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「さてと、仕事しようかな」
『何をするんだ?』
「念を入れて、控えの間と舞の舞台に守りの符を貼っておきます。何かあれば、瞬時に守護壁を築くように」
普段の服装とは違い、いささか動き難い衣装を引きずりながら、控えの間の四方の壁に貼って行く。
壁に貼られた符は、瞬く間に透き通り見えなくなる。
「これでいいかな。次は舞台の方だけど……」
はたして勝手に出歩いて良いものなのか。
『符を貼るだけでいいよろしいのでしたら、私たちが行って参りましょうか?』
「よろしいのですか?」
『俺達は見えないからな。貼って来るだけならかまわない』
「ではよろしくお願いします」
数枚の符を渡すと、朱雀は天一を伴って出て行った。
室内をもう一度見渡すと、勾陣がいるであろう方向へ視線を向ける。
『どうした?』
「こんなことを言ってしまって良いのか迷いますが、道長様が何者かに狙われているなら、晴明様や陰陽師の方々を動かされるのでは?」
自分がわざわざ出張る必要性はなかっのではないか。
『まぁ、この宴がなければそうしていたかもな』
「政治的判断……ですか……」
本音を言えば関わりたくない部類のものだ。腹の探り合いはあまり好みではない。
というか、巻き込むな。
『そういう顔をするな』
「え?」
『眉間にしわが寄っている』
指摘されて慌てて表情を戻す。どうも勾陣がいる時は素が出やすいようだ。気をつけねば。
「そろそろ客人方が来はじめる頃ですね」
室外に意識を向ければ、先程までとは違った賑わいの声が聞こえてくる。
「今日は長い一日になりそうだ」
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