[前]夜空舞う、銀の蝶
7
「蝶ちゃん、人間は一人で生きられないのよ」
知ってる…
知ってるよ…
──「友、達…」
「そう、友達」
蝶ちゃんのお母さんとは、小さい頃から仲良しでね、いつも一緒だったの。所謂、幼馴染みなんだけどね…
と、奈々さんが説明してくれた。
私は、自分の足元を見るばかり。
なんとなく…奈々さんの顔を見れなかった。
「蝶ちゃんのお母さんがね、言っていたの。」
「奈々…」
「何?どうしたの?」
「もし、私が…いなくなったら…
その時は…───
「蝶ちゃんを、よろしくって」
少し…肩が震えた。
雨の冷たさや、夜の静けさとか…
そういうのじゃ、なくて…
(…良く…わからない…)
「こっちを見なさい、蝶ちゃん」
グッと顔を持ち上げられた。
目を、逸してしまいそうだ…
でも…
ダメだって、逃げちゃだめだって…
誰かが言った気がした。
「蝶ちゃん、さっき…独りで生きていける…そう、言ったわね?」
コクン、
強い瞳。逃げられない。
「蝶ちゃん、人間は一人で生きられないのよ」
(知ってる)
(自分が一番、わかってる)
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