[携帯モード] [URL送信]



その家は川から少し離れた場所に建っていた。

人目に付かない場所で式から降りて、兄妹の案内で家の中へと入る。

「ただいま」
「お兄ちゃん、入って入って」
「お邪魔するね」

決して裕福ではないであろうことは、生活の様子からもわかる。

「太一、お父さんは?」
「この奥の部屋だけど」
「ちょっと会ってもいいかな?」
「大丈夫だと思うけど……」

不思議がる太一に連れられて、二人の父が休んでいる部屋に通してもらった。
床に臥している太一の父は、人目で衰弱しているのがわかる。

「父ちゃん、お客さんだよ。都で俺達を助けてくれたんだ」
「そうですか。太一と葉子が世話になりました」
「いえ、当然の事をしたまでですから。よろしければ、脈を見せていただいてもいいですか?」

太一の父の手をとると、脈を診たり、顔色や瞳の様子を手際よく確認していく。

「兄ちゃん、もしかして……」
「少しだけ薬について学んだことがあるんだ。太一が頼みに行った昭一さんには敵わないかもしれないけれどね」
「じゃあ、父ちゃんを治せる?」
「……大丈夫だよ。流行り病の一種だと思うし、薬を飲めばすぐに良くなる」

その言葉に表情を輝かせた太一だったが、一瞬で顔を曇らせる。薬に使う薬草は貴重で、今は中々手に入らないと昭一が言っていた。

「大丈夫だよ。約束する」
「兄ちゃん、本当?」
「とりあえず、今日は滋養に効く薬を置いていくね。体力を少しでも回復させた方がいいから」

一通りの事を終らせて外に出ると、既に空は茜に染まりはじめていた。

「急いで都に戻らないと」
「本当にお人よしだよな、お前……」
「子供達の為に、ずっと中に引っ込んでいた奴には言われたくないかな」
「餓鬼が嫌いなだけだ」

必要な薬草を見つけるためには、もう一度、昭一に会わなければならない。不機嫌そうに尾を降る傲越を乗せて再び都へ飛び立った。



[*前へ][次へ#]

8/13ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!