[前]夜空舞う、銀の蝶
5
──白い壁、白いカーテン、鼻につく少しの薬品の匂い。
少女は、そこに゙い゙る。
こんな状態じゃ病院にも運べない。
だから、ここに来た。
「──どうだ、シャマル」
「どうもこうもねーぜこりゃあ…」
どうなってんだ?
…シャマルが困るのにも無理はない。
だって少女は、死んでいるのだから。
でも、死んではいない。
呼吸なし。
その状態が長時間続いているのだ。十分死の理由となる。
なのに、生きている。
心臓も、血流も、機械のように正確に動いている。
脳も。
生きているのが、不思議だった。
…少女には、中身がない…
ただ、この状態にも、限度がある。
もって後、2、3日。
それ以上行けば、体が壊れてしまう。
早く、早く。
少女をあの時代から、
戻さなければ。
「蝶…蝶っ…」
少年は、呼ぶ事しか出来ない。
手を握って、少女の帰りを待つ事しかできない。
(なんで俺は)
(無力なんだろう…)
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