[携帯モード] [URL送信]

小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Stage05 『Eager Rabbit』


……恭文くんも今日はお休みな中、765プロはとても……いやな緊張感で満たされていた。


シアター計画。

39プロジェクト。

”第七回ガンプラバトル選手権・世界大会トップ2入りファイター”。


更にそんなファイターから、直にガンプラバトルを教えてもらえる環境。

それは、とても魅力的なもので……。


『というわけで、何とかなりませんかねぇ。もう、でっかく特集したいんですよ!』

「えっと、申し訳ございません。
確かに765プロの方でマネージメントというか、面倒を見てはいるんです。
ただ本人の志望もあって、ガンプラ絡み以外でいわゆる取材や出演の類いはお断りしていまして」

『いや、そこを何とかお願いします! 何せ今が旬ですから! ビジュアルも調っていますし、絶対いけますって!』

「本当に申し訳ございません。用件は本人に伝えておきますので。では……失礼いたします」

『あ、ちょっと』


本日何件目かの電話を終えて、ほっと一息。


「はぁ〜〜」

「うーん、ピヨちゃんもお疲れって感じなの」


そこでやってきたのは美希ちゃん。

応接室の様子も気にしつつ、空いていた左隣のデスクに座る。


「プロデューサー、忍者さんなのにすっかり人気者なの」

「粒子結晶体事件の絡みもあって、余計に注目度が高いみたいね。
……というか、セイくん達も同じ感じみたい」

「そっか……初出場で大活躍だったから」

「相棒の子も一緒にーって言われて、かなり困っているみたいね。恭文くんが軽くもらしていたわ」


でも、声を掛けたくなる気持ちも分かるのよ。

ガンプラバトルの注目度が世間的に高まっている上、この二人はビジュアルが調っているでしょ?

それに恭文くんに至っては、アイドルの子達ととても親しくして……ハーレム、応援されちゃったし。


……とはいえ、それもやっぱり一過性のこと。

二人ともタレント活動とか余り興味がないようだし、きっと今まで通り……対して変わらないわよね。

きっと見かけだけのキラキラより、胸が熱くときめく”何か”を求めて、戦い続けて……男の子の世界ねー!


そういうの、大下さんと縁を持つようになって……以前よりもっと分かるようになった。


「まぁプロデューサーだし問題ないか。結局ドンパチが好きなだけだし」


それについては美希ちゃんも同じかしら。

現プロデューサーさんとの縁もあったから、すっかり度量が大きくなったというかー。


「それより、問題は……」

「……えぇ」


応接室から未だに漂い続ける、圧倒的緊張感……!

そこにいる二人の男性と女性を見て、私も、美希ちゃんも、頬を引きつらせる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……まさか専務になって早々、こんな重圧に襲われるとは。

あぁ……順一朗兄さんが外回りに出ていなければ!

と……いかんいかん! こんなに弱気でどうする!


シアターができたら、私が総責任者なんだ! 今のうちに頑張らなくては!


「――美城会長、それは成り立ちませんよ」


弱気になりかけた気持ちを奮い立たせ、改めて……目の前の男性にそう告げる。

私や黒井より少し年上で、白髪交じりの短髪。

気迫に満ちた眼光の彼が、美城力也――346プロの会長だ。


現在346プロは社長の席が空いており、この美城会長が兼任する形となっている。

それもこれも、可愛い娘に社長の席を明け渡せるように……というのがもっぱらの噂らしいが。


その隣に座る美城常務を見ていると、それもあながち嘘とは思えなくなってくる。


「……高木専務、それはなぜでしょう」

「一つ、私は現状の346プロに、将来性を感じません」

「確かに……現状で不満があるのも分かりますが」

「そういうことではありません。
失礼だが常務は未だ独身で、後継者もいらっしゃらない様子。将来的にどうするおつもりですか」


もっと先の問題だと告げると、美城親子は不愉快そうに目を細める。


「もしや同族経営から切り替えて、優秀な社員に後を引き継がせるおつもりですか?」

「問題ありません。私はこの命潰えるときまで、美城の輝きを育て上げていきます。それは常務も」

「……そうして潰えた後はどうなさるのですか」

「はっきり言いましょうか。外部の人間であるあなたに教える義理立てはないと思われますが」

「こちらも泥船には乗りたくないのですよ。それに、提携相手となれば相応に腹を割っていただかなくては」

「…………新たなシンボルを掲げるのです」


美城会長はなんの迷いも、憂いもないと……私の目を真っすぐに見て断言。


「決して揺らがない、永遠の炎≪エターナルブレイズ≫を。
そうすることで美城は、新たな神話≪レジェンド≫を刻み続けます。そう……時の針が決して止まらないように」

「もう一度お聞きします。あなた方の後継はどうなさるおつもりですか」

「今答えた通りですが……分からないのですか?」


…………これは、あれだな。


「我々が掲げるのは、そんな俗世じみた理屈ではない。真の伝説です」


関わっちゃいけない、頭のおかしい人というやつだな……!


「無論、彼……蒼凪恭文のプロデュースについても、我々が責任を持ちましょう」


……そこで常務は、蒼凪くんのことをツツいてきた。


「こちらでは、いろいろと手間がかかっているようですし」

「彼はアイドルになるつもりなどありませんよ」

「既にアイドルでしょう。バトルというパフォーマンスで、人々を魅了しているのですから。
無論第一種忍者などという、危険な職務に携わる必要もない。そうならないよう、我々が全力で調整します」

「それは無理でしょう」

「失礼ですが設備という点では、765プロより調っていると思われますが」

「環境の問題ではない。生き方の問題だ」


……とりあえず気持ちを入れ替え、首を振りながら苦笑。


「それも、我々美城ならば制御できる。そう申し上げていますが」

「お引き取りを。これでは話になりません」

「確かに……現状のアイドル部門に不満を持っても、致し方ないでしょう」


美城常務は勘違いを続けたまま、会長ともども立ち上がる。


「しかし近日中に必ず成果を示します。そのときはどうかご一考を」

「いいえ。あなたが美城のトップに立とうとする限り、それはあり得ません」

「……問題はないと言ったはずですが」

「常務の言う通りです。真なる輝きは、ただそれだけで全てを示すのですから。
あなたの曇りもきっと晴らしてくれることと思います」


会長はそのまま常務に引き連れられ、この場を去っていく。

それでようやく……二人が消えたところで……!


「………………音無くん、塩! 塩を撒いてくれ!」

「はい!」

「美希もやるの!」

「あぁ、やりたまえ! 私もやるぞー!」


三人で伯方の塩を取り出し、玄関周りにぱーっと……ぱーっと!

それで一袋撒きに撒いて、ようやくスッとしたので……三人で笑って、事務所の中へ戻っていく。


「なんなんだ、あの……気持ち悪い考えは! 宗教かね!」

「まさか本気で日高舞さんを復活させようとしているんじゃ……!」

「あり得るよ! 仮に後継者がいたとしても、あれでは美城もおしまいだ! 今確信したよ!」


本当に気をつけよう! あの規模の会社が潰れるだけで、そりゃあもう大騒ぎ………………!?


「…………あ」


…………PPSE社のあれも思い出したので、つい頭を抱えてしまう。


「専務? どうされました」

「うちも危ないなぁ……順一朗兄さんともども私もいい年だし、そろそろ考えておかないと」

「といっても、うちの新社長というと……赤羽根プロデューサーさんくらいしか」

「蒼凪くんは違うのかね」

「あの子には合いませんよ」


分かってはいた。

だから一応の確認……。

あの子の戦いを見てきたであろう、彼女達への問いかけ。


すると、答えはやっぱり予想通りのもので。


「気になることがあったら、とにかく前に出ていきますから」

「それで笑いながら戦うの。
大丈夫、何とかなる……絶対に何とかするってね」

「……確かにねぇ」


PPSE社の一件も、きっとそうやって……同時にとても強いとも感じた。

人間は弱く、眩い輝きの前には、自分の理想や生き方すらかすみ、忘れてしまうことがあるから。


……あの頃の私や順一朗兄さん、黒井がそうだったんだ。




魔法少女リリカルなのはVivid・Remix

とある魔導師と彼女の鮮烈な日常/美城動乱編

Stage05 『Eager Rabbit』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


私達の答えは、もう決まっていた。

美城常務にも気に食わないところがある……だとしても、会社から叩き出すようなやり方は認められない。

譲れないとしても、一緒に進んでいく道だって、あるかもしれない。


少なくともそうして、手を伸ばすことは諦めたくない……そう小さな決意を噛み締めていると。


「……だったら早めにやった方がいいよ」


すると控え室のドアが開き、黒コートを翻しながら……蒼凪プロデューサーが入ってきた。


「このままだと会長ともどもは、確実に処断される」

「蒼凪プロデューサー!」

「え、どうしたの!」

「楓さんに忘れ物を届けにきたの。うちに免許証を……ほいっとねぇ」

「あら、ありがとう」


蒼凪プロデューサーは楓さんに、懐から出した免許証を優しく渡す。


……あぁ、そっか。同じ階に住んでいるんだっけ?

それで一緒にご飯を食べることも多いとか。でも免許証を出しっぱって、どういう環境なんだろう。


……って、そこはいい! それより今の話だよ!


「蒼凪プロデューサー、処断って……やっぱりあれかな。私達CPが常務に勝っちゃうと、立場が危うくなるっていう」

「そっちとはまた別問題だ。……346プロの株、誰かが買い占めているのよ」

「株?」

「美城の縁者が今回の件、ほぼほぼノータッチなのが引っかかってね。ちょっと調べてみたの」

「そう言えば……」


あぁ、そうだ……常務や会長の話は出るけど、それ以外の美城一族は出ていない。

楓さんもその辺りは聞いていないようで、興味深そうに蒼凪プロデューサーを見上げる。


「それで、誰かが買い占めているのが分かったのね」

「まずは市場に出回っている映画・音楽部門の株はほとんどがアウトです。
更に縁者や会社スタッフが持っている株も、少しずつだけど一極化しつつあります」

「346プロは株式会社。その株を五割以上持っていれば、筆頭株主……会長や常務よりも上の立場になれるわね」

「な!」


なぜ常務達がそれで処断されるのか、さすがに私達でも分かる。


「だから、乗っ取り!? じゃあ美城常務達の親戚は」

「会長親子を潰すため、自分達の株を一極化。今回の件も材料の一つとして、会社から叩き出すつもりだろうね」

「何それぇ!」

「常務の計画が、まだきちんと動いていない段階から……ううん、違う……そうじゃない。そこまでって、ことなの?」

「おのれらが寝小便を垂れている頃から続く確執だ。今すぐ理解するなんて傲慢だし、しなくていい」


その不器用なフォローには、苦笑しか返せない。


でもどうしよう……そんなことをする時点で、会長達を会社に残す理由がない。だって、残しても意味がないもの。

それなら私達のやろうとしていることは……なら諦めるの?

道筋なんてさっぱり分からないし。でも止まったら、そこで全部おしまいだ。


そうだ、私は諦めたくない。……それを通すために、必要なことは。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


今日は瑞樹さんと愛梨さんがMCを務める、バラエティ番組≪マッスルキャッスル≫の収録日。

番組自体の終了は決まっているけど、あくまでも発展的解消――ようはリニューアルという名目で進んでいる。

二人のMCも継続予定で、新しい体勢に切り替わるそうなんだけど……。


そんな中、ウサギ耳を付けたショートポニテ女性が、レナ達の目を引いて。


「菜々ちゃん!」


体操着姿のみくちゃんが声を掛けるので、レナと李衣菜ちゃんもそれに続く。

……今日は他の子達と一緒に、身体を張ってアトラクションにチャレンジです。


「あ……みなさんー!」

「「「おはようございます。今日はよろしくお願いします」」」

「おはようございます! 今日はよろしくお願いします!」

「それと、あのときはカフェで大変なご迷惑を……!」

「あ、いえいえ……って言ったら、アレですよねー。ちゃんと駄目なことだーって反省しているわけですし」

「はい……」


あぁ、例の立てこもり事件だね。

確か菜々さんはあそこでバイトをしていて、それで巻き込まれちゃったとかなんとか。

だからアイドルの先輩として、被害者として、なかったことにするのは違うと感じている。


でもそれは、決してみくちゃんを許していないとか、怒っているというのじゃない。

もう終わったこと……そう今西部長が片付けようとしたくらい、時間が経っている出来事。

それを気にして、改めて謝ってきたみくちゃんの誠意と謝意に、答えようとしてくれていた。


「でも、だからこそすっごく嬉しいです!」

「え……」

「こうして、同じアイドルとして一緒にお仕事できるんですから! 頑張りましょう!」

「…………はい!」


……レナは大学の合間に、こうしてみんなのお仕事に付き添っていた。魅ぃちゃん達とも分担してね。

でもこれまでの頑張りもあったからか、どの現場でも暖かく迎えてくれて……それは、ここでも同じ。


収録が始まり、アイドル達は自分の限界に挑む……いや、本当に……挑んでいるの……!


『――さぁ! 早速始まりましたアイドルクライミングバトル! トップで駆け抜けていくのは、あやめ選手!』

『さすがは忍ドル! 本領発揮ですねー!』

「にんにん!」


屋内クライミング……壁にある岩型パーツを掴み、どんどん登っていく競技。

一見簡単そうに見えるけど、岩の配置は決して適当じゃあない。

……前に魅ぃちゃんの提案で、部活でクライミング勝負をしたとき、教わったことを思い出す。


――クライミングの基本は三点確保。
両手両足のうち三つを確保した上で、残り一つを新しい足場にかけるって意味だよ。
でもね、一流のクライマーになると、ジャンプも交えて進んでいくことがあるんだ――

――確保なしで!?――

――一件無秩序に岩がついているように見えるけど、クリアできるコースっていうのは決まっているんだよ。
岩の大きさで手はかからないけど、足はかかるーってものもあるしね――


そういうコースを見つけ、上手く登っていくのがクライミング。

それが極まると、本当に……天上だろうと張り付ける人もいるらしくて。


『今回使用されているコースは、比較的初心者のものですけど、いわゆる”登りやすいコース”というのはあるそうですー』

『それを見抜いて捉えると、あやめ選手のようにスルスル行けるわけね、分かるわ』


それはレナも同感……。

あの……浜口あやめちゃん、だったよね。

多少ぐるぐるーって湾曲はするんだけど、それも感じさせない凄いスピードで登っていくの。


みくちゃん達他のアイドル達とは、ほぼ倍の速度。みんな、まだ序盤の辺りでもたついているのに……。


「あやめ殿、その調子です!」

「頑張ってー!」

『みくちゃんと菜々ちゃんは、仲良くぶら下がり状態ですねー』

「みくー! アンタ、猫なら木登りは得意でしょー!」

『ちなみに猫は木登りが得意……というわけでもないのよ?』

「え!?」

「うぅ〜〜〜〜!」


みくちゃんが必死にうなりを上げて踏ん張る中、瑞樹さんがとんでもない発言を……!

あ、でもこれはレナも聞いたことがある! あのあの……梨花ちゃんからだ!


『猫が木に登るのは、あくまでも爪と筋肉を使った”勢い任せ”。狩猟や身の保全を目的とした本能の一部。
……だからほら、高いところに登って降りられなくなったーって話もよくあるでしょ?』

『あ、なるほどー。勉強になりますー』

「ちょっとー! うちのみくに追い打ちをかけないでー!」


ほんとだよ! さり気ない妨害だよ! 爪も筋肉もないなら無駄って宣言されたtよ!

と、となるとこれは……いや、みくちゃんはまだ諦めてない!


「つまり、勢い、勢い………………勢いにゃあああああああ!」

「みくぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


勢い任せって断言しちゃったよ! いや、そうでもないともう追いつけないけど!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


あそこまで言われたら、さすがに腹も立つにゃー! その怒りを力に変えて……三点確保! 三点確保!

初心者用のコースなら、そんな……ネットで見たような、飛びかかる感じのはない!

とにかく一手ずつ確実に動かして、掴んで進む! あとは気合いにゃあ!


「むむむ……サイキックエナジー、注入!」


すると下で見ていた、サイキックアイドルの堀裕子ちゃんが、同じチームの菜々ちゃんに右手をかざす。

……そこで、菜々ちゃんのうさ耳がぴくぴくと震えた。


「エナジー注入完了! ウサミンパワー全開でーす!」

『――――ミミミン! ミミミン! ウーサミン!』


しかも観覧席からウサミンコールにゃ!?

これは負けていられない……! 気合いを入れ直し、とにかく上を目指す! 一位はもう無理だけど、せめて……せめて菜々ちゃんには勝つにゃ!

ううん、見てほしい! みく、間違えたこともあったし、馬鹿なのは変わらないけど……それでもアイドル、頑張ってるって!


だって菜々ちゃんは……みくの……!


「にゃあああああああ!」

「うさぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

『……菜々ちゃんー、そのかけ声はどうかと思うわよー』

『でもでも、安部菜々ちゃんことウサミンと言えばこれよねー』

『はい……っと! あやめ選手、ここでゴールインですー!』


一位はあやめちゃんに取られた。やっぱり忍者は凄い……。

でも、みくは負けない! 菜々ちゃんと這いずるように手を伸ばし……!


登頂に、左手を掛ける。


『――――試合終了! 二位、安部菜々ちゃん! 三位、前川みくちゃん!』

『僅差の勝利でしたねー。みなさん、お疲れ様でしたー』


息を切らせながら、右側を見ると……菜々ちゃんも汗だくで、笑顔を向けてくれる。


「はぁぁはぁぁぁぁ……す、凄いにゃウサミン!」

「アハ…………ぐげ!」

「ぐげ?」


あれ、菜々ちゃん、腰の辺りを痛そうに抑えて……まさか、怪我とかしちゃったの!?

実家で近所のおじいちゃんが、ギックリ腰をやったときに似てるにゃ!


これは……メーデー! メーデェェェェェェェェ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……みくちゃん、それは……完全にぎっくり腰だよぉ。というか、やっぱりなんだぁ。

あの、安部菜々さん……恭文くんが”さん付け”で呼ぶから、まさかとは思っていたんだけど……!


これからどう接するべきかを迷っている間に、収録は次のステージに。

みくちゃん達と裏手に回り、映像を確認……なんだけどー!


「……これがうちを育んだ究極の一品たい」


ファラオの着ぐるみを着た『上田鈴帆』ちゃんに、素早くハリセンが叩き込まれる。


「……って、何が入っているか心配になるわい!」



それを成したのは、『難波笑美』ちゃん。パーマのかかった茶髪で、前髪を上げてキュートに決めている。


「食べればファラオの気持ちになるですよー♪」


それでそれで……着ぐるみを着たもう一人の、市原仁奈ちゃん!

この子がすっごく可愛いのー! 知り合った頃の梨花ちゃんを思い出すよぉ!


「はうはうはうはうー! 仁奈ちゃんかあいいよぉ! おっもちかえ」

「「だめぇ!」」


とんこつラーメン(インスタント)の宣伝で盛り上がる三人……というか、仁奈ちゃん!

それをお持ち帰りしようと走り出したところ、なぜかみくちゃん達に羽交い締めを受ける。

というか、いつの間にかレナのベルトにかけられていた手錠が……縄が、レナを近くの柱に結びつけていて!


「……って、何これ!」

「魅音さんが貸してくれたの! やらかすだろうからって!」

「魅ぃちゃんー!」

「はいはい、だから下がって……下がってくださいねー!」

「忍者的にもアウトですので!」


更に裕子ちゃんとあやめちゃんが、その縄を持ってレナを引っ張ってくる。


「させない! させないから! 収録が滅茶苦茶になるからぁ!」

「そんなことしないよ! ちょっとお持ち帰りして、優しく、優しく……レナの煮っ転がしとか、サンマの塩焼きをご馳走するのぉ!」

「今やるのがアウトって言ってるにゃー!」


なんとか二人を払って、仁奈ちゃんをお持ち帰り……と思っていたのに。


『あぁ、はい……では、グダグダのまま、次にいっちゃいますね』


あああ……仁奈ちゃんが、ステージから去っていくー!

映像も切り替わっちゃったー! 仁奈ちゃん……レナの仁奈ちゃんはどこー!?


「いかないでぇ、仁奈ちゃんー! レナを一人にしないでぇ!」

「「「「恋人か!」」」」


というか魅ぃちゃん……レナ、許さないよ?

莉嘉ちゃんもー、みりあちゃんもー、お持ち帰りは駄目っていうし……ほんと、ユルサナイカラ――。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……レナちゃんが大人しくなったのはいいけど、目が怖いにゃ……! というか逆ギレにゃあ!

よ、よし……ここは触れない方向でいくにゃ。こう、面倒だし。


『せーの』

『『ウーサミン!』』


そんなレナちゃんはともかく、次はウサミンのお天気コーナー。


『はーい! う……! ああかあおあうあ……ウサミンの、お天気……コーナー!』


ウサミンは名誉の負傷だけど、元気よく右手を挙げて挨拶。


『あ、明日は一日、清々しい秋晴れが見えるでしょう。
ウサミン星が見えるかも――アハ☆』


……やっぱりウサミン……菜々ちゃん、いいなぁ。

自分のキャラを貫いて、みんなを笑顔にして。


みく……菜々ちゃんみたいなアイドルになりたいなぁ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ここまでのあらすじ――美城に乗っ取りの動きがあります。しかし、こうも派手に荒れてくれるか……!

凛にも言ったけど、美城親子が中年以上なせいもあって、その確執も十数年レベルだ。

奇麗事でどうにかできるレベルはとうに超えている。


何よりこれが正当な交渉の上で行われているなら、止める権利そものがない。……あとは立ち回りの問題だ。

ただ……そんな話は一旦さて置き、楓さん達のライブはスタートしたわけで。


卯月も怪我をした直後だからどうなることかと思ったけど、慎重に慎重を重ねた立ち回りで無事に終了。

楓さんも……やっぱいいなぁ、『こいかぜ』。聞いていると切なくなるんだよね。


「大丈夫よ、恭文くん……今日は耳元でうたってあげるから」

「なんの話ですかぁ!?」


またまた控え室に入らせてもらって、お疲れ様ーとやっていたところ……楓さんが、怖い。

あの、ほほ笑まないで。いや、だってその……うぅ……!


……いや、待て! 今の僕達にはアレがあった!


「……よし、346プロが如何に潰れていくかについて語ろう」

『こらぁぁぁぁぁぁ!』


すると衣装姿で卯月達がお怒りになった。うーん、なしか?


「だがまぁ、それが冗談の類いじゃないってのが……もうなぁ」

「圭一さんもそれ!?」

「まじでヤバいんだよ、この状況は」

「ヤバいねぇ」


つい圭一と並び立ち、大きくため息。

……こうしていると、雛見沢に出向いた当初を思い出す。


「私達にできることとしたら、立ち位置を間違えないこと……でしょうか」

「だな。なにより不正もないなら」

「あの、ちょっと待った!」


そこで未央が疑問一杯の顔で挙手してくる。


「会社の乗っ取りって、簡単にできるものなの!? しかも縁者さんが売り飛ばす形って!」

「実を言うと、乗っ取りっていうのも正確な表現じゃないのよ」

「どういう、ことかな」

「まず前提として……未央、同族経営っていうのは知ってる?」

「……ううん」

「私も、初めて聞いたかも」

「美城みたいに特定の親族が支配・経営するやり方だ。無論その後継者も同じく。
日本の会社はその規模に拘わらず、大多数が同族経営なの」


親が始めた会社を、子どもが引き継いで、その子どもがまた自分の子どもに……そういう流れなのは、凛達も理解してくれた様子。


「なら常務達を追い出すのは間違っているよね。会社のやり方が滅茶苦茶に」

「ところが同族経営から脱却するため、改革を行う会社も増えていてね」

「改革!?」

「凛達でも分かりやすいところなら、任天堂かな」

「……ゲーム会社の?」

「例えば任天堂の岩田社長は、元々プログラマーとして関連企業で働いていた人なんだけど、創設一族とは無関係の人だ。
……この人が凄い人でねー。ニンテンドーDSやWiiの開発で、任天堂を大きく盛り上げたんだよ」

「そうなの!?」


ニンテンドーDSやWiiがどれだけ世に衝撃をもたらしたか、それは凛や未央も知っているので、驚いた様子で目を見開く。


「他にも縁者が入社した場合、重役ポストにはつけない……そういうルールを敷いている会社もあるわね。
HONDAとかは創業当時からそうだったって、有名な話だもの」

「それと、恭文には身近なところだと……イースター社もそうだな。
元々あそこは星名一族による同族経営だったが、十年くらい前にトップが当時の専務に切り替わった」

「一之宮一臣――そこからは直系血族の娘さんと結婚したと称して、星名一臣と名乗っていたけどね。
……元々イースター社はその前後、後継者問題でかなりごたついたんだ」

「今の美城みたいに!?」

「同族運営のメリットは、会社の重役を身内で固めることによる”意志決定の速さ”。後継者問題の早期解決だ」


後継者を直系血族の息子やその縁者と定めれば、あとはエスカレーター式だからね。その辺りで揉めないんだよ。


「……でも、これはらデメリットを含んだ利点でもある。
トップの判断が間違っていた場合、その抑止が効きにくくなる――。
後継者問題で何らかの齟齬があった場合、これまでの慣例がそのまま障害となる――。
その上後継者に適性がなくても、これまた慣例的に上役へ就任しかねない――」

≪なお、イースターで一之宮が乗っ取りを謀ったのは、この三番目が原因です。
当時後継者になるはずだった月詠或斗さん――まぁこれはほしな歌唄のお父さんなんですけど≫

『えぇ!?』

≪この人は著名なヴァイオリニストで、会社経営については素人同然でした。
そういう人間であろうと、そのまま役職に収める……それでよしとする星名一族に怒り心頭だったようで≫

「……しかもその当の本人である或斗さんが失踪して、奏子さん達を責め立てたからねぇ」


あれもイースター演者に大きな責任がある。一之宮を庇うつもりはないけど、かなりの放蕩経営だったのが窺えるでしょ。


……だからこそ、一之宮もかなり気にしているんだよね。

特に大企業の血縁者にとって、結婚と出産がとても重い意味を持つことを……身を持って知っているわけで。


「そう……なんてことはない。今の美城は、同族経営の駄目な点が露呈しているのよ」

「でも……実際子どもが産めないって確定するのは、十年後なんだよね! だったら、それまでは常務さんでいいんじゃ!」

「その十年後に備えた動きを、これから決める必要が必要なのに?」

「どうして!?」

「……それ、私はちょっと分かるかも」


そこで未央を諫めながら、凛が顔を青ざめる。


「ほら、うち……花屋で、個人業だから。でも今の花屋って、いろんな仕事があるんだ」

「花の需要は二〇〇〇年代に入って、また大きく広がったしねぇ。
仏花や特別な日のお祝いってだけじゃなくて、フラワーアレンジメントも一般的になって」

「だから、そういう仕事の依頼も多くて……それも一年後とか、二年後とかなの。
……美城くらい大きな企業なら、やっぱり将来を見越した計画とかも……立てているよね」

「当然だ。たとえば……まぁ潰れた企業になるが、スーパーのダイエーがあるだろ。
あそこは本業のスーパーだけじゃなくて、プロ野球のオーナーやら、不動産投資やらもしていたからな」


まぁダイエーはその辺りで負債が祟って、派手に潰れちゃったわけなんだけどねぇ。

とにかく未央の言う『十年後なら』なんてお門違い。そこまで見越した動きは常に続けている。

そんな中後継者候補がここまで派手にやったら……そりゃあ、いろいろと差し障りも出るでしょ。


……なお、この点は機動六課にも言えることだ。

ハラオウン一派で固めた部隊だったから、全く同じ問題が露出している。


たとえば『少し頭冷やそうか事件』では、重役陣(隊長陣)が身内で固まっていたがゆえに、なのはよりのジャッジをかました。

たとえば予言関係の話では、重役陣の間だけで納得し、協力を確約したために……何も知らない一般部隊員を巻き込み、甚大な被害を出した。


あの件で言えば、襲ってきたスカリエッティや最高評議会に怒りを向けるのは逆ギレも同然。

これまで何度も言ってきた通り、部隊員達を傷付けたのは六課隊長陣……フェイト達の罪だ。


その罪を数えるか、逃げるか……それでまた明暗も分かれた。リンディさんは結果として逃げた。

自分達に罪はなく、また六課も正しかったと……その結果が隠居状態の現在だ。


……え、そこまで振り返る必要はないって?


あるよ、大ありだよ。六課という数十人で作られた”中小企業”でもこの有様なんだよ?

もちろん六課が手がけていた”事業”はとても大きなものだったけど、それは美城も同じだ。

海外に支社を持ち、数万の社員を抱え、芸能界では負け知らずの超巨大企業。その後継者問題が、最悪な形で噴出しているんだ。


「だから乗っ取りじゃなくて、えっと……」

「リコールだ」


その言葉の意味は凛達も知っているから、苦い表情を浮かべ出す。


「――直系血族たる美城親子に、そんな巨大企業の後を引き継ぐ資格はなし。これ以上野放しにすれば、社員の生活すら危うくなる。
いや、それ以上の大事……日本経済に大打撃を与えかねない」

「日本経済!?」

「ゆえに排除する。今この場で、復活の芽すら与えることがないよう、徹底的に……親族の心情としては、そんなところだろうね」

「それ、完全に常務達が会社の敵じゃん!」

「一番の問題は、そんな状況で白紙化計画を……周囲から反感を買いやすい企画を持ちだしたことだよ。
普通の状況なら、常務の命令を根底から覆すことはできない。
でも株式が一極化し、常務達に対抗しうるだけの”力”があり、更に提示された計画に穴があるなら……」

「反感を持った人達もそこに集まって、本当に……常務と、それに与する人達を潰しにかかる……!?」

「はっきり言うけど、CP……及び楓さんは、その旗船になりつつある」


……楓さんを見やると、苦笑気味に頷きを返してきた。


「私が常務の企画を蹴ったからね」

「それは個人の判断として受け止められません。
部門のトップアイドルが、常務の企画を否定した……それは間違いなく一つの風です」

「その風は、常務にとって逆風……だから、その風にのって親族の方も盛り上がる……!?」

「蒼凪プロデューサー、それ……なんとか止められないかな! 私としぶりん達は、さっきも言った通りだし!」

「無理」

「「断言!?」」

「常務が今の仕事を放り出し、婚活に集中するか――。
会長と常務が、同族経営からの脱却を今すぐ宣言するか――」


これについてはもう、どうしようもないことなので、頭をかいて困り果ててしまう。


「取れる手段としてはそれだけだね」

「でも常務達は……美城の中でやりたいこともあるのに、諦めることになる。
……私は、そんな」

「それならやりようがあるってことだよ。
……厳しいようだけど、道を示せないトップは……許されざる者だ」

「蒼凪プロデューサー……」


リンディさんや最高評議会……その他諸々のことを思い出しながら告げると、凛が分かりやすく肩を落としてしまう。


「それなら、仲良くというか……仲間になる意味は、あるのかな」


未央は噛み締めるように呟いてから、僕を真っ直ぐに見上げる。


「この結果を受け止めた上で、個人的にやるのなら問題ないでしょ」

「受け止めた上で……」


かと思うと、両手でパンと頬を叩いた。


「うん、そうだ。
間違いをなかったことにはできない。
全部背負って進むしかない……私達だってそうしてきた!」

「未央ちゃん……」

「やっぱり……まずはちゃんと目を開いて、知っていこうよ! じゃなきゃ、正しい答えにも行き着けない」

「……うん」

「私も、頑張ります!」


……圭一を見やり『これでいいの?』と視線で問いかけると、問題なしと頷いてくれる。

となれば、僕が言うべきことは一つだけだね。


「なら、あとは覚悟が必要だ」

「覚悟?」

「例えば……もし常務が示した『願い』が嘘っぱちで、みんなを利用するためだったらどうする?
当然その人達は傷つく……ううん、呪われるって言った方がいいかな」

「呪われる……」

「常務を信じている。だから常務が自分達を騙した……嘘を付いたなんて、嘘だ。
だから信じない。お前達は悪だ。必ず叩き伏せてやる……そう囚われ続ける」

「「「……!」」」


その意味を察し、未央も、凛も、卯月も息を飲む。


「……さっき蒼凪プロデューサーが『許されざる者』とまで言った意味、よく分かったよ」

「旗船になるっていうのは、そういうリスクもあるんですね」

「とはいえ今ここをどうするかとか、そういうことは考えなくていい」

「未央が言った通り、私達は知っていくところから……でも、いずれ覚悟を持って、その答えを示すときがくる」

「それも私達が、ゲームを進める上で忘れちゃいけないこと……なんだよね」

「……はい」


これからCPがみんなと手を取り合っていくのなら……レナも触れたっていう、CPが『支配者』となる可能性の一部。

でも……ああもう、仕方ないか! 気づいたし、放っておけないしね!


何より部活の”後輩”が気合いを入れているんだ。ゲームの邪魔はしない程度に、手伝いますか。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


収録はその後、何とか無事に終了。

衣装から私服に着替えて、控え室も後片付けしてから出て……。


「じゃあレナ、打ち合わせがあるから……うぅ……仁奈ちゃん……仁奈ちゃん……」

「……今度の縄はチェーンにしておこうか」

「賛成にゃ!」

「なら、レナも魅ぃちゃんと圭一くんにお話するよ。……お疲れ様」

「「お、お疲れ様でした」」


そのままエレベーターに乗るレナちゃんを見送り、大きくため息。


「レナさん……比較的まともな人だと思っていたのに……」

「みくもだよ……。部活ではダーティーなこともあんまりしないし」

「優しいし、気立てもいいし、お料理も上手だし、お母さんみたいだし……」

「ま、まぁ……人間、欠点の一つもある方が、可愛いってことで」

「アンタも猫キャラなのに魚が嫌いだしねぇ」

「猫はむしろお魚NGなのー!」


全くもう……李衣菜ちゃんは相変わらず不勉強にゃ!

というかというか、それを言えば李衣菜ちゃんだって。


「「お疲れ様でしたー!」」


……でも反論はストップ。

エレベーターに背を向けると、私服に戻った菜々ちゃんと裕子ちゃんが歩いてくる。


「お疲れ様でした」

「お疲れ様でした! ……菜々ちゃん、今日は本当に凄かったにゃあ!」

「ありがとうございますー! あと、崖っぷちには強いというか……日常的というかー」

「サイキック支援が上手く行きました!」

「そ、そうなんだ……」


なぜか李衣菜ちゃんが引き気味だけど、みくは全開で前のめり。


「くぅぅぅぅl 未来は感動したにゃ! ウサミンコールが始まった辺りから空気が変わって! すっごくキャラが立ってたにゃー!」

「い、いやぁ……皆さんが盛り上げてくださったので」

「それもキャラがあればこそにゃ! テッキイッセンマンにも負けてないにゃ!」

「テッキイッセンマン!?」

「あぁ……最近街に出ている、神出鬼没なヒーローですね!」

「……いや、それって……蒼な」


笑顔を浮かべながら、李衣菜ちゃんには左エルボー!


「ぎゅう!?」


そう……体格や行動パターンから、みく達は分かっている。

……テッキイッセンマンは、恭文ちゃんだって。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


もうすぐヤスフミも帰ってくるし、フィアッセさんと、ジャンヌにも手伝ってもらって夕飯の仕込み。

今日はほかほかロールキャベツなんだー。肉の配合比率を変えた自信作で。


『――三時のニュース……今回の特集は、今話題になっている謎のヒーロー”テッキイッセンマン”についてです』


……だったんだけど、そのワードでフィアッセさん達が、手洗いを済ませてきたティアナとシャーリーがフリーズ。

それで全員一緒に……青タイツ&ヘルメットゴーグル&マント姿で、大暴れするヒーローの姿に注目してしまって。


『――テッキイッセンマン!』

『えー、こちらは出現現場にて、動画撮影をした方から許可を頂き、提供されたものとなります。
……テッキの星からやってきたスーパーヒーローを名乗り、”テッキイッセンマンの歌”と呼ばれる歌を流し、街に出た犯罪者を懲らしめているそうです』

『それに溺れている子イヌを助ける――。
迷子のおばあさんを道案内する――。
最近目撃情報が出ている、変な怪物を撃退する――。
そう言った、身近な善行も重ねているそうなんですけど……室伏さん、その正体などは不明なんですよね』

『そうなんです! ただ、映像でもご覧になられた通り、明らかに人間を超えた能力でして!』


うん、そうだよね。平然と高層ビルの上からジャンプして、着地しているしね。



『その正体は『諸事情で顔を出せない警察・忍者関係者では』とも言われています!
警察からも『特殊な訓練を積んでいると思われるので、真似しないように』というコメントは出されていますが……あ、こちらにも出ていますね!』

『……仮面ライダーのライダーキックは危ないからーってやつですか』

『それですねぇ。というか、映像の方にも……あ、もうすぐでますよ!』

『――この私、テッキイッセンマンは特殊な訓練を積んでいる! よい子のみんなはそのまま真似しては駄目だぞ!』

『……本人が警告するんですか』

『はいー! とにもかくにもテッキイッセンマン、今後もその動向には注目したいと思います!』


………………テッキ、イッセンマン。

身長は一五四センチくらいで、左腰に刀を装備している。

それは、どう見ても……どう見ても………………ヤスフミィィィィィィィィィ!


「うりゅりゅ……うりゅー!」

「うりゅ……?」

「うりゅー」


ほらー! ぱんにゃ達も気づいちゃったよ! 知り合いなら一発だよ!


「テッキイッセンマン……一体何者なのですか」

「ジャンヌ!?」

「アンタ、気づいてないの……!?」

「気づいてないとは……」


ほ、本気で首を傾げられた……!

こ、これは……お説教だよ! うん、もうそれしかない!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


きっとガンプラバトル選手権で有名になったから、いろいろ配慮が必要なんだよ。

でもでも、あれもキャラが立っているにゃ。実際に人助けをして、テーマソングも流して。


そう、つまり……。


「今分かったにゃ! 菜々ちゃんはみくにとって、身近なヒーローなんだよ!」

「そ、それは有り難いですけど……ウサミンはほら、キャラとかじゃないんですよ!」


菜々ちゃんは胸を張り、右手を当てて笑顔。


「ウサミン星からやってきた、うたって踊れる声優アイドル――安部菜々…………です……!」


あぁ、菜々ちゃんが……菜々ちゃんが名誉の負傷を押して、また笑顔を!


「やっぱりにゃ! やっぱり菜々ちゃんはみくにとってのヒーローで、ライバルで……ううん、目標なんだって!」

「わ、私が目標……ですか……!?」

「うん!」

「でもでも、真面目な話……声優業、蒼凪プロデューサーに先を越されちゃってますけど! ほら、オルフェンズ!」

「あー、美嘉ちゃんも悔しがってましたよねー。彼女、元々声優志望だったらしいですし」

「「えぇ!」」

「新谷良子さんって声優さんに憧れて、どうしようかなーって考えていたそうですよー」


――その後は、そんな……みんなの憧れについて盛り上がって、ワクワクして。

うん、憧れは大事だよね。星は見上げているだけで……ドキドキするんだから。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……夕暮れが差し込む会議室。

圭ちゃんはまだ戻ってこないので、レナと二人で会議に参加させてもらう。


ただまぁ……このお姫様、なかなか豪腕を振るってくれて。


「――改めてになるが、説明しておこう。
今後、我が346プロのアイドルは、かつての芸能界に見られたようなスター性……別世界のような物語性を、確立してこうと考えています」


今日レナが付き添ってくれた≪マッスルキャッスル≫の制作スタッフも、常務が作ってきたコンセプト資料には困惑……というか失笑気味。


「では……今後の番組作りは」

「事前通達した通り、マッスルキャッスル終了後から一気にシフトしていきます」

「ですがこの時代に、あえて……ですか?」

「面白い試みだとは、思いますが……」

「まずはコーナーの一部を打ち切り、出演者ごと入れ替えます」

「――待ってください!」


するとレナが勢いよく立ち上がり。


「それはあまりにも」

「言ったはずだ。私は私のやり方を進めていくと……園崎臨時プロデューサーから聞いていないのか」

「レナ、その通りだ。ここは」

「そんなのはどうだっていい」

「「…………え」」

「レナは、仁奈ちゃんの心のプロデューサーだもの……! 仁奈ちゃんの邪魔をするなら誰であろうと叩き伏せる!」

「「………………」」


あの、その……ごめんなさい。

常務……みなさんも、こっちを見ないで?

いや、分かる。その気持ちはよーく分かる。


でもね……おじさんにとってもこんなの予想外! というかレナ……レナァァァァァァ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――目標……ヒーロー……かぁ。

しかもちまたで噂のテッキイッセンマンと同じだなんて……えへへ。


「目標……だなんて……」


でもでも、それなら……やっぱり負けていられないよね!


「よーし! 明日もウサミンパワーで頑張っちゃいますよー!」


元気よく右手を挙げて……ようやく思い出す。


『……』

「はう!」


ここが、家に帰る電車の中だって……! しかも割とたくさん!

「すみません! すみません!」


でもでも、頑張る気持ちに嘘はなし! このまま明日も全力です!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


そんなこんなで翌朝――。

朝一番で346プロの会議室にやって来た。


というか、仁奈ちゃんや笑美ちゃん、あやめちゃん、裕子ちゃん……昨日の共演者もたくさん。


「久野プロデューサー、今日はなんの用事でごぜーますか?」

「さぁ……私も聞いてないのよ」


仁奈ちゃんの付き添いには、担当の久野プロデューサーもついている。

まだまだ若い人だけど、だからこそというか、仁奈ちゃんはお姉さんみたいに慕っていて。


……仁奈ちゃんは明るく見えるけど、その実家庭環境がかなり複雑。

元々346プロに入ったのも、お母さんが本社の玄関に置き去り状態で……そう、育児放棄というやつです。

お父さんもいたんだけど、出張が多いお仕事で手が回らず……結局は離婚することとなった。


それで、仁奈ちゃんは担当となった久野プロデューサーの自宅に、居候する形となって……そのせいか、この二人の連携はなかなかのもので。


……って、閑話休題! それより今日の呼び出しですよ!


「もしかして、何か新しい企画とか!」

「新しい企画!」

「偉い人のお眼鏡に叶ったということですねー!」


そう言いながら、ブルーナポレオンの上城春菜ちゃんが眼鏡を正す。


「――失礼するよ」


……それを合図として、入ってきたのは壮年の男性と、お付きの若い人。

アイドル部門第四課……私達が所属する課の、山岸課長さん。その補佐役もやっている、主任の伊藤さんだった。


「おはよう」

『おはようございます!』

「……久野くん、済まないがまずは彼女達だけで話を」

「以前お伝えしたはずですが。市原さんにお仕事の話をするときは、必ず私が同席すると」

「そうだったな」


ぴしゃりと断られ、課長も渋々納得という様子。

課長と主任さんは揃って、険しい顔つきのまま上座に着席して……。


「あ……うん。
ここにいるみんなには、各々の方向性を考え直してもらいたい」


新しい企画と期待していた私達に、鉄槌を下す。


『え……うぅ……あ?』

「現在我が社は、大きな転換期を迎えている。
その一環で、プロダクションとしての根本的なイメージを見直すこととなった」

『…………』

「具体的に言うと」


課長さんの話は、仁奈ちゃんや笑美ちゃん達のような小さな子には伝わりにくい。

それを見かねて、伊藤主任が脇に立ち、優しく補足を加えてくれる。


「バラエティー路線の仕事は、徐々に減らしていく予定です」

『えぇ!』

「将来的にはほぼなくなるものと思ってください。代わりにアーティスト面を強化し、ブランドイメージを確立します」

「それを踏まえて、各々のキャラクターを見直してほしい」

「…………あの人達、さっきから何を言っているでごぜーます?」

「……会社だけではなく、君達自身にも変化が求められているということだ」

「……何を逃げてるですか」


仁奈ちゃんのストレートな物言いに、課長さんの頬が引きつる。


「それは、どういう意味かね」

「いなくなったお母さんと同じでごぜーます。
てきとーな感じにふわふわーって……ズルいでごぜーます」

「……」

「市原くん、それは……違うよ?
課長は悪い気持ちなんてなくて、ただ君達のことを思って」

「それもお母さんが言ってたです」

「ぁ……うぅ……」


しかも実体験と……家庭環境から聞いてしまった、”親の汚い言い訳”と同じ。

仁奈ちゃんが笑顔の奥で隠している、大人への不信感。

子どもだから……子どもなのだから、分からないと驕る感情。それを垣間見たがゆえの達観。


その重さに、課長も、主任さんも何も言えなくなって……。


「仁奈ちゃんの言う通りや! そんな大事な話、なんで会社が勝手に決めるんですか!」

「全然納得いかんたい!」


鈴帆ちゃんも、笑美ちゃんも怒り心頭で立ち上がる。でも……課長さん達は俯いたまま、淡々と言葉を続ける。


「……各々のプロデューサーと、対応については話し合ってもらいたい」

「聞く気なしっちゅうことですか!」

「みんな、あの……落ち着いてください!」


さすがにこれ以上は年上として……いや、今は十七歳の話はなし!

とにかく見ていられないので立ち上がり、笑美ちゃん達を両手で宥める。


「そんな、一方的に責めても解決しませんよ! ここは冷静に」

「話は以上だ。……安部菜々君、君はここに残ってくれ。まだ話がある」

「課長さんも駄目です!」

「もし不満があるのなら、辞めてもらって構わん」

「課長!」

「だがその前に、考えてほしい。
君達が積み重ねた努力をそうやって……全て否定していいのか?」

「なんやと!」

「確かに君達の意図とは違う命令だ。苦慮をさせることも重々承知している。その点は申し訳ない。
……だが、それでも社の命令に従うのが、会社のスタッフだ。まずその大前提を忘れないでほしい。
その上でまた、改めて新しい夢を……美城が示す道を進むというのであれば、そんな君達を応援する準備はできている」


なんて、ことを……!


「新しい、夢……!?」

「そうだ。美城が示す、君達が今より強く輝く道だ」

「だから、今までの私達は……今までの夢はいらないと言うんですか!」

「話は以上だ。先ほども言った通り、安部菜々君はちょっと残って」

「お話はよく分かりました」


久野さんが、ゆらりと立ち上がる。

腰まである黒髪が揺れて、更に丸い垂れ目がギロリと……課長さん達に向けられて。


「ですが私は仁奈……市原さんのプロデュース方針を、変えるつもりはありません。
それで346プロを辞めろと言われるのであれば、遠慮なく辞めさせていただきます」

「待ちたまえ久野くん、それは」

「何より相手が子どもだからと、舐めてかかったあなた方に失望しました」

「誤解だ。ただ我々は、彼女達がより輝くために道筋を」

「でしたらなぜ……私以外のプロデューサーが! ここに誰一人いないのですか!」


――課長さん達は、その詰問に答えられず、停止してしまった。


「失礼します。……安部さん、みなさんも一緒に来てください」

「で、でも……」

「話を聞くとしても、プロデューサーと同席するべきです」

「あの、私は大丈夫です! これでも」

「十七歳、でしょ?」


そう言われると……反論、できない。

だって、未成年で……年齢的には子どもで……!

まさか、まさか……ここに来て貫いてきたキャラに遮られるなんて。


しかもみんな、久野さんの言う通りだと立ち上がって……。


「失望した……346プロなら、夢が叶うって思ってたのに! 詐欺たい!」

「みなさん、落ち着いてください!
課長も厳しいことを言ったとは思いますが、みなさんの未来を思えばこそで」

「そんなん信じられるか! 今までの夢はいらない……そうハッキリ言う度胸もない、ただの卑怯者やないか!」

「難波さん!」

「いい加減にするんだ……! もう一度言うが、今までの努力を踏みにじって一体」

「その努力を信頼ごと踏みにじったのは、あなた達です!」


春菜ちゃんが改めて絶縁宣言……それを合図に、課長さん達を残して退室。

というか、私も仁奈ちゃんに引っ張られて、抵抗は一切できなかった。

……崖っぷちには慣れていたつもりだったけど、今回は極めつけだった。


今までの努力を……美城を、出て……私は……。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


今日も今日とて、元気よくお仕事……と、346プロにやってきたところ。


「まさかのサイキック封じ……」

「うちらから笑いを取ったら、何も残らへんやん」

「笑いは、絶対必要たい……」


廊下で固まって、難波笑美さんや裕子さん達がぼう然としていた。


……いや、違う。

あれは……あの目は、怒りといら立ちで満ちていて。

怒鳴り散らすようなことはないけど、それも一欠片の理性で我慢している様子だった。


「歌中心のお仕事になる感じなんでしょうか……」

「でもうちらみたいなキャラ付けが気に入らんのやろ? ……まぁ、うちらも気に入らんけどな!」

「そうです! もうこうなったら……本当に辞めちゃいますか!? 気に入らないなら辞めていいそうですし!」

「……会社の方針に従えず、辞表を叩きつける……まさか、まだまだ十代の身でやることになるなんて……!」

「大丈夫です! プロデューサーが今、き、ききき……”きんきゅうーしゅだん”っていうのを使うところでごぜーます!
それでお母さんみたいなことを言うアイツらは、ワンパンってやつです!」

『……それで仁奈ちゃんは、滅茶苦茶重たい……』


ねぇ、これって…………ヤバくない?

そういうキャラ付けって、私の相方で思い当たるフシがあるんだけど……!


……その足で急いで、CPの控え室(新)に向かう。

もしかしてあの子にも何か……と思いながら、控え室のドアを開けると。


「――猫耳、猫手、猫尻尾ー♪ 猫グッズで可愛くコーディネートにゃー」

「いっぱい、ありますね……」

「魅音ちゃんの親戚さんがやっている、コスプレショップから仕入れてきたにゃ!」


やっぱりぶれてない相方≪前川みく≫に、つい脱力してしまう。

みくはアーニャと一緒に、新しく用意したらしい猫グッズをいろいろ並べていて……。


「……あれ、李衣菜ちゃん……どうしたにゃ?」

「あのさ……猫以外の方向性って、ない?」

「猫はみくにとってアイデンティティーなの!」

「だけどさ……」

「李衣菜ちゃんだって、ずっとロックロックってにわかキャラにゃ」

「そ、それはそうかも……しれないけど……」


あああ……胃に痛い! 人のことは言えなかった! 私もにわかキャラが定着しちゃってるぅ!

いや、それを言えばCPや、うちの部門にいる子達は大半……そりゃ辞めろって宣言するようなものかぁ!


「それに、猫耳はお仕事でも大事なアイテムなの!
これを付けると、一気に空気が変わるでしょ? 猫ちゃんみたいに可愛い存在に大変身!」


そしてぶれない未来は、アーニャや、話を聞いていた卯月・凛・未央に猫耳を装着していく。


「アーニャちゃんなら、アーにゃん!」

「ダー……♪」

「卯月ちゃんならうづにゃん…………いや、その……うづにゃん、さん」

「どうしていきなりさん付けなんですかぁ!」

「だって、アシムレイトで負傷して……」

「あれは違いますー! というかもう治りましたー!」


ああ、卯月はなんか、人外キャラ的な敬意を持たれちゃってる。

全然可愛くない。全然可愛くない…………って、そういうことじゃなくてー!


「凛ちゃんなら凛にゃん!」

「やめて……それ、罰ゲームでやらされそうだから、やめて……!」

「なら私は!?」

「未央」

「なぜ呼び捨てになったぁ!」

「ごめんごめん! えっと……未央にゃん!」

「にゃあー!」


すると、みくが項垂れている私を見て、勝ち誇った表情。


「ね? アイドルに可愛いは必須! 可愛いは正義!」

「だから、それにキャラは」

「必要!」


断言、された……!


「昨日の菜々ちゃんを見てたでしょ!? 可愛くてインパクトのあるキャラで、お客様にアピールする!
それが舞踏会で一番いい方法だって、みくは思うの!」

「……他の部署は今後、そういうのは控えるようにって……注意されたっぽいよ」

「「「えぇ!」」」

「従えないなら辞めてもらって構わないとか……かなり、揉めたみたい」

「李衣菜の言う通りだよ」


そこで後ろから入ってきたのは、朝から疲れた様子の魅音さんと圭一さん。


「魅音さん! 圭一さん!」

「しかもさぁ……その話をした課長さん達、プロデューサーを呼ばず、アイドル達だけに、一方的に通達したんだよ。
安部菜々さんについては、マッスルキャッスルの後続番組……そこでのお天気コーナーも外された」

「え……」

「ただ安心しろ、みく」


その絶望の情報に、圭一さんは笑顔を続ける。

普通なら笑える状況じゃあない。悪ふざけとも取れる。


でも、それが……まるで逆転の一手であると言わんばかりに、笑っていて。


「菜々さん絡みは、下手をすればパワハラ……通達した課長達はもちろん、美城常務に非がありと撤回される可能性もある」

「どういうことにゃ!?」

「そこもみんな集まってから話そうか。はい、じゃあ猫グッズは部活ボックスにしまってー。ここからは真面目にやるよー」


……どうやら、私があれこれ言う必要はなくなったみたい。

というか、そうだよね……CPは反旗を翻したわけで、気にするだけ無駄だった。

でも、みくにとって分水嶺なのは変わらない。それは今、動揺し続ける顔からも窺える。


だったらあとは……。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――その日、朝一番で346プロは大騒ぎだった。

しかも菜々ちゃんが……そんな……!


「まず菜々さんに通達されたことは……まぁよくあることと言えば、よくあることだよ。
番組のカラーに合わない、他の出演者からクレームがつく、別の仕事を優先して……とか」

「でも、菜々ちゃんはそういう感じじゃ」

「だから問題なんだよ。そもそも番組のレギュラーって、年単位のスケジュールを確保するものだしさ。
しかも菜々さんはレポーター的に外へ出る機会も多いから、その大きさも半端ない。
……それを急にすっ飛ばすって話を、プロデューサー抜きで本人だけに通達ってのがまずあり得ない」

「だからパワハラ……というか、常務さんが示した方針が、将来性も期待できないから余計に無理」

「実際番組スタッフ、失笑気味だったからねぇ」


じゃあみんな、常務の……偉い人の命令だから渋々って感じで、あまり効果は期待していない感じなのかな。

なんか話を聞いていると、みんな振り回されて大迷惑ーって印象しか受けないし。


「だから久野さん主導で、勧告を受けたプロデューサー達は一致団結。親御さんにも詫びつつ、徹底抗戦の構えを取っている」

「親御さんにも!?」

「大事な子どもを預けているのに、そんな威圧的な状況に巻き込んだ……それも本人達に非がないのにって話だ。
……でね、みく……実はここからが重要なんだけど」

「にゃ?」

「かもーん!」


魅音ちゃんが控え室入り口に手招きすると――。


『失礼します……』

「あ……」


菜々ちゃん、仁奈ちゃん、笑美ちゃん、鈴帆ちゃん……昨日の収録で共演したみんなが、一斉に入ってきた。


「突然申し訳ありません……」

「あ……久野さん!」

「それに猿渡さん……菜々ちゃんのプロデューサーさんも!」

「お邪魔するわよー」

「お邪魔しますー」


しかも早苗さんと……及川雫さん!

みんなのプロデューサーさんも入ってきた! 久野さんも、菜々ちゃんの担当Pな猿渡さんもいる!


え、もしかしてこれって……これって!


「紹介するよ。CPの外殻メンバー……ようは提携部署のみなさんだ」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』

「一宮さん達と同じってことだ。
みんなには舞踏会を盛り上げるため、バラドルとしての能力を存分に生かしてもらおうと思う」

「あ、そっか……」


そこで、ようやく合点がいった。


「そうだよね――!」


だって魅音ちゃん達、常務がどう番組を弄るか知ってたんだもん!

だったら事前に話を通して、引き込めるようにしていてもおかしくない!


舞踏会に参加するって名目なら、活動実績はある程度誤魔化せるし、今すぐに方針転換をする必要もない!

ひとまずだけど、今まで通りでいけるかどうか……それを試すことはできる! うん、これだよ!


「……魅音ちゃんー!」

「気に入ってくれたかな!」

「最高にゃー!」


思わず全力ハグー! というか、魅音ちゃんも抱き返してくれて……す、凄い圧力にゃ。

みくも大きい方だと思うけど、こう……ぐいって押しつけられる感じが、凄い……でも負けない!


今は愛を伝える方が大事! だからぎゅーぎゅーぎゅー!


『よ! 元祖部活部長ー!』

「はーはははは! おじさんに憂いなしってね!
さぁ、早速作戦会議を」

「あ、あの……待って、ください」


……でも、勝利モードの中、困り気味に菜々ちゃんが手を挙げて。


「菜々は、その……少し、新しい方針についても、考えたいなって……」

「………………え」

「つまり、その……課長さん達が言うみたいに」


とても、重たい……何かがひび割れるほどに重たい一言を放つ。


「新しい夢を……追いかけるのは、どうかなーって……」

「菜々、ちゃん……?」


ひび割れたのはきっと、今まで積み重ねた夢の輝き。

だけどその意味が……そうまでする意味が、みくには分からなくて。


(Next Stage『Fanging fangs』)








あとがき


恭文「というわけで、本日幕間リローデッド第22巻が登録完了。明日(2018/10/29)販売開始となります。
今回はデータ確認もしたから問題なし……! 全十一話収録ですので、みなさん何とぞよろしくお願いします」


(よろしくお願いします)


恭文「そして本編は、またまた火種がまき散らされていく美城動乱編。
今の美城が危うい状況は、ダイエーとかの話をしなくても伝わる結論」

フェイト「どういうこと!? いや、イースターの話をしていたけど!」

恭文「あれもザルってことだよ。
あと、それに絡んで最近出番のなかったキャラも登場予定。お楽しみにー」

フェイト「え、誰誰。誰かな」

恭文「まぁメインじゃないけどね」


(『きぃきぃ……きぃ……♪』)


恭文「お相手は蒼凪恭文と」

フェイト「フェイト・T・蒼凪です。……ヤスフミ、ハロウィンだよ!」

恭文「分かっている! 今年もジャックランタンやジャックフロストが頑張ってくれたから……凄いことになっているよー!」


(そう……蒼い古き鉄は現在、ハロのコスプレ中)


恭文「ころころ……はろはろー」

白ぱんにゃ「うりゅりゅー♪」

カルノリュータス「カルカルー♪」

カスモシールドン「カスカスー♪」


(フワフワお姉さんと蒼凪荘の爆竜さんもコロコロ……)


フェイト「な、なんだか楽しそう……」

カスモシールドン「……カスカスー?」

フェイト「え、私?」

カスモシールドン「カスー」

フェイト「私は……もちろんこれ!」


(閃光の女神が取り出したのは、ジオウドライバー)


フェイト「今度こそ変身するんだから!」

カスモシールドン「…………カスカス……」

えびるどらいばー「ひゅ〜……」

アイリ(Fate/Zero)「あ……まま……あぅ……」

恭介「ぅぅ…………」

フェイト「みんなヒドいよー! 見てて、練習したんだから!」


(ライドウォッチをスロットに収め…………バキ!)


フェイト「………………力入れすぎたぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

どらぐぶらっかー「くぅくぅー」


(こうして今年のハロウィンも、のんびり進みます。
本日のED:『かぼちゃのみなさん、こんにちは』)


フェイト「……って! これは前に失敗したやつー! やめてー! 流さないでー!」

恭文「時期としてはピッタリだけど」

フェイト「駄目ー!」


(おしまい)






[*前へ][次へ#]

5/16ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!