[携帯モード] [URL送信]

◆一輪の花?(エムペ版)
C


「香山君。何をしているんですか」

ため息混じりの声が、香山先輩を呼ぶ。

「おや、美咲君。何って、尾崎君を暖めてるんですよー」

ヘンリーネックのシャツにグレーのカーディガンを羽織った美咲先輩が、呆れた様子でこちらに向かってくる。

そんな美咲先輩を目にし、心底安堵する。

「美咲先輩ぃー」

美咲先輩なら、香山先輩をなんとかしてくれるはず。

私は“助けてください”という念も含め、美咲先輩に視線を送る。

視線が交わると、美咲先輩は困ったような微笑を見せた。

「香山君、尾崎君を離してあげて下さい。そんな風に暖めるよりも、お風呂にでも入ってもらった方が効率的ですよ」

香山先輩は考え込むように暫らく間をあけてから、のんびりと口を開いた。

「あー、それもそうですねえ。すいませんね、尾崎君。僕、気付きませんでしたよー」

私の身体に回していた腕を解くと、香山先輩は少し照れながら微笑んだ。

香山先輩は少し――天然っていうのかな?

不思議な人だけど、悪気があった訳でもなく、どちらかというと善意でしてくれた事なので「こちらこそお気遣い有難うございました」と、お礼を述べ、頭を下げた。

「尾崎君っていい子ですねえ」

やんわりと、下げていた頭を香山先輩の温かい手で撫でられる。

今日だけでも、頭撫でられたの二人目だ。

私の頭はそんなに撫でやすいんだろうか……

「ああ、そうだ。尾崎君、身体を温めてからでいいから、後で私の部屋に来てくれないか?」

美咲先輩のお誘いは、おそらく今回の件の報告の事だろう。

「判りました。では、後ほど伺います」

私は、軽く二人に頭を下げ、自室へと急ぐ事にした。




[*前へ][次へ#]

42/195ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!