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「見事な剣の腕だった」
「勿体ないお言葉、感謝いたします」
道長に気取られぬように、斜め前に座する晴明の様子を伺えば、どことなく、楽しげに見えてしまうのは、気のせいではないだろう。
「晴明の弟子だと聞いた時は驚いたぞ」
「……よくしていただいております」
嘘ではない。
弟子だということを暗に否定すれば、晴明の面子を悪くするし、肯定すれば面倒だし。
実に厄介だ。
『くだらん』
いつも通り、なんの断りもなく顕現した傲越は、道長と晴明を一瞥すると何事もなかったように簀の子へ向かって歩きだしてしまう。
普段なら咎めはしないが、ここは道長の屋敷であり、勝手な事をしていい場所ではないのだ。
見鬼がなければ姿を捉えることが出来ぬとはいえ、非常にまずいのではないだろうか。
道長の手前、平然を装うしかないが、神将たちも突然のことに動揺しているようだ。
気配を追えば、簀の子の端っこで動きを止めたのがわかる。おそらくは、日の当たる所でひなたぼっこでもするつもりなのだろう。
迷惑甚だしい。
傲越本人は人間には興味がないので、本当にくだらないと思っての行動なのだろうが。
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