全てを教えてくれるわけですか。
感触から見かけから大きさから保持の秘訣まで」

「そうそう・・・・・・って、違うよっ! そ、そういうのは未来の彼氏に対してだけなのっ!!
恭文にはフェイトさんが居るんだし、絶対教えないからねっ!? ・・・・・・あ、サイズは別にいいのかな」

「いいんかいっ!!」

「だって、想像する時とかにデータは必要でしょ? 前に居た部隊のお姉さんが言ってた」



管理局は一体なにやってるっ!? 普通にそういう人間育ててるってどういうことさっ!!



「えっとね、(子どものこーろの夢ーはー♪)くらいあるんだ。
なんかここ最近でまた大きくなっちゃってさー。あ、ちなみに形状はお椀型で」

「普通にここで話すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










・・・・・・風は、優しく吹き抜ける。だからなのかも知れない。





なんだか、スバルとの距離が縮んで楽しくなってきたのは。





なお、絶対に今している全体的な柔らかさとか色合いの話が楽しいのではないので、あしからず。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第13話 『美しい醜さも見ないふり?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・で、君はどうして普通にカリムと一緒にお茶してるのさ。しかもサリエルさんまで」

「アコース査察官、言わないでください。俺は止めたんです。えぇ、思いっきり」

「いいじゃん別に。てゆうか、普通に噂のたぬき部隊長に挨拶は必要かなと思って。
それにほら、リインちゃんも来るんでしょ? ちょっとデータもらわなくちゃいけないしさ」



あぁ、そういうことですか。・・・・・・で、カリムはそれに押し切られている形と。



「ヒロリスは言っても聞かない人だから・・・・・・。それで、ロッサ」

「あぁ、調べてきたよ。でも、いいの?」

「もう今回の一件に、ヒロリスもサリエルさんも無関係ではないもの。
それに・・・・・・万が一の時には、色々頼んでしまうかも知れないし」



なるほど、だから知っておく必要があると。まぁ、いいか。

というわけで、僕は話を始めた。内容は・・・・・・はやてについて。



「実は、カリムに頼まれて、はやてのミッド地上での評判なんかを軽く調べてたんだよ」

「あー、それ聞かなくても私分かるわ。普通に嫌ってる人間多いんでしょ」

≪姉御、身も蓋もねぇって。・・・・・・けどロッサ、その通りなんだろ?≫

「そうだよ。原因は、君達も知っていると思うけど、闇の書事件だ」



10年前、当時は嘱託だった高町教導官やフェイト執務官が関わって、はやてがキーマンとなった事件。

そして、今なおはやて達もそうだし、色んな人間に爪痕を残している、悲しくも愚かな事件。



「確かに今の上層部の年代を考えると、どんぴしゃで闇の書事件で痛い思いをした世代にぶち当たりますしね。
経緯や結果はどうあれ、最悪なロストロギアの所持者になっていた八神部隊長の評判はやっぱりよろしくないと」

「まぁ、はやてはそういうことも含めた上で、全部背負って前に進もうとしていますけどね」

≪そこは蒼凪氏と同じですね。・・・・・・片や超問題児とされている嘱託≫



けど、管理局は恭文に大きな借りがある。・・・・・・今更だけど世界救ってるんだよなぁ。

もちろん恭文一人でどうにかしたわけじゃない。ただ、そのきっかけにはなってると思う。



≪片や管理局の上層部にも食い込めるエリート。幼馴染という点を除いても、色々気が合うのでしょう≫



だけど、やっぱり危うい。前にクロノとも話したけど、やっぱりはやては生き急ぎ過ぎてる感じがするから。

カリムも同じくらしい。少し俯き、物憂げな表情を浮かべているから。



「重荷を背負わせて、その上面倒な事を頼んでいる身だから、こんな事言う権利ないのだけど・・・・・・はやてには、やっぱり幸せになって欲しいわ」

「・・・・・・カリム、それはちょい違うんじゃないの?」

「ヒロリス?」



紅茶を飲みつつ、ヒロリスが柔らかく息を吐く。それから、呆れたような顔でカリムを見る。



「アンタ、その口ぶりだと八神はやてって人間の幸せがなにか、全て分かり切っているように聞こえるよ?」

「・・・・・・そうなの?」

「そうだよ。大体、背負わせて巻き込んだなら、もうアンタには今の段階で何か言うことなんて出来ないよ。
アンタが今出来る事はたった一つだけ。今回のバカ騒ぎの中で、アンタのやれる範囲でいいから全力で戦う。それだけだよ」

≪・・・・・・だな。カリムのねーちゃん、気に病むのは分かるが、ここは踏ん張ろうぜ。
てーか、ずたぼろだろうが笑ってろ。そうじゃなきゃ、余計にそのタヌキ隊長も気にするって≫



二人にそうアッサリぶった切られて・・・・・・カリムはため息を吐いた。そして、顔を上げる。

その表情には、さっきまでの物憂げな色はなかった。もう、いつも通りのカリムだ。



「確かにそうね。・・・・・・というか、恭文君も全く同じ事をはやてに言ったらしいの。
その話を聞いていたのに、だめね。こんなことじゃ、私は私の戦いを通せない」

「そうそう。カリム、大丈夫だよ。知らない人間はともかく、知ってる人間はアンタ達を信じて一緒にそうするって決めた。だから、揺らぐな」

「・・・・・・えぇ。さて、それはそれとして・・・・・・そろそろ、あなた達の話をしましょうか」



・・・・・・え、あのカリム? どうして僕とヒロリスを見るのさ。それも怖い笑顔で。



「ロッサ、あなた・・・・・・最近また遅刻とサボりが多くなっているそうね」

「ぐ」

「それだけじゃなくて、あっちこっちの女性局員に声をかけて、かなり頻繁にアプローチしてるとか」



な、なぜそれをっ!? カリムとシャッハに以前バレた時の反省も生かして、綿密に隠蔽計画を立てていたのにっ!!



「あー、すみません。アコース査察官」

≪余りの勢いで頼まれて、断り切れませんでした≫

「あなたのせいですか、これはっ!!」



あぁ、サリエルさんなら普通に出来るよねっ! そうだよね、この人の情報処理・捜査能力も、一級品だものっ!!



「あははははははははっ! ロッサ、またやってたのっ!? 全く、どうしてそう懲りないのかねー!!」

「ヒロリスも笑うのやめてくれないかなっ!? これはそう・・・・・・そうっ! 職務上色々な事情があってだねっ!!」

≪一体どんな職務だよ。そんな、ボーイじゃあるまいし≫

「その通りよ。そんな言い訳は一切聞きません。・・・・・・それとヒロリス、あなたも色々やっているそうね」



そして今度はヒロリスが固まった。カリムの笑顔は、やっぱり怖い。

首から錆びた機械のような音がしているけど、ヒロリスはそれでもカリムの方を向いた。



「イッタイナンノコトデショウカ」

「あなた、私とシャッハが禁止した電撃属性への魔力変換、よく使っているそうね」



あぁ、あの地獄の忘年会か。あの時は大変だったなぁ。

会場が見事に半壊するし、周辺の電気機器がショートして使いものにならなくなるし。



「なんでもストレス解消にレールガンを撃ったり、恭文君にその辺りの技術を教えたり」



はぁっ!? ヒロリス、そんなこと・・・・・・あぁ、だから恭文がレールガン使えたんだっ!!



「それを活用して、電力会社に電気を売ったりしたことがあるとか」



はぁっ!? ヒロリス一体なにしてるのさっ! てゆうか、それは下手すると普通に犯罪なんじゃっ!!



「・・・・・・サリィィィィィィィィィィィィィィッ!!」

「ま、待てっ! 俺じゃないっ!! 俺は知らなかったんだぞっ!? てーか、お前そんな事してたのかよっ!!」

「あぁ、魔力変換した電気って、売ったり出来るのか試したくなっちゃって」



・・・・・・ヒロリス、普通はそんなの試したくならないから。そう、誰も・・・・・・あぁ、恭文ならやりそうだよ。

あれだよね、最近超電磁砲レールガン撃てるようになったって、はやてが頭抱えてたっけ。



「・・・・・・って、そうじゃないっ! アンタ、マジで最近調子こいてるみたいだねっ!!
影が薄いくせに一体何様っ!? 私より人気投票の順位が高いって、おかしいでしょうがっ!!」

「影が薄いって言うなっ! いいか、俺は普通なんだよっ!? 一般的なSSだったら、充分主役級なんだよっ!!
だけどお前ややっさん、アルトアイゼンやらその他もろもろが影が無駄に濃い奴ばかりだからコレなんだろうがっ!!」

「うっさいっ! サリのくせに生意気なんだよっ!!」

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! だったら、お前だって第一回人気投票で俺より順位が低いくせに生意気なんぢゃおっ!!」



あ、噛んだ。



「サリ、そこで噛むってありえなくない? あぁ、これは普通に次の人気投票は私より下だね。
いや、あの(大きくなっれー♪)より下かも」

「か、噛んでねぇよっ! そして、ここで(笑顔になっれー♪)の名前を出すなっ!!
時系列的にまだ出てこれないだろっ!?」

≪待て待てっ! 姉御もサリももう落ち着けよっ!! つーか、いくらなんでもカオスになり過ぎてねぇかっ!?≫



とりあえず、ここまで来るといろんな意味でアウトコースだと思うので、止めようとした。

僕とカリムがそのために動こうとした時、ノックの音が聞こえた。



「失礼します。騎士カリム、八神はやて二佐がお越しに・・・・・・あら、どうされました?」



はやてを連れて入ってきたのは、シャッハだった。そして、部屋の状態を見る。

止めようとしている僕とカリム。そして、取っ組み合いになってるヒロリスとサリエルさん。



「なるほど」



そして、こわーい暴力シスターは平然と、そんな事を言った。



「ロッサとヒロリスの悪行がバラされて、それに逆切れしたヒロリスがわけのわからない話をして、サリエルさんに掴みかかっているんですね」

『なぜこれだけでそこまで読み取れるっ!?』

「これくらい、聖王教会のシスターとしての嗜みです。
というわけで・・・・・・私の出番でしょうか」



ゴキゴキッ!!



「とりあえず、拳を鳴らしながら近づくのはやめないかなっ!?
というか、いきなり暴力行動はありえないからっ!!」

「そ、そうね。ここではやめて欲しいわ」



ちょっとカリムっ!? 『ここでは』とか言っちゃだめだからっ! 普通に別のとこならいいって言ってるのと同じだよっ!!



「そこはともかく・・・・・・はやて、お疲れ様」

「あ、うん。カリム、またお邪魔するな。で・・・・・・そちらのお二人が、あのチビスケの弟子仲間やな」

「あ、どうもー」



苦笑いで、二人してお辞儀する。はやては・・・・・・あぁ、困った顔してるね。



「八神部隊長、こんな格好ですみません。コイツが俺の人気に嫉妬してて」

「あぁ、それは当然ですよ。だって、あの順位はうちの居るべき場所やと思いますし」

「アンタまで同じなんかいっ!!」










・・・・・・あははは、カオスだなぁ。てゆうか、これはありえないって。





でも・・・・・・(大きくなっれー♪)って誰だろ。



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・さて、突然だが超電磁砲レールガンについて、前々回のおまけよりも詳しい解説をしたいと思う。

超電磁砲レールガンとは、フレミングの左手の法則を活用した攻撃である。

えっと、磁場(B)・・・磁場の働く方向。電流(e)・・・電流が流れる方向。力(f)・・・運動の方向の関係性だね。





二本のレールに電力を流して、この法則にあるそれぞれの力の流れの方向を決める。

なお、流れの関係性はググってください。図形とかここだと出せないんで。

とにかく、(f)・・・・・・運動の方向が、レールガンにおける弾丸の飛ぶ方向だと、覚えてもらえればいい。





僕やヒロさんが魔法でレールガンを撃っているのは、魔法のプログラムを活用して、この力場を再現しているのが理由。

そして、レールガンは一発発射する際の消費電力が多ければ多いほど、威力と飛距離を増す。

まぁ、このためには力場を構成するレールも、それ相応のサイズが必要なんだけど。これも、長ければ長いほどいい。





ただ、長くなければ撃てないというわけでもない。重要なのは、この力関係がちゃんと構築されていること。

だからこそ、ヒロさんみたいにアメイジアの形状変換を使ったりとかしなくても、僕は撃つ事が出来るのだ。

ただし、威力と速度は向こうに負けてる。なので・・・・・・こっちは、連射性と燃費性で勝負ですよ。





そして、レールガンには利点と欠点がある。まず利点を一つ上げると、それは初速スピード。

例えば、車やバイクに乗っている人は分かるだろうけど、運動する物体というのは、いきなり最高速に到達はしない。

だけど、レールガンはその限りじゃない。マッハ3出ると言えば、最初からマッハ3で発射される。





この初速は、回避を困難にするし、なにより威力にも関係してくる。

直撃を食らえば、その分の衝撃はもちろん、衝突時に発生する熱量までもがダメージに加わる。

戦車の装甲もそれで溶かしたって言う逸話もあるくらいだし、そこはバカには出来ない。





そして、欠点。まぁ、レールの破損の危険や、電力が必要ってとこは話したと思うので、別のを上げる。

それは、使用する弾頭に制限が出てしまうこと。レールガンの弾頭には、少し手を入れる必要がある。

電気抵抗がもたらす熱エネルギーによって、電気をそのまま通してしまう金属などは、溶けるのだ。





溶けた場合、弾丸は撃ち出されずに気化。場合によってはプラズマと化して吐き出されるだけとか。

そのためにヒロさんの場合だと、ゴム製・・・・・・絶縁体で作った弾丸を使っている。

で、それを伝導体の膜で覆うのだ。これなら、弾は溶けないし、外側が金属だから力場はしっかり形成される。





それだけではなく、気化した金属が生み出す圧力が、弾丸を撃ち出す手助けもしてくれる。

これは、普通の銃弾で言うところの弾薬の役割を果たす事になっている。

なお、僕は出力を調整することで、その辺りを防いでいる。





まぁ、色々お話したけど、僕のレールガンには、改善すべき点があるのだ。そこで・・・・・・。










「ちょっと待ったっ!!」





スバルとのバトルが終わって、僕は自分の訓練に入った。



それは、とールガンを完璧に使いこなせるようにすること。



なお、スバルとなのはも居る。で、スバルは。





「ぐー」



寝るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!



「スバルには坊主の話は難し過ぎたみたいだな」

「・・・・・・ね、ティア。この子、座学は優秀だって聞いてたんだけど」

「一応ね。てーか、さっきので疲れてたんでしょ」

「納得した」



とりあえず、アレだ。スバルは気にしない方向で行く。



「で、なによ。ティア」

「いや、それはアンタだから。普通に『それで・・・・・・』って言う事は、あるってことよね。改善策が」

「うん」



あっさりそう言いきると、ティアが頭を掻き毟り始めた。・・・・・・なんでだろうか。



「アンタ、マジでこんなガチな質量兵器、使うつもり?」

「もちろん。大体、レールガンの利点はかなり多いのよ?
まぁ、少し真面目な話をさせてもらうとだよ」

「なによ」

「スカリエッティ一味が何もって来るかは分からない。
こっちも、多少アウト気味でも手札は欲しいのよ」



・・・・・・で、レールガンの利点の一つは、消費する電力量を調整することで、瞬時に威力の調整が可能。

さっきも言ったけど、電力が多ければ多いほど、威力と速度を増す。



「逆を言えば、消費電力が低ければ威力は低いってこと?
死なない程度の加減をしたりとか、そういうものが出来る」

「まぁね。ただ、今の僕はその辺りが一切出来ないけど」

「あぁ、だから練習が必要と」

「そういうこと」



あと、極端な話をすると、撃つのに必要なのは力場と電力と弾丸だけ。

だから、アルトの力を借りなくても、それさえあれば撃てるってのもあるよね。



「恭文君、出来ればレールガンはやめて欲しいんだけど」



不満そうなのが居た。そう、なのはだ。局員として、教導官として、色々考えるところがあるらしい。



「てゆうか、はやてちゃんに怒られてたよね。レールガンを撃つ時に発生した電磁波のせいで、六課の電子機器に異常が出かけたって」

「大丈夫、アルトは無事だったから」

「それは、予めシャーリーに頼んでその辺りの対策立ててもらってたからだよねっ!?
みんなのデバイスもちょっと危なかったんだからっ!!」



説明しよう。レールガンを撃つ時の力場が発生すると、強力な磁場が発生する。

それにより、電子機器が影響を受ける場合もあるのだ。



「何を言うか。相手が『ミッド電子レンジ大作戦』とか言って、地中に電磁波発生装置を大量に仕掛けてくるかも知れないでしょ?」

「一体なんの話してるのかなっ! てゆうか、普通にそれだとスカリエッティ達は悪の組織だよねっ!!」

「まー、いいじゃないですか、なのはさん」



なお、ヴァイスさんも居る。なぜかついて来た。



「レールガンってのは、男のロマンなんですから。俺も昔、考えましたぜ」

「そうなのっ!?」

「そうですよ。男は生まれた時から、自分だけの超電磁砲レールガンを既に持ってるんですよ。
そして、その超電磁砲レールガンでいつかでっかい花火を打ち上げてやりたいって、野望を持ってるんですよ」

「そ、そうなんだ。・・・・・・すごいね。私、ちょっと感動しちゃったかも」





・・・・・・ヴァイスさん、それはシモネタじゃないですか。

てゆうか、なのはが普通に感心してるの、どうするんですか?

これで他の人に触れ回ったら、あなたまたアルトさんに蹴り飛ばされますって。



とりあえず、顔を赤くしてにらんでいるティアは正解だと思う。で、スバルは・・・・・・寝てる。





「まぁ、俺はアウトレンジショット専門だったから、さすがにこんなのはダメって結論が出ましたが」

「確かに・・・・・・あんなのスナイプじゃないですよね。人質が取られてたら、巻き込んじゃいますよ」



ティアがそう呆れたように僕を見ながら言う。・・・・・・僕はみんなの向かい合わせに立ってるから気づいた。



「・・・・・・あぁ、そうだな」



そして、ティアはヴァイスさんから少し離れてるから、気づかなかった。ヴァイスさんが今、とても苦い顔をしていたのを。



「とにかくよ、レールガンの威力を上げるための解決策の一つで、今の僕がすぐ出来る事がある」

≪超伝導物質を使うんですね? 砲身・・・・・・はありませんから、弾丸用のコインを使う≫

「そうだよ」

「「超伝導物質?」」






超伝導物質とは、金属をある一定以下の温度まで、急激に冷やす。なお、もちろんマイナス何度ってレベル。

そうすると金属は、その性質を変える。電気抵抗(電気の流れにくさ)が、限りなく0に近くなるのだ。

ちなみに、高温だと電気抵抗が多くなり、低温だと少なくなる。



あと、流れた電気量が下降することもない。実際に、レールガンの改良点にはこういうのもあるのだ。

ただ、本来ならアルトの言うように砲身を超電導物質にするんだけど、今回は弾丸でそれをやる。

普通にどうなるのかかなりドキドキである。拍手で『とールガン』の名称と一緒に来てたけど、それでもドキドキだ。



というわけで、早速やってみよー!!





「なのは、結界お願いね。多分、相当火力出るから」

「い、いや・・・・・・あの、お願いねってなにっ!? そしてアレ以上火力出るってどういうことかなっ!!」

「さぁ、やってみよー」

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



・・・・・・なお、結局撃たなかった。威力がどれだけ出るのかという話になって、吐いた。

黙ってようかと思ったんだけど、吐く事にした。だって、ティアが怖かったし。



≪超伝導レールガンならば、準光速攻撃になってコイン一つで数十万から数百万トンの衝撃ですね。
多分、連射すれば現在の最新型の次元航行艦くらいは、すぐに落とせますよ≫

「「・・・・・・数十万から数百万トンっ!?」」

「・・・・・・坊主、こりゃあさすがに俺らも許可出来ねぇって。普通に対艦船・要塞用の攻撃じゃねぇか」



もともとレールガン自体が対人戦の枠飛び越えてるしなぁ。ヴァイスさんがすっごい呆れた顔で言うのも、分かるのよ。



「これ、魔導師の魔法障壁でも防げ・・・・・・ないよなぁ」

「アンタ、防げると思ってんのっ!? 数十万から数百万トンなんて・・・・・・普通に無理よっ!!」

「しかも、準光速攻撃だから、基本回避も無理だよねっ!?
というか、こんな衝撃が直撃したら、普通に人なんて消し飛んじゃうよっ!!」

「だよね、うん分かってた」





ぶっちゃけていい? さすがに腰を抜かしかけた。そんなの、普通に対人兵器の枠を飛び越えてる。

対要塞・艦隊戦用の武器だ。というか、やっぱりコインを冷やすのは色々問題が出て来るかも知れない。

そして、僕は思った。この破壊力を見て、考えた。世界の色々な流れとか都合を。考えて、思った。



だから、僕はティアやなのは、ヴァイスさんにこう言うのである。





「・・・・・・これは封印するわ。てーか、危な過ぎるしチート過ぎる」



なんか、どうして管理局が質量兵器を禁止したのか、ようやく理解出来たわ。

確かにこれは危険だ。魔法文化推奨したくなるって。うん、魔法至上主義万歳だわ。



「そ、そうだね。そうした方がいいよ」

「てーか、撃つ前に確認してマジでよかったわ。そんなの、チート過ぎるし」

「まぁアレだ・・・・・・坊主、お前のレールガンはそのまんまでいいって。そのまんまがきっと素敵だと思うぞ?」

「ぐー」

『そしてなぜこの状況で寝れるっ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・今日、恭文と模擬戦しました。それで、ようやく友達になれたかなと思います。






あと、ガジェットが出てきました。だけど、ちょうど近くに居たエリキャロとフェイトさんが、ずばばーんと倒して、解決しちゃいました。

最近、特にレリック反応も出てないのにガジェットが出てくる事が多いです。

なのはさん達は、何かのテストかも知れないって言ってたけど・・・・・・まぁ、大丈夫か。きっとみんな居るし、なんとかなるって。うんうん。





それでそれで、さっきティアと恭文と三人でご飯を食べて、今までで一番楽しいお食事が出来ました。





ギン姉にも報告したいと思います。・・・・・・・・・・・・まるっと。










「・・・・・・スバル、それは一体どこの作文?」

「そうよ。てゆうか、その作文思考やめなさい。前に報告書を作文調で書いて、怒られたの忘れたの?」

「え、この犬っ子そんなことやったのっ!?」

「えぇ」



あぁ、あったあった。あれだよ、若気の至り・・・・・・犬っ子ってなにっ!? 恭文、私をそんな風に思ってたんだっ!!



「まぁ、訓練校での事務訓練の時になんだけどね。
教官から『他の人が読んでも分かりやすく、簡潔に』って指示されて、それなの」





・・・・・・空はもう真っ暗。ガジェットが夕方に出てきた事以外は、実に平穏無事な一日だった。

というか、そこは持ち出さないで欲しい。私もなんであんなことしたのか、今振り返るととっても疑問なんだから。

あ、でも教官から『文面はだめだが・・・・・・ただ、趣旨を一番的確に捉えてはいる』って誉められたのはうれしかったなー。



私達は三人で色々お話をして、隊員寮に戻る途中。月は昨日よりも優しい輝きで、世界を照らしている。それがなんだか嬉しい。





「でも、リイン曹長居ないのは違和感あるね。最近、ずっと一緒だったし」

「そうよね。てゆうか、なんでアンタ専属みたいになってんのよ。あの人、部隊長補佐のはずなのに」

「やっぱりあれかな、元祖ヒロインだから側に居ないのは寂しいとか」

「違うから。てーかあの元祖ヒロインってのやめさせたいんだけど、どうすりゃいいの?」



その少し疲れた表情の恭文の言葉に私とティアは顔を見合わせて・・・・・・こう口にした。



「「無理じゃないかな」」

「即答っ!? てゆうか、ハモりがまた半端ないねっ!!」

≪当然でしょ。あなた、リインさんをさて置いて幸せになれるとでも?
てゆうか、もうリインさんと付き合えばいいんですよ。ラブラブすればいいんですよ≫



リイン曹長は、恭文が来てから一番変化したように感じる。というか、完全プライベートモード?

いっつも恭文にラブラブ光線送ってて、大好きだって言ってて・・・・・・あまあまだよねー。



「付き合えるかボケっ! つーか年齢っ!!
あの子まだ8歳よっ!? 倫理的にも八神家的にも問題でしょうがっ!!」

「・・・・・・あぁ、それは確かに。それやったら、アンタマジでロリコンだもんね」

「ただ、恭文はともかくリイン曹長は」



あー、うんうん・・・・・・。うし、喉の調子はオーケー。それじゃあ、いってみよー。



「『それでも大丈夫ですよ? リインは、恭文さん大好きですから♪』って言いそうだけどね」

「「あ、今の似てた似てた。というか、クリソツ」」

「ホントに? いや、ありがとー。実は前々から可愛いから練習してたんだ。好評でよかったよ」

≪・・・・・・あなた、なにしてるんですか≫



アルトアイゼンの言う事は気にしない。だって、仕事の合間の息抜きだもの。問題ないよ。



「で、マジな話・・・・・・ずっと一緒なのって、ユニゾン出来るのが原因?」

「うん。はやてや師匠達もユニゾン出来るけど、僕との方が相性も能力も高くなるの」

「へぇ、だからなんだ・・・・・・って、あの恭文? 恭文って部隊長達の家族だっけ」

「違う。・・・・・・お願いだから、そこは触れないで? 特にはやてが気にしてるのよ。
なんで自分や師匠達より僕の方がロードっぽく見えるのかーってさ」



とにかく、私達は隊員寮の近くまで来た。部隊長にそこは触れないようにしておこうと考えつつも・・・・・・気づいた。



「ね、レールガンってどういうのなの?」

「「え、今更そこっ!?」」



・・・・・・こんな風に二人にツッコまれながらも、私はもう一つ気づく。

前方で海を見ながら、身体を震わせている二人が居る事に。



「・・・・・・ね、あれエリオとキャロじゃない?」

「あ、ホントだ」

「スバル、ティア、行こうか」



そう言って、恭文が二人を気にせずに・・・・・・って、ダメ。私は恭文の右手を掴んで、それを引き止める。



「恭文、だめだよ。ちゃんと話さないと」

「そうよ。てゆうか、無視されかけたからって自分までやるってどういうことよ。アンタ、器量狭すぎ」

「うっさい、器量が狭いのは元からだ」



なんか平然と認めたっ!?



「・・・・・・てゆうか、二人とも勘違いしてるって」



私とティアは、その言葉に顔を見合わせる。というか、どういうことかと視線で恭文に言う。

恭文は、呆れたような顔で言葉を続けた。



「いい? 二人とも空気を読みなよ。子どもとは言え、二人は同年代の男の子と女の子。
それが二人っきりで海見てるのよ? 僕達が話しかけるのは、完全にKYじゃないのさ」

「・・・・・・あ、なるほど。ようするに、二人がいい雰囲気だったら邪魔する事になると」

「そうそう」



その言葉に納得しつつ、私達はもう一度エリオ達を見る。見て・・・・・・違和感を感じた。



「ね、あれ雰囲気いいの? なんていうか、普通に悲しみのオーラが滲み出てるんだけど」

「あぁ、それならあれだよ。きっと別れ話なんだよ。
・・・・・・いやいやっ! 一体いつの間に二人付き合ってたっ!?」

「一人でボケて一人でツッコむのやめてくんないっ!? なんか見てて寂しいからっ!!
・・・・・・てゆうかさ、マジで声かけましょうよ。あれ放置はまずいって」



私達は、声を潜めつつそんな話をする。そして、また二人を見る。・・・・・・やっぱり、泣いてる。

私の目、普通より色んなものが見えるから、注意深く見ると分かる。二人とも、泣いてる。



≪・・・・・・ほら、あなたがモタモタしてるから強制イベントが発生しちゃったじゃないですか。
難易度きっと高いですよ? これがだめだと、フェイトさんルートも消失ですよ≫

「うわ、それは嫌だなぁ。しゃあない、介入行動に移りますか。
そして破壊だ破壊。ソレスタルなんちゃら張りにそんな消失フラグを破壊だ」

「アンタマジで何するつもりっ!? そしてソレスタルなんちゃらってなにっ!!」



とにかく、エリオとキャロを三人で引っ張って(エリオは嫌がったけど、私とティアが納得させた)、話を聞いた。

それは、フェイトさんとのこと。恭文が苦い顔をしたのは、気のせいじゃない。



「・・・・・・そう言えば、今回全くフェイトと絡んでないっ! てゆうか、前回もそうじゃんっ!!」

「アンタ、どんだけフェイトさん好きっ!? 普通にもっと他に可愛い子居るでしょっ!!」

「居ないっ! 僕はフェイト一筋なのっ!!」

「アンタ、マジでムカつくわねっ! 一回殴っていいかしらっ!? えぇ、いいわよねっ!!」










どうやら、ティアと恭文はすっごく仲良しみたいです。いいことだと、思いました。





・・・・・・まるっと。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・すみませんでした」

『まぁ、別にいいのよ? 話を聞く限り、あの場で否定的な事を言えるわけがないもの。
ただ、後見人である私に何の相談もなく、公的なフォローの約束までするのは、いただけないわね』





現在、僕はクラウディアの自分のデスクで、母さんからの通信を受けている。

そして、お説教の真っ最中だ。原因は・・・・・・ただ一つ。

あの会談で、騎士カリムと恭文の行動を認めると発言した事。



なお、これに関しては僕と騎士カリムが悪い。というより、母さんに謝らなければならない。





『私達が、身内だからいいのよ? まだ許せる。ただクロノ、あなたはもうちょっと上の人間の働き方を、覚えなさい。
これが私じゃなくて本当に知らない方だったら、間違いなく問題になる。今回の事、見過ごせるレベルを超えてるわよ?』

「はい、おっしゃる通りです。余りに即決し過ぎました。
というか・・・・・・母さん、すみません。結局汚れ仕事を押し付ける形になってしまって」

『・・・・・・いいわよ。たとえ相談したとしても、結局私はこういう役回りでしょうし』





僕は、自分の浅はかさを悔いている。現場主義も、時には弊害になるらしい。

結論だけ言うと、僕と騎士カリムがあの場で恭文の行動を認めた事は、間違いだった。

・・・・・・あぁ、ちゃんと理由があるんだ。頼むから、それを聞いてから怒ってくれ。



まず、後見人・・・・・・監査役として、恭文の行動を否定する人間が、必ず必要だということがその理由だ。

恭文の行動は、その是非や理由はどうあれ、管理局という組織の理念から外れている。ここは、紛れもない事実だ。

ここで監査役が全員認めてしまうと、それは六課という部隊の局内での立場の悪化にも繋がる。決していいことではない。



この場合、僕達は後見人全員で相談した上で、その場合の役回りやコメントを決めることが必要だった。

まぁ・・・・・・ここまで言えば分かると思うが、僕と騎士カリムはそれを行っていなかった。

その辺りをしっかりと相談せずに、あの場で恭文をフォローすると返事をしてしまっていた。



結果的にそれは、後見人として肯定の立ち位置に立ったことになる。

そうして否定的・・・・・・汚れ役を、母さんに押し付けてしまっていた。

母さんが今まで否定的なコメントばかりしてたのは、それが原因。つまり、全部僕と騎士カリムのせい。



そして、自分で情けないと思うのは・・・・・・それをこの段階まで、騎士カリムに言われるまで気づかなかったことだ。



それで、急遽こうして連絡をしているのだが・・・・・・やばい、恭文にブレイクハウト(ベフィス・ブリングVer)で穴を作ってもらいたい。





『全く、騎士カリムはあれからすぐに謝罪のために連絡してくれたのに』



だが、僕は普通にしていた。母さんに特に連絡もしてなかった。あぁ、本当に穴を作って欲しい。そしてその中に今すぐ飛び込みたい。



『あなたは二週間待っても何の連絡も無し。しかも騎士カリムに言われるまで、気づかなかったときてる。
クロノ・・・・・・あなた、本当に部隊の後見人になった自覚がないでしょ。あなたは、六課の監査役なのよ?』



もう返す言葉もない。齢23で、母親からガチなお説教を食らうとは思って無かった。



『あなたの今居る位置は、フェイト達が居る現場じゃない。前線主義は大事だけど、それだけじゃだめなの。
大体前線を現場だというなら、私達が居る場所だって現場よ? 上の現場には、それ相応のやり方がある』

「・・・・・・申し訳ありません。もう心の底から、反省してます」



・・・・・・提督、やめようかな。なんだか向いてないような気がしてきた。

僕はやっぱり前線で戦っている方が、性に合っていると思う。



『それで、話は変わるけど・・・・・・というより、こっちが本題ね。
実は、私の方からも連絡しようと思ってたところなの』

「と言いますと」

『今日の夕方くらいに、恭文君からメールをもらったのよ』



恭文からメール? しかし、それがどうして僕の方にいくんだ。



『・・・・・・全く。あの子はあなたと違って、ちゃんと私の事を分かってくれていたわ。
『事情は分かるので、自分は特に気にしていない』と言ってくれた』



ようするに母さんが否定的なコメントを出していたのは、後見人としての仕事だと知ってたのか。

・・・・・・なぜ、アイツが分かる事を僕が分からないんだろう。おかしい、色々とおかしい。



『あの子の場合、今までの経験からでしょうけどね。ナカジマ三佐からも色々教わっているそうですし』

「らしいですね。というより・・・・・・アイツはよくメールを送れましたね」



母さんが心の底から自分を否定している可能性もあったのに。

実際僕やはやて、隊長達はそういう印象を持っていた。付き合いが長いにも関わらずだ。



『あら、当然よ。これでも、私達は仲良しなのよ? 信じるものは全く違うけど、それでも。
まぁ、保護責任者としては見過ごせない点もあるから、色々言っちゃうけどね。・・・・・・しつこいくらいに』

「しつこいくらいにですか」

『えぇ、しつこいくらいに。知ってるでしょ? 私は、そうしなくちゃいけないの』

「そうでしたね。・・・・・・えぇ、そうでした。忘れていましたよ」



そう言って、にっこりと笑う母さんを見て・・・・・・自分を恥じた。なんだろう、僕はやはりだめだ。

もしかしたらアイツを労わる余りに、妙なフィルターが入っていたのかも知れない。



『それで、気になる事があるのよ。エリオの様子が、かなり・・・・・・おかしいのよね』



僕はそれに首をかしげる。どういうことかと、疑問の視線を母さんに送る。



「それは母さんがアルフと一緒にエリオと話して、扇動したからでしょう。一体何を言ってるんですか」



そうだ、よく考えたらここで納得してはいけないじゃないか。

母さんが『しつこいくらいに』を実践しているのは分かるが、それでも今回はやり過ぎなんだから。



『はぁっ!? ・・・・・・ねぇ、ちょっと待って。恭文君のメールにも、同じ事が書いてあったのよ』



当然だろう、アイツは今その対処の真っ最中なのだから。

・・・・・・全く、もう一度考えたら、僕が怒られたのはかなり理不尽ではないか?



『どうやら、本当に色々誤解が積み重なっているようね。いい、クロノ。私はエリオを扇動なんてしていない』

「・・・・・・え?」

『というより、エリオはどうしてあんな酷い状態なの? 私、恭文君からのメールで今の状態を知って、ビックリしたわ。
あなた達もワケが分からないようだけど、私も同じ。というより、アルフと一緒にエリオと話してなんていないの』

「はぁっ!?」



言い訳かと思った。だけど、違うらしい。今の母さんの目は、戸惑いと疑問の色が見えたから。

待て待て、どういうことだ? 確かフェイトやはやて、恭文からの話だとそういう感じなんだが。



「母さん、事件後に恭文やエリオに連絡などは」

『恭文君にはしてないわ。ほら、私はあなたのおかげでこういう立ち位置ですもの』



・・・・・・背中に色々突き刺さるが、ここは気にしない。



『逆に有ってもあの子が辛いと思って、距離を取ってたの。
・・・・・・あぁ、それでも分かってくれているのは、やっぱり嬉しいわね』



僕は色々とビックリですけどね。というより、恭文に負けた気がしてなりません。



『それでエリオは・・・・・・あぁ、向こうから一回だけあったわね。
恭文君の事、どうするか悩んでたらしいの。六課の先輩にちょっと叱られたらしくてね』

「その時にはなんと?」

『とりあえず・・・・・・そうね、それほど変な事は言ってないと思うの。あの子と私達の付き合いの事は、一切気にしないでいい。
昔馴染みという理由で庇ったとしても、受け入れたとしても、それはあの子にとってもみんなにとってもよくない』



確かにその通りです。僕も、そこは全く同感です。



『本当に大事なのは、エリオがこれから恭文君とどうしていきたいか。
決めなくちゃいけないのはそこ。どんな答えでも、私達はそれを否定しない・・・・・・という感じかしら』



つまり、母さんはエリオの自由意志に任せた。恭文を否定するのも、認めるのも、全部エリオ次第。

『自分で考えて、答えを出すならそれでよし』という感じか。・・・・・・これでは、僕達と全く同じではないか。



「なら、他に連絡などは」

『してないわ。私も、ここ最近忙しくて本局に篭りっ放し。
実際、今日だって一週間ぶりに家に帰ってこれたんですもの。それに』

「それに?」

『確かに六課の後見人として、本局の提督として否定的なコメントは出している。
だけど、それでエリオ・・・・・・いいえ、他の人間の意見までどうこうなんて、傲慢よ』



・・・・・・確かに、そう思います。だからこそ僕達も、相当憤っていましたから。



「じゃあ、アルフと協力してどうこうというのは」

『私、さっきも言った通りそんな事をした覚えはないわよ? ・・・・・・私は後見人としての仕事はする。
例え『現場』に憎まれても、それを構成する『人』を守るために必要ならそれをやる。でも、それだけ』



僕にさっきのような話をしたのは、僕が後見人としてお仕事をしっかりとしていないと思ったから・・・・・だよなぁ。

あははは、やっぱ提督やめようかな。自分には向いてない向いてないと思ったが、これは決定的だ。



『あなた達個人がどう思うかは、あなた達の自由。そこまで言うつもりはないわよ』

「待ってください。母さんがそれということは・・・・・・あぁ、考えるまでもありませんね」

『・・・・・・全く、とんでもない大ポカをやらかしてくれたようね。
しかも勝手に私も自分と同じ意見だと解釈し、あの子に妙な後ろ盾まで与えた』

「それだけでなく、今日はやてから来た連絡によるとそいつはこうも言っているようです。
『アタシとお母さんはエリオに協力してもらった上で、何とかしようとしてるわけさ』と」



そして母さんは頭を抱えた。僅かに手がプルプルと震えているのは、気のせいじゃない。

怒っている。母さんは久々に怒っている。恭文にもこういうのはなかったのに。



「・・・・・・もう、呆れてなにも言えませんか」

『えぇ、本当に・・・・・・何も言えないわ。でも、これで全部繋がった。
どうもあなた達が感情的になり過ぎてるように感じてたんだけど、これが理由なのね?』

「はい」

『あなた達は私が後見人としての地位を使って、エリオを利用してると思った。だから、今までのあれこれ』



エリオの事があったからこそ、僕達は今まで母さんやアルフに対して頭を痛めていた。

特に母さんだ。後見人という立場を利用してさえいるように見えた。だが・・・・・・話は変わってきている。



「はやてやフェイト、なのはからは、聞いてなかったんですか?」

『えぇ。かなり大きな溝があるということだけね。恭文君からのメールで、細かい状態をようやく知ったの。
というか、やたらとそれを私のせいにするから、変だとは思ってたのよ』



またどうしてそんな中途半端な・・・・・・いや、ここは当然か。僕達は匙を投げていた。

今の母さんやアルフと話しても、何も伝わらないと、逃げていたんだ。



「どうやら、僕達は本当に色々な誤解をし合っていたようですね」

『そうね。そして・・・・・・その最も足る原因は、アルフよ』





あのバカ犬は母さんの『後見人として』の見解を、そのまま母さんの自身の考えとして受け取った。

そこがそもそもの間違いだ。そしてそこから、間違いは信じられないほどに連鎖していく。

次の間違いは、それをエリオに『自分達の意思』として吹き込んだ事。そこに、母さんの言葉だ。



この場合どちらが先かというのは、実は重要では無い。重要なのは二人がエリオを認めたこと。

アルフはもちろんだが、母さんもエリオの自由意志での決定を『認めた』。そう、認めたんだ。

どうするのか、どうしていきたいのかはエリオ次第だと認めた。ここで火種が確固たるものになった。



恐らくだがエリオの中では二人が、自分の後押しをしてくれた形になっているのだろう。

今まで抱いていた局・・・・・・いや、僕達の理念やそれに対する信頼が間違っていない事をだ。

あとはそれだけじゃないな。・・・・・・エリオの出自だ。フェイトと同じプロジェクトFの産物。それがエリオだ。



局には、エリオの居場所がある。認めてくれた人達がいる。例えばフェイトや僕達という家族。例えば六課という仲間。

自身が研磨し、取得した魔導師ランクという一つの資格。六課での立ち位置や、局の理念や正義に共感した自分自身の想い。

それらが現実という矛盾の中に存在している事を、エリオは身を持って知っている。知っているから、余計に状況を悪化させた。



もしかしたら恭文が局を嫌い、迎合しないことを自分のそんな居場所や世界を否定されているように感じているのかも知れない。

いや、否定しているのだろう。現に恭文とリインは、『犯罪者の未来をも守る』という理念を真っ向から否定した。

だから、認めない。いいや、認められない。認めては、自分の世界が壊れてしまうから。



恭文は今のエリオから見れば、そんな世界を破壊するウィルス。絶対に修正しなければならない。

出来なければ、自身の存在が壊されると思っている可能性も・・・・・・捨て切れない。

エリオを『両親』から引き剥がし、研究に利用してた連中も、また壊す者なのだから。



とにかくだ。フェイトが自分を見つけて、手を掴んでくれることで開いた世界を守りたいのだろう。

その世界では、エリオは認められる。『エリオ・モンディアル』として、存在出来る。

だから、守る。綺麗で、自分の信じた理想と願いに溢れ、自分を認めてくれた世界をだ。



・・・・・・どうして、こうなるんだ。ほんの少しボタンをかけ違えただけで、なんでこんなバカなことに。





「母さん個人の考えでは・・・・・・いや、この場合はそれは必要ないですね。必要なのは、ただ一つ」

『『リンディ・ハラオウン』という管理局の総務統括官で、六課の後見人の公式見解。
それがあればいいのよ。そして、それだけでとても強い力を発揮する』

「ダメですね、僕達は互いに、抽象的に物を言い過ぎてたのかも知れません。だから、分からなくなった」





今、僕と母さんが少し話すだけで、全てが紐解かれた。なぜ、今まではそれが出来なかった?

簡単だ、僕達は互いに、しっかりと話そうとはしてなかった。だから・・・・・・これだ。

その間に、エリオの歪み・・・・・・いや、もう歪みでは無い。おそらくは、洗脳だ。



くそ、本当に僕は後見人失格だ。なぜもっと早くに突っ込んでいかなかった。





『・・・・・・上と現場ではどうしても距離が開くのも原因よね。クロノ、あなただけじゃなくて、ここは私も反省だわ。
長い付き合いだから、こういう時もあるという程度にしか思ってなかった。私も後見人失格よ。完全に油断してた』





アルフの立場を弁えない擁護と、母さんの公式的の立場と、自分の娘の保護児童に対する個人的に言った、抽象的な言葉。

次にエリオが今恭文とどうしたいのか。自分はどうあって、恭文にどうして欲しいのか。

そして最後に、フェイトやなのは達から自分が教わってきた『正義』。それが、エリオを歪めている。



一つ一つの要因は、実に小さい。だが、それらが混じりに雑じりあって・・・・・・これだ。

だけど、まだ間に合うかも知れない。エリオに、僕達は伝えられるかも知れない。

僕達は誰も悪くなどない。だだ、それぞれに行き違っただけなのだと。だから、簡単に分かり合える。



現に今の僕と母さんがそれだ。・・・・・・頼む、間に合ってくれ。





『私・・・・・・アルフに愚痴る事も多かったから、それで過大に解釈しちゃったのかも』

「アルフのハラオウン家の使い魔としての責任感も、原因の一つだったと。
確かに、ここ最近はともかく、フェイトは恭文の無茶を心配していましたから」

『だから余計にということね。なんにしても、このままにはしておけないわ』



母さんが顔を上げる。思わず、それを見て後ずさり、震えが走る。

母さんの目は・・・・・・相当に厳しいものだった。こんなの、数度しか見た事が無い。



『・・・・・・ねぇ、クロノ。あの子今、フェイトと話してるみたいだから、少し乱入してくるわ。後は私に任せてくれる?』

「わ、分かりました」










そして、通信を終える。・・・・・・アルフ、覚悟しておくといい。母さんは、かなり怒ってたぞ?





とりあえず僕は、はやてに連絡だな。そして、一緒に反省だ。





僕達が感じていた憤りは、全くの筋違いで、メールひとつで分かってしまうようなことだったと。




















(第14話へ続く)




















あとがき



あむ「・・・・・・恭文、バカじゃないの? てーか、レールガンはないって」

古鉄≪さすがに超伝導レールガンは試せませんでした。・・・・・・いや、待ってください。
私に銃型の形状変換を備えた上で撃つなら、出来ます。私を超伝導状態にして≫

あむ「なんか恐ろしいからやめてくんないっ!? 物理衝撃数百万トンってありえないからっ!!
・・・・・・というわけで、本日は」

リンディ「というわけで、あとがき初登場のリンディ・ハラオウンです」

恭文「Remixのあとがきだと、久々登場の蒼凪恭文です。いやぁ、しかしリンディさん」

あむ「え、えぇっ!?」

リンディ「えぇ、そうね」

あむ「あの、ちょっとっ!!」





(親子二人で、すっごい笑いをこらえている様子。そして・・・・・・一気にはじけた)





恭文「騙された騙されたー! いぇーいっ!! リンディさんが完全に悪者な立ち位置だって思ってたでしょっ!? ところがどっこい全然違いまーすっ!!」

リンディ「もうおっかしいわねー! まさかこういう風に来るとは誰も予想してないでしょっ!!」

恭文「ただ、ヒントはあったのですよ。今までのRemix・・・・・・僕がフォン・レイメイと戦った後にリンディさんのコメントや意見が出るのは、全部人伝なのですよ」

リンディ「クロノだったりはやてさんだったり、リインさんだったりで、全部他人の主観。私視点や、私が直接登場したわけでもなんでもないの。
そして、具体的な話になっていたのは、全部公式的な話だけ。エリオとのお話は、全て『そういうことをしたらしい』というものばかり」

恭文「ここは、キャロだったり、フェイトだったりだね。はてはエリオ自身だったりだね。てゆうか、普通に12話でアルフさんが『お母さんは知らない』って言ってます。
この辺り、ひぐらし罪滅し編を参考にしてみました。とまとは基本一人称で主観視点だから、ちょっと実験的にやってみたのですよ」





(上手く言ってくれると嬉しい・・・・・・なぁ)





リンディ「もう反応が楽しみよねー。あぁ、ここまでネタバレしたくてしたくてしかたなかったわー」





(・・・・・・なんというか、普通に楽しそうだ)





恭文「とりあえず、リンディさんが実は六課の現場寄りって言うのは、予想してなかったかと。
だって意見が凄いですよ? もう普通に『さぁ、お前の罪を数えろ』的なコメントばかりなんですよ」

リンディ「えっと、話を纏めると・・・・・・アルフが余計な事をしたのが、全ての原因なのよね」





(甘党お母さん、普通に言い切った)





恭文「で、エリオはエリオで生真面目だから、普通に12話とか今回で話したような感じで思いっきり暴走して」

リンディ「まぁ、私がちゃんと気づけなかったというのがあるのは、確かなのよね。
ただ、私は本当にこの件に関してはあまりタッチしてないのよ。というより・・・・・・仕事が」

恭文「この時、何日くらい篭ってたんですか?」

リンディ「・・・・・・一週間くらいね。その前も泊まりがあったりした。
総務統括官って、別に六課のことだけに構ってるわけにはいかないのよ? さて、話は変わるけど」

恭文「なんですか?」

リンディ「私IFについて、ちょっと考えてみたいの」





(青い古き鉄、机に突っ伏す)





恭文「なんでそうなるっ!?」

リンディ「だってー、現地妻ズの定期集会や旅行に参加したいのー。
すっごく楽しそうなのよ? 最近だと、メガーヌさんも加わるらしいし」

恭文「あの連中はなにしてるんですかっ!!」

リンディ「それで、プロットを考えてきたの」





(青い古き鉄を無視して、甘党お母さんは普通に懐から紙を出す)





リンディ「まず、私が一人で自分の身体を慰めているところに、あなたが突入してくるの。
用事があって入ったんだけど、鍵がかかってなかったのよ」

恭文「は?」

リンディ「そこで、あなたは自分の中の男を抑えられなくなって、私はあなたに全てを奪われる。
それから、隠れるようにして身体を何度も重ねていくんだけど、段々と愛情を互いに持つようになって」

恭文「却下です」

リンディ「どうしてっ!?」

恭文「もう別のところで、そういうエロ込みな長編があるからですよっ! もう最初のくだりからそのまんまだしっ!!
いいプロットかどうかとかの前に、パクリですからっ! リンディさんの全てを僕が奪う前に、別のところのやばいもんを全部奪ってるんですよっ!!」

リンディ「そうなのっ!? これ、シャーリーが考えてくれたのにっ!!」





(一瞬、メガネマイスターの顔がちらついた)





恭文「あのバカ、マジでなにしてるっ!」

リンディ「最大限に、私という存在をリスペクトと言ってたけど」

恭文「なんでもかんでもリスペクトって言えばすむ話じゃないでしょっ!?
・・・・・・とりあえずあれですよ、そのプロットはなしです」

リンディ「そうね、盗作になるもの。うーん、なら何がいいかしら。
普通に肉体関係から入るほうが自然な気がするのよね」

恭文「すごいとんでもない爆弾考え始めてるっ!?」

リンディ「ティアナさんのお知り合いがそういう風に言われたらしいし」

恭文「とりあえず、それはティアナじゃないから気にしないでください」

古鉄≪・・・・・・あなた達、いつまでくっちゃべってるんですか?≫





(・・・・・・あ、なんか青いウサギと現・魔法少女が怒ってる)





あむ「というか、あたし達のこと忘れないで欲しいんですけどっ!?」

恭文・リンディ「「・・・・・・あ、ごめん。忘れてた」」

あむ「ちょっとっ! 恭文はともかく、リンディさんがそれってどうなんですかっ!!」

恭文「僕はともかくってなんだよっ! あむのくせに生意気なっ!!」

あむ「うっさいっ! それ言ったら、アンタだってアンタのくせに生意気じゃんっ!? てーか、あたし達の仕事奪わないで欲しいんですけどっ!!」

リンディ「あむさん、ごめんなさいね。ついつい私IFの話がしたくて」

あむ「あ、あ・・・・・・あんなパクリ話ダメですからっ! てーか、不潔ですっ!!」

リンディ「あら、それは違うわ。あなたも、ご両親がそうやって愛し合ったからこそ、あなたが生まれたのよ?
そういうのを抜きにしても、愛の営みは互いを繋ぎ合わせ、気持ちを通じ合わせるコミュニケーションの一つですもの。決して不潔ではない」

あむ「それは・・・・・・あの、そうかも知れないですけど」

恭文「あむ、諦めなよ。リンディさんには勝てないから」





(そう、最強なのだ。きっと魔王も勝てない)





リンディ「そう言えば、エリオが最近楽しそうなのよね。どうやら、Remixでの今の立ち位置が嬉しいらしくて」

恭文「影濃いですしね。てーか、なんかカイザとかキックホッパーになりたいって言い出してて大変なんですよ」

古鉄≪あの人、あっち方向目指す気ですか? 絶対フェイトさんが泣くと思うんですけど≫

あむ「そ、そうだね。というか、ちょっと涙目で嬉しそうなエリオ君を見てたよ?」

古鉄≪もうちょっと、何とかなればいいんですけど。・・・・・・それでマスター≫

恭文「なに?」

古鉄≪もう、収録時間終わりです≫

恭文「え? や、やばい。それでは本日はここま」









(言い終わる前に、画面が途切れた。そして、何も映らない。
本日のED:いとうかなこ『escape』)




















リンディ「・・・・・・ずいぶん盛り上がってるようね」

アルフ「あ、お母さん。ちょっと聞いてくれよ。フェイトが全然分かってくれないんだ」

フェイト『それはアルフだよね。ねぇ、どうしてそうなるの? 私、全然アルフの事が分からないよ』

リンディ「まぁまぁ、落ち着いて? とりあえず、ちゃんと説明してくれなきゃ、分からないわよ」

アルフ「エリオの様子がおかしくて、それの原因がアタシとお母さんだって言うんだよ。
原因は、全部あのバカの無意味な行動のせいだって言うのに。な、おかしいだろ?」

リンディ「・・・・・・そう」

フェイト『アルフ・・・・・・だから、何度言えば分かるの? 私達にはそんなこと言う権利』

リンディ「フェイトも落ち着いて。・・・・・・とりあえず、そこの辺りについてちょっとお話しましょうか。ちゃんとする必要、あるみたいだし」

フェイト『はい、構いません。私もそのつもりでしたから』

リンディ(うぅ、これはクロノ以上にキレてるわね。というか、恭文君には感謝しないと。
私、本当に何も知らなかった・・・・・・あぁ、これは言い訳ね。多分、私も拍車をかけてると思うもの)

あむ「・・・・・・・・・・・・これ、どうなんの? なんか雲行きがすっごい怪しくなってきたんですけど」

歌唄「考えるまでもないでしょ。リンディさんがこのスタンスってことは・・・・・・全部の原因は、アレよ」

あむ「あぁ、そうだね。考えるまでもないよね。てゆうか、普通に前回でネタバレしてたもんね。
あはははは、これ、マジで恭文とエリオ君が喧嘩とかする方が、ブッチギリで無意味だよね」

歌唄「無意味過ぎて、逆に悲しくなってくるわね」










(おしまい)





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あきゅろす。
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