[前]夜空舞う、銀の蝶
お正月
「ありがとう」
「いえ、当主様」
「そう呼ばないで。まだなってないんだから」
ツナの家には1月1日に行ったのだが
しっかりとした挨拶はしていなかった。
だから今日は暇なので挨拶しに行こうとすれば
組員の一人が、沢田家に行くならこれを、と着物を着せたのだった。
正月に組員総出で押しかけてくるもんだから驚いたが
嬉しくもあった。
各地に散らばっていた皆が集まってくれて、孤独感がなくなったから。
広い家に一人きりは、やっぱり寂しい。
正月は皆が家事をしてくれるから奈々さんに迷惑もかからないしね(ちょっとうるさいから迷惑かもだけど)。
普段私がこの本家に一人でいるのは
あの日、奈々さんに沢田家に来るように言われたから。
奈々さんに当時は一般人だったツナ達に夜蝶組の存在は明かせない(今もだけど)。
だから集まるのは正月とか、緊急時だけ。
広い家も宝の持ち腐れ。
使っているのは自分の部屋だけ。
後の部屋は使わないし
後…
何故か開かない
゙開かずの間゙
がこの家には存在していた。
(あの部屋で)
(何があったんだっけ……)
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