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帰りたい、やりたくないとはおもっていた。
でも、あえてもう一度言おうと思う。
帰らせてくれ!
「なんて、大声で叫べたら幸せなんだろうけど……」
周りに聞こえない程の呟きは、神将たちの耳にだけ届いて消えていった。
三人とも隠形しているので姿は見えないのだが、笑っているか苦笑しているかのどちらかだろう。雰囲気で。
控えの間に集まってきた貴族の姫たちは、普段あまり自らの屋敷から出ない事もあり、あれやこれやと尽きない話しに華を咲かせている。
室内にいるかぎり、自分も例外ではないわけで……。
「そのお衣装、とても似合っていらっしゃっいますわね」
「ありがとうございます」
正直言えば、衣装を褒められても嬉しくない。むしろ、似合っていたらまずいだろう。
なによりも、自分自身、女性は苦手な嫌いがある。
自覚している分、苦手意識が先行してしまうのだ。
そうとは知らぬ姫は、興味津々と言った様子でこちらを見てくる。
「あら? なんとお呼びしたらよろしかったのかしら?」
「……そうですね。あきう、秋保と申します」
とっさに思い付いた名を言えば、満足したのか、その姫は違う姫に話し掛けている。
どうせなら女房としての立場の方が、楽に動き回れたのに。この期に及んで、自分も舞に参加しろなどとは言われないだろう……たぶん。
『それはそれで面白いけどな』
他の者には聞こえない声が脳裏に響く。長い付き合いから、考えている事を読んだ傲越だ。
『奴らへのいい土産話になるじゃねえか?』
冗談ではない。
仕事が終わったら真っ先に傲越に口止めをすることを誓い、したくもない会話に付き合うのだった。
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