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「お前の腕を見込んで頼みたい事がある」
「頼み事……ですか?」

晴明からは何も聞いていない。

道長に失礼にならない程度に晴明へ視線を向けると、晴明も聞いていなかったらしく、黙然と首を振っている。

「とある宴の護衛を頼みたいのだ」
「大臣様、それは……」
「急な事ですまないと思っているのだが」

聞けば、近く道長邸でちょっとした宴が催される事になっているらしい。

しかし、宴を開くと公言した直後から身の回りで不振な動きが報告されるようになっている。


自身が主催する宴が失敗などすれば、顔に泥を塗ることになる。

「しかし、私は身分もなき都の外から来た者。そのようなどこの馬の骨かもしれぬ輩よりも、腕のたつ方は都にたくさんおりましょう」
「身分や素性が都の者ではなくとも、晴明が認めた腕がある。晴明が内々に弟子にしたということは、信頼に値する者だからだろう?」
「もちろんにございます」

道長の問いに直ぐさま答える晴明には、一切の迷いは見られない。それだけ信用されているということか。

「それにな、問題は屋敷の警護ではないのだ。宴では貴族の娘が数人、舞を披露することになっているのだかな。その者達の護衛を頼みたい」

その後に続いた道長の言葉は、ここ最近随一の破壊力を持って投下された。




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