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決して激しい声ではなかった。どちらかと言えば、静かな声色で。
しかし、真子は怯えたような瞳で肩を跳ね上げた。
「わ、私は……」
視線をさ迷わせて、言葉を探す真子に、何の躊躇いもなく手を伸ばす。
「失礼……」
一言、詫びてから真子の唐衣の下へと手を入れる。
腰の辺りにそれはあった。
『それは……』
真子から戻した手に、懐剣が握られていることに、さしもの勾陣も、双眸を曇らせる。
「わ…たく、し……は………」
「姫君がこのような場所にお持ちになられるような物ではございませんね」
その言葉に、真子はついに崩れ落ちた。両手で顔を覆い、うなだれる。
「私が止めなければ、いけなかったのに。姫方にこのような、ことを……」
嗚咽混じりに話す真子を見て、勾陣の方に顔を向ける。
『何か事情があるようだが』
それは自分も思っていた。
でなければ、貴族の姫がこのような事をするはずがない。おおよその予想は出来ているが。
問うような視線を勾陣へ向ければ、苦笑が返ってくる。
「あくまでも、護衛であって、それ以外は仕事じゃないんだけどなぁ」
真子には聞こえないように呟いた声は、神将である勾陣の耳には届いている。
厄介事を自ら引き受けるのは嫌だったが、見て見ぬ振りが出来るほど、器用な性格でもないのだ。
「私でよろしければ、お話ください」
安心させるような声色に、真子の頬を涙が伝った。
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