3 「さてと、仕事しようかな」 『何をするんだ?』 「念を入れて、控えの間と舞の舞台に守りの符を貼っておきます。何かあれば、瞬時に守護壁を築くように」 普段の服装とは違い、いささか動き難い衣装を引きずりながら、控えの間の四方の壁に貼って行く。 壁に貼られた符は、瞬く間に透き通り見えなくなる。 「これでいいかな。次は舞台の方だけど……」 はたして勝手に出歩いて良いものなのか。 『符を貼るだけでいいよろしいのでしたら、私たちが行って参りましょうか?』 「よろしいのですか?」 『俺達は見えないからな。貼って来るだけならかまわない』 「ではよろしくお願いします」 数枚の符を渡すと、朱雀は天一を伴って出て行った。 室内をもう一度見渡すと、勾陣がいるであろう方向へ視線を向ける。 『どうした?』 「こんなことを言ってしまって良いのか迷いますが、道長様が何者かに狙われているなら、晴明様や陰陽師の方々を動かされるのでは?」 自分がわざわざ出張る必要性はなかっのではないか。 『まぁ、この宴がなければそうしていたかもな』 「政治的判断……ですか……」 本音を言えば関わりたくない部類のものだ。腹の探り合いはあまり好みではない。 というか、巻き込むな。 『そういう顔をするな』 「え?」 『眉間にしわが寄っている』 指摘されて慌てて表情を戻す。どうも勾陣がいる時は素が出やすいようだ。気をつけねば。 「そろそろ客人方が来はじめる頃ですね」 室外に意識を向ければ、先程までとは違った賑わいの声が聞こえてくる。 「今日は長い一日になりそうだ」 [*前へ][次へ#] [戻る] |