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室内の異変に、外に控えていた他の者も気付く頃だろう。
室内の様子を悟られぬための結界を織り成した所で、真子は口を開いた。

「私は雅楽寮に勤める清原の娘です。父も出世を望んではおらず、位も高くはない。楽を奏でる事のみを誇りに思っているような人です」

父が帰って来るのを待ち、共に夕餉をとり、母と三人で楽の練習や舞の練習をする毎日。
そんなささやかな日常は、父が傷心しきった顔で帰って来た時に崩れてしまった。

「私が何を問うても、父は答えてはくださりませんでした」

楽を奏でることもなく自室に篭ってしまった父をあんじて、父の部屋の前まで来ると、中から父と母の声が聞こえてきた。

「とある方から、左大臣様を陥れる手伝いをせよと命じられたと。そのために娘を貸せと言ってきたと」

その者には娘がいなかった。だから、計画を実行するために、舞を踊れる姫が必要だったのだ。
真子は父を想い、全てを受け入れたのだ。

「皆様を眠らせて騒ぎを起こし、その騒ぎに乗じて他の者が左大臣様を……」

そこまで話すと、真子はふつりと押し黙ってしまった。

真子の話を信じるなら、まだ屋敷の中には、道長の命を狙う者が紛れ込んでいるのだろう。彼女が懐剣を忍ばせていたのは、もしもの時の保険といった所か。

「もうすぐ、舞が始まる頃合いですね」

そうすれば間違いなく騒ぎになるだろう。
護衛を任された以上は、この部屋で起こる全ての事を、未然に防がなければならない。

「少し、失敗してるけど」

室内をぐるりと見渡せば、使えそうな道具がちらほらと見受けられる。

「真子姫様、他の姫様方はいつ頃目を覚まされるでしょうか?」
「もう少しすれば……」
「なら、大丈夫ですね」
『どうするのだ?』

真意が読めず首を傾ける真子と勾陣に、笑みをもって応えた。



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あきゅろす。
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