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白い光が瞼を射し、目を閉じている筈なのに眩しい。

尾崎のシェルター内で、俺が宛がわれた部屋は地下深くにあるので、自然の光が入ってこない。

その為、室内の電灯は起床時間に合わせて徐々に光を強くしていくように出来ているのだ。

つまり、そろそろ起きなくてはいけない時間なのだが、俺の身体はまだ睡眠を欲している。

光から逃げる為に仰向けだった身体を反転させて布団に潜り込むと、温かい感触が身体を包み、俺の頭をくすぐる様に何かが触れて――触れて?

カシャッというカメラのシャッターを押したような音と、俺が跳ね起きたのは同時だった。

目前には上半身裸の秋月。

引き締まった身体に、逞しい筋肉がついた身体が、俺が眠っていたベッドで横たわっている。

「なっ、かっ、こっ」

余りの驚きに声が上手く出ない。

何で会長がここにいるんだ!?

何で脱いでんだ!?

何でそんなに気味の悪い笑顔なんだ!?

「やぁ、圭一、おはよう、いい朝だね。昨夜の君はとても可愛かっだぁ!?」

「誤解を招く発言は止めてください」

俺は枕を秋月の顔面に投げ飛ばし、急いでベッドから出る。

「あーぁ、幸田君が急に動くから、画像が、ぶれてしまったよ。ほら玲、見てよ」

「香山君、悪趣味ですよ」

声の主達は、いつから居たのか、ベッドの足元に立つ香山と美咲だ。

扉に背を預け、無表情に此方を見ている、斉藤も居る。

「……何をなさっているんですか?」

特に、香山が手にしている携帯電話の使用状況をとても知りたい。

携帯電話のカメラ部分が、俺の方向に向いているように見えるのは、気のせいだろうか。

「何って、幸田君の弱みを掴んでおこうと思ってね」

「弱み!?」

「ほら、幸田君さ、なんやかんやで僕の事、色々と知り過ぎてしまったでしょう? だから、弱み握って保険でもかけておこうと思ってね」

色々というのは、香山が二重人格だとか、ヤクザの息子だとかの事だろうが――

「保険って、何でそんなこと……」

そんなことをしなくても、誰にも言う気は更々ないというのに。

香山は、俺の前までやってくると、少し腰を屈め俺の顔を覗きこんできた。

その顔は、邪気なんてまったくなさそうなエンジェルスマイル――

「幸田君の口が、いらぬ事を滑らせでもしたら、校内は勿論、ネットや近所にもコレをばら撒いちゃうよ? って、いう脅しの種を作っていたんだよ。その方が、幸田君も気が引き締まるだろう?」

――だが、香山の口から出てきた言葉は、脅迫文句。

コレと、言って見せてくれた香山の携帯電話の画面には、顔は見えないが上半身裸の秋月と、俺がベッドで仲良く眠る画像が映し出されていた。

「なっ――!?」

慌てて、香山の携帯電話に手を伸ばすが、それをヒョイと香山は避け、胸ポケットへと携帯電話を仕舞い込んでしまった。

「香山先輩! そんなことしなくても俺は誰にもいいません。だから、画像を消去して下さい!!」

冗談じゃない!

あんな脅しの種を持たれていたら、安心して生活が送れない!

香山は、ジッと俺を見つめた後、そっと眼を伏せた。

「幸田君の事をね、信じてないって訳じゃないんだよ」

落ち込んだような、小さな声にハッとする。

もしかしたら、俺には計り知れない香山なりの辛労が、あるのではないだろうか。

香山だって、こんな風に人を脅すような事を望んでしている訳では、ないのかもしれない。

「なんていうかな、趣味? っていうの? 人の弱み握るの大好きなんだよねぇ」

前言撤回。





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